井上元美「中小業者におけるコロナ感染の影響(2020年度反貧困ネット北海道オンライン連続学習会)」

2009年に設立された反貧困ネット北海道では、生活相談や貧困問題に関する学習・啓発など様々な活動に取り組んできました。2020年は新型コロナウイルスの感染で活動が制約される中、反貧困ネット北海道を構成する諸団体(運営会員)が、それぞれの現場でどのような事態に直面しているのか、またそうした中でどのような活動に取り組んでおられるのか、共有することを目的に、連続学習会をオンラインで、6回にわたって開催してきました。事務局の責任でまとめた全記録は、反貧困ネット北海道のウェブサイトで読むことができます。

以下はそのうちの、2020年7月14日に開催された第2回目の学習会で講師を務められた、井上元美さん(北海道商工団体連合会事務局長)のご報告です。内容は当時の状況に基づくものです。司会は、川村雅則(北海学園大学、当団体副代表)です。/(反貧困ネット北海道事務局)

 

 

紹介いただきました、北海道商工団体連合会の井上です。

今日は「中小業者におけるコロナ感染の影響」ということをテーマにお話しするということで、こちらに寄せられた情報をまとめたものを報告しようと思います。私の所は、業者さんの相談を直接受ける所では無いものですから、特に札幌の四つの民商が行っているそれぞれの相談活動の状況を教えていただいたものをまとめました。

 

(1)コロナ感染の影響による業種別の状況

帝国データバンクの調べで、6月末時点で、すでに全国でコロナの関係での倒産が300件にのぼったという記事がありました。その300件のうち、東京都が69件、大阪府が29件、そして北海道が21件という報告です。

ご存知のように、北海道は、全国に先がけて非常事態宣言を出したということもあり、早い所では3月末くらいから自粛モードに入って、特に飲食店などは3月末から ―全国の非常事態宣言が解除されたのが5月末ですから― 丸2カ月ぐらい自粛休業になり、相当ダメージは大きいと思います。配布資料には書いていませんが、一番初めの全国に先駆けてのコロナの倒産も北海道だったのです。栗山町の、コロッケや惣菜関係を販売していた事業者だったのですが、コロナによってイベントが出来なくなり、イベントをやったにしても、外国人観光客のインバウンドが見込めないということで、一気に経営が成り立たなくなった、ということでした。

 

 

また業種別では、飲食店が46件、ホテル・旅館が45件。やっぱり、外需に頼るような所だとか、または内需にしても本当に地域に密着するような商店や飲食店が、大きなダメージを受けていると言えると思います。そして、アパレル小売店、衣類の関係の小売店、食品卸が、倒産になってしまっている。北海道においても、おそらくそういった業種が中心に厳しい状況になっていると思いますし、ここには北海道での倒産が21件と書いてありますけれども、これはあくまでも帝国データバンクが調べている内容なので、いわゆる倒産、つまり、金融機関や問屋さん、取引関係の事業所に、何らかの負債があって、やむなく倒産をせざるを得ず、倒産の法的手続きを行った所の調べに、おそらく限られています。ですから、この「21件」に乗っからないような形で、まだまだ多くの中小企業の、例えば廃業だとか事業の停止が埋もれているのではないかと思います。全道の民商の関係からも、「商売をやめました」というような報告が上がってきています。

 

(2)道内におけるコロナ感染の影響による業種別の状況

小売業は当然のことながら客足が低下しました。結局、店に足が向かない。緊急事態宣言があって、一般的な経済活動が止まってしまったということなので、かなり厳しいことになったと思います。一方で、食料品を扱っている所で、テイクアウトや出前的なものに転換した所は売上が微増したという報告があったようですが、多くは、それだけでは商売が成り立たないということもあり、かなり厳しい状況だったと思います。

結局、飲食店が営業をしないということは、そこにまつわる卸先だとか、酒屋さんとか、そういった所も当然ながら商売の動きが止まってしまいますので、卸分が相当減少しているということです。また、特徴的なのが、作業服販売業です。中国から物が入らなくなり、売れるものが無くなってしまいました。実は、この衣料品だけではなくて、建設業界における資材の仕入れ関係も、相当な部分を中国からの輸入に頼っていました。一時的に材料が仕入れられなくて、完成させられない、引き渡しができない状況になって、建設関係のほうにも大きなダメージがあったと聞いています。

