大屋定晴「2021年衆議院総選挙・北海道全小選挙区・立候補予定者への公開質問状とその回答――日本学術会議会員任命拒否問題、科学技術・高等研究政策に関して」

第49回衆議院議員選挙(2021年10月31日投開票)にあわせ、日本科学者会議北海道支部は、北海道内全12小選挙区の立候補予定者にたいして2021年10月13日、日本学術会議会員任命拒否問題、科学技術政策、ならびに学生・大学院生等の研究生活支援に関連した高等教育政策について公開質問状を送付し、10月20日にその結果をとりまとめ公表いたしました。

比例代表選挙であれば選択肢は政党が基本となります。それゆえ各党の選挙公約が私たちの投票の判断材料となります。
しかし小選挙区では当選者が一人になることから、政党の枠を超えての立候補が増えてきています。
こうした小選挙区制では、個々の候補者が本当に何を考えているのか、私たち市民がより積極的に問いかける必要があります。

日本科学者会議北海道支部は科学研究者の団体であることから、その立場に関連する質問に限定して、小選挙区の立候補予定者にお尋ねしました。
しかし政治を担おうとする人にたいして、日々生活する市民としての私たちには、さらに多くの問いかけや疑問もあるはずです。
さまざまな人びとが、自分の生活・関心分野から立候補者に問いかけ、その回答に注目し、投票行動の判断材料として互いに共有しあうことが求められているのではないでしょうか。

※ 日本科学者会議北海道支部のフェイスブックでも公開されています。

大屋定晴(北海学園大学教員)

2021 年 10 月総選挙における立候補予定者に対する公開質問状

 

1.2020 年 10 月菅義偉前首相は日本学術会議会員の推薦候補のうち 6 人の任命拒否を行いました。これについてどのような見解をお持ちですか。

□ 任命すべきである □ 任命すべきでない □ 回答留保 □ その他

[上記の理由又は補足のご説明]

 

 

2.平成 15 年の国立大学法人法施行後、国立大学運営費交付金は減らされ続けています。その結果日本の大学や研究所の研究水準が国際的にも急降下して、優秀な人材がどんどん外国に流失していていくと言う危機的な現状であります。どのような見解をお持ちですか。

□ 毎年減少させる政策は見直すべき □ 現行政策を見直す必要はない □ 回答留保 □ その他

[上記の理由又は補足のご説明]

 

 

3.文部科学省は「10 兆円規模の大学ファンド」を創設しようとしています。このような競争的研究費により長期的な基礎的研究が行いにくくなると科学者から懸念が出されています。これについてどのような見解をお持ちですか。

□ 創設に賛成する □ 創設に反対する □ 回答留保 □ その他

[上記の理由又は補足のご説明]

 

 

4.平成 27 年度に創設された防衛装備庁による安全保障技術研究推進制度は軍事研究になると科学者から懸念が出されています。これについてどのような見解をお持ちですか。

□ 積極的に推進すべき □ 条件次第で賛成(条件は後記) □ 同制度は止めるべき  □ 回答留保  □ その他

[上記の理由又は補足のご説明]

 

 

5.未来の科学技術を支える大学生・大学院生の生活が困難を増しています。給付型奨学金の抜本的拡充、授業料の無償化など、大学生・大学院生の負担を軽くする政策について、どのような見解を具体的にお持ちですか。

□ 積極的に推進すべき □ 条件次第で賛成(条件は後記) □ 回答留保  □ その他

[上記の理由又は補足のご説明]

 

2021 年 10 月 13 日
日本科学者会議北海道支部

 

 

 

2021  年 10 月総選挙立候補予定者回答一覧

10 月 13 日立候補予定者に公開質問状を送付し、10 月 19 日時点で受けとりが確認できたものを掲載した。

 

北海道小選挙区 所属政党 氏名 回答

 

北海道1区立候補予定者

1 区 自由民主党 船橋利実 回答なし

 

