反貧困ネット北海道「北海道知事選挙、札幌市長選挙に関する公開質問と回答(2015年)」

反貧困ネット北海道では、コロナ禍・下においてもオンライン学習会の開催を中心に、反貧困に関する取り組みを続けてきました(注)。これらの学習会の成果なども踏まえて、きたる2023年統一地方選挙に向けた、公開質問の作成や学習会の開催を準備しています。皆さまのご支援をどうぞよろしくお願いします。

ここでは、過去(2015年)の北海道知事選挙、札幌市長選挙の際に行った、候補者への公開質問と回答を掲載しておきます。

注:反貧困ネット北海道のこの間の取り組み(学習会の記録など)

 

 

※過去(2015年)の選挙における候補者への公開質問と回答です。ご注意ください。

 

北海道知事選挙(2015年)

公開質問の前文

 

北海道知事候補者 殿

2015年3月2日
反 貧 困 ネ ッ ト 北 海 道

北海道知事選挙に関する公開質問へのご回答のお願い

平素は私どもの活動に対するご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

企業業績の改善、株価の上昇などが言われていますが、私たちの日々の暮らしは相変わらず厳しいままです。

関係者の取り組みで減少こそしてはいるものの、自殺者の数は異常と言わざるを得ません。雇用情勢も、失業率こそ改善されたものの、増加した雇用の多くは非正規雇用であって、年収200 万円以下のワーキングプアが増加し続けています。窮迫的な求職活動が行われていることが示唆されます。税・社会保障についても、消費増税は社会保障の拡充のためと説明されていましたが、実際には、例えば介護報酬の引き下げや生活保護基準の引き下げなどが相次いでいます。

こうした事態に、自治体としてどのような対応をとるのかが問われています。

そこで私たち反貧困ネット北海道では、このたびの北海道知事選挙に際して、候補者のみなさまに、反貧困に関わる政策についての公開質問をさせていただきます。

候補者が、社会の現状をどう認識し、どのような政策を実現されようとしているのか、ぜひ教えていただきたいと思います。
ご回答につきましては、ひろく道民、市民にも知ってもらうため、報道機関への提供やホームページでの公開などを予定しています。

※ご回答につきましては、電子データにて事務局までお送りくださいますようよろしくお願い致します。

反貧困ネット北海道 事務局
〒064-0808 札幌市中央区南8条西2丁目
市民活動プラザ星園305 号室
電話・FAX 011(533)3778

 

候補者への質問

◆労働

1. 働きたくても働くことができない、という失業問題がなお深刻です。経済対策を通じた雇用の改善はもちろん重要ですが、自治体自身が雇用創出を図ったり生活保障付きの教育訓練に力を入れるなど、雇用問題へのより直接的、積極的な取り組みもまた重要です。北海道としてどのような取り組みを実施されるつもりですか。また学生・若者の雇用問題に特化した対策をお考えであれば教えてください。

2. 公共サービスに従事する人たちの間で不安定雇用・ワーキングプア問題が広がっています。自治体は民間企業に対して模範であるべきと考えます。

① 自治体はいま、正職員を減らして、臨時・非常勤職員を増やしています。臨時・非常勤の雇用は不安定で、任用と任用のあいだに「空白期間」を設けたり勤続年数に上限を設けるなどの問題もみられます。また賃金は著しく低く、しかも経験を経ても昇給や退職金の支給もありません。臨時・非常勤のこうした任用状況に対しては、総務省も2014 年7 月に通知を出して改善を促しています。北海道としてどのような対策を実施されるつもりですか。

② 自治体財政の逼迫や競争入札制度の導入などを背景に、公共事業や委託事業の発注価格が引き下げられてきました。結果として、自治体が発注している仕事で働く人たちの間に雇用不安や低賃金問題が広がっています。全国の自治体では、こうした問題に対して入札制度の改善や、指針や条例による公契約の適正化を推進しております。北海道としてどのような対策を実施されるつもりですか。

