川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載3)』

連載3は、2部(夜間部)ゼミの学生による、2部学生からの聞き取り調査の結果です。

 

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載1)』 

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載2)』

 

今回2部では、話を聞きやすい友人・知人10人から聞き取りを行いました(①さん~⑩さんで表記)。10人から聞いた話の特徴を表1にまとめました。聞き取りの詳細は、「■聞き取り調査結果の詳細」にまとめています。

次に、10人の聞き取り結果や聞き取り調査の経験を「座談会」形式で振り返りました。座談会を設定したわけではなく、調査結果の発表会・検討会での議論ややりとりを再構成したものです。

聞くべきこと、課題をまだまだ残した聞き取り調査の結果ですが、どうぞお読みください。

 

 

■学生10人からの聞き取り調査結果の要約

 

表 10人の聞き取りの要約(業種・職種、仕事内容、勤務状況(働き方・勤務時間数・シフト数)、問題状況、学費負担・奨学金利用)

コールセンターの深夜時間バイト。23時から8時まで(休憩2時間を含む)×週5日勤務。生活費のために働いている。職場環境や時給には満足。しかし学業との両立が、対面授業になってから難しくなっている。一人暮らしで親からの仕送りはない。
小売店(雑貨)勤務。レジと品出しが中心。週3日勤務で、平日は9時半から15時まで、日曜日は9時半から夕方までの勤務で、週17時間半程度の勤務。時給は平日900円、平日の17時以降と土日祝は930円。職場環境に不満はない。学費負担は本人で、奨学金(貸与型 5万4千円)で支払っている。
飲食店で働くホールスタッフ。仕事内容は、注文を調理場に伝えて、商品をお客様に出すほか、開店前と閉店後の準備作業。サイドメニューの調理などを行う。時給は900円。9時間拘束の通し勤務には手当が支給。学業に影響が出ない適度に勤務している。ゆるい職場の雰囲気を好んでいるが、準備作業30分に賃金が支払われないことなどが不満。
カラオケ店で週に3日、1日5時間程度勤務。好きな曜日に働くことができる。お店はあまり忙しくない。仕事内容は、接客・キッチン・店内清掃と多岐に渡る。時給は920円。一人暮らしだが仕送りはない。奨学金とアルバイト収入で生活費を賄っている。
飲食店で働く。仕事内容は主に接客、品出し、レジ。勤務時間はおおむね、9時半から14時半まで。休憩はなし。平日3日ほか日曜日に勤務。時給950円。時給の低さと本社のスタッフの威圧的な態度に不満があるが、アルバイト同士の人間関係は良好で働きやすい。実家暮らし。学費は奨学金(貸与型)で支払っている。
農作業スタッフ。日雇い、週3回から5回、1日6時間から8時間の勤務。賃金は時給1000円+交通費有りで、支払いは日払いかつ手渡し。仕事内容は、その日によって様々であるが、体力仕事。1日の休憩は複数回有り。人間関係は良好で不満は無し。学業面で、オンライン授業に慣れてしまい対面授業に苦しむ。
飲食店で4年働く。仕事内容は接客、厨房の他、マネージャー業など店舗運営を行う。シフトは自由。平均月90時間ほど働く。時給920円、月収8万円ほど。交通費は出ない。覚えることが多いのと、平日と土日祝日の仕事量・忙しさに2倍近い差があるのに、時給が変わらないことに不満。
小売店(専門用品)で働く。レジスタッフ。1日約5時間×週2,3日の勤務。半月ごとのシフト制。オンライン授業がメインのため、学業への影響は無い。社会人経験を経ていることもあり、働くことに意義を感じている。時給920円だが、収入に興味はないとのことで、月収は分からないと回答。1年契約の仕事だが、お店の売り上げ不振で今後も働き続けられるかは不明。
2つの仕事を掛け持ち。そのうちの一つである居酒屋では、皿洗い、調理補助、仕込み作業。週4回程度の出勤。勤務時間は10時~16時の固定。もう一つの仕事は、飲食店。勤務時間数は週8時間ほど。合計すると週30時間を超える。アルバイトによる疲労が学業に影響。居酒屋では、時給1,000円、月収は9万円を目安に働く。学費は親負担。給付型奨学金3万円を利用し生活費にあてている。
居酒屋ホールスタッフ。仕事内容は、注文を聞いたりドリンク・フードを提供すること。好きなときに勤務に入れる。1日の勤務時間は、混み具合によってバラバラだが、3〜5時間であがれる。主な勤務時間帯は18:00-22:00で勤務。時給は1000円。交通費あり。実家暮らしで、給付型奨学金を学費にあてている。