1 区 立憲民主党 道下大樹
質問1 任命すべきである。 立憲民主党として、政権与党となれば直ちに6人への任命を行うことを、政権政策 2021「7.まっとうな政治」に掲げている。岸田首相は菅前首相に引き続き、法や過去の国会答弁に沿わない恣意的な排除を行っており、学問の自由と独立を侵害し立憲主義を蔑ろにする任命拒否は許されない。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 立憲民主党として政権政策 2021 「2.『一億総中流社会』の復活」に掲げており、交付金についてはむしろ増額、大学財政を健全化することを公約として示している。下の設問でも回答しているが、安定的な研究費交付を行わず競争的に資金を分配することが、結果的に研究水準の低下と人材の海外流出を招いてきた。
質問3 その他(運用益が競争的資金とならないようにし、あり方について慎重に議論すべき) ファンドの運用益で大学の研究費支出を行うことについて、競争主義・成果主義的な分配の方式をとるのならば、まさしく「頭脳の海外流出」と言われる現象を引き起こしてきた要因であると考える。立憲民主党は、基礎的研究や中長期的な視点に基づく研究開発、また研究者の雇用環境等を充実させることが流出を食い止める手段であると考え、競争的資金ではなく、安定的ベースによる研究ができる環境を取り戻したいと考えている。それがこの「10 兆円規模の大学ファンド」で行えるのか、ファンドの運用の安全性を含め慎に議論する必要がある。
質問 4 同制度は止めるべき(競争的資金の側面があり制度はやめるべきではないか) 先端技術について、その技術をどう使うかは人間に委ねられている。しかし専守防衛を外れて戦争を押しすすめることへの使用はすべきではない。安全保障技術として特化することは競争的資金の分配と同じ方法であり、上記の回答どおり、基礎的研究を含め、包括的に研究全体を推し進め、安定的ベースによる研究環境を整えることが重要ではないか。

政権政策 2021 「6.平和を守るための現実的外交」にも記載しているとおり、安全保障に関しては平和主義と専守防衛を旨とし、人権や法の支配といった、普遍的価値を重視して進めていく。

質問 5 積極的に推進すべき 立憲民主党として政権政策 2021 (4暮らしの安心への投資)に「国公立大学授業料の半額」「私立大学生や専門学校生に対する給付型奨学金を大幅拡充」、また「貸与型奨学金については返還額を所得控除の対象にし、返還免除制度を拡充」、そして「ひとり暮らしの学生などに対する家賃補助制度を創設」と、具体的かつ包括的な生活支援を掲げている。特に現在、新型コロナウイルス感染症拡大により経済的、精神的、物理的に孤立する学生が増えており、その救済は可及的速やかに行われるべきである。

経済格差が教育格差を引き起こすことは、断じて避けなければならない。そのためにも立憲民主党の政権施策 2021「1新型コロナから命と暮らしを守り抜く」、「2『一億総中流社会』の復活」や、私、道下大樹の基本政策「コロナ禍から国民の『命・暮らし・経済』を守る」「雇用の安定と経済の活性化」「『子ども・子育て世帯・若者・女性』支援」「年金・医療・介護・福祉の充実」を通じて、互いに支えあい、すべての人が安心して暮らせる投資を行うことが重要であると考えている。

 

1 区 日本維新の会 小林悟
質問1 任命すべきである。 日本学術会議の任命権は首相にある。推薦をそのまま任命していては、既得権が強くなり過ぎて好ましくない。場合によっては任命拒否はあってよい。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 人材流出はできる限り食い止めるべきである。また、大学は経営効率化を進めるべきと考える。
質問3 創設に賛成する 第 204 回国会において、大学ファンドを立ち上げる国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律案に日本維新の会は賛成した。ただし、研究費確保に有力な手段となる可能性がある一方で、官製ファンドの成功例は極めて少なく、その運用には強く注視をする必要がある。
質問 4 積極的に推進すべき 軍民両用となるデュアルユースとなる技術には重要なものが多い。世界中で使われているインターネットはもともと米国防高等研究企画局 DARPA が開発した軍事技術だった。軍事技術に繋がるから研究するなとしてしまえば、新しい着想や研究は生まれない。
質問 5 積極的に推進すべき 憲法を改正し、教育無償化を憲法に盛り込むことで、政権交代をしても変わらない国是とすべきである。

 

北海道2区立候補予定者

2 区 自由民主党 髙橋祐介
質問1 その他 首相の任命権限の範中であると考えます。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき
質問3 その他

 

研究目的や手法に合致する適切な規模・期間・手段などの資金は必要と考えます。
質問 4 その他 設問の「軍事研究」の定義が不明瞭です。
質問 5 積極的に推進すべき

 

2 区 日本維新の会 山崎泉 回答なし

 

2 区 立憲民主党 松木謙公 回答なし

 

北海道3区立候補予定者

3 区 自由民主党 高木宏壽 回答なし

 