3. 「ブラック企業」「ブラックバイト」など、とりわけ若い労働者を使い捨てる企業が問題になっています。相談窓口の設置・拡充、ワークルールの普及、悪質企業に対する処分など自治体も積極的に役割を果たすべきと考えます。北海道としてどのような対策を考えていますか。

 

◆学費問題

1. 学費問題が深刻です。国公立大学の授業料は約53 万円、私立大では100 万円を超えます。新たな奨学金制度を創設する、あるいは、現在行っている奨学金制度を充実させる(貸与制から給付制への変更、給付制枠の拡大)などの対策が必要と考えますが、北海道としてどのような対策を実施されるつもりですか。

◆ひとり親家庭

1. ひとり親家庭支援では、自治体により制度のばらつきが大きく、住む場所によって受けられない支援制度が多くあります。日常生活支援事業(道内実施17 市町村)などは、ひとり親家庭の生活支援として大変重要です。実施できない自治体に対して、道はどのような支援や指導を考えているでしょうか。

◆子どもの貧困

1. 「子どもの貧困対策推進に関する法律(2013 年成立)」の施行を受けて、北海道として重点的に進めるべき課題は何だとお考えですか。またその課題を具体的にどのように達成しようとお考えですか。

◆障害者福祉

1. 現在身体障害者と知的障害者にある公共交通機関交通費割引を、精神障害者に拡大する必要があるとお考えですか。また実現できるように民間事業者へ働きかけを行う予定はありますか。

2. 障害者雇用状況の改善のために、どのような取り組みをお考えですか。また身体障害者はもとより、知的障害者や精神障害者や難病者の雇用をモデル的な意味合いを含めて北海道として取り組むお考えはありますか。

◆生活保護

1. 職権保護に関して

生活に困窮し、単身もしくは社会的弱者の複数世帯の孤立死や餓死、凍死が存在したことについて、地域では市民や関係機関による見守り活動が盛んになっています。しかし、憲法第25 条の権利が危ぶまれるような場合、あるいは緊急性の高い場合、行政でなければ踏み込めない支援や介入があります。

生活困窮だけではなく、養育困難による児童虐待、介護困難による高齢者や障しょうがい者虐待、心中など、痛ましい事故が相次ぐ中、市民による見守りをどのように活かすか、行政の活動が問われています。
生活保護法上の職権保護(法4 条3 項)について、北海道としてどのような現状の認識と課題をおもちですか。

またその対策について、どのような取り組みをお考えですか。

特に、札幌市においては、昭和59 年保護打ち切り母子世帯児童の白石区焼死、昭和62年1 月白石区母子世帯の保護申請の餓死、平成4 年、豊平区同意書偽造、平成24 年1 月白石区保護申請相談後の姉妹孤立死など、相次ぐ諸問題の対策をいかように捉え、どのように再発防止への取組みをお考えですか。

2. 適正化実施のための人材育成

不正受給者への取組みの適正化については国をあげての取組みが行われています。しかしながら、生活保護の適正な決定について、職員の経験不足や無知による漏給や水際、不適正事例もあとを絶ちません(住民票の有無を理由に断る、辞退届を強要、廃止処分の過程、扶養義務の説明など)。

捕捉性の原理から他法優先の相談支援及び助言・指導の徹底には、経験と知識は最低限必要であります。これらの専門性をもちつつ、新しい法律や情勢に即した適正な保護の実施のため、人事や組織体制を含め、どのような保護行政の運営・対策をお考えですか。

◆生活困窮者自立支援法の施行について

1. 総合相談に対応するために

生活困窮者自立支援法の自立相談支援事業が平成27 年4 月から施行されます。下記のようなメニューが考えられますが、北海道としてどのような取り組みをお考えですか。

・生活困窮者(特定が困難であれば道民)への制度と相談窓口などの周知
・地域や関係機関への制度周知、具体的な連携事例及び事業活用事例などの広報
・高齢、障害、介護、児童、女性、生活保護など各法制度に渡り全方位に通じる人材の確保及び育成方法、それに伴う庁舎内の連携・協働体制整備の方法
・アウトリーチによる支援の確立方法
・委託事業者への指導・助言・支援ができる行政の人財確保もしくは体制整備方法