出所:学生たちが作成。

 

 

■聞き取り調査を終えての「座談会」

 

川村:10人の聞き取りを終えました。たった10人の結果から学生アルバイトにみられる特徴を引き出すことは難しいと思いますが、一方で、今回の調査にあたり、過去の調査結果や類似の調査結果などで勉強してきました。それらも踏まえて、この10人の結果・アルバイト経験から感じたことなどを発言してもらえますか。

 

学生:学費の負担や奨学金の利用が特徴だと思いました。①さんは、親からの仕送りなしで、深夜アルバイトに従事しています。それだけアルバイト収入への依存度が高いのではないでしょうか。

 

学生:④さんも同じく仕送りはなしです。ただ④さんの場合は、給付型と貸与型の奨学金を利用している点が①さんとの違いです。「実家暮らし」で「学費は親が負担」で「奨学金利用もなし」というケースの一方で、こうしたケースが気になりました。

 

川村:そうですね。この学費負担・奨学金利用をめぐる問題は、今日の大学生の生活を考える上でチェックすべき点ですね。ほかはいかがでしょうか。

 

学生:アルバイトが随分と長時間であったり、掛け持ちでアルバイトをしているケースがみられます。①さんは週5日×8時間労働です。⑨さん⑩さんは、アルバイトの掛け持ち。⑨さんは、掛け持ちバイトのために疲労で遅刻や欠席が増えたことや、課題の提出やテスト勉強の時間が確保できずにいることが悩みとして語られています。

 

学生:長時間労働の部類に入るか分からないのですが、⑦さんは、マネージャー業務など店舗運営に携わる仕事に従事していることが特徴です。資材発注や人件費管理などもしているようです。

 

川村:時給は920円ととくに高くありませんが、ずいぶんと責任ある仕事をしているようですね。労働負担の大きさが目立つケースとして分類することができるでしょうかね。この視点で、学生アルバイトの仕事内容などをもう少し詳細に把握する必要がありますね。

 

学生:関連して、対面方式の授業が再開されたことで、アルバイトとの調整で苦労していることが語られています(①さん、⑨さん)。オンラインと違い、授業に出席をしなければなりませんので、移動の時間も含めて負担が増えます。

 

川村:いずれ対面授業の生活様式に移行していくとは思いますが、3年生や2年生は、対面授業方式がメインである最初の年度ですから、注意してみていく必要があるかもしれませんね。ほかはどうでしょうか。

 

学生:ワークルールに明らかに違反しているケースがみられます。例えば③さんは、開店前の準備に賃金が発生していなかったり、時間外は30分単位で計算されているようです。ほかに、⑤さんも賃金が15分単位で処理されているようです。

 

川村:賃金の支払い時間の単位をめぐるこの問題(本来は1分単位)はちょうど社会的にも話題になっていましたよね。

 

学生:ほかにも、③さんは、有給休暇が取得できないと回答しています。

 

学生:有給休暇については、授業では、半年働けば付与されると授業では学びましたけれども、説明を受けていなかったり本人が制度を理解していないケースもありますね。

 

学生:あとは、求人情報誌に記載されていたこと(「丁寧な研修」)と実態が異なったり(⑤さん)、雇用契約書を受け取っていないというケースもありますね(⑩さん)。

 

川村:一方で、1分単位で支払い賃金が処理されていたり、有給休暇制度が適切に利用できている、しっかりしたアルバイト先もみられますね。ちなみに、ワークルールが守られているかどうかは、そもそもインタビューの側がきちんと知識をもって質問をする必要がありますよね。皆さんも、引き続きしっかり勉強しましょう。

 

学生:2部生は、長時間を働いている学生もいるため、年収103万円を意識した働き方がみられます(⑦さん、⑨さん)。アルバイトの位置づけがそもそも、学費や生活費を稼ぐため、という学生がみられます。

 