3 区 立憲民主党 荒井優
質問1 任命すべきである。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき
質問3 回答留保 基礎研究の重要性は十分認識しております。このファンドの問題点については皆様の懸念を踏まえ、勉強していきます。
質問 4 回答留保 日本学術会議が 2017 年 3 月に決定した「軍事的安全保障研究に関する声明」を尊重し、今後、制度について勉強します。
質問 5 積極的に推進すべき

 

3 区 日本維新の会 小和田康文 回答なし

北海道4区立候補予定者

4 区 自由民主党 中村裕之 回答なし

 

4 区 立憲民主党 大築紅葉 回答なし

 

北海道5区立候補予定者

5 区 自由民主党 和田義明 回答なし

 

5 区 立憲民主党 池田真紀
質問1 任命すべきである。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき
質問3 創設に反対する。
質問 4 同制度は止めるべき
質問 5 積極的に推進すべき

 

5 区 日本共産党 橋本美香 回答なし

 

5 区 無所属 大津伸太郎 連絡先不明で公開質問状を送付できなかった。

 

北海道6区立候補予定者

6 区 自由民主党 東国幹 回答なし

 

6 区 立憲民主党 西川将人
質問1 任命すべきである。 政治が科学に介入せず、学問の自由を尊重するため、科学者の代表機関である日本学術会議が推薦した 6 名の新会員は、恣意的に拒否することなく任命します。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 大学運営費交付金については、授業料の値上げ等につながらないよう、維持・増額を図り、大学財政を健全化します。

 

質問3 創設に賛成する。 基礎研究については、短期的な成果の見込めるものなどに限らず、広く継続的に実施できるよう、予算の充実化を推進すべきだと考えています。

「10 兆円規模の大学ファンド」については、助成を受けられる対象大学が一部に偏ることなく、幅広く地方大学まで対象とすべきです。

質問 4 回答留保
質問 5 積極的に推進すべき 給与所得は増えないまま、学費の高騰が続いています。学費負担の平均は、国公立でも年間約 52 万円、私立の場合は年間約 122 万円です。家庭の経済力に左右されず、誰もが同じスタートラインに立てる社会の実現を目指し、教育の無償化を推進する必要があります。

奨学金については、貸与型の場合、卒業後すぐに借金を抱えた状態となり、その後の生活を圧迫します。立憲民主党は、奨学金制度を改革し、給付型奨学金を大幅に拡充していく政策を掲げています。

また、農業を始めとした幅広い研究分野について、支援拡充をすべきだと考えています。

 

6 区 N 党 齊藤忠行 回答なし

 

北海道7区立候補予定者

7 区 自由民主党 伊東良孝 回答なし

 

7 区 立憲民主党 篠田奈保子
質問1 任命すべきである。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき
質問3 創設に賛成する。
質問 4 同制度は止めるべき
質問 5 積極的に推進すべき

 

7 区 日本共産党 石川明美
質問1 任命すべきである。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき
質問3 創設に反対する。
質問 4 同制度は止めるべき
質問 5 積極的に推進すべき 大学・短大・専門学校の学費をすみやかに半額に引き下げ、高等教育の無償化をめざします。また、入学金制度をなくすべきです。

 

北海道8区立候補予定者

8 区 自由民主党 前田一男 回答なし

 

8 区 立憲民主党 逢坂誠二
質問1 任命すべきである。 政府が明確な理由も明示せずに、従来の見解に反する任命拒否を行うべきでない。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 指摘の通り日本の研究の質が低下しており、交付金を増額すると同時に、国立大学法人のあり方を見直すべき
質問3 創設に賛成する。 科学研究は垣根なく広く、自由に行うべきものであり基金の内容を見直したうえで、予算を確保すべき
質問 4 同制度は止めるべき 軍事研究とその他の研究の協会が不明確な部分もあり制度を廃止したうえで、軍事研究の在り方を検討すべき
質問 5 積極的に推進すべき 日本では、家庭の所得によって教育の選択肢に格差が生まれている。例示のような政策は積極的に進めるべき

 

北海道9区立候補予定者

9 区 自由民主党 堀井学 回答なし

 

9 区 立憲民主党 山岡達丸 回答なし

 

