毎月の生活がやっとの低賃金。
先の見通しが立たない不安定な雇用。
いつまでたってもなくならない過労死・自死。
現場からは、悲鳴ともいえるようなSOSが労働相談を通じて連日のように寄せられています。
労働者の雇用と生活を守るため、何とか現状を変えようと労働組合でがんばっているみなさんへのエールと、自分自身の経験や挑戦で学び気がついたこと、これからの課題などについてのあれこれを「コラム」として書か出していきます。
ボディビルには「No Pain.No Gain.」という有名な格言があります。「おじさんの、おじさんによる、おじさんのための労組」などとも揶揄されるように、とても保守的になっている労働組合の現状を変えていくためには、懐古主義や慣行を見直し、新しいことに積極的に挑戦していく環境にしていくことが必要だと感じています。
第1回目は、「トレーニング」の重要性についての記事です。
学習と実践型トレーニングを学ぶ機会が保障されているか
労働組合において最も重要なことは、「現場の声」がしっかりと活かされているか、「現場のパワー」が発揮されているか、にあると考えます。
「コミュニティ・オーガナイジング」の良さは終始、この視点が貫かれていることです。組織の強化・拡大の大前提となる組織活性化について、道労連での教訓を報告します。
現場のパワーを発揮できるようにするためには、自分たちを取り巻く状況を理解するために情勢や制度・仕組みを知ること、どうすればそれを改善できるのかそのための権利や方法を学ぶこと、実際に行動へ踏み出せるようになるためのトレーニング(ワークショップ、不当労働行為対応、摸擬団交など)を行うこと、この3点を系統的に取り組んでいくことが必要です。
労働組合には「知識の詰め込み」としての学習講座はたくさんありますが、実際にどのように対話したり、アクションをつくっていくのかという練習の場がありません。ボディビルで言えば、ウェイトトレーニングをまったくせず、本や動画を見たり、誰かの話を聞いたりするだけでは、筋肉は1ミリも成長しません。労働組合の活動家が増えないというのは、トレーニングの場を作らずに怠ってきた当然の帰結です。
これまでの活動の「もやもや」が晴れて明瞭になり必要性を実感
私自身も労働組合の専従になってから、知識を増やしたり、交流を広げるための学習の場はたくさんありましたが、「実践的なトレーニング」を重ねるための機会は残念ながら皆無でした。
労働組合の結成通告や、はじめての団体交渉の時などは、緊張しすぎて吐きそうでした。事前に、摸擬的なワークショップを実施したり、想定されるケースについての演習を行っておくことができれば、もっと余裕をもって行動することができたと思います。
労働組合にありがちな「その人にしか再現できない」というか職人的・徒弟制度的なやり方ではなく、段階を経ることで誰もが一定の力量をつけることができる学習・トレーニングのプログラムがあってしかるべきです。それぞれの組織にそれがあるかどうかを見ると、労働組合が次世代・活動家育成という根幹に関わる課題について、どの程度位置づけているのかがわかります。
道労連では、わくわく講座(単産で受講生組織)や一部産別による労働学校的な学習に加えて、全労連「ゆにきゃん」やコミュニティ・オーガナイジングを活用したワークショップ(昨年延べ118人)、執行委員会の運営方法や摸擬団交、ストライキ・団体行動配置のやり方などの「ユニオン・ジム」(昨年延べ64人)という実践型トレーニング、さらに幹部役員向けの「幹部セミナー」(昨年延べ206人)など、段階と目的に応じた学習・トレーニングを導入しています。まだまだ試行錯誤しながら進めている状況ですが、継続的に取り組む必要性を共有しています。
とくに、「ゆにきゃん」やコミュニティ・オーガナイジングに参加した人たちは、「各役員が何となくやってる、でもやらされてる感は無い、その大事にしているものを『セルフ』を語ることで、これまでより距離が近くなったと感じた」「組織を動かして運動をすることを抽象的でなく具体的に捉えることができた」など、これまでの活動の「もやもや」が晴れて明瞭になり、必要性を実感しています。
みなさんの組織では、学習と実践型トレーニングを学ぶ機会が保障されていますか?ぜひ、これを機会に見直してほしいと思います。
筆者:北海道労働組合総連合 副議長 出口 憲次
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