反貧困ネット北海道「北海道知事選挙と札幌市長選挙の立候補予定者に公開質問状を送りました」

反貧困ネット北海道(代表:松本伊智朗・北海道大学教授)では、きたる北海道知事選挙と札幌市長選挙を前に、現時点で私たちが把握できている立候補予定者の皆さんに対して、公開質問状を2023年3月1日付で送付しました。質問の内容は、私たちが取り組んでいる反貧困関連の政策について、です。以下に札幌市長選挙立候補予定者への質問を掲載します(北海道知事選挙立候補予定者にお送りしたのもほぼ同様の内容です)。これらの問題に市民の皆さんにも関心をもっていただけたら幸いです。

なお、学習会の「記録」などを質問の末尾につけていますので、これらもご参照ください。

 

 

札幌市長選挙に関する公開質問へのご回答のお願い

 

私たちは道内において貧困問題に取り組む市民団体や労働組合、研究者及び市民が連携して、貧困問題を社会的・政治的に解決し、人間らしい生活と労働の保障を実現させるために結成されたネットワークです。2009年の結成以来、困窮者への相談・支援活動とともに市民や道内議会議員を対象にした学習会を開催するなど、貧困問題の解決のための取り組みを進めてきました。また、2015年の北海道知事選挙・札幌市長選挙の際には立候補予定者に対する公開質問状を送付しております。

さて、ご承知のとおりコロナは私たちの暮らしを守る制度の脆弱さを浮き彫りにし、貧困が身近な問題であることをあらためて示しました。こうした事態に自治体としてどのような対応を取るのかが問われており、有権者の皆さんも大いに関心のあることと思います。

そこでこの度も、札幌市長選挙を迎えるにあたり、現時点(3月1日)で立候補予定者として報道されている方に対して、反貧困にかかわる政策の質問をさせていただきたく存じます。立候補予定者が貧困問題にどのように向き合うのか、お考えを聞かせていただくことで私たち自身勉強させていただくとともに、広く市民/道民の皆さんにもお知らせして投票する際の参考になればと考えております。

ご回答につきましては、上記の趣旨に鑑みて反貧困ネットの関係者で共有するとともに、報道機関への提供や当会のホームページでの公開などを予定しております。

なお、参考資料として私たちが実施してきた学習会の「記録」などを各質問の末尾に掲載しておりますので、ご回答にあたってそちらもあわせてお読みいただければと思います。

〔略〕

 

 

【1】生活保護制度

(1)2023年は生活保護基準の5年ごとの見直しの年です。2022年12月末に厚生労働省から発表された新基準は、現在の物価高騰をまったく考慮していないものでした。1973年~1974年のオイルショックの時には、生活保護基準の引き上げが年度内で複数回行われました。その頃よりも物価上昇率が高い現状においては、生活保護基準は大幅に引き上げるべきではないでしょうか。どうお考えかお聞かせください。

 

(2)生活保護法第1条では、「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」とされています。法律では国の責任ということが明記されていますが、ご承知の通り生活保護を利用する事には未だに抵抗を覚える方がいるのが現実です。どうお考えかお聞かせください。

 

(3)生活保護制度を利用したくてもしないという方々の多くが、自動車保有と使用が出来なくなるため生活保護利用をためらっているのが現状です。国民の7割以上が保有する自動車を、生活保護利用者が日常生活で使用できないのは、(憲法)法の下の平等に違反していると思われます。また、障害者にとっては、自動車は自分の足に相当しています。使用禁止は、移動の自由の侵害ではないでしょうか。どうお考えかお聞かせください。

 

(参考資料)

細川久美子「新型コロナウィルスによる生活の困窮と私たちの活動」

 

 

【2】生活困窮者の自立支援、野宿者・住まい

2020年4月「札幌市無料宿泊所の設備及び運営の基準に関する条例」「北海道無料低額宿泊所の設備及び運営に関する基準を定める条例」が施行され3年が経過します。貧困ビジネスを排除し生活に困窮されている方々が安全で安心できる住まいをつくるにはどうしたらよいかという観点から以下の質問をさせてください。

