川村雅則ゼミナール「コロナ下3年目における学生アルバイト等(地域研修報告書2022)」

北海学園大学経済学部で取りまとめられている『地域研修報告書2022』に掲載された、ゼミで実施している大学生のアルバイトや学費負担・奨学金利用など(以下、学生アルバイト等)に関する2022年度の調査結果の要約版です。

聞き取り調査とアンケート調査を通じて、コロナ下3 年目における学生アルバイト等の現状把握につとめました。また今年度は、調査の最終的な取りまとめ結果だけでなく、調査・研究活動における「思考」の過程や「作業」の過程についても、インターネット上で随時配信を行いました。調査の失敗体験についても、貴重な情報と考えてのことです。これらもあわせて、どうぞお読みください。

 

今年度の学生アルバイト白書は連載で配信(連載1~12)

 

 

調査の概要

6月中旬から7 月下旬にかけて、知人・友人を対象とした聞き取り調査を行い、9 月29 日から10月5 日にかけて、ウェブアンケート調査を実施した。有効回答は、前者が計39 人(1部29 人、2 部10人)で、後者が431 人(1部289 人、2 部142 人)である。

調査の問題意識は、(a)初期に比べると落ち着いたようにみえる学生の就業(アルバイト)機会・勤務時間数の確保状況を明らかにすること、とくに対面授業が再開されたことでアルバイトをしづらくなったという声が聞かれたので、その点などを尋ねた。(b)シフト制勤務に関する問題や残業時の賃金支払い単位に関する問題など、ワークルールに反するような経験の有無や実態を尋ねた。(c)過去の調査内容を改善し、学費負担や奨学金利用の状況をより詳しく把握した。

以下では、アンケート調査の結果を幾つか紹介する。

 

アルバイト就業

 

図表1  対面授業が開始されたことにともなう勤務状況や収入の変化【複数回答可】

合計[単位:人・%]  298 100.0
勤務回数や勤務時間数を減らした  111 37.2
勤務時間帯や曜日を変更した  112 37.6
アルバイトを辞めたり変えたりした  28 9.4
アルバイト収入が減った 72 24.2
むしろ勤務回数や勤務時間数が、以前よりも増えた  16 5.4
以上のような変化はとくにない  92 30.9

 

今年度から対面での授業開講が原則となった。対面授業が再開した際にすでにアルバイトをしていた学生を対象にして、対面授業再開にともなうアルバイトの勤務状況や収入の変化を尋ねたところ(複数回答可、図表1)、「勤務回数や勤務時間数を減らした」、「勤務時間帯や曜日を変更した」がそれぞれ4 割弱を占めるほか、「アルバイト収入が減った」が4 分の1、「アルバイトを辞めたり変えたりした」も1 割みられた。

 

図表2  所属の部別にみた、夏休み明け現在の1週間の勤務時間数

  1 部(昼間部)   2 部(夜間部)
合計[単位:人・%] 244 100.0 119 100.0
5 時間未満  16 6.6 7 5.9
5 ~ 10 時間未満 46 18.9 17 14.3
10 ~ 15 時間未満  59 24.2 17 14.3
15 ~ 20 時間未満  74 30.3 34 28.6
20 ~ 25 時間未満  34 13.9 24 20.2
25 ~ 30 時間未満 11 4.5 8 6.7
30 時間以上  4 1.6 10 8.4
無回答 2 1.7

 

週の勤務時間数は(図表2)、緊急事態宣言による営業時間の短縮や行動制限が要請されたコロナ1、2 年目に比べると、回復しているようにみえるものの、コロナ前との比較については別途検討が必要である。

 

図表3 賃金(時間外労働、残業)の支払い単位は何分か 全体=363人

 

アルバイト先でのワークルールの遵守状況を尋ねた。

コロナ1,2 年目の調査では休業手当の不支給状況を明らかにしてきたが、今年度は、賃金(時間外労働、残業)の支払い単位を尋ねた(図表3)。

「1 分単位で支払われている」のは4 割にとどまった。「わからない」が21.2%、「15 分単位で支払われている」が19.6%である。図表は示していないが、自分の現在のアルバイト先で学生アルバイトが有給休暇を使うことができるかどうかについても、「できる」は41.9%にとどまり、「できない」が21.2%、「わからない」が36.1%である。

