佐藤誠一「スーパー販売員の「うつ病」、11年経過し会社と和解」

幸い労災はスムーズに認定されたものの、過重労働によるうつ病の発症と会社側理不尽な対応で11年もの長きに及ぶたたかいを余儀なくされ、今年(2022年)9月にようやく和解解決となった事例について、働く人びとのいのちと健康をまもる北海道センター理事(前事務局長)である佐藤誠一さんが報告をします。どうぞお読みください。

 

 

2011年、スーパーマーケットの食品売り場に勤務していたAさん(当時33歳)は、連日の「12時間勤務」と土日も休めない状態で体調悪化し、精神科で休業を指示されましたが、会社は休みを与えず「うつ病」を発症し病欠となりました。その後、いの健道センターに相談し、2012年3月労災申請し、9月に認定されました。

以後、加入した労働組合を通して、会社に謝罪と安全配慮義務違反による損害賠償を求めて団体交渉を行いましたが拒否され、病状も好転しない中、苦悩の長い日々を過ごしました。ようやく民事裁判を提訴したのは2019年7月でした。

裁判で、会社は「うつ病」の原因はAさん個人にあるとして責任を全否定し、裁判所の和解提案も拒否しました。21年11月の証人尋問で、Aさんは「正職員が少なく、増員を求めたのに拒否され繁忙期の対応が大変だった。体調に異変があってもすぐに休めなかった」と証言し、当時の店長はAさんの長時間労働に対して「本人の業務配分に問題がある」とし、医師の診断書を無視した件については責任を回避する証言に終始しました。

22年2月札幌地裁は会社の安全配慮義務違反を全面的に認め、Aさんは勝訴しました。しかし会社は控訴し、全面的に争うとしましたが、高裁から和解提案があり、結果として「会社は1審判決を上回る解決金を支払う事。労働契約は22年7月で会社都合による合意解約で終了すること」となり勝利和解による解決に至りました。

しかし、会社はAさんが労災認定となった、ずさんな労働時間管理に対する反省が示されないなど問題を残しています。Aさんは「誰でもモノを言いやすい職場になるよう職場の皆さんの動きに期待したい」と述べています。

 

 

 

 

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