 

(1)条例では事業者に対して無料低額宿泊所としての届出をすることを課しておりますが、北海道、札幌市ともに届出件数が非常に少ないのが現状です。この要因をどのように分析し、どのような対策を考えているのか教えてください。

 

(2)届け出のあった無料低額宿泊所のうち一定の要件を満たす場合は日常生活支援住居施設(以下、日住)として認定され、行政が日常生活に支障のある生活保護受給者の支援を委託することができるようになりました。一方、これまでは日常生活に支障がある方には救護施設等の保護施設が対応してきました。お伺いしたいのは、札幌市ではこうした要支援の生活保護受給者に対して、今後日住を拡充して対応するという意向なのか、それとも保護施設における支援を基本に置いて日住はあくまで補助的な位置づけとして考えるのか、方向性とその理由を含めてお聞かせください。

 

(参考資料)

近藤紘世「コロナ禍の路上生活者と労福会の支援活動」

小川遼「新型コロナによる住居喪失者への影響と対応の現在」

 

 

【3】女性の貧困(ひとり親家庭、中年・単身世帯)

(1)3年に及ぶコロナ禍とその後の物価高騰により、ひとり親世帯は減収と家計費負担増により大変厳しい状況です。

2018年の北海道のひとり親世帯等実態調査報告で、受診を控えたことがある世帯が母子父子世帯ともに49%と、半数が受診控えがあると回答しています。これは他の都府県と比べて、ひとり親医療費助成が親は入院時のみの助成しかないことが大きく影響しています。札幌市においても、ひとり親の通院についても医療費助成を導入するべきと考えますがいかがでしょうか。

 

(2)困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が2024年4月から施行されます。

その中でも特に見落とされているのが、40代以降の単身女性の支援です。

この国の社会保障、税制は世帯単位のため、そこから外れている単身者、特に非正規雇用が多く収入が低い女性単身者が困窮します。就労支援や職業訓練も年齢が高いと希望をしても受けられないことも多くあります。40代から60代向けの就労支援が必要と考えます。また、子育て世帯への住居費支援などは実施している自治体もありますが、中年単身女性は民間賃貸住宅居住者が多く、収入が低ければ住居費の負担が大きく余裕がありません。住宅支援として民間住宅借り上げなどによる、住居費助成として、みなし公営住宅などを拡充することが必要と考えますが、いかがでしょうか。

 

(参考資料)

平井照枝「新型コロナウイルス感染症の影響による収入とくらしについて」

シングルマザー調査プロジェクトチーム「シングルマザーの居住貧困―コロナ禍の「ステイホーム」の現実」

わくわくシニアシングルズ「2022年 中高年シングル女性の生活状況実態調査結果」

シングルマザーサポート団体全国協議会「ひとり親家庭の物価高による影響調査(2022年11月)」

 

 

【4】保育

(1)職員配置基準の見直しについての世論が高まり、新年度より開始の子ども家庭庁において定員121人以上の保育所で4.5歳児25:1配置とした場合の加算が予算化されました。しかし、基準の引上げではないこと、対象施設が少ないこと、多くの保育現場では0.1.2.3歳児に基準以上の保育士を配置していることから不十分と捉えています。子どもの豊かな育ちを保障するために、どのような措置が必要とお考えかお聞かせください。

 

(2)この間、国は保育労働者の賃上げを実施してきたとしていますが、人件費単価の引上げではなく加算方式でとどまっており、なおかつ物価高騰の影響をふまえると、この間の加算は十分な引上げとはいえません。独自の職員処遇が必要ではないでしょうか。この点についてどうお考えかお聞かせください。

 

(3)国は保育体制強化事業として、保育士資格を持たない「保育支援者」などの配置を予算化しています。保育現場では、本来有資格者の確保・定着で保育労働者の業務軽減や安心安全な保育を行うことが最善と捉えていますが、無資格者の拡大についてのお考えをお聞かせください。