飲食店ですが、先ほども説明したように、北海道が休業を要請した期間、つまり約2カ月は、収入がゼロ。全道の飲食店に休業要請がかかりましたので、相当大きなダメージになったと思いますし、緊急事態宣言が解除になった6月以降にも、お客さんが戻ったかというと、まだ戻っていません。そういう意味では依然として大きな影響が出ているということになります。

製造業ですが、これも結局、工場がストップしましたし、自動車の修理分野や家具製造でも、部品などを中国からの輸入にけっこう依存していることもあって、特に自動車の部品関係では、電子部品の多くが中国からの輸入に頼っていたので、納車ができないという話がありました。ちょうどこの3、4月というのは車の入れ替え時期なのですが、ここがほぼ商売にならなかったと言われています。

運送業では、Amazonやテイクアウトなどの宅配は、人々がそれに頼らざるを得なかったため、その分の仕事量は増加しましたけれども、生鮮食料などの物の卸先が休みであるために、こういったものを中心として運送している所は大きく減少しているということです。

理美容業は、卒業・入学シーズンを逃したこともありますし、特に我々の扱っている全道の会員層の理美容業は、どちらかといえば年配の方たちが営業をしている。そして、そういう方たちのお客さんもどちらかというと年配の方ということもあって、家から出て来なくなりましたので、緊急事態宣言とほとんど同時に、スナックなどの店舗と同じように結局売上の減少になったということです。残念ながら理美容業というのは、北海道として要請した休業に対する給付金の対象になっていません。ただ単に「お客さんが来なかった」という扱いなので、厳しい状況です。後ほど説明しますが国が出している持続化給付金のほうは対象なので、その部分だけの申請ということになっています。

建設業の関係ですが、公共工事などが一時ストップになりましたし、個人住宅の改修工事も結局、途中で延期やキャンセルという形になりました。また、工事の受注がすでに決まっていた所も、やはりお客さんのほうから、「今急いでやらなくていいから、コロナがおさまってから工事に入りたい」と延期の話が出て、なかなか予定通りに工事が進まないという状況がありました。また、先ほども申しましたように、中国からの輸入資材が入ってこないということもあります。

その他の業種ですが、無認可保育所、整骨院…要するに、集客をするようなところがほぼダメ、というようなことになっています。旅行代理店は、緊急事態宣言前後からキャンセルが相次いで、その対応に追われたと。その後の売上がほぼ無いような状況だということで、非常に苦慮していました。

まだ細かく言えば色々あるのですが、以上が我々のほうで聞いている、およその中小業者の実態の報告となります。

 

(3)「持続化給付金」について

持続化給付金は国が打ち出した緊急経済対策ですが、例えば緊急事態宣言が出た4月から5月の間の1カ月の売上が、昨年の4月か5月の売上から見て50%以上減少していれば、法人では200万円、個人では100万円の給付が行われます。これはかなり多くの事業者が、特に先ほど述べたような業種では50%以上の売上減少がほぼ間違いなくありますので、皆さんこの給付に申請をしています。

ところでこの持続化給付金の事務を経済産業省が一括で外注をしています。それが一般社団法人サービスデザインという会社なのですが、このサービスデザイン推進協議会の中には、㈱電通含めて、確か6社ぐらいがその組織としてあって、その下部組織の一番の中枢である協議会から丸投げされたと。そして、㈱電通のグループ会社を経て多くの企業に外注し、千人以上を臨時に雇用して申請事務を行っています― 最終的には二千人近くも申請事務として雇用したと言われています。

ところが、この申請はすべてWEB申請となっていまして、申請に必要な書類はすべてメールで送るのです。例えば確定申告一枚にしても、デジカメで撮って、データ化して、それをメールに貼り付けて送る。そして、今年の売上の帳簿などもすべて、写真をデジカメで撮って、それを貼り付けたメールを送るという作業が必要でした。

 

「持続化給付金」の問題点

 

申請書類として「こういったものを送ってくれ」という項目が明確になっていないという問題がありました。そして、申請後に、「書類不備ですよ」というメールが返ってきてですね、それに対応しなければならないのです。だけれども、どの書類の何が不備として扱われているのかがまったくわからない状況になっていて、何度も送り返す ―10回も20回も送り返したという人もいます― そういう状況が相次ぎました。また、IT環境が無い人もやはりいます。特にご高齢の方がこの申請をするのには、相当無理が生じています。持続化給付金は、完全にWEBでの申請しかできない、郵送とか窓口での申請ができないものですから、申請したくてもできない業者がまだまだいると思います。また、いつ給付になるのかが判断できないためにですね、申請してもすぐにはお金にならないということもあって、実際には資金繰りの役に立たないということもありました。

