平井照枝「新型コロナウイルス感染症の影響による収入とくらしについて(2020年度反貧困ネット北海道オンライン連続学習会)」

2009年に設立された反貧困ネット北海道では、生活相談や貧困問題に関する学習・啓発など様々な活動に取り組んできました。2020年は新型コロナウイルスの感染で活動が制約される中、反貧困ネット北海道を構成する諸団体(運営会員)が、それぞれの現場でどのような事態に直面しているのか、またそうした中でどのような活動に取り組んでおられるのか、共有することを目的に、連続学習会をオンラインで、6回にわたって開催してきました。事務局の責任でまとめた全記録は、反貧困ネット北海道のウェブサイトで読むことができます。

以下はそのうちの、2020年6月16日に開催された第1回目の学習会で講師を務められた、平井照枝さん(しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道代表)のご報告です。内容は当時の状況に基づくものです。司会は、川村雅則(北海学園大学、当団体副代表)です。/(反貧困ネット北海道事務局)

 

 

 

しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道の平井です。

 

 

共有している資料は、5月1日に会員のメルマガで皆さんにウェブ回答をお願いしたアンケートです。ですので、アンケート結果に出ているのは4月の状況ですけども、それでもすでに収入が減ったという回答があります。減ったのはいくらぐらいかとか、何割か、というように細かくは聞きませんでしたが、「大きく減った」という回答が31.1%で、「少し減った」が24.3%で、合わせて55.4%なので、半数以上の方が4月の時点で収入が減ったという回答をされています。

「変わらなかった」という方も42.6%いましたが、変わらなかった方の内訳では、正規職員の方が多いのと、ちょうど3月に仕事を探していたとか、病気療養中だったという方も、あわせて15%くらいいらっしゃいました。もともと収入が無くて、だから収入が変わらなかったということですね。その方たちが、ハローワークにもなかなか行けないし、行ってもなかなか仕事がないということで、当初、緊急小口貸付金とか住宅確保給付金とかを検討したようです。

 

運用の変化の前後で生じるギャップ

これらの緊急小口貸付金や住宅確保給付金は、最初はちょっと要件が厳しかったのですよね。だから、大変な方が先に相談に行くと、所得証明が要るとか、申請前にハローワークへの登録が必要で就活が必要だ、というようなことで、対象にならなかった方もいます。後半になってくると、緊急小口貸付金の収入証明は自己申告で良いとか、郵送が可能になったり、北海道労働金庫さんでも受け付けてくれるようになりましたし、住宅確保給付金のほうも、ハローワークへの登録要件が外されたりとか、要件がだんだん緩和されていったのです。ところが最初に行った方は、厳しいほうの要件をクリアしなきゃダメだと思っているので、「緊急小口も借りられないし、住宅確保も対象じゃないみたいです」という相談もありました。「こういうふうに要件が変わっていますよ」とかお伝えして。なかなかそういうところがきちんと伝わっていないなと思いました。

緊急小口も、要件に、とても小さな文字で、「1年後償還時に非課税世帯で減収の場合は償還免除にすることができる」という一文が書かれているのですが、そこがきちんと伝わってないことがあります。今の時点では、免除になる要件が詳しくまだ公開されていないので、「今お金がないから借りたいけれども、はたして1年後に返せと言われたときに返せるかどうかわからないから、ちょっと怖くて借りられない」というような方々も多くいます。「でもやっぱり今どうにもならない状況だし、償還免除になる場合もあるし、万が一返さなきゃいけなくなった場合も2年間の分割で返すことも可能なので…」ということで、申請書を送ったりとか、一緒に申請書を書いたりした方もいました。あと、10万円の給付金もまだ入ってないという方もいて、本当にもう手持ちのお金がないという方々から相談がありました。

 

会員の急増

 

2月時点では、団体に、140名ぐらいの会員さんしかいなかったのですが、どんどん問い合わせが増えてきて、5月は確認しただけでも90件を超えていました。やっぱり皆さん、ホームページの食料支援の活動などを見ていて、それだけ皆さん大変な状況だということです。