北海道10区立候補予定者

10 区 立憲民主党 神谷裕
質問1 任命すべきである。 滝川事件を見る迄もなく学問、研究に対する国の介入には慎重であるべきと思います。不幸な時代を繰り返さないための最低限のルールと思います。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 我が国は技術立国と言われてきました。基礎研究を含めた様々な学問研究がこの国の繁栄を支えてきたと思います。この国の未来への投資、明日の為にも見直すべきです。
質問3 その他 研究のための予算を準備する事は必要だと思います。しかしその配分は政治でなく、科学者等、学問領域の皆さんが決めるべきと思います。また基礎研究は特に重要です。
質問 4 同制度は止めるべき
質問 5 積極的に推進すべき 最終的には大学の学費についても無償化していくべきと考えます。

 

10 区 公明党 稲津久 回答なし

 

北海道11区立候補予定者

11 区 自由民主党 中川郁子 回答なし

 

11 区 立憲民主党 石川香織
質問1 任命すべきである。 官邸政治が科学に介入した重大な問題です。学問や研究に権力が口を挟むことは許されません。立憲民主党は、今回否認された方々を任命すべきと考えています。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 北海道の大学関係者からご要請を受けている深刻な問題です。本来、学問、研究、人材の育成は不断の支援が大切ですが、それに反して、減少を方針とする政策を見直します。国際的な研究を支援するためにも積極的な支援が必要です。特に現行の大学運営費交付金については見直し、大学財政が安定するようにつとめます。
質問3 創設に賛成する。 広範で多様な研究を国は支援する必要があります。過剰な競争や一部に偏在するような政策ではなく、長期的な視野に立ち、将来へつながるよう、研究を支援すべきです。特に、地方の大学や研究も対象とすべきです。
質問 4 回答を留保します
質問 5 積極的に推進すべき 経済の格差によって教育機会を失うことのないように、教育の無償化に向けた方向性で政策を展開していきます。立憲民主党は、奨学金制度改革により、給付型奨学金を増やして行きます。また、進路に不安を抱くことがないよう、大学院生や博士号取得の研究継続、就職につながる環境を整える必要があります。農学系など、国民生活の基本となる食料、農林水産など地域に根ざした研究の成果が現在の地域の一次産業の基盤となっており、志を持つ学生を支援して行きます。

 

北海道12区立候補予定者

12 区 自由民主党 武部新 回答なし

 

12 区 立憲民主党 川原田英世
質問1 任命すべきである。 政治が科学に介入せずに、学問の自由を尊重するため、日本学術会議が推薦した 6 名の新会員は、恣意的に拒否することなく任命するべきです。
質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 国立大学運営交付金は、授業料の値上げ等につながらないよう、維持・増額を図り、大学財政を健全化します。
質問3 創設に賛成する。 基礎研究については、短期的な成果の見込めるものなどに限らず、広く継続的に実施できるよう、予算の充実化を推進すべきと考えています。「10 兆円の規模の大学ファンド」については、助成を受けられる対象大学が一部に偏ることなく、幅広く地方大学まで対象にすべきです。
質問 4 その他 ご指摘のような軍事研究への懸念はあります。防衛省の外局として 6 年程度の組織に対して十分なチェックが必要です。
質問 5 積極的に推進すべき 課程の経済力に左右されず、誰もが同じスタートラインに立てる社会の実現をめざし、教育の無償化を推進するべきです。奨学金については、貸与型の場合、卒業後すぐに借金をかかえることになり生活を圧迫しますから、給付型奨学金を大幅に拡充します。

 

12 区 日本共産党 菅原誠
質問1 任命すべきである。 日本学術会議は発足当初より高度な自主性が与えられております。従って

6 人全員が任命されなければなりません。

質問2 毎年減少させる政策は見直すべき 交付金および施設整備費補助金の増額、交付金を各大学の標準的な経費にもとづき積算する、財政力の弱い大学に厚く配分し、大学間格差を是正する、対策が必要です。
質問3 創設に反対する。 他の行政法人のファンドも運用損を出し、リスクが大きいです。国立大学運営費交付金など国の責任で確保すべきです。
質問 4 同制度は止めるべき 憲法の平和原則に違反、学問の自由を脅かすこの制度は廃止し、科学・技術の研究開発は非軍事・平和目的で、その成果は暮らしと産業の発展にこそ活用されるべきです。
質問 5 積極的に推進すべき お金の心配なく学べるようにすることは政治の責任です。国が財政に責任を持ち、授業料半減、入学金をなくす、給付型奨学金をつくること、奨学金返済の負担軽減を進めることを、日本共産党は提案しています。

 

 

 

 

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