出口憲次「コロナ禍の労働相談と課題(2020年度反貧困ネット北海道オンライン連続学習会)」

2009年に設立された反貧困ネット北海道では、生活相談や貧困問題に関する学習・啓発など様々な活動に取り組んできました。2020年は新型コロナウイルスの感染で活動が制約される中、反貧困ネット北海道を構成する諸団体(運営会員)が、それぞれの現場でどのような事態に直面しているのか、またそうした中でどのような活動に取り組んでおられるのか、共有することを目的に、連続学習会をオンラインで、6回にわたって開催してきました。事務局の責任でまとめた全記録は、反貧困ネット北海道のウェブサイトで読むことができます。

以下はそのうちの、2020年7月14日に開催された第2回目の学習会で講師を務められた、出口憲次さん(北海道労働組合総連合事務局長)のご報告です。内容は当時の状況に基づくものです。司会は、川村雅則(北海学園大学、当団体副代表)です。/(反貧困ネット北海道事務局)

 

 

改めて、道労連の出口です。よろしくお願いします。

コロナ関連の労働相談の特徴

 

 

労働相談の集計期間が「3月1日から6月30日までの集計分」となっていますけど、5月の連休明けからコロナに関する相談件数が大幅に減少したので、相談は、4月末までにかなり集中して寄せられたものと理解していただければと思います。

相談の特徴として6点挙げられます。①相談者の65%が女性から。②子育て世代がさらに7割以上を占める。③非正規からの相談が7割。今回のコロナの問題で、どこに負担がより集中したのかということが表れていると思います。さらに、通常道労連に来る相談と違って特徴的だったのが、④請負・フリーランスからの相談が15%あったということで、かなり多かったかなと思います。⑤業種別では宿泊業が2割ということで、観光を中心に大きな影響を受けたということなのかなと思いますし、さらに言うと、飲食、公務、医療・介護なども相談が多かったので、いわゆるエッセンシャル・ワークも多かったかと思います。⑥相談の内容別では、休業補償関係がトップで5割を占めていまして、次いで、経営が大きく悪化をする中での労働条件や賃金に関する不利益変更や、あるいは一斉休校、北海道は特に全国に先駆けて1カ月早く行われましたから、休校にともなう休暇に関する相談の割合が高いというのが特徴かと思います。

 

労働相談を通じて浮き彫りになったこと

①労使の間で話し合いが無かったことです。事業所が休業になっているからということもあろうかとは思いますが、一方的に、メール等で通知されるのです。一方通行で来る。ここは労働組合が職場に有ったか無かったかということで、かなり大きな違いがあったと感じています。

②非正規の方が真っ先に調整弁にされて、正社員だけはテレワークなどで仕事があるけれども、非正規の人は休業、雇止めにされている。あるいは、復帰もまず正社員からで、派遣や非正規の人は復帰も後回しにされるというのが特徴的だったと思います。

そして、③請負やフリーランスの皆さんの不安定さ、補償の無さがすごく浮き彫りになったと思いまして、この間政府が言ってきた「多様なはたらき方」というものの本質がここに凝縮して現れたのではないかと考えています。

④最低賃金の低さ。休業補償を実際に計算すると4割になるという事例がこの間マスコミでも言われていますし、私たちのところへも相談があったのですが、その上限基準に最低賃金が一定反映しているということもあります。そういう最低賃金の低さという問題。また、エッセンシャル・ワーク、特に医療の現場がかなり関心を集めましたが、医療というと皆さんお医者さんや看護師さんをまず真っ先にイメージされますけれど、医療にはいろんな業種の人が関わっています。例えば病院にいる清掃の労働者。彼ら彼女らは、感染のリスクで言えばある意味院内でも一、二を争うぐらい高い業態であるにもかかわらず、直接雇用ではなく、賃金もほぼ最低賃金水準で働いているということで、やっぱりこういう問題が今回のコロナで私たちが改めて考えなければいけない一番大きな問題ではないかと思いました。

そして、この反貧困ネットワークの皆さんともぜひ共有していきたい課題ですけれども、⑤格差と貧困の実態があらためて浮き彫りになったことです。2009年の派遣村のときに、私たち、特に労働組合に関わる者は、非正規の皆さんや派遣労働者を中心にした労働者が家も職場も突然奪われて路上に放り出されるのを見て、「二度とこういうことを繰り返さない」という決意のもとに運動してきたと思うんです。それで一定の前進もたしかにあったと思います。しかし、あのときから今までで何を変えることができて、何を変えることができていなかったのかということを、このコロナ禍だからこそ、労働相談を通じてやはりもう一度見直して、反省も含めて今後の運動に生かしていかないといけないと考えています。