 

(参考資料)

岡秀子「緊急事態宣言からこれまでの保育現場のこと」

 

 

【5】学童保育

(1)学童保育は、保育園のように保護者が労働等で不在となる小学生児童の放課後や長期休みを保護者に代わる大人のもと集団で生活する中で適切な育成支援によって子どもの持つ成長発達の権利を保障し保護者の就労等を保障する事業です。児童館、こども食堂、学習支援の場などとは目的を異にし、対象となる児童にとっては必要で欠くべからざる環境です。生活を共にする家庭のように固定された子ども集団のなかでともに遊ぶこと、おやつや昼食をときには調理する主体ともなるような生活経験を育みます。

これまで厚生労働省管轄だった学童保育(放課後児童健全育成事業)は、新年度以降のこども家庭庁の仕組みのなかでは、「こどもの居場所づくり」の範疇で考えられるようですが、そのことについてどうお考えでしょうか。

 

(2)小学生が学校よりも長い時間を過ごす場で、保護者と連携して子どもを育てることで、家庭が困難を抱えた場合の支えになったり適切な支援につなぐソーシャルワークも担うことができますが、学童保育(放課後児童クラブ)は、国の補助基準において算定条件が低く見積もられ現場の指導員の処遇が十分ではないため、慢性的な人材不足という課題を抱えています。

子どもたちを育成支援する人材を確保すると同時に子どもたちの受ける育成支援の質の向上を図るため、どのような政策をお考えでしょうか。

 

(参考資料)

林亜紀子「コロナで学童保育の現場 指導員の仕事・働きはどうなった」

 

 

【6】子ども・子育て家族の貧困

現在札幌市では、子どもの貧困対策推進計画(子どもの貧困対策計画)を策定されており、施策の進展が期待されるところです。この推進に関連して、以下の点についてお考えをお聞かせください。

 

(1)子どもの貧困対策推進計画にあげられる施策のうち、札幌市として特に重点的に進めて行くべきことがらは何だとお考えでしょうか。

 

(2)計画の策定、推進に際しては、貧困当事者である子ども、保護者の参画が重要であると思われますが、この点をどのように進めて行くお考えでしょうか。

 

 

【7】医療・介護

コロナは、医療・介護現場で働く労働者を疲弊させています。それは、長年の医療・介護政策を反映したものであり、問題の解決には、医療や介護に対する公的な支出の増大が不可欠であると考えます。また、利用者に対して負担をさらに求めていくことは、医療機関の受診抑制や介護の利用抑制がもたらされることが懸念されます。

 

(1)2023年5月より、新型コロナウイルス感染症が2類から5類へ変更されます。このことによる医療現場や介護現場への影響や対策をどうお考えでしょうか。

また、医療現場や介護現場でのクラスターを予防するためには頻回なPCR検査や、受診・入院制限や利用制限による減収補填が必要であると考えますが、いかがでしょうか。

 

(2)新型コロナウイルス感染症により医療供給体制のひっ迫が明らかになりましたが、新興感染症や大規模災害から命をまもる医療政策について、どのようにお考えでしょうか。とくに国は都道府県ごとの医療適正化を名目に、病床を削減する「地域医療構想」を推進していますが、北海道の公立・公的医療機関の縮小統廃合についてどのようにお考えか、お聞かせください。

 

(3)介護保険財政における国の負担割合を引き上げること。そのための財源は負担能力に応じて国の責任で確保するべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、ケアプランの有料化や、介護保険利用料の原則2割負担、要介護1・2の訪問介護と通所介護(デイサービス)を、介護保険給付から「地域支援事業」に移行することについてどのようにお考えでしょうか。

 