入会の申し込みで近況を書いてもらうのですが、本当に厳しい内容がだんだん増えてきて、「自分は食べるのを我慢して子どもに食べさせている」とか、「3食食べさせられない日が増えてしまった」とか。4月で緊急事態宣言が解除されたらなんとかなったけれども、3月4月5月というような長い期間の休校と、休業要請があったことで、本当に大変な状況になっています。北海道のひとり親の生活実態調査でも、蓄えが「全くない」と回答している方が35.4%で、10万円未満という回答が9.9%、ですので預貯金が0~10万円未満の方が45%を超えていて、さらに50万円未満という方も加えると、もう62%ぐらいの方が、ほとんど蓄えの無いような状態です。1カ月だったらなんとかこらえられたけれども、この状態ではもう手持ち金がなくなったというような方が多くいました。

 

収入減・支出増のダブルパンチ

また、3月というのは普段でも相談が多い時期です。入学進学の納入金だとか制服購入とかということもあって、それに合わせてこの収入減ということと、そして給食が止まったことによる支出が増えたということ、加えて、北海道は寒いので暖房費もかかってですね、食費が倍になったとか、光熱費もかかって…というような感じです。

収入は減る、支出は増えるというダブルパンチで、精神的にも追い詰められている方々の相談が急激に増えました。その方々が果たして公的なところに相談に行かれているのか、というと、多分行かれてないと思います。うちみたいな小さな団体に相談がたくさん来たということは、探して見つけてくださってなんとか相談することができたけれど、多分、ひとり親相談員さんとか、そういうところに行こうという発想が出なかったのではないでしょうか。そこに行って、例えば制度の紹介だけではなく、緊急小口の手続きや、住宅確保給付金の手続きを一緒にしてくれるなどのことが果たしてあったのだろうかと思います。現場の相談員さんにも聞いてみたいと思っております。

 

子どもの生活が家庭まかせに

それから、やっぱり休校の間のオンライン学習に際して、タブレットが無い、パソコンが無い、wi-fiが無いという家庭が多いです。いろんなコンテンツは無料で公開されていましたが、それを見ることが出来ないということがあります。教育格差というか、そういうものも生まれてきてしまったなと。

学校がいざ始まるとなると、今度は、「はたして子どもが勉強についていけるのか」とか、そういう不安が出てきているという趣旨のメールもいただいています。kacotamさんで、機材をお貸ししてくれたり、このアンケートにも書いてあるのですが、子どもの生活リズムが崩れたという回答がとても多くて、それで「おはようLINE」とかそういうようなことをしてくれています。また、自習室ではあるのだけれども、誰かと一緒になって勉強しているということで少し学習のリズムを作ったり、家にこもりきりだけども会話ができたりということで、少しお子さんのストレスが減ったのかなということも思います。けれども、みんながみんなそこにつながっているわけではないので、やっぱりこの一斉休校が、子どもの預け先とか、学びのこととかを…感染症対策なので仕方なかったとも思うのですが、そういうことが後回しにされていったかなと思います。

 

制度があるのに利用できない現状

やはり、ひとり親家庭の方々は、低学年のお子さんだと仕事を休まざるを得なかったりとか、自分の意思で休んだから休業補償が無かったりとか、会社から休業要請というかお店自体が大きな商業施設も全部閉鎖になったので、やむを得ず休んだけどまだ補償が無いという方もすごく多くて、「本当にどうしよう」と、「5月に働いてないから今月の給料もどうしよう」という方々もとても多い状況です。

それで、生活保護のお話も伝えるのですが、なかなか難しい。本当にこれは日本の社会の罪ですが、刷り込みされているのだと思います。「生活保護は受けたくないです」とか「なんとかもう少し頑張りたい」という声もあってですね、制度の説明とか、「生活保護というのはこういうことですよ」というような、「利用できる状態だったら利用して、今をなんとか乗り切って、収入が上がったら外れていいんですよ」とお伝えはしますが、一回で「はい」と言う方はなかなかいません。やはり関係性を作った上で「じゃあ申請してみようかな」となって行くといいんですけども、相談を受けた中では「保護申請します」という方がまだいないのが現状です。母子家庭の生活保護の受給率は、札幌は交通の便や医療機関も多く地方から移転してくる方もいるので、39%と高い方ですけども、全国の平均では14%程度です。本当は保護を受けられる状態なのに受けない方々が多いのかなと思います。

生活保護に関して、車の要件の話が先ほど出ていたんですけども、やっぱり車を持っている方も多くて、細川さんがおっしゃっていたように、車を持っていても申請ができるということが、なかなか伝わっていないと思います。いろんな制度や支援策が出てきているのに伝わっていません。また、よく言われるように、持続化給付金も「申請が大変」だとか、休業補償も、「会社に言ってもなかなか申請してくれない」とかありました。