2. 個人情報と情報の共有について

町内会やライフライン(水道、電気、ガス)、新聞、宅急便やコンビニなどとの情報共有化、通報に対しての行政の行動基準、また庁内連携(国保、児童課などの庁舎内及び、社保庁や他官公庁)や情報の取扱いについてどのような対応をすべきとお考えですか。

 

候補者からのご回答

 

高橋はるみ 佐藤のりゆき
労働 人口減少が続く中、若者が結婚し、安心して子どもを産み育てられる地域社会を形成していくためには、安定的な所得の得られる就業の場の確保など、道民の方々が安心して働ける環境を築いていくことが重要であると考えています。
このため、道では、これまで産業振興と雇用対策の一体的な展開による良質で安定的な雇用の創出や若者や女性の就業促進、働き手の能力開発支援、さまざまな分野での正社員化や賃金の引き上げといった処遇の改善などに取り組んできているところであり、今後とも、地域における良質で安定的な雇用の創出などに取り組んでいく必要があると考えています。
特に、若者については、地域経済の活性化を図るためには、雇用の場の創出とともに、その担い手となる若者が地域産業の理解を十分に深め、地元企業での就業を促進していくことが重要です。
このため、道では、ジョブカフェにおいて、高校生などを対象とした職業理解のためのセミナーや企業説明会を開催するほか、道内14地域において、地元の企業と求職者とのマッチングの場を提供するなどの取組を進めています。
また、企業に対しても、働きやすい魅力ある職場環境づくりや若年者の職場定着に向けたアドバイスなどを行うとともに、平成27年度は新たに、若者などを対象としたインターンシップ事業を実施するなど、ミスマッチの解消に向けて、求人と求職の両面から支援することにより、地域産業の発展を担う若
者が地元において、いきいきと働くことができるよう取り組んでまいります。
道民生活の安定にとって最も大切であり、課題となっている人口減少対策の基本も、地域で暮らしていける仕事・雇用の確保です。私は、若者が地元・北海道から流出せずに暮らしていける地域づくりを、最優先課題にしています。
同時に、ご指摘のように自治体自身の取り組みも重要であり、とりわけ道庁としては、住んでいる地域や経済状態に関わらず、必要な人に職業訓練の機会を提供することが重要です。道立の高等技術専門学院や、民間とタイアップした各種支援事業などの現状を検証して、さらに取り組みを強化していきたいと考えます。
2-① 道では、臨時職員や非常勤職員の任用にあたって、昨年の総務省通知のとおり、関係法令に十分配慮しながら、制度の趣旨や勤務の内容に応じた任用・勤務条件を確保し、明示しています。 自治体においても、正規職員から非正規の職員への置き換えが、人件費の削減を主眼に進められている傾向が見受けられ、深刻な問題と考えています。昨年の総務省の通知も、こうした傾向が国としても看過できないまで進行してきたことの反映でもあると思います。
何よりも基本とすべきは、恒常的な職務に必要で適正な人員は、職員定数として確保されるべきということです。その上で必要な、臨時的・非常勤な職務対応にあたっても、その職務内容に照らし、基本的な勤務条件での待遇は不当な差別なく行われなければならないと考えます。
現時点では道庁内部の取り扱いを十分に承知できていませんが、現状を把握して課題を整理し、しっかり取り組んでいきたいと思います。
2-② 道では、事業発注にあたって、国の労務単価などに基づき積算を行い、また、採算を度外視した受 注、契約不履行を防止するため、最低制限価格、低入札価格調査などを導入するとともに、受注先に対して、適正な水準の賃金の支払いや社会保険の加入について要請を行っています。 自治体が行う事業や委託などは、住民福祉の向上が目的ですから、公共サービスの質と公正・適正な契約が担保されるのが当然と考えます。「官製ワーキングプア」といわれるような実態はあってはならず、公契約の適正化は重要な課題です。
北海道においても、この間、入札や契約に関する制度の見直しや改善が進められてきており、価格以外の要素を加味した「総合評価方式」も導入されています。