(4)道内でも医療・介護従事者の不足が深刻で、事業所の閉鎖や事業の縮小、新たな事業ができない地域増えています。その解決のためには大幅な賃上げや労働条件の改善が必要です。札幌市として、独自の施策についてお考えをお聞かせください。

 

(5)道内でも、高すぎる国保料や一部負担金の負担などで、経済的理由による受診抑制が起きています。手遅れで亡くなる方もいます。

協会けんぽと比較しても高すぎ、今後も値上げが予想される国保料について、札幌市として独自の軽減策についてお考えをお聞かせください。

また、保険料を負担できない18歳以下の子どもの均等割の軽減について、札幌市として独自の軽減策をお考えかお聞かせください。

保険料を一定期間滞納すると10割負担となる資格証明書が発行されます。それについてのご意見をお聞かせください。

市町村が行う一部負担金の減免制度の周知や対象拡大が必要です。札幌市としての独自の施策について考えをお聞かせください。

 

(6)介護保険制度当初、基準介護保険料(本人は非課税)は一人当たり月5000円が限界と言われていました。しかし、道内でも6割の市町村が月5000円を超えています。2024年度からの保険料の見直しではさらに値上げが予想されます。札幌市として独自に保険料に軽減することについてお聞かせください。

介護利用料が高いため、経済的理由で必要な介護制度を利用できず制限している方も少なくありません。札幌市として独自に利用料を軽減することについて考えをお聞かせください。

 

(参考資料)

川村雅則ゼミナール「大学生が学んだ、新型コロナウイルス感染拡大の下での看護労働の現状」

田村優実「コロナ禍における介護事業者・労働の実態と取り組み」

 

 

【8】障害者福祉

(1)障害者施設、職員による人権侵害の問題について

北海道では昨年12月に西興部村の障害者支援施設で職員による利用者への虐待が発覚し、同じく12月に江差町では利用者の結婚や同棲の条件に不妊手術が提案されていたことが報道されています。こうした福祉施設やその職員による人権侵害ともいえる事案が発生する要因をどのように捉えているのか、そしてどのような対策が必要だと考えているのか、考えをお聞かせください。

 

(2)福祉施設事業所職員の慢性的な人材不足について

障害者福祉事業所職員の人手不足は深刻です。職員のなり手不足の原因には、賃金の低さ、労働条件の厳しさ、将来性の不透明感等が挙げられています。国は2012年から処遇改善加算などを創設し対応していますが問題は未だに解消していません。現に起きているこの事態を一刻も早く改善するために、札幌市として独自の財源措置を行う等対応すべきと考えますが、その点についての見解をお聞かせください。

 

(3)制度の中に、障害種別による格差が生じている状況について

2006年障害者自立支援法(現在:障害者総合支援法)により、3障害一元化が進められることになりましたが、いまだに制度の中に差別が残されています。これに関わって以下の点について質問させてください。

 

①重度障害者医療助成制度

現在の制度では、身体障害者や知的障害者は入院にかかる費用も助成の対象であるのに対して精神障害者の場合は入院費用が対象となっていません。障害者差別解消法では国や自治体による差別を禁止していますが、精神障害者に対するこの状況をどう考えているか、自治体独自の財源措置をして対策することについてのお考えをお聞かせください。

 

②運賃割引制度

札幌市では市営地下鉄と電車については精神障害者にも4年前から半額助成を行っていますが、大手バス会社は運賃割引を行っていません。また、北海道においても各民間交通事業所の判断で運賃割引が行われており、多くは精神障害者を対象としていません。こうした状況をどう考えているか、財政等の支援を行うなどの対策の可能性を含めてお聞かせください。

 

(参考資料)

片山和恵「障害者福祉における新型コロナウィルス感染症の影響」

 

 

【9】学費・奨学金問題

(1)学費・奨学金問題が深刻です。国公立大学の授業料は年間約53 万円、私立大では100 万円を超えます。新たな奨学金制度を創設する、現在行っている奨学金制度を充実させる(貸与制から給付制への変更、給付制枠の拡大)などの対策や現在返済に苦しんでいる方への支援策(返済の負担を軽減する税制支援など)が必要と考えます。学費の高負担や奨学金返済負担の軽減のため、札幌市としてどのような支援策・対策を実施すべきだとお考えですか。