 

図表4 シフトに関する問題状況の有無【複数回答可】

 

回答者の約9 割がシフト制の下で働いている。休業時における所得保障などシフト制労働者の保護・権利擁護が政策的な課題になっていることもふまえて、今年度の調査では、シフトに関する状況を詳細に尋ねた(シフトが組まれる周期、希望通りにシフトに入れるか、問題状況の有無、総合的な評価など)。図表4はその一部である。

「シフトの決まるのが遅い」が3 分の1 強で選択されているほか、シフトが決まった後にシフトに入れないかどうかの照会、急にシフトに入れられる、そして、割合は小さいが、決まっていたシフトの取り消しといった問題が確認された。

 

 

経済的な状況

 

図表5  所属の部別にみた学費負担・学費の原資(【複数回答可】、そのうち主な一つ)

1部 2部
合計[単位:人・%] 289 100.0 142 100.0
学費負担・学費の原資【複数回答可】 親の収入 259 89.6 87 61.3
高等教育の修学支援新制度 46 15.9 36 25.4
その他の給付型奨学金 22 7.6 13 9.2
貸与型奨学金 95 32.9 57 40.1
自分自身のアルバイト収入 47 16.3 58 40.8
その他 6 2.1 5 3.5
合計[単位:人・%] 289 100.0 142 100.0
そのうち主な学費負担・学費の原資 親の収入 218 75.4 64 45.1
高等教育の修学支援新制度 22 7.6 18 12.7
その他の給付型奨学金 2 0.7 2 1.4
貸与型奨学金 39 13.5 27 19.0
自分自身のアルバイト収入 3 1.0 28 19.7
その他 4 1.4 3 2.1
無回答 1 0.3    

注1:高等教育の修学支援新制度には、「授業料の減免、給付型奨学金」と付記。
注2:貸与型奨学金には、「返済を必要とする奨学金」と付記。

 

学費負担・学費の原資について、複数回答可で尋ねた後、そのうち主な一つを選択してもらったのが図表5である。

前者でも後者でも、「親の収入」が最多であるが、2 部(夜間部)では、それぞれ61.3%、45.1%の割合にとどまり、1 部(昼間部)の89.6%、75.4%と大きな差がみられる。後者(主な一つ)で「貸与型奨学金」を選択しているのが、1 部では13.5%、2 部で19.0%みられるほか、2 部では「自分自身のアルバイト収入」も19.7%に選択されている。

 

図表6 所属の部別にみたアルバイトをする理由

  1部 2部
合計[単位:人・%] 244 100.0 119 100.0
遊び・趣味等に使うお金を稼ぐため 79 32.4 10 8.4
どちらかといえば遊び・趣味等に使うお金を稼ぐため 78 32.0 19 16.0
どちらかといえば学費・生活費等を稼ぐため 20 8.2 19 16.0
学費・生活費等を稼ぐため 23 9.4 43 36.1
どちらも半々 44 18.0 28 23.5

 

実際、アルバイトをする理由(図表6)で2 部では、「学費・生活費等を稼ぐため」、「どちらかといえば学費・生活費等を稼ぐため」が合計で5 割を超えている。「どちらも半々」まで含めると全体の4分の3 を占める。アルバイトをできなくなれば、修学の継続が困難になることが予想される。

 

図表7 コロナ下での、自分を含む家族内での仕事や収入が減った経験【複数回答可】

コロナ下での、自分を含む家族内での仕事や収入が減った経験(複数回答可、図表7)では、「家族では仕事や収入が減った者はいない」が62.4%であるが、「親など学費負担者の仕事や収入が減った」が19.0%のほか、「あなた自身(自分自身)のアルバイト収入が減った」が12.1%である。

より精度の高い調査・研究活動を行い、必要な取り組みや政策を関係者に提起していきたい。

 

 

(関係記事)

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載12)』

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川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2021』

 

 

 

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