 

相談の業種ごとの特徴、概要など

 

 

①介護分野は、特にデイサービスが経営的に大きな影響を受けたという報告を受けています。特に、機能回復や機能維持という分野なので、すぐに緊急を要するということじゃないということで、利用を一気に制限するということがありました。そういう中で、1年契約だった職員が、「先の見通しが立たないから1カ月契約にして」と言われてサインしてしまった、というような労働相談がありました。

②ホテル関係でいきますと、やっぱりこれも一方的にどんどん通知をされていくと。補償については一切連絡がないと。ホテル関係には直接雇用の人もいますが、請負も含めて多様な業種の方が働いている職場ですので、情報が行き渡らなくて、「今後どうなるんだろう」という不安が増幅されたと思います。

あとは、③大型商業施設の閉鎖で、そこに直接雇用されている労働者ではなくて、テナントが休業するという場合に、テナントの経営者の皆さんも「私たちが休業を決めたことじゃない」と、「その某所が決めたことだからしょうがない」ということで、休業補償の支払いがしぶられるなどです。それから、有名なジンギスカン屋さんで、整理解雇が一方的に行われるとか、大手商業施設の中に入っているハンバーガーショップで「一週間に一回でも働いた人には休業補償が出せない」とか。笑ってしまうくらいありえない対応です。そういうトラブルが大型商業施設でも起きたということです。

④非正規公務の現場からも労働相談がけっこう来ました。「非正規の皆さんにも補償が一定ありますよ」という、人事院や各自治体、教育委員会からの通知が出ていたのにもかかわらず、なかなか非正規の方に情報が届かないという問題がありました。私たちの公務関係の労働組合もあるのですが、やっぱり、正規や組合員の方にはいち早く情報が共有されても、その先の非正規のところにはなかなか情報が伝わらないということで、不安な状況だったと思います。また、中間的な管理職の皆さんもよくわからない中で、こうした通知とは違う対応をしてしまうなどの齟齬もありました。特に、支援員の皆さんとか給食調理員とか、指定管理で働いている人は、時給や日給の働き方が多く、収入がただでさえ不安定なのに、コロナの中でさらに不安定さが加速増幅していったということがあります。

それから、先ほど⑤「密が魅力」の産業について言いましたが、スポーツジムなども、緊急事態宣言が明けても、なかなか経営の見通しが厳しいということで、事業の縮小や店舗の統廃合、労働条件の不利益変更が続々と言い渡されています。ここは、事業所に対する支援の拡充もそうですけど、そういう変更を労使でちゃんと話し合っていくという点で、労働組合づくりが必要だと思いました。

⑥コロナを理由としたハラスメントもあります。市外にどうしても移動しなきゃいけなくて移動した、あるいは、市外から面会に来られた方に会ったりすると、もう出勤停止を命じられる。「その間は自主待機扱いで給料もカット」と言われるということがありました。そういうことが公務職でもありました。あと、毎日の出社時の体温計測結果全従業員分を貼り出されるということで、「個人情報なのでやめて欲しい」という相談や、経営者の方がマスクの着用を拒否して、労働者の側が「ちゃんとつけて欲しい」と言うと「うるさい、いやなら辞めろ」と言われたという相談が来ました。

⑦休校にともなう休暇の問題ですが、「学校が休校になっても児童会館がやっているならそこに預ければいいじゃないか」ということで、「休暇の対象にできない」と会社に言われたという相談がありました。保護者からすると、感染対策として学校が休校になっているのに、それよりも「密」になる児童会館に行かせるということ自体がそもそもおかしいということで、相談がけっこうありました。

⑧補償・助成金のあり方に関する相談もありました。さきほどの休業補償にしても、金額がそもそも少ないという水準の問題もありますけど、やっぱり事業者・経営者にかけあっても、「うちは出さない」とか「できない」とかいうことで支払ってもらえない、という相談がたくさんありました。そういう意味では、「すみやかに」ということと「直接受け取れるようにして欲しい」という声が多数あって、ここはいろいろな働きかけをして具体的にはなってはきているんですけれど、そういう問題がありました。

当初、これは労働者/使用者に関わらず、制度上の、政策上の不備が実感として多くあったと思うのですが、そういう制度政策上の不備にたいする怒りが、現場で必死に頑張っている公務労働者へのバッシングに成り代わったりしてしまって、傷害が起きたりしています。一部知事がヒーローのように扱われたりしていましたけれど、「そうじゃないんじゃないの?」と思います。むしろ首長は、現場の公務労働者の実態や奮闘を記者会見などで積極的に発信していくべきではないかなとも感じました。