 

(2)地元企業就職者への返還給付支援策として、たとえば、札幌圏奨学金返還支援事業などが制度化されていますが、対象となる認定企業が少ない状況にあります。この背景には、企業に対して半額の寄付を求める等、企業側の負担の問題も大きいと考えられますが、企業側の負担軽減により対象となる認定企業を拡大するため、札幌市としてどのような対策を実施すべきだとお考えですか。

 

(3)札幌市奨学金等の給付型奨学金制度は、進学に経済的困難を抱える家庭のお子さんにとって、学問の自由や教育を受ける権利を支える貴重な制度となっています。

札幌市は、近年、ふるさと納税による寄付の増加と、子どもの貧困に対する関心の高まりから、特に給付型奨学金事業への寄付額は増加しています。しかしながら、運用収入と市の歳出予算のみを奨学金の支給に充て、寄付金を奨学金には充てていないことから、寄付金の増加にも関わらず、奨学金の支給対象人数は増えていません。札幌市奨学金の充実についての考えをお聞かせください。

 

(参考資料)

北海道労働者福祉協議会「「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査の結果・電話相談の概要」の報告」

 

 

 

【10】雇用・労働(総論)

(1)不安定な雇用で働く人たちが北海道内にも札幌市内にも数多くいます。加えて、最低賃金における都道府県別未満率と影響率(令和3年)では、未満率は全国加重平均が1.7%であるのに対して北海道は2.5%、影響率は全国加重平均16.2%であるのに対して18.0%と、最低賃金に近い賃金水準で働いている労働者が多くなっています。

このような憂慮すべき事態について、現状認識や必要だと考える政策についてお聞かせください。

 

(2)求職中であっても憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するには、国が行っている求職者支援制度の月10万円の生活支援給付金では大幅に不足します。自治体による独自加算を行うことについて、考えをお聞かせください。

 

(3)北海道も札幌市も、インバウンドを経済の重要な柱に位置づけていますが、そのインバウンドを支える観光、レジャー、宿泊、飲食などのサービス業は、全業種の中でもとくに非正規雇用の割合が高く、最低賃金近傍・連動した求人が多数を占めています。インバウンドを支えているこうした産業や労働者に対する見解と対策をお聞かせください。

 

(参考資料)

出口憲次「コロナ禍の労働相談と課題」

 

 

【11】技能実習生

(1)技能実習生への支援の必要性

技能実習生は産業や地域を支える不可欠の存在です。コロナ前は1万人を超える技能実習生が北海道で働いていました。

その一方で、賃金未払い、ハラスメント行為、強制帰国等、技能実習生への権利侵害が指摘されてきました。近年では、技能実習生の妊娠出産問題が社会問題化していることはご承知のことかと思います。

技能実習制度と実態が乖離していることは、周知の事実であり、早急な改善が求められています。政府においても見直しの議論は進められていますが(「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」)、技能実習生への権利保護および多民族・共生社会実現をする上では、彼らが実際に働き生活する場である札幌市が積極的な受け入れ態勢を図る必要があると考えますが、いかがでしょうか。

 

(2)債務奴隷化を撲滅するために

技能実習生のほとんどは、母国で多額の借金(母国での年収の3倍~5倍)をして日本に訪れます。その結果、職場で深刻な人権侵害に遭遇しても、強制帰国を恐れて声をあげることができない状況にあります。このことは国際的にも非難されており、政府も一部問題事例を把握しているものの、抜本的な改善は行われておりません。

こうした技能実習生の債務奴隷化をどうお考えかお聞かせください。

 