それから、細かいところで言えば、「運転免許証の表裏のコピー」が必要ということで、一枚の用紙に両面をコピーして添付して送ったら、「不備」と言われたということがありました。それから通帳のコピーの「不備」扱い。通帳はたいてい、表と、それから裏の開いた所の両方に名前や口座番号が入っていますが、金融機関によっては、表の記載は名前と屋号、裏の記載は名前のみの通帳を発行しています。そのような通帳の表裏のコピーを申請で出したところ、「表と裏が合っていない」ということで「不備」になってしまったということです。

また、確定申告には個人も法人も白色申告と青色申告がありますが、最悪なのは、この二種類の申告のうち白色で申告している事業者に対して、青色の決算書を求めるなどという、我々にとってはまったく「ド素人」的な判断によっての「不備」扱い、こういったことが起こりました。

それから、今新たに、今年開業した法人または個人 ―フリーランスの方々も含みます― この方々も持続化給付金の対象になったのですが、しかし、この方々が申し込むためには、開業しているのかどうかも含めて、開業後に収入が確認された、また、開業後に一旦収入があったのがコロナの期間で無くなったというふうなことを証明するために、税理士のサインが要るということになっています。ところが税理士に頼めば当然費用がかかりますし、そもそも本当に開業しているのか、売上があったのかどうか、これからあるのかどうかもわからない人に対して、税理士の責任においてサインをしてくれる人はなかなかいないのです。実際、とある地域では、そこで一番大きな会計事務所にサインをお願いしたところ、「いくらお金を積まれてもうちではやれません。まったく責任が取れない。」というふうなことを言われて、申請できなかったといいます。

これから国の支援の第二弾として、家賃補助(家賃支援給付金)というのが、今日詳細が出て、受付が始まります。これも同じくインターネット申請になっていまして、また相当な混乱が予想されます。こうしたことを今、各民商では相談を受けていますけれど、いずれにしてもかなり大変な状況がうかがえます。

 

「持続化給付金」への改善要望

これらの問題に対して我々として改善の要望を出しました。少なくとも、サポート会場というのが実際に設けられたのですけども、これは直接の申請窓口ではありません。あくまでも、インターネット環境のない人がその会場に行くと、インターネット申請の手続きのお手伝いをしてもらえるというだけです。結局そういうサポート会場にしても、実際のところ、札幌では1ヶ所しかありません。これだけ市内に多くの事業者を抱えながら1ヶ所だけというのはさすがに厳しいので、少なくとも各区に設置して欲しいというのが、要望であがっています。

それから、持続化給付金申請の売上の実績の要件が、先ほど言ったように、「1カ月で50%の減少」というものなのですが、これに引っかからない人、対象にならない人が結構多かったと聞いています。今度の家賃補助では、「3カ月間で30%の減少」というふうに要件が多少緩和されましたけれども、持続化給付金についても同様の緩和が求められています。持続化給付金のほうは、来年の1月15日までが申請期間になっていますので、その間にまだまだ改善するべき面があると思います。

 

(4)各種租税の「減免制度」「納税猶予制度」について

各種租税の減免、納税猶予も使いながら、事業の継続を進めなければならないと思っています。今回、国民健康保険料が、前年の売上の同月比で30%以上の減少をもって、最高で全額が免除となります。また国税も含めた住民税についても納税猶予がありますし、住民税は地方によっては減免制度も設けていますので、そうしたものも有効に使って乗り切るというふうに進めていきたいと思います。

問題点をあげます。実はこの国保の減免は、各市町村で条例があり、それに準じたものになっています。札幌市では、1カ月ではなく3カ月分の売上を比率として見るということなので、他の市町村から見ると、条件のハードルがじゃっかん高い。我々としては「1カ月でいいだろう」という申入れをしましたけれど、結局札幌市は、3カ月分という形で書類を発送しています。後から、「1カ月2カ月でも相談に乗る」という話にはなりましたけど、基本的には札幌市は3カ月だと。

また、前年度の所得金額がゼロ以下、マイナスの事業者は、国が示した減免額算出の計算式に当てはめると、減額の金額が出てきません。よって、前年度の所得がゼロ以下やマイナスの人は今回減免の対象になりません。おそらくこういう方々はそもそも送付された納付書自体が一番最低限の7割減免のものですけれども、それにしても数千円、数万円が出ていきます。一方ではコロナの減免で結局ゼロになる人もいるわけですから、そこの公平感が取られていないという状況があります。そこの改善を今後とも求めていきたいなと思います。

 