⑨高齢者や学生の皆さんからの労働相談もありました。休業すると直ちに困窮するということで、家賃の支払いもすぐに出来なくなってしまう事例もありました。これはやっぱり、もちろん働き方の問題もありますけれど、そもそも無年金も併せて低すぎる年金問題とか、あるいは高額な学費の問題でもあると思うので、そういう問題も今回改めて実感したところであります。

また、個別企業の責任は、それはそれとして追及していくことが大事だとは思いますが、そういう安くて流動的に使い捨てできる労働力を、中心的基幹的労働力にしていった、この産業構造とそれをもとにした社会保障のあり方を正していくということを、今回のコロナのことを通じて大いに共有していきたいと考えていました。

 

個別ケース事例

①フルタイムのパート、30代女性の方で、会社から「休業してくれ、6割補償します」と言われたが、母子家庭で、6割補償では生活が厳しいので、他のアルバイトを考えていると。就業規則上は副業が一応OKだと言われたそうなのですが、小学生の子どもがいるので、特別休暇の扱いにならないのかと会社に聞いても、「本社からの指示が無い」と言われて対応してもらえないと。さらに勤務時間も短縮されてしまった。生活していけない。ということで、当面は年休を活用しつつ、生活保護の利用なども検討していきましょうと対応しました。

②30代の男性、アルバイトで働いていた方。飲食店でアルバイトをしていたのですが、相談を受けた日の前日に、「明日から社員だけで営業する。今後のあなたのシフトは無くなりました」と突然言われたということで、「クビ」とは言われないんだけど、この後いつ仕事が入るのかわからない状態だと。「これまでは週6日で働いていたのだけど、会社に何らかの補償を求められないか?」という相談で、休業補償の支払いを求めましょうと対応しました。

こういうようなことがたくさんありまして、もちろん、労働組合に加入していただいて、直接交渉して解決した事例もありますが、今回に限っては、組合に加入していなくても、ちょっと電話しましょうということで、こちらのほうから会社に電話して、「なるべくトラブルになる前になんとかしてもらえないのか」という対応をしたケースもいくつかありました。普段はやらない、そういうこともやってきました。

 

質疑応答

 

川村 ありがとうございます。いずれも非常にリアルな話で勉強になりました。私も、派遣村をもう一度振り返ってみることが必要だと思っております。派遣村のときに言われていたさまざまな制度政策的な課題の解決が、どこまで実現したのか。今、私たちのゼミでも、リーマンショックそして派遣村の後に岩波書店から出されたブックレット『労働、社会保障政策の転換を――反貧困への提言』を読んでいますが、改めて当時の反貧困運動で、何が実現されたのか、何が課題として残されたのかを考えなければいけないと思っております。

ところで、ひとつ出口さんに質問なのですが、相談が4月には非常に増えて5~6月には減ったというようなお話が冒頭にあったかと思いますが、そういう理解でよろしいですか?

 

 

出口 そうですね。3~4月は集中して連日来ていましたが、5月の連休が明けてから、事業が一応再開した、動き出したとからかなと思いますが、私どものところに来たコロナ関連の相談件数は大きく減少しました。

 

 

川村 その背景としては、出口さんの理解では、世の中の経済活動が再開したということですかね。相談が潜在化しているというか、「本当は相談したいけどどこに行けばいいのかわかんない」とか、そういうわけではないという理解を一応されているわけですか?

 

 

出口 そういう母数がそもそも一定ありつつも、経済がまた働き出したということで、まずはそこに必死になっていくということなのかなと思います。事業自体が全部止まっていると、モヤモヤとするし、「どうしよう」という不安な気持ちもやっぱり増幅されていくからかなと思います。

 

 

川村 なるほど。私自身も、「休業補償がまだ出されていない」という相談を受けていて、それこそ小学校の休校措置に伴う休業補償制度ができましたけれども、事業主に申請してもらえずに困っている。そういう意味では、「すみやかに」「直接受けとれる」制度設計が必要だとおっしゃっていたことに非常に同感いたしました。

それから情報格差の問題ですね。非正規公務員に対して情報が行き渡っていないということ。非正規雇用問題の一つに日常的な情報の格差がありますよね。仕事に関する情報もそうだし、こういったさまざまな保護、制度に関するような情報もそう。そもそも日常的に情報が行き渡っていないわけですから、こういう新たな制度の話があったとしても情報が行き渡らないのは、ある意味当たり前と言えば当たり前ですけど。しかしそれは本当に是正されなければならないことだと思いました。

ちなみに、非正規公務員が使える制度というのは、民間労働者とは違うものが何かあるのでしょうか?