全国的には、さらに進んで公共調達条例や公契約条例を制定する自治体も増えてきており、こうした先進例にも学んで検討していきたいと考えます。
いわゆる若者の「使い捨て」などの雇用トラブルを防止するためには、雇用者側と労働者側の両面からの対策が必要と考えており、道では、これまで、ワークルールに関しまして、事業主向けにセミナーの開催などを実施するほか、労働ガイドブックを配布する一方、若者に対しましても「働く若者ルールブック」を作成し、それをすべての高校や大学などに配置いたしますとともに、道の労働相談においても、学生アルバイトの相談件数の把握に努めているところです。
これらに加え、平成26年度は新たに、シンポジウムの開催や企業訪問により、労働法令遵守の働きかけなどを行うほか、特にアルバイト学生向けのリーフレットを作成し、大学や専修学校などに配付したところです。
また、北海道労働局と連携しながら、いわゆる若者の「使い捨て」についての実態把握に努めるほか、道の労働相談において、その内容が若者の使い捨てや過重労働などである場合には、労働基準監督署に通知するなど、緊密な連携を図っているところです。
今後ともこうした取組を通じまして、本道の将来を担う若者が安心して働ける社会の実現に努めてま
いります。
この間道庁でも、労働相談、労働ガイドブックの作成やセミナーの開催、ホームページを活用した啓発や周知などを行ってきていると思います。これらをさらに拡充・充実させるとともに、悪質な企業に対しては、関係機関が連携して厳正な対処をすることも欠かせないと考えます。
また、「ブラック企業」「ブラックバイト」などは、もはや社会問題として深刻に認識され、若者の側でも不安や警戒心が強くなっています。道内の地元中小企業とのマッチングや定着をはかるために、たとえば国の「若者応援企業宣言事業」への事業所登録など、若者を受け入れる企業側での、積極的な取り組みを推進していくことも大切ではないかと思います。そのための周知やキャンペーンなどを、市町村とも連携して取り組みます。
学費問題 本道の未来を担う若者たちの可能性や潜在力を引き出し、夢や希望の実現に向けて挑戦できるよう、家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての若者たちが安心して勉学に打ち込めるような環境を整備することが重要です。
このため、高校卒業後、大学等に進学した生徒に対する日本学生支援機構の奨学金について、貸付条件の緩和や枠の拡大など制度の改善充実を国に対して求めていきたいと考えています。
授業料の減免や奨学金制度のさらなる拡充は必要です。2014年から、高校生に対して返還の必要がない新たな給付金制度が始まりました。返還の必要がないという意義は大きいですが、この財源は高校授業料の無償化の見直し(所得制限)によって生み出されたもので、今後の拡大には新たな財源が必要となります。また、高校よりももっとお金のかかる大学にも給付奨学金制度を創設することも必要です。
そもそも本来なら、国際人権A規約の趣旨にのっとり、大学などの高等教育の無償化について検討が進められなければならないと考えます。
これらは自治体レベルではなく、国において進められるべきと考えますが、道としても可能な施策も考えたいと思います。
ひとり親家庭 ひとり親家庭の方々の中には、日常生活を営む上で様々な困難を抱えている場合も少なくなく、子育てと仕事を両立させながら、経済的に自立し、母子ともに健康で文化的な生活を築いていくことが大切だと考えます。
現在、国・道・市町村の連携のもと、日常生活支援事業による生活支援や、自立支援給付金による就労支援などを実施しており、ひとり親家庭の方々の生活の改善に一定の役割を果たしています。
これらの事業の実施に当たっては、それぞれの市町村でひとり親家庭の状況や財政事情に違いがありますが、私としては、ひとり親の方々が道内どこに住んでいても各種制度を利用できるよう、市町村に対し、積極的な事業の実施やニーズに応じた柔軟な対応を働きかけながら、ひとり親家庭の方々の自立に向けた支援に関係者が一体となって取り組んでいきたいと考えており、来年度スタートする「第三期北の大地☆子ども未来づくり北海道計画」にも事業の促進について盛り込んでいます。