 

子育て世帯へ広く継続的な支給を

5月14日に札幌市への要望書を提出致しました。このアンケ―トと一緒に賛同団体を募ったところ、76団体が賛同してくださいました。札幌市にも、子育て世帯への支援ということでお願いをいたしました。就学援助世帯への給食費相当分の支給というのは決まっていたのですが、残念ながら、ひとり親世帯に対する支援だとか、子育て支援への上乗せというようなことは、これは国の制度がタイミング的にちょっと遅かったのかもしれないですけれども、国がひとり親世帯への特別給付金を上乗せするということで、札幌市は少し早く立て替えて出すということを検討してくださっているようですけども、上乗せして出すということまでにはなかなか行けませんでした。ところが全国では松山市や、射水市など複数で、北海道も根室市は上乗せ3~5万円、小樽市は子ども一人1万円というようなことがあるので、住んでいるところによって支援が異なってしまうことはすごく残念なことだと思います。

札幌市長 秋元 克広 様
札幌市教育長 長谷川 雅美 様

「新型コロナウイルスの親子への影響に対する支援のお願い」
1.子育て世帯への臨時給付金について
2.ひとり親世帯のセーフティネットである児童扶養手当の臨時増額について
3.長引く休校で給食停止による子どもの栄養確保について
4.一斉休校による子どもの預けさき確保と保育所等の預け先施設の支援強化について
5.高校生・大学生に返還不要の給付奨学金を創設することについて
6.DV・虐待相談窓口などのさらなる広報について
7.親の感染が判明した場合の、子どもの預け先などについて
8.子どもの学習機会均等の保障について
9.当事者の声に寄り添うことについて
10.子どもの置かれた状況への理解について

賛同よびかけ団体
しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道
認定NPO法人kacotam
NPO法人訪問と居場所漂流教室
札幌市子どもの権利条例市民会議
一般社団法人北海道民泊観光協会
NPO法人札幌チャレンジド

 

ひとり親の児童扶養手当の上乗せも今回お願いしました。夫婦で片方が障害年金を受給していると、児童扶養手当を受けられるのに、ひとり親が障害年金を受給していると児童扶養手当が受けられないという年金制度のひずみがあるのですけれども、それはまた別のことでお願いはしていますが、今回は障害年金や遺族年金で児童扶養手当を受給できてない方にも支給するというようなことで、少し枠組みが広がりました。しかし、もともとの問題である、例えばお金が無くてアパートを借りられないから親と同居しているのに、親と同居し扶養義務者の所得で、逆に児童扶養手当が受けられないという方々とか、所得制限よりも若干収入があることで児童扶養手当が受けられない方々は対象ではないので、すべてのひとり親に対する給付金というところまでは行かなかったと思います。予算が1,350億なので、これ自体は大きな数字だとは思いますけれども、1回だけでは、困窮した状況は変わりません。「10万円の給付金ももう、家賃と滞納していた光熱水費、公共料金を払ったら無くなってしまいました。」と言う方もたくさんいらっしゃるので、やはりこれからも継続的な支給をお願いしていけたらと思います。

 

 

食料支援についてですが、私たちの団体としては、これまでは補助的な活動として、相談を受けて緊急性がある方に以前から食品パッケージをお届けしていたけども、この3月からは、給食が止まったことで少しずつ増えて行きまして、今はなんだか、食料支援がメインの活動になっています。今また助成金や寄付金もいただいたので、5kgのお米を160世帯に、第一回目として送りますが、できれば毎月5kgのお米をお届けさせていただきたいなと思っています。

また、例年より短くなるとはいえ、今度はすぐに夏休みも始まってしまうので、札幌市とかにもお願いしたのですが、公的な食の支援を何か考えていただきたいなと思います。戸田市では、コロナも災害と同じだということで、市の職員が非常用の備蓄食品を市内数か所の福祉センターで困窮している方に配布したという例もあります。市の職員の方々がフードドライブもして、家庭に余剰している食品も集めて、一緒に備蓄品を提供したというニュースを見ました。コロナは本当に災害と同じだから、ぜひ札幌市もそういうことをして欲しいなと思いました。この秋には第二波で、休校措置による家計の逼迫がまた起こるかもしれないので、行政としても、何か、次に万が一休校になった場合は何が必要かということも議論して欲しいと思います。また、行政だけではなくて私たちに何ができるのかということも…とはいえ、私たち地域の力ももう限界でして、本当に毎日毎日、相談と食品の発送とかでかなり大変な状況です。