学生:ただ、そういう学生も含めて、賃金水準は全般的に低いのではないでしょうか。一番高いので、深夜業務をしている①さんですよね。ほかは農家バイトの⑥さんと、飲食店の⑨さん・⑩さん(いずれも時給1000円)を除くと、皆さん、時給は900円台です。

 

学生:店舗運営に関する業務をしているという⑦さんも、賃金は900円台ですからね。

 

川村:そうですね。ところで、今回の聞き取り調査活動はどうでしたか。初めての経験で苦労した方も多いのではないでしょうか。

 

学生:話を細かく聞くのは意外に難しかったです。とりあえず聞いてみたらなんとかなるかなと思いましたが、中間発表の際に、自分が全然聞けていないことにがっくりきました。

 

川村:アルバイトのことで学生同士で話が盛り上がるのと、聞きたいことや聞くべきことを「聞き取る」のとでは、意味合いが異なりますからね。時間切れでこれ以上の聞き取り・確認作業は行いませんでしたが、まだまだ聞くべきことが結構ありましたよね。

 

学生:私は、聞いたことを文字に起こすのが難しかったです。ちゃんと聞けているのにそれが書けていないのでは、もったいないじゃないか、と先生から何度も指摘をされました。

 

川村:読み手にとっては、書いてあることが全てですからね。まさか皆さんが、読み手に一つ一つ補足説明してまわれるわけではないでしょ。そういう意味では、しっかり聞き取って、しっかり書き切る、という基本作業ができるようになることが大事です。さらに言えば、話を聞く際には、問題意識や関連する知識・情報に基づいて聞くわけであって、漠然と質問をしているわけではないのです。そのプロセスを理解してもらうことが大事だと思います。

 

学生:こうして文字に書いてみたり発表してみることは社会人になる上でのトレーニングになると思いました。

 

川村:繰り返し経験をしていきましょう。ほかはいかがでしょうか。

 

学生:自分は小売りで働いているのですが、いろいろな業種で働いている学生がいるんだなと思いました。例えば農家バイトは印象に残りましたし、コールセンターで夜に働く学生がいるというのも大変だなと思いました。

 

川村:学生も、「社会的分業」の網の目に入って社会を支えていますよね。学生という労働力がなかったら成り立たない産業は少なくないのではないでしょうか。そういう視点で、自分たちが従事している仕事の内容などをもっと調べてみるとよいかもしれません。

 

学生:ただ、ゼミでもよく話題になりますけれども、本来学生は勉強する立場ですよね。アルバイトをしないと学費を支払えないのはおかしくて、なるほど、日本は学費が高い国なんだなということを今回の調査でも実感しました。過去の調査でも、2部生の場合には、本人がアルバイト収入や奨学金で学費を負担しているケースが少なくありませんでしたよね。

 

学生:奨学金のことで言えば、自分は給付型と貸与型を利用しています。今回の聞き取りの対象では、利用している人もいれば利用していない人もおり、利用している人の中でも、給付型だけの人もいれば、給付型+貸与型、貸与型のみ利用している、など様々でした。奨学金の制度や利用状況などはもう少し調べてみたいです。

 

学生:社会的分業という視点はなるほどと思いました。ただ、授業でならった雇用のジャストインタイムとはちょっと違うかもしれませんが、アルバイトが都合良く使われている面もあるのではないでしょうか。

 

学生:ゼミで取り上げたテーマですが、シフト制勤務には、希望するときに働けるというメリットがある一方で、勤務に入れないと所得が保障されないという問題が今回のコロナ禍で明らかになりましたよね。自分は、好きなときに勤務に入れるシフト制に疑問をもっったことはとくにありませんでした。

 

川村:そうですねぇ。都合良く使われているようにみえるケースも残念ながらありますね。ワークルールも、ちゃんと守られていないところがありましたね。学生時代のアルバイト体験を否定するものではまったくありませんが、色々な意味で学びの機会になって欲しいと思います。引き続き調査・研究をしていきましょう。

 

 

■聞き取り調査結果の詳細

 