 

 

出口 そうですね。通達などを見ると、休業の取扱いもかなりプラスで、民間よりは「ちゃんと払いなさいよ」というふうになっているようです。

 

 

川村 なるほど、ありがとうございます。最後にもう一つ質問なのですが、組合に加入してもらわずにその場でパッと対応されたというように、今回は少し対応策を変えていたということですけど、例えば今回のコロナの問題で、組合員になってそのまま組合員を続けているとか、そういうケースというのはあんまりないですか?

 

 

出口 あんまりないですね。まだ継続案件がけっこうあるので。休業補償だけではなくて不利益変更と一体的に来ている事例もあるんですよ。あと事業所の閉鎖とか。そういうわけで、多くの案件が一発解決したというよりは、継続になっている案件が多いと思います。

 

 

川村 そうですか。利害関係が必ずしも一致しない相手と交渉して合意を作っていくということの重要性を、ちょうど授業で学生に話したところだったものですから、出口さんたちの取組みの重要性を改めて感じた次第です。

 

 

参加者B 井上さん〔当日のもう一人の講師である井上元美さん(北海道商工団体連合会事務局長)〕に一点お聞きします。事業主サイドのお話として、事業の継続のために持続化給付金という制度が出来たわけですが、先ほど出口さんのほうから休業補償の関係についても言及がありました。当初は、雇用を維持するということで、雇用調整助成金に相当期待をしていたところですけれども、この辺の制度の、事業主サイドからみた使い勝手はどんな感じでしょうか。持続化給付金と同様に申請が煩雑でおおよそ使える制度ではないという反応なのか、あるいはその制度を使うことによって事業主にとって不都合が生じるだとか、そういうことがあるのかどうかを一つ教えていただきたいです。

あわせて出口さんにも、会社の対応で、会社としての休業補償じゃなくて、「制度を使って云々」という説明がなされているのかどうか、その点についてお教えください。

 

 

井上 雇用調整助成金は、以前と比べれば申請書類が半分くらいになったということで、受けられる方もけっこういるという情報は入っています。ただ正直、我々地域の民商が扱う中小業者の中には、そもそも労働保険に加入していない業者もいます。雇用調整助成金は少なくとも労働保険に加入している、または労災の番号があるというような、労働者を雇うような状況だという前提のもとでの申請になるので、申請が難しい業者もいます。ただ本来は、さかのぼって、「実は雇用していました」というケースも含めて対応していますけども、なかなかそこまでやる事業主さんが現状あまりいません。

 

 

川村 確か今回、学生アルバイトなど雇用保険未加入の労働者〔雇用保険被保険者以外の者〕などにも使えると、範囲がだいぶ緩和されたというふうに理解をしているのですが、井上さんの今のお話だと、そもそも「雇用」自体していないようなケースが民商の会員さんでは大半なのでしょうか?

 

 

井上 大半ではありませんが、例えば飲食店でいえばパートで来ているような女性、ホステスさん、スタッフさんなどの短期的な従業員は、ほとんど雇用契約もなければ、正直、税金などの源泉徴収もやっていないような状況です。店に来てもらって給料一日幾ら、一時間幾らの形で、もう日払いのような所では、なかなかこういう制度を使えない。それから、雇用調整助成金はあくまで事業主が手続きをすることになりますので、事業主がどう判断するかにかかっています。逆に今は、労働者から申請できるような制度もできましたので、学生アルバイトの皆さんも、そちらのほうが使えるかもしれません。

 

 

川村 雇調金の問題といえば、先にまず休業手当を払って、その後でお金を受け取るから、手持ち資金がないような業者さんは大変だと、そういう理解をしていたのですが、井上さんの話を聞いていると、そもそも労務管理上の書類自体も整備がされていないような、中小零細の場合の難しさがあるのかなと思いました。出口さん、今のお話いかがでしょうか。

 

 

出口 こちらで経営者とやりとりした中での話をいくつか紹介しますと、一つは、当初ハローワークがパンク状態になっていたので、 ―札幌では3人の職員で対応していたそうです― 電話を受けても、当該の事業者に折り返しの電話をするのに一日半かかると。そういうような状況だったので、経営者の側からすると、「ぜんぜんダメじゃねえか、こんなの」と。また、ハローワークの電話業務がコールセンターに委託された後も、なかなかわかりやすく説明をしてもらえなかったということで、遠のいてしまったということもあったというのが事実で、そこは改善の余地があると思います。