ひとり親家庭への支援は、就業支援、手当や福祉資金など経済的支援、子育てや生活支援など、多岐にわたった問題があり、とても重要です。特に全体の8割以上を占める母子家庭では平均年収が2 00万円程度という実態で、ひとり親が仕事に就き、仕事と子育てを両立しながら暮らすことができる環境づくりは、子どもの貧困対策でもあり、次代を担う子どもたちが心身ともに健やかに成長できるようにすることは、社会を支える最大の基盤づくりでもあります。
おたずねの日常生活支援事業については、実施していない自治体の実情を十分に承知していないので、まずはその把握をした上で、課題の整理をしたいと思います。
子どもの貧困 本道のすべての子どもたちが、生まれ育った環境に左右されることなく、夢と希望を持って健やかに成長できるよう、世代を超えた貧困の連鎖を断ち切ることが大切だと考えます。
これまで、道では、生活保護世帯の子どもへの学習支援や、ひとり親家庭への生活・就労・学習支援、児童養護施設の退所者への社会的自立に向けた就労・進学・生活支援など、子どもの置かれている状況に応じ必要な施策を展開してきました。
現在、道では、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づき、総合的な施策を盛り込んだ計画を策定しているところであり、将来、子どもたちが豊かな北海道づくりの担い手として活躍できるよう、今後、この計画を踏まえ、道庁内の関係部局が連携するとともに、市町村等の協力も得ながら、教育や生活、就労面など様々な支援に積極的に取り組んでいきます。
生まれ育った環境で子どもの将来が左右されないよう、また貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を図ることは極めて大切であり、法律の施行をうけて子どもの貧困対策をしっかり推進して、全ての子どもたちが夢と希望をもって成長していける社会の実現を目指さなければならないと考えます。
また、障害者支援と思われがちなバリアフリーデザインが、実は健常者にとっても暮らしやすい社会のユニバーサルデザインであるように、子どもの貧困対策を講じることは、貧困世帯に留まらず誰もが希望を持って子どもを産み・育てることができる社会をつくることだと思います。
北海道においても、教育支援、生活支援、保護者に対する就労支援、経済的支援など、バランスよく総合的に進めていく必要があると思いますが、とりわけ、生活基盤を経済的支援で支えながら、就学支援や学習支援をはじめとした教育の支援が重要と考えます。
障害者福祉 これまで、道では精神障がいのある人の公共交通機関の運賃割引について、JR、バス協会、ハイ ヤー協会、各航空会社等の交通事業者へ要請するとともに、特に平成26年度には運賃割引未実施の乗合バス事業者に対して、地元市町村職員に同行の下、個別要請を行ったところです。
私としては、精神障がいのある人についても、身体や知的に障がいのある人と同様の運賃割引が実施されることが望ましいと考えております。
今後とも、公共交通機関における運賃割引の実態を把握した上で、精神障がいのある人に対する割引制度が早期に実現されるよう、国や事業者に対し、強く働きかけてまいります。
障害に応じた必要な配慮を提供することが、障害者権利条約および障害者基本法の基本的な規定だと思います。交通費負担の重さによって、必要な通院などの移動が妨げられることは問題です。行政がリーダーシップをとってバス会社などの事業者に協力を要請するなど、交通費の割引の実施に向け努力していくべきと考えます。
就労を希望する障がいのある人を福祉的就労から一般就労へ移行を進めるためには、障がいの状態に応じた適切な就労機会の確保が必要と考えており、道では、平成18年度から本年2月末までの間、158名の職場実習の受入、42名の臨時職員の任用を行ってきたところです。
道は、率先して障がいのある人の就労を支援する立場にあることから、今後は、さらに職場実習の機会や臨時職員の任用の拡大に努め、受入体制の整備などを行うほか、市町村に対しても、職場実習受入マニュアルや事例集を配付して理解促進を図るとともに、様々な機会を活用して、職場実習受入や雇用機会の確保について働きかけてまいります。