①さん

①さんは、派遣で斡旋されたコールセンターで働いている。

 仕事は、夜23時から朝8時までの労働で、あいだに2時間の休憩がある。勤務は、月、火、木、金、土曜日の週5日入っている。アルバイトの理由は、生活費のためである。

時給は、交通費が込みで1250円である。深夜割増はこれとは別につく。月の収入は15〜20万円ほどになる。タイムカードは1分単位で記録される。

残業もなく、有給も取れるため、労働環境にあまり不満はなく受け取った給与の額についても満足している。

ただ問題は、学業との両立が難しいことだ。以前まではオンラインで好きな時間に勉強できていたが、今年度から対面授業が多くなり、現在は出席するのが大変だという。課題はなんとか期限までに提出し終えているが、趣味に充てる時間も減り大変だという。アルバイトを変える気はないのかを尋ねると、ほかのバイトは時給が下がってしまうのと、今の仕事は体力を使わない点でよいから、変える予定はないとのことである。

 現在一人暮らしの①さんには、親の仕送りはなく、学費などもすべて自分で賄っているという。奨学金は給付型5万円を利用している。高等教育の就学支援新制度の世帯には該当しない。

今回の聞き取りで私が感じたのは、2年生である①さんが、授業がオンラインから対面に移行する中で、シフトにどの程度入れば学業とアルバイトの両立をとれるかの塩梅が分かっておらず、苦労しているように思えたことだ。

 

 

②さん

小売店(雑貨)に勤めて、2年が経過した②さんに話を聞いた。

②さんの勤務は、週3日×平日は9時半から15時まで、日曜日は9時半から夕方まで(休憩を含む)である。仕事内容は、レジと品出しが中心である。

時給は900円(平日)だが、平日の17時以降と土日祝は930円である。賃金は1分単位で支払われている。収入は、交通費を含めて月6~8万円程度である。交通費をもらえる時期によって収入が異なる(定期区間内にアルバイト先があるため、定期のない長期休暇期間中のみ交通費が支給)。

勤務はシフト制で、1ヶ月ごとにシフトを決めている。年次有給休暇制度もきちんと使うことができる。②さんも申請して取得しているという。有給休暇はどんなときに使うのかを尋ねたところ、例えば年末年始が勤務にあたっていた場合や、就職関係のイベントに参加しなければならないとき、などがあげられた。

コロナ禍での影響を聞いた。コロナ禍で休業になることが2回あったという。店舗がテナント内にあるため、テナントの休業による影響を受けた。1回目は、2020年度の初頭である。休業手当が支給されたかを聞いたところ、有給休暇の取得か他店での勤務で対応したという。

2回目の休業は2021年の5,6月で、土日だけ店舗が休業したとのことである。このときもやはり休業中は有給取得か他店での勤務で対応した。1回目と異なり、土日だけの休業であったため、1回目のときよりも影響は少なかったという。

アルバイトをしている理由は、お小遣い稼ぎと貯金のためである。このお店を選んだ理由は、仕事内容に興味があったためである。

現在の勤務シフト量や収入には満足しており、希望する働き方ができているという。

学費負担者は②さん本人で、奨学金から支払っている。奨学金は、第一種の貸与型で月54,000円を借りている。

今年から対面授業が増えたが、アルバイトにはとくに影響はない。以前と同じ働き方をしている。ただ、対面授業が増えて(3年次である②さんにとって、今年が、対面の多い最初の年に該当するという事情もあって)昨年よりも忙しくなったと感じているという。

 

 

③さん

飲食店に勤めて約1年が経つ③さんに話を聞いた。

仕事は知人からの紹介で始めた。面接の際には「ホール」と言われたが、現在は多少の調理(キッチン業務)も行っている。雇用契約書にはどう書かれているか聞いたが、「契約書はない」とのことだ。

コロナ初期と比べて売上は多少落ちているように感じるが、客の入りはいいほうではないかと思っている。

仕事内容は、注文を調理場に伝えて、商品をお客様に出す。開店前と閉店後の準備作業。サイドメニュー等の調理などである。

シフトは1ヶ月単位で提出している。大体25日ごろに提出を求められる。シフトは、固定ではなく休み希望を出せば必ず休むことができる。

時給は900円で、曜日や時間帯による加算はとくにない。休憩(30分)にも時給が発生する。ただ、開店前の準備作業には給料が発生しない。残業代も、30分単位で処理されている。有給制度もない。

これらのことには不満がある。またプライベートへの介入が多少あることにも不満がある。その反面、社員さんがみんな優しい人で、お店の管理がぎちぎちしていない点がよい。休みがとりやすい点もよい。ただ、やめたいと思ってもやめづらそうに感じている。