(5)今後の課題と要望

 

 

先ほどもお話ししたように、このままでいけば、今はこれらの給付金などの申し込みは一息ついていますけども、ただ実際に景気が回復する兆しがまったくありませんので、今回受けた給付なども底をついて、いずれは大変な状況がうまれてくる。そうなれば、国の支援も第三弾、第四弾というものが必要になってくると思います。その時にはやはり業種の選別をせずに、全事業者が受けられるような、そういった制度にしていくことが非常に大切になると思います。

そして、昨年10月に消費税が10%に引き上げられたこと、これがやっぱり今の中小業者の一番の苦しいところであって、そこにさらに追い打ちをかけるような形でのコロナウイルスの影響ですから、本当に経済支援だとか景気を回復するというつもりがあるのなら、まずこの消費税を引き下げることが、今の業者にとって、景気回復、事業の継続に有効な手段だというふうに思って、引き続き動きたいと思っております。こちらからは以上になります。

 

 

川村 ありがとうございました。私も、アルバイト先の経営の厳しさなどを学生からよく聞いてはいますが、井上さんの報告前半では、今回のコロナの影響がどのように出ていたのか、業種ごとに、非常にわかりやすいご説明をいただきました。続く後半では、困難を抱えた事業者に対していくつかの制度がありながらも現場レベルでは制度の申請受付の段階でのさまざまな問題があるということでした。書類とかも全部、「写メ」で申請するのですね。あるいはPDFにして送ったりしている所もあるのでしょうけれど、そうは言ってもすべての業者さんがそういうことに対応できるわけでもありません。そしてまた、業種によって救われる/救われないという差があります。私も、自分が行っている床屋さんから話を聞いていましたけども、休業要請の給付金の対象にならない所もあります。

まず私からお聞きしたいのですが、持続化給付金、これは例の㈱電通の丸投げ問題のところに非常に焦点が当たっておりまして、このサービスデザイン推進協議会とは何者なのだろうということで、私も非常に関心を持って報道を見ていましたけれども、それはともかく、給付金のほうは、申請をした事業者さんにはだいたいもう行き渡っているというふうに理解をしてよろしいでしょうか?

 

 

井上 そうですね。今はだいたいのところまで行き渡ったと思います。それでもまだ70~80%ぐらいだというふうに聞いています。

 

 

川村 わかりました。それからもう一つ、この家賃補助というのは、まだ始まっていなかったのですね。これから、ということですね?

 

 

井上 はい。概要は今月初めに出たのですが申し込み方法の詳細の公開やネット受付は今日から始まっていますね。

 

 

川村 なるほど。そして、先ほどのお話では、持続化給付金のほうは「50%以上の売上の減」に対して、家賃補助のほうは、それがじゃっかん緩和されて「3カ月で30%減」。こういう違いが少しあるのですね。

 

 

井上 そうですね。ただ、基本はやっぱり「1カ月50%の減少」となります。

 

 

川村 なるほど。50%減というのは、どのような業種や規模の事業者さんであっても、変な言い方ですが、わりと当たり前に見られると考えてよろしいのでしょうか?

 

 

井上 はい。今回の、例えばその道の要請からすると、お酒を提供するお店は完全に休業自粛を要請されて売上が無くなったということがありますけれども、一方で、例えば食堂関係は、基本的にお酒を提供しなければ別に営業をしてもいいということで、休業要請の対象になっていませんでした。それで、そういう食堂関係の所は、結局のところ、営業を続けるしかなかったと思いますので、お客さんがなかなか入ってこない中でも、基本的には営業を継続していましたね。ですから、50%に到達しているかどうかちょっと微妙な所もありますね。

 

 

川村 確かに、学生の話を聞いていると、お客さんの減少でバイトもなくなって休業手当の支給問題が課題になっている学生がいる一方で、「私のアルバイト先はけっこう忙しいです」と言う学生もいて、あんまり暇になっていない所もあるようです。その場合には「感染に気をつけよう」という別の課題があるのですが。

ともあれ、売上50%減のハードルというのがあるのですね。それから、頑張って少しでも収入を増やそうとすると逆に給付の対象にならなくなってくるという矛盾もありますよね。テイクアウトなどで「少しでも」と頑張ったら逆に対象にならないとか。

さて、皆さんのほうからは質問等ありませんか?事業者の方々の困窮について聞く機会はあまり無いと思いますので、この機会にぜひ。

 

 