2013年の障害者雇用促進法の改正により、障害を理由とする雇用における差別の禁止、職場での障害者への合理的配慮の義務が盛り込まれ、精神障害者の雇用の義務化などが定められました。障害者の働く権利や尊厳を保護し、精神障害者の雇用環境の充実強化につながるものと評価され、民間でも自治体でも着実に推進していくことが大切です。
道庁の知事部局はこの間の取り組みにより法定雇用率は上回っていますが、知的障害や精神障害の雇用はなかなか進んでいないと聞いています。また、教育委員会は、この間法定雇用率を下回り続けて国からの勧告を受け、2014年の結果では全国最下位になっています。
こうした実態の中で2018年からの義務化を前にしており、職場環境のハード面の整備だけでなく、受け入れ体制や定着に向けたフォローなどソフト面の体制整備が問われています。
民間での先行事例に学ぶことも含めて、市町村との共同の検討を道が音頭をとって進めることも必要ではないかと考えます。またその際に、道自身がモデル雇用などに取り組むことも極めて有効・有意義だと思います。
生活保護 道では、札幌市白石区において発生した孤立死の事案などを受け、市町村における見守り体制の充実を図るため、平成24年に「要援護者を地域で支える関係機関連携マニュアル」を作成し、市町村やライフライン事業者などに対して、相互に要援護者に関する情報共有を図るよう働きかけを行い、速やかな発見と適切な対応を求めてきているところです。
この中で、福祉的な支援が必要な場合には、支援につなげることが重要であり、生活に困窮する方に対しては、福祉事務所が速やかに生活保護の適用を行っているところです。
また、福祉事務所での生活保護の相談において、相談者のライフライン停止などの急迫性の確認 や、保護申請に至らない場合でも民生委員や関係機関、ライフライン事業者との連携を図るよう、道が実施する生活保護の監査を通じて指導しているところです。
「孤立死」という痛ましい事案が繰り返されることのないよう、今後とも、生活保護制度が国民生活の最後のセーフティネットとして、必要とする方々が適切に保護を受けることができるよう、地域全体での見守りと必要な支援に努めてまいります。
貧困と格差が拡がる中、生活困窮はもとより、児童虐待や高齢者、障害者の虐待など、安心して地域で暮らせる生存権の保障のための課題は、ますます大きく深刻になっています。
行政の力だけではなく、つながり、見守り、支え合う地域力総体を高めていくことが求められていると思います。同時に、そうした地域の発見力も生かして急迫した状況を早期に見いだし、生活保護法の規定にあるとおり、必要であれば職権による保護を適切に行うことが必要と考えます。
近年、生活保護を受給する方々への就労や健康支援の強化など、福祉事務所に求められる役割が増大していることから、ケースワーカーなど関係職員は、制度を十分に熟知して業務にあたることはもとより、受給者一人ひとりに寄り添った適切な支援を行うことができる人材であることが重要であると認識しています。
道では、生活保護業務の資格となる社会福祉主事資格を取得するための講習会や、指導的役割を果たす職員の研修会などを毎回開催し、資質の向上に努めているほか、生活保護監査を通じて、各福祉事務所内で定期的な職員研修を実施することや、支援が困難なケースについては、福祉事務所の管理職員やケースワーカーなどで構成する「ケース診断会議」の適切な実施を指導しているところです。
今後とも、福祉事務所が専門性をもって組織的に対応できるよう取り組んでまいります。
ケースワーカーにとって、言うまでもなく専門性や経験は非常に大切です。
道庁も、ケースワーカーの経験の浅い職員の方の研修の機会を作るなどしてスキルアップを図っているようですが、職場の体制の中で数ヶ月の研修を確保することや、個人責任での通信教育による資格取得などでは、なかなか困難な面もあるように聞いております。
そもそもは、社会福祉主事はもとより、社会福祉士など資格を有する職員を採用・確保するのが望ましいと考えます。また、職員のスキルアップを継続的に可能とする組織体制や人事が必要です。実際の道庁の現場の実情を把握して、しっかり課題に取り組んでいきたいと思います。
