中川喜征「「桐島組合やめるってよ」~組合100人に聞きました。 労働組合ネガティブアンケートより~」

労働組合はなくてはならない組織──労働組合の役員をしていると、その思いはひとしお。しかしながらその思いが組合員にちゃんと伝わっているかどうか、あるいは逆に、組合員の思いや生活状況などを組合役員が理解できているかどうかは、別に考えなければならない課題です。この投稿は、そんな課題に取り組んだ中川喜征さん(福祉保育労道本部)によるアンケート調査結果の報告です。どうぞお読みください。

「桐島組合やめるってよ」~福祉保育労20春闘労働学校 組合100人に聞きました。労働組合ネガティブアンケートより~

道労連執行委員 福祉保育労働組合 中川 喜征

全国福祉保育労働組合

全国福祉保育労働組合北海道地方本部

 

 

はじめに

厚生労働省が発表した「2021年労働組合基礎調査」によれば、単一労働組合の労働組合数は23,392 組合、労働組合員数は 1,007 万 8 千人で、前年に比べて労働組合数は 369 組合(1.6%)減、労働組合員数は 3 万 8 千人(0.4 %)減少しているとのことです。

北海道をみると、320,557人と前年より5,333人(1.6%)減少しており、労働組合数も2,874組合で、58組合(2.9%)減少しています。

減少に歯止めがかからない労働組合組織率。労働組合はオワコンなのか?

この記事では、コロナ禍で活動もままならない中、労働組合の組織運営の問題点などを見直すことを主たる目的に取り組んだ『労働組合活動ネガティブアンケート』の内容をご紹介し、組合活動について考えていきたいと思います。

なお、アンケート自体は、労働学校の目玉企画として、「クイズ100人に聞きました」のパロディとして始めたものです。あくまでも企画者である著者(中川)の感想を述べていくもので、組織として分析や検討したものではありません。参考程度に気楽に読んでいただければと思います。

 

調査の概要

■調査の目的:

組合員の意見を組合幹部が受け止める、見直すべき組織の在り方を考える、労働組合の必要性・役割を再確認することなどを目的に、労働学校の目玉企画として取り組みました。調査内容の設計は、十分に練られていません。

 

■調査の対象:

福祉保育労北海道地本の組合員を対象に、全道の分会から100人をチョイスしました。札幌圏/旭川地方/北見地方/函館地方/釧路地方それぞれの地域支部から、組織数で対象を案分し、種別(保育/障害福祉/介護/救護/手話通訳)を平均的に選出しました。

なお、年齢や組合歴は考慮されていません。

 

■調査の方法:Googleフォームを活用。

 

■調査の期間:2020年11月30日~12月15日。

 

質問の内容と結果

組合費はいくらが妥当ですか?

 

結果に対する感想

いくらの組合費が妥当と考えているかを率直に尋ねてみました。

回答率は100%でした。

「現行」という回答が15人ですが、回答者がいくら払っているかは今回の調査では尋ねていませんので、ここでの金額は不明です。

多いのは、2000円が18人、1000円が14人、そして、1500円と500円が各11人です。

少ない金額を求める組合員が多いと予想しましたが、自由記載からみても、それぞれ組合員の活動への関りによって回答の差が出ていると感じました。

例えば、上部団体への上納や会計監査報告まで内容を詳しく理解して回答されているもわかりませんが、『専従が維持できる金額』『活動に必要な額』と回答されている方などは、活動に一定の理解のある方の回答と思われます。

会計係が組合費を徴収する分会もあればチェックオフ(給料より天引きされる)分会もあり、そういった点でも違いは出てくると思います。

いずれにせよ、少ない金額を回答されたケースでは、引き続き、組合活動に理解をしてもらう努力が必要と感じています。

これまでの経験・肌感覚では、組合を辞める理由で、組合費を理由にする方は少なくないと感じます。組合費に見合った活動ができていて、恩恵があったり、必要性が理解できていれば、高いとは感じないのではないでしょうか。

組合を辞めたいと感じている組合員にとっては、組合費は負担でしかないことを認識する必要があります。

なお、職場内労組で構わないと思っているには、なおさら組合費は高いと感じられていると思います。

他の労働組合との比較や分析、わかりやすい組合費の設定、専従者の賃金設定なども含めて検討する必要性を感じています。

 

嫌な活動、苦手な活動はなんですか?(選択式。複数回答可)