 

質疑応答

 

川村 ありがとうございます。お話にありましたように、もともと3月は、進学にからんで非常にお金が入用になってくるそういう時期であったと。そこで今回、お子さんたちの休校に伴う対応をしなければいけないということで、もともと働いていても収入水準が低いということが問題としてあるわけですけども、さらにお子さんの休校措置に対応してケアをしなければならず、働くこと自体が困難になった方もいらっしゃっただろうと。そういう中で困窮度が増していった状況がお話いただけました。私たちの職場もそうなのですが、そういうときの対応は、やはり女性、お母さんたちが対応していると思われる現実があります。

また、休校中にお子さん自身の教育をどうするかという点で、オンライン教育とか言われていますけども、そういうところに平時からの教育格差の問題が出てくることが懸念されます。オンライン教育に対応できる家庭とそうじゃない家庭とがありますよね。そういうところへの細かな目配りというのが本来必要だったにもかかわらず、なんだか全てが後回しにされて、「ご家庭で対応してください」みたいな感じになってしまったと、お話を聞いていて私は受け止めました。

それで、平井さんにお聞きしたいことの一つ目ですけれど、国の制度の話はありましたけれども、札幌市独自のなんらかの制度的な対応はあるのでしょうか。いろんな分野があると思いますが、ひとり親世帯への、札幌市独自の制度は何か、今回コロナの関係であったのかどうか。聞き漏らしていたら申し訳ないのですが、そこをお聞きしたいです。

もう一つ、私自身も労働相談で何件か受けましたが、職場でのトラブルに関して、休校措置に伴う助成金が今回国のほうで作られました(〔新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金〕)。それはさかのぼって、例えば子どもの休校に対応して年次有給休暇を使った、あるいは欠勤という形で対応した労働者に対して、国の方で、いわゆる補助金とは別枠で助成金を作りましたから、それで対応してくださいということです。事業主が申請をしなければ受けられないですけど、そういった、雇用調整助成金であるとか、あるいは休校に伴う対応をした場合の助成金、これらの制度は使われているのでしょうか、あるいはそもそも情報が充分に周知されてないのでしょうか。まずこの二点を教えていただけますか。

 

 

平井 札幌市独自の支援というのは、事業主さんや休業補償したお店には、道からの支援にプラスして支給するというのがあったと思いますけれど、家庭に対する支援というのが、先ほど言った、これもお願いしていたことですけれども、いわゆる要保護世帯ですね、就学援助世帯に対する給食費相当額の支給です。

一般家庭では、給食費の徴収した分は返金になったし、休校中の部分は納入しなくていいということだし、生活保護世帯は、教育扶助に上乗せして給食費相当分を支給したということなのですけども、就学援助世帯だけは、給食費が行政の直轄だと思います。だから、その部分がまるまる、就学援助世帯だけが食事分が手元にないということで、全国の各自治体で始まったことなのですけども、札幌市にもお願いしたいということで、最初「ちょっと難しい」みたいなことだったのですが、結局、札幌市も就学援助世帯への給食費相当分の支給ということをしてくださいました。

本当はさらにそこに上乗せで、子育て世帯への対応をお願いしたかった。というのは、札幌市の前の調査でも子育て世帯に余裕がないという調査結果が出ていますから。繰り返しになりますけど、休校による支出が増えたということは、ひとり親世帯だけではなくて子育て世帯全体だと思うんですよね。だからそこに上乗せということをぜひなんとかお願いしたかったのですけれど、多分それは決まらなかったということです。そのうち学校も始まるということだったので。ですから、もし秋とかに再度こういうようなことがあった場合には、何かそういうことも対応を考えていただきたいなと思います。

食事に関する支援というのも、地域の皆さんそれぞれ何かしら提供してくださったりとかして、頑張ってらっしゃって、さぽーとほっと基金などの助成もあるのですが、やっぱりそこに届かない家庭ってあるんですよね。今日の食事の提供だって、取りに来られる方はいるけれども、取りに来られない方もやっぱりいます。やっぱり、公的に、食事の提供、子どもの健康という面もちょっと考えていただけたらなと、例えばさっきの非常食を配るということも検討していただきたいなと思います。

 