(3)技能実習生の妊娠・出産・育児に関する権利等の周知について

技能実習生に対する、妊娠・出産・育児に関する権利等の周知が徹底されておらず、技能実習生は出産費用や産休時の収入等に不安を持っています。政府による啓発活動等では対応が不十分で、ほとんどの実習生は、権利等を認識しておりません。

札幌市においては、「さっぽろ子育て情報サイト」にて、妊娠・出産・育児に関する情報発信が行われていますが、実習生が母国語で情報にアクセスすることはできません。今後、実習生をはじめ、各在留資格で働く外国人労働者が増加することが想定され、それに伴い妊娠・出産・育児をめぐる問題も増加するものと考えられます。

このような問題をどうお考えかお聞かせください。

 

(4)公共工事における暴力事案について

全国的に技能実習生への暴力事案が多発しています。とりわけ土木・建設現場で働く実習生に対する暴力事案に関する相談が後を絶ちません。公共工事においても、多くの技能実習生が働いており、暴力事案の潜在化していることが懸念されます。

札幌市が発注する公共工事で起こり得る、技能実習生への暴力事案に関し、どのような見解をお持ちか、また、暴力事案の防止策についてどのような具体的な施策をお考えか、お聞かせください。

 

(5)行政サービスへのアクセスについて

技能実習生は、労働者であると同時に市民・生活者でもあります。しかしながら、実習生が各種行政サービスに容易にアクセスする体制が整っていません。各種行政サービスの通訳の配置やネット上の情報への母国語でのアクセス体制は、不十分です。

多文化共生を推進する札幌市として、今後どのような方法でこうした行政サービス・情報にアクセスできるようにするのか、また、多文化共生を実現するための街づくり・インフラ整備について、お考えのところをお聞かせください。

 

(参考資料)

鈴木一「ベトナム人技能実習生への解雇争議を闘って」

三苫文靖「花畑牧場ベトナム人労働者ストライキ報復事件」『季刊労働者の権利』第346号(2022年夏号)pp.121-128

 

 

【12】公共サービスの担い手の雇用

コロナで浮き彫りになったエッセンシャルワーカーの主な一つが、非正規公務員や、自治体発注の仕事で働く民間労働者など、公共サービスに従事する人たちです。公共サービスの質を維持・改善するためにも、自治体は、使用者として、また、発注者として、この官製ワーキングプア問題にどう向き合うのか問われています。

 

(1)自治体が任用する非正規公務員問題への対応

新たな非正規公務員制度として2020年度から始まった会計年度任用職員制度には、雇用安定に逆行するほか、勤務時間数による賃金・処遇格差の法認など、多くの問題がみられます。

なかでも、現在働いている者が一定期間ごとに雇い止めされて、働き続けることを希望する場合には公募に応じなければならないのは、「パワハラ公募」などと批判されています。公募制は義務づけられたものではなく、総務省も、「地域の実情等に応じつつ、適切に対応されたい。」と2022年12月23日の通知で伝えています。

会計年度任用職員制度をめぐる問題にどう対応するのか、また、公募制は今後も続けるのか、考えをお聞かせください。

 

(2)自治体が発注する仕事で働く民間労働者への対応

競争入札の過度な促進などを背景に、公共工事や委託事業、指定管理の発注価格が抑制され、結果として現場の低賃金・労働条件につながっています。

国も、問題解決のための取り組み(例えば、いわゆる「担い手三法」の制定・改定や公共工事設計労務の引き上げ)を進めていますが、自治体においても、公契約(の適正化)条例を制定するなど、「先導的にこの問題に取り組んでいくことで、地方公共団体の締結する契約が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することができるよう貢献」(公契約条例を初めて制定した千葉県野田市の同条例の前文)することが求められているのではないでしょうか。

こうした問題への認識と対応策をどうお考えか、また、公契約条例を制定する意思はあるかどうか、考えをお聞かせください。

 

(参考資料)

川村雅則「自治体の新たな非正規公務員制度問題(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」

川村雅則「公契約条例の制定で自治体を変える」

 

 

 

 

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