・会議が長い

・会議が多い

・署名活動

・ビラ配り

・街頭宣伝

・政治的な活動

・集会、学習会

・要求書を出すこと

・団体交渉

・組合内の人間関係

・デモ

・アンケート

・カンパ

・自治体交渉

・地区労連、道労連の活動

・組織拡大

・統一行動

・上部組織

・レクレーション活動

・専従者

・配布物が多い

・役割を持ちたくない

・自由記載

 

 

結果に対する感想

組合員の率直な思いを把握しようと設けた設問です。

回答は、まず、政治的な活動、デモ、街頭宣伝に対する苦手意識が強いようで、人数は、41人、40人、39人です。

そして会議が長い(!)という回答が続きます。36人があげています。

(組合の)役割を持ちたくない、という回答も34人です。

この結果を、組合員の理解の不足とみるか、そもそも組合役員などによる適切なアプローチ・働きかけの不足、個々の組合員の力を引き出すことに失敗した結果とみるのかで、やるべきことは全く違ってきます。

例えば、人数は多くありませんが、団体交渉や要求書を出すことが嫌・苦手と回答した組合員がいることをどう考えるのか、役員専従としては反省することしきりです。

年代、経験に配慮した組合員一人ひとりにあったオルグはできているでしょうか。

押しつけの活動では、ジェネレーションギャップを埋めることはできません。

著者もその一人だと実感していますが、組合の歴史を学び、組合旗や労働歌に疑問を持たず、そして、義理と人情での組合活動を好む組合役員と、いわゆるZ世代とよばれる若者・組合員とでは、価値観も違うでしょう。一方通行の活動では、理解してくれるとは思えません。

年間スケジュールを淡々とこなす。活動の総括も方針も例年通りでは、こういった結果になるのは必然です。

約束の時間を過ぎても、終わる気配のない集会、何のために集まっているのかわからない「会議のための会議」、ジェンダー平等への配慮がされていない会議の時間帯設定など、改める必要性を感じています。

役員専従として猛省を迫られる結果です。

 

会議が長いと回答した人にお聞きします。妥当な時間と回数をお答えください。

結果に対する感想

これも経験からの感想でしかありませんが、組合に入ると忙しい、自分の時間が無くなるという声は少なくありません。

やれ学習会だ、デモだ、定例の執行委員会に四役会議に、地区労連の会議だ、などなど──これらの役割を一部の役員が担っていることも多く、その個人に頼ってしまうことも労働組合あるあるだと思います。

あわせて、会議の質や会議における提案側の姿勢を改善する必要も感じています。

時間配分や議題の整理、議論すべき内容を明確に提起して、有意義な会議にするための工夫が必要です。

最近では、話しやすい雰囲気づくりや気持ちを切り替えるためのチェックイン・チェックアウト(会議などの話し合いを始める・終えるときに、気持ちを切り替えるために全員が一言ずつ話す時間のこと)を採用するなど、工夫された会議も増えてきましたが、相変わらず予定時間内に終わらない会議も少なくないと感じています。

役員が仕切るトップダウンの会議にせず、グループワークやパネルディスカッションなど内容にあわせた取り組み、参加者一人ひとりのエネルギーを引き出す工夫が必要です。

 

組織変革の必要性

冒頭に紹介した厚生労働省「労働組合基礎調査」の結果と同じく、残念ながら、福祉保育労北海道地本も組織の減少が続いています。

労働相談から組合を新規に結成しても、分会の消滅や組合員の脱退に歯止めがかかっていません。コロナ禍で思うような活動が出来ていないことも、その理由の一つとなっています。

だからこそ、コロナ禍での労働組合、これまでの活動の見直しが必要だと強調したいと思います。

組合を辞める理由は、辞めたいからであって、それを正当化するために、お金の問題を出してみたり「うちの職場はいい職場だから、労働組合の必要性がない」などと、理由を後付けしている気がします。

今回取り組んだアンケートからでも、そういった考えが垣間見えました。

辞めたい、と思わせてしまう背景に何があるのかをしっかり検証する必要があります。

 

このネガティブアンケートが、組合脱退を後押ししてしまう可能性もありました。

しかしながら、組合を必要としている人が少なからずいることもわかりました。

一人ひとりの組合員と向き合い、思いを共有する。嫌だ・苦手だと回答される背景には何があるのか、適切な働きかけなどはできているか、などの分析も必要ではないでしょうか。

必要であれば組織の在り方も変えていく大胆かつ柔軟な対応も求められます。さらには、産別の在り方、地域組織のナショナルセンター在り方にも言及していく必要性があると感じています。

あくまで、地方組織の一役員が所属組合内でのアンケートから感じた感想でしかありませんが…

 

自虐をバネにして頑張ります。

 

 

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