それから、職場のことですよね。アンケートの回答では、「休業要請によるシフト減や自宅待機があったか」ということで、「あった」と回答した方が52.5%です。

ところが、その人たちに「休業補償があったか」と聞いたら、「なかった」という回答が65.6%なので、多くの方が職場での休業補償や雇用調整助成金などの手当が無いというふうに回答しています。「会社には言ってみたけれども何回も言えない」「一回は言ってみたけども、どうも無いみたい」とか、そこらへんで、やっぱり受けられていない方たちが多いです。もちろん休業補償が「あった」と回答している方もいるのですが、全体としては受けられてないなと。

それから、ダブルワークのうちの一つを失業してしまったとか、観光業に従事しているホテル業の方は、解雇になるかもしれないという不安もあります。「この先が不安」とおっしゃいます。6月になって、逆に不安になってきたという相談が増えていますね。企業自体の体力が落ちてしまったことで、雇止めとか、非正規雇用で調整されてしまうのではないかという不安を抱えていますし、実際そういうような状況になっています。「失業した」と答えている方がこの時点で12%だったので、今はもしかしたらもっと増えているかもしれません。また調査したら、きっと「収入が減った」という回答の方ももっと増えていると思います。

また、ご本人は収入が変わらなかったけれども、「養育費の義務者の収入が減ったので養育費が止まってしまって困っている」という相談も増えています。「ああ、そういう問題も起きてしまうのだな」ということで、日本は養育費の立て替え制度という国の制度も無いですし、札幌市はもちろん無いです。自分の収入が減るだけじゃなくて養育費が止まってしまったという相談ですね。もともと受け取っている方も少ないのですが、やっぱりそういう問題も起きています。

 

 

川村 本当にいろんな問題があるということが改めてわかりました。今、全国的にも、2020年の4月のデータで、休業者が600万人で、いまのところまだ休業と言う形で企業もなんとか契約を維持できているけれども、ここからどんどん失業に流れてくることが懸念されています。今はまだかろうじてつながっているけど、もっとこれからひどくなるということは容易に想像し得ますよね。そんな中でも、今時点でも失業補償、休業手当が貰えていない人たちが多数いる。報道もされましたけども、雇用調整助成金なんかも後払いということなので、資金力のない企業にしてみればキツい部分もあったりします。特例措置的な対応で、制度は大分使いやすくはなっているはずなのですが、事業主には事業主の言い分があるのかもしれません。制度の情報を伝えていくだけでなく、運用で使いやすくしていく必要もあるだろうと思いました。

 

 

平井 国の方では、みなし失業手当、要するに失業してなくても災害時に使えるみなし失業というようなことも検討には入っているようなのですけど、それで逆に企業が、「じゃあそっちに申請すればいいだろう」ということになってしまうのではないかという不安もあります。

 

 

川村 そうですよね。「休業手当じゃなくてそっちで貰えばいいだろう」みたいにね。私のところも、学生アルバイトの、休業手当を「受けられた」「受けられなかった」の比率が、平井さんのところの調査と同じような分布じゃないかなと思います。「受けられた」という学生もいるけれども、休業手当を貰ってないという学生も多いのではないかなと。僕らも、もう一回調査をしなければと思っています。平井さんたちの調査は、5月初旬にやって、4月段階のものを調べたのですね?

 

 

平井 そうです。5月1日に皆さんにお願いしました。3月4月と、「コロナ前と比べて、収入はどうですか」とか。

 

 

川村 これからの調査などは具体的に予定されていますか?

 

 

平井 今回の調査は北海道独自のものでした。北海道の状況を把握するために、緊急的に行ったものです。同じように、全国各地でシングルマザーの支援をしている団体がそれぞれの地域で調査したようなのですが、今度は全国で統一してアンケート調査をしようか、という話になっています。それに協力していただいた方に、7月、8月、と継続してアンケートを取って行こうかという話が出ています。

 

 

川村 先ほどの話を聞いていると、ご本人だけじゃなくて、お子さん自身の変化もありますね。大学生でもずっと家にこもっていれば調子を崩すわけですけど、より社会的経済的条件の厳しい子どもたちが大変な状況だということですね。それから、養育費の支払いですね。養育費の義務者のほうの収入が減ったという問題。「なるほどな」と思いながら聞かせていただきました。

 

 

