内部告発は労働組合とともに

鈴木一「内部告発は労働組合とともに」

内部告発は労働組合とともに

会社が法律違反をしている。誰かが声を上げないと止まらない。しかしその主張がどれほど正しくても、一人で経営者に立ち向かっていくことは、虎やライオンを棒で突くのと同じでとても危険なことだ。公益通報者保護法や高齢者虐待防止法は、通報者への不利益な取り扱いを禁じているが、ほとんど効果がないのが実情だ。

事例2で紹介しているとおり、裁判所が4度も虐待を認定したケースでさえ、経営者が内部告発者を訴えたとしても、それが裁判の形態を装っている以上、裁判所はその「報復」を合法と認定している。これに耐えて闘えるのは労働組合だけだ。

つい最近も、経営者に一人で「残業代を払え」と迫った勇気ある労働者が、不当解雇されるという事件があった(⇒残業代請求したら解雇!? 団交で解雇撤回!)。幸い、その労働者はすぐに地域労組に駆け込み、解雇を撤回させることに成功したが、危ういところだった。

札幌地域労組は過去の闘いで、次のような内部告発をし、経営者を追い詰めた。(一)

事例1.理事長のワイロ事件

社会福祉法人の理事長が、介護施設建設(約85%が国などからの補助金)の際に建設業者から数千万円のワイロを受け取っていた。組合を結成し、不正の事実を新聞・テレビなどのマスコミに公表、理事会を総辞職に追い込んだ。

 

事例2.介護施設の虐待隠蔽事件

事例2介護施設における虐待事件。施設長が虐待(複数)を隠蔽しようとしたため、組合は市へ内部告発した。経営者は「虐待でっち上げ」で名誉が棄損されたと主張して、組合と2名の内部告発者に対し1千万円の損害賠償を求め提訴。地裁→高裁→最高裁→高裁(差し戻し)と4つの裁判全てで虐待の事実が認定され、2名の内部告発者の行為は「入所者を守るためにしたもので、何ら非難されるべき点はない(札幌高裁判決)」とされた。約6年かかった裁判闘争で、地域労組は内部告発者を支えた。

 

事例3.社会福祉法人の不正経理事件

社会福祉法人の理事長による1億円横領事件。施設の水道光熱費の支払いが困難となったことをきっかけに、法人の事務員が不正を突き止める。相談を受けた地域労組は、組合結成直後の団交で理事長に辞任を迫る。組合から内部告発を受けた市は、施設を特別監査し、横領した1億円を戻させ理事長も辞任させた。この内部告発がなければ、法人は間違いなく経営破綻していた。

 

事例4.残業代不払い事件

金属加工の会社で「固定残業制度」を口実とした残業代不払い。組合を結成し団交を重ね24時間ストで残業代支払いを迫ったが、会社側は「未払い残業は無い」ことを主張し組合員らを提訴(債務不存在確認訴訟)。組合側はこれに対し、数千万円の未払い残業代を求め反対に会社を訴える。敗訴が確実であることを悟った会社は弁護士を解任、未払い残業代の清算に応じ和解となる。その後、社長一族も退陣し、固定残業制は廃止となる。働いただけ残業代が支給されるようになった現在、組合員の年収は約200万円増えたという。

内部告発は、団結権を使う労働組合と一緒にやってこそ、効果を生む。

万が一の経営者からの報復も想定内だ。地域労組は全力で内部告発者を守る!

 

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