生活困窮者自立支援法 ○生活困窮者への制度と相談窓口の周知と地域や関係機関への制度周知、具体的な連携事例及び事業活用
本年2月から3月にかけて、道内6ヶ所で地域シンポジウムを開催するほか、平成26年度にモデル事業を実施している9振興局や委託事業所においても、あらゆる機会を通じて制度の周知を図っています。
生活困窮者自立支援法が施行となる本年4月からは、道内14(総合)振興局に相談支援事業所を設置することとしており、今後とも、関係団体の会議や研修会などの場を活用して制度の説明を行うほか、町村役場や関係団体の広報誌への掲載を依頼するとともに、民生委員や社会福祉協議会、地域包括支援センターなどが支援対象者を把握した場合は、制度利用の助言や相談事業所への情報提供をお願いし、一人でも多くの方が本制度により支援できる地域づくりを進めてまいりたいと考えています。
○高齢、障害、介護、児童、女性、生活保護など各法制度に渡り全方位に通じる人材の確保及び育成方法、それに伴う庁舎内の連携・協働体制整備の方法
自立相談支援事業については、道内全14(総合)振興局において、実施可能な専門的知見を有する団体に委託をして実施する予定であり、委託事業所の職員が、国が行う人材養成研修を受講することにより、専門的、実践的な支援技術の向上を図る考えです。
また、生活困窮者を早期に把握するため、モデル事業を実施している9(総合)振興局においては、既に連携体制の整備を行ったところであり、本年4月に新たに事業を実施する5(総合)振興局においては、速やかに連携体制の整備を進めることとしています。
○アウトリーチによる支援の確立方法
生活困窮者は、自ら相談に訪れることができない場合が多いことから、アウトリーチによる支援は重要と考えています。
そのため、関係機関や団体との連携による対象者の把握や巡回による相談会の実施などにより対応してまいります。
○委託事業者への指導・助言・支援ができる行政の人材確保もしくは体制整備方法
委託事業者が相談を受けた場合には、支援計画を作成した上で支援をすることとなりますが、支援計画の適切性を協議するため、支援調整会議を開催することとなります。
支援調整会議には行政職員が加わり、また、各種支援を行う際にも、生活保護を所管する行政職員
などと連携して行うことにより、委託事業者に対し必要な指導・助言等を行うこととしています。
様々なメニューや課題がありますが、生活困窮者が抱える多様で複合的な問題に対応するために、もっとも大切な出発点は、相談機能の実効性にかかっていると考えます。
相談に対応する支援員の人材確保と力量を高める取り組みの充実・強化、時間や場所など訪問し やすい相談窓口の設置のあり方など、当然の体制整備がまず必要です。加えて重要なのは、本当に困窮していても多くの人は自ら相談に訪れることが難しいのが実態だと考えられるので、地域の見守りのネットワークを強めながら、アウトリーチも非常に大きな要素を占めると思います。そして、支援員の取り組みだけでなく、関係機関や地域のネットワークの中で、現状と課題が常に共有され、互いに支え合う地域づくりにつなげなければならないと考えます。
生活困窮者に対するアウトリーチによる支援などを行う際には、関係機関や団体などとの連携が不可欠となりますが、生活困窮者に対する支援は、本人の自己選択、自己決定を基本としておりますので、関係機関や団体が関わる際には、国が作成した「自立相談支援の手引き」に定める個人情報の取扱いに基づき、相談者本人に対し、個人情報の利用目的を十分に説明した上で同意を得ることが重 要と考えています。
また、町内会やライフライン事業者などから行政に通報があった際には、道が平成24年12月に作
成した「要援護者を地域で支える関係機関連携マニュアル」に基づき、速やかに関係機関と連携をして、安否確認などの対応をしてまいります。
1.へのお答えの視点から、情報は地域や関係者・関係機関の中で共有されることが必須だと思います。ただし、この際の個人情報保護のあり方はしっかりと確立されなければなりません。

 

 

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