平井 親の収入は変わらなくても、大学生や高校生のアルバイトが無くなってしまって世帯の収入が減ってしまったということがあります。困窮学生の給付金も、条件がやっぱり全員対象ではありません。自宅外通学の方が対象であって、自宅にいても親からの支援が受けられない方という条件がありますけれども、そういうケースは、全体のだいたい1割ぐらいだというようなことも言われていますので。確かにどの制度もラインは引かなきゃいけないのですが、そこから外れてしまった人たちが今度逆に困窮してしまうと思います。

 

 

川村 コロナは、平時からあった問題を浮き彫りにしました。特に弱い人たち、弱い層に大きな問題が集中的に表れていると思います。私たち大学関係者もまた改めて、学生だけじゃなく学生の保護者、学費負担者が直面している問題とかも含めて広く調べなければと思いました。それにしても、会員の方がすごく増えたのですね。5月の時点で90件でしたか。

 

 

平井 4月にも増えたのですが、そうですね、5月は本当に毎日20人くらいから入会申し込みが次々に来て、対応できないぐらいでした。それだけ皆さんがネットで検索したり、食料支援をしているというニュースを見たりで、やっぱり一気に増えていますね。

 

 

川村 その方たちも、なんとか平井さんたちのところにつながったからよかったものの…。

 

 

平井 これはいつも言われることですけど、一番支援が必要な人こそ、情報も届いてないし、サポートの手も入ってないのではないかと思うと……。ちょっと言いそびれましたが、ご存知の通り、特別給付金も世帯主単位に配られたので、離婚前に配られたりとか、家庭内でDVがあったりすると、自分の手に入らないとか、世帯主が「俺の金だから」と言って全部使ってしまうとか、ひとり親の支援をしている中では今まで声が聞こえてこなかった人たちの声も聞こえてくるようになりましたね。同居していることによって、今まで見えてなかったけど、家庭の中で経済的な困窮に陥っている方がいるということがわかってきました。

 

やっぱり、社会保障もなんでもそうですけれど、「個人じゃなくて世帯主に」ということの弊害がずいぶん出ていると思います。離婚成立前で別居中という方々が…、まぁ一定程度の支援策が出たとはいえ、例えばDVで避難していて、避難先の住所を伝えていなくて、「申請しても相手方に住所を教えませんよ」と言われても、重複して支払われた場合は返還するということがあるので、「あいつ、請求したんだな」ということがバレたらとても怖くて請求できないと言う方もいます。制度があっても申請できない。また、他の市だと思いますけど、虐待されている未成年の方が申請に行ったら「未成年だから」と帰された、という報告もありました。本当に必要な人に支援がなかなか届かないという状況があると思っています。

 

画面共有できますか?これが今日のお食事です。

 

 

川村 この食事は、どちらが提供してくださったのですか?

 

 

平井 これは手稲山のふもとのフレンチレストラン ジャルダン ポタジェ テラニシさん、ポラスさん、アモワールさんの三軒のお店が協力して下さいました。

 

 

川村 飲食店なのですね。

 

平井 このお店は、医療従事者の方にずっと食事を提供されていたのですが、そちらが少し落ち着いたということで、「ひとり親の方にもご協力します」というお声をいただいて。小樽でもお店が協力してくださって、そういうふうに地域で「協力します」と言ってくださる方々がすごくたくさんいてありがたいですけれども、5月中は、提供する場所がなくて困りました。お店で提供してくれたらいいのですが、お店はお客さんが来ることもあるので、公共施設も全部閉鎖していたので。緊急事態宣言が解除になり、今回はちえりあさんで配らせてもらいましたが、他に、例えば企業の会議室を使わせてくれるとか、そういうような連携ができるといいなと思っています。

 

 

川村 しかしながら食事を受け取られるのは、あくまでも取りに来られる人ということになりますよね。

 

 

平井 今はそうですね。北海道ネウボラさんというところは宅配をしているそうです。つい最近は、平岸タクシーさんの協力で、北海道ネウボラスタッフの方がタクシーに乗って、タクシーの運転手さんが運転して宅配するというようなこともされていたので、いろんなところと連携することで、取りに来られない方にも届けられるのかなと思っています。今、私のところで宅配はちょっとできない状態ですが。

 

 

川村 ありがとうございます。聞きたいことがまだまだありますが、時間になりましたので本日の学習会は終了にしたいと思います。細川さん、平井さん、本日はお忙しいところ大変ありがとうございました。

 

 

(参考情報)

しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道

NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ

 

 

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