学業との両立はできている。そこまでアルバイトはしていない。③さんは、1年生の中頃まで貸与型の奨学金を利用していたが、親の仕送りや自身のアルバイトの収入で学費や生活費をまかなえると判断して、現在は奨学金を借りていない。

 

 

④さん

カラオケ店に勤めてまだ数ヶ月の④さんに話を伺った。

この仕事は求人サイトの検索で見つけた。契約書などは会社のマイページからいつでも確認ができる。昔からカラオケが好きで興味を持っていたのでこの仕事を選択した。

勤務は、11時~17時までの6時間拘束で、あいだに1時間の休憩をはさむ5時間勤務である。週に3日程勤務している。月に一度希望を提出するシフト制で、働く曜日は特に固定されていない。好きな曜日に働くことができる。

仕事の内容は、接客・キッチン・店内清掃と多岐にわたるが、他店舗との競合でお店自体はあまり忙しくはないらしい。コロナの影響が出ているわけではとくにないという。

時給は920円で、22時以降になると割増がついて1150円になる。また、交通費は1日400円ほど支給されている。

ワークルールの遵守状況に関連して、有給休暇制度があるかどうかや残業の支払い時間の単位を尋ねてみたが、お店からとくに説明は受けていないという。

勤務シフト量や収入に関しては、概ね満足しているとのことである。自分が希望すればほぼ100%融通を利かせてくれるので、学業への支障もないという。

一人暮らしの④さんだが、両親からの仕送りは無い。学費負担者は④さん本人で、奨学金(給付型、貸与型)とアルバイト収入で全てを賄っている。

 

 

⑤さん

飲食店に勤めて3ヶ月が経つ⑤さんに話を聞いた。

バイト先は、タウンワーク経由で応募した。タウンワークには「丁寧な研修」があると書かれていたが、実態は異なった(「嘘だった」)。丁寧な研修など受けられていない。お店が常に混んでいるせいで、仕事が急かされ、最初からバタバタと働き始めている。雇用契約書はもらっていない。

仕事の内容は、主に接客、品出し、レジである。

勤務時間は、おおよそ、午前9時30分から午後14時30分である。休憩はない。時間外労働もない。平日3日のほか、日曜日が主な出勤日である。

時給は950円で、月の収入は8万5千円ほどになる。交通費は1日1000円まで支給される。早出の勤務では出勤時間の30分前から給料が出るという。⑤さんには残業はないが、残業代は15分単位で支給されているとのことである。

シフトについては、毎月決まった日までに休み希望を提出する。勤務は2週間ごとに提示される。シフトは融通がきく。また、入りたい勤務日数などに制限はないというのが⑤さんの評価だ。但し、通し勤務である「フル」の場合には若干の制限があるという。

契約時に有給休暇制度の説明があった。有給休暇は半年経てば取得が可能だと聞いている。ただ、新店のため本当に取れるかはまだわからない(誰も取得したスタッフがいない)。

不満は、時給が安く、夏でも長袖の制服で暑いこと、残業代の支払い単位が1分単位ではないこと、本社の社員に威圧的な態度が見受けられることである。

ただ、その反面で、パート・アルバイトの人たちとの関係は良好で、働きやすいという。またシフトの融通がきくところもよい。

以前も別の飲食店でアルバイトをしていたが、扱っていた商品の関係でトラブルもあった。今のお店はそういうことがない。オープンしたばかりだが、客の入り・売り上げは良いと思うとのことである。1ヶ月前に比べると人手も足りてきているようだ。

アルバイトによる学業への影響はない。授業には7割ほど出席し、課題も9割ほどがこなせている。ただ、アルバイト先が少し遠いため早起きしなければならない。

⑤さんは実家暮らしである。学費は、貸与型の第一種奨学金(5万円台)で支払っている。

 

 

⑥さん

農作業バイトが3年目になるという⑥さんに話を聞いた。

インターネットで日払いのアルバイトを探しているときに、日雇いバイトのアプリを見つけて、このアプリ経由で今の仕事を見つけた。今も毎日日雇いで契約をしているのか尋ねたところ、現在はアプリの利用はしていないとのことである。当初は日雇い契約で働いていたが、途中からは一定期間で契約を結んでいるとのことである。ただ、その詳細は不明である。

⑥さんが行っている仕事は様々である。ハウスの設立や解体、苗植え、除草、収