もう一つは、飲食など、現金収入が主たる収入になっている事業形態の所では、休業自粛要請をされて、とにかく日銭がゼロの状態になってしまったものですから、休業補償を払いたいけど無理だ、と。来月に休業補償のお金が振り込まれるとしても、今月払わなきゃいけない家賃や固定費リース代はどうするの?と。そういう所については国が直接、労働者に払うような制度が必要だよねという理解になりました。基本的には事業主がちゃんと支払うべきだと思っていますが、そうも言っていられない事態もあったようだと受け止めていました。

 

 

川村 他にご質問はありませんか。

 

 

井上 われわれにも関わる問題なのですが、フリーランスの相談に関しての具体的な対応をお聞かせください。

 

 

出口 資料では「フリーランス」「請負」というふうに一概に表記したのですが、私たちの立場からすると、労働者性の有無も関わってくるので、明らかにこれは労働者性が無いよねというケースについては、「民商さんに相談してください」などと対応していたましたが、従属性が一定あるなど、労働者性があるケースについてはこちらで対応したという感じです。

特殊だったのは、公契約関連の所で、地区センターとか区民センターみたいな所でインストラクターや講師をやられている方です。委託を受けていて、内容については詳細に指示があるけれども働き方については裁量があるということもあり、しかし公的性格も強いということもあったりして、そのあたりの公契約関連の扱いを今後どう考えていくべきかというのが新しい課題だったと思っています。

 

 

川村 私もちょうどこの前の授業のなかで、労基法上の労働者と労働組合法上の労働者は違うという話をしました。ピアノのレッスンをやっている人たちが、この間たしか、労組法上の労働者として認められて、ヤマハ側との交渉ができるようになったと聞いているのですが、フリーランスの救済の仕方としては、労組法上の労働者性がある場合には、相手と交渉して補償をさせるというのがまず一つのルートとしてあって、他に、フリーランス扱いされているけれどもいわゆる労基法上の労働者に合致する場合には使える制度を案内するという、こういう二つのルートがあるのでしょうか。

 

 

出口 はい。そういう理解です。

 

 

川村 なるほど。それから、いわゆる指定管理者制度のもとでのインストラクターの方のお話が先ほどありましたけど、これは公的な、つまり自治体が発注している仕事だということで、それこそ我々が制定を目指している公契約条例の中での保護というのはコロナ下でできるものでしょうか。全国的に何か、そういう動きはありますか。

 

 

出口 そういう事例はまだ聞いていません。何かあればぜひ学びたいです。

 

 

川村 公契約条例は基本的に、国や自治体の発注で働いている人の賃金保障だけに目が行きがちですが、例えば、こういった事態のときに、そこで働いている労働者に、なんらかの保護をする網をかけられたらいいですよね。ちなみに、そのインストラクターの方々はどのように救済をされたのですか?

 

 

出口 今回は緊急の対応が必要で、今使える制度を、ということでしたから、事業主向けの補償制度を紹介しました。ただ、根本的には、例えばすでにワークショップの準備でフライヤーを刷って配っていて、「この経費どうしようね」という問題は、ちょっと市との交渉になるのかねぇ、というところで止まっているという感じでした。

 

 

川村 なるほど。やっぱりなんらかの形で発注側の自治体に関与してもらえるといいですよね。札幌市では、補助金を出して誘致しているコールセンターでクラスターが発生した際、クラスター対策をしたコールセンター事業者に対しては助成金、対策費を出すということになりましたよね。あれは公契約条例にも通底する非常に大事な取り組みだと思いました。この件では、さっぽろ青年ユニオンの皆さんが活躍されたそうですが、クラスター対策をするコールセンターの事業者が増えたとか、その後の情報は何か把握されていたりしますか?

 

 

出口 職場改善には一定程度取り組んでいると聞いていますが、一方で、休業補償などについては最低基準の範囲を超えていないと聞いています。

 

 

川村 そういう意味では、先ほどの、2008-09年の年越し派遣村以降に何が改善されて何が改善されなかったのかを考える際に、自治体の役割に焦点をあてて考えることが必要になりますね。では今日は、この辺で終了させていただきます。貴重なご報告をいただいた井上さん、出口さん、どうもありがとうございました。

 

 

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