出口 道労連の出口です。井上さん、貴重な報告をありがとうございました。2点ほど質問があります。たしか神奈川の横須賀だったと思いますが、各種の業者向けの融資などについて、帳簿や書類が無くても、メモでも受け付けるということをやっていて、「これはとってもいい制度だなぁ」と思っていました。そういう取組みが他の自治体などでももしあるようなら教えていただければというのが1点目です。

2点目ですが、ライブハウスやクラブの事業者の皆さんと一緒に、支援・補償を求めるアクションをやっていたのですが、そこで ―他にスポーツジムなどもそうだと思いますが― いわゆる「密」になることがその産業・事業の魅力そのものである業態について、例えば100人が入るような規模のところでソーシャルディスタンスを取ると、5人しか入らないということがあります。こうなるともはやライブではないし、経営としても成り立たない、そういう問題があると思います。感染防止の点での業界としてのガイドラインを大手が中心になって作っているようですが、中小事業者の規模になると、そのガイドラインを守ると商売が成り立たなくなるという状況もあります。そういう問題が他の産業や業種でも、もし起きていれば教えていただければと思います。以上2点です。

 

 

井上 融資の関係ですが、北海道においても、融資の条件緩和がそれなりにありまして、特に、国が融資をする政策金融公庫の関係では、政策金融公庫の融資の実績がその時点であれば、ほぼ電話だけで審査がオッケーになるということもありました。

ただやっぱり、今回のコロナに関係して初めて融資を受けたいということに関しては、やはり何らかの審査はあります。それでも通常に比して、条件が相当緩和されたと聞いています。一方で、一般的な金融機関から受ける融資は保証協会が付く融資なのですが、やはりその保証協会の審査に当てはめることになるために、過去に保証協会への事故などがある所は、依然として融資を受けられていないような状況でもあります。自治体がいくら「こういう融資を作りました」と言っても、最終的には金融機関の審査や保証機関の審査がありますので、そこはそんなに大きく変わってなかったのかなという感じがあります。先ほどの国の政策金融公庫のほうは、条件が相当よかったということもあって、一時、審査待ちが150件、200件…もっとあったかな、1000件単位で審査待ちがあったというふうに聞いています。

それから、ライブハウス含めた飲食店の営業に関して、先日の会議の中で出た話で、それこそライブハウスに来て演奏をしてお金をもらうような、そういったいわゆるフリーランス的な業者さんがおられて、そうした方がライブハウスの休業の影響を直に受けて減収したと。今は緊急事態宣言が解除になって再開していますけれども、お客さんとの間にはシールドみたいなのが貼ってあって、お客さんも、そこは本来ならダンスホール的な所なのですが、基本的にダンスは禁止というような状況になっているようです。ですから、営業がなかなか厳しいですし、営業時間も当然短縮されているということで、厳しいなと思っています。

実は、今回のコロナに関して新しくできた北海道の制度のなかに、この業界に対する支援策が出されていますけれども、この支援策は、ライブハウスやイベント関係の業者の組合的な所が感染防止のガイドラインを作り、そのガイドラインに従うことを条件として、一社に対して幾らの助成金を出すというものです。しかし残念ながら、そういったガイドラインが組合でまだ作成されていなかった。これはガイドラインが作成されないとまったく機能しない制度なので、残念なのですが、それを作って実行したという例はまだありません。しかも、助成金の金額もけっこう少ないものですから、その企業を助けるつもりが自治体にあるのかどうか、ちょっと疑問視しています。

確かにソーシャルディスタンスだとかそういったことをやりながら営業するというのは相当大変ですので、やはりその業者さんが継続して感染対策をやるには何らかの支援策が必要になってくると思います。その支援策として、お金はもちろん必要ですれけども、今までのような業態で進めること自体が難しく、ちょっと我々も今模索しているというか、なかなかうまいアイデアが出てこないという状況ではありますね。

 

 

川村 ありがとうございます。一方の、いかに融資を受けられるようにするかという問題と、それから、出口さんの言葉の中に、「密であることが魅力であるような」とありましたけども、そういう業種業態のところをどういうふうに ―これからの事業のあり方も含めて―支援していくかという非常に難しい問題ですね。私の勤務する大学も、対面を再開はしているものの、教室の収容定員の3分の1を超える履修者がいる場合には対面授業ができません。特に私立大学の場合は、「密」が常態化していますので、そこがクリアできず、後期も、正直どうなるのやらという状況です。そういう意味では、従来のやり方では事業展開ができない所がいろいろあるのではないでしょうか。そのことも中・長期的に考えていかなければならないと思いました。井上さん、ご報告をありがとうございました。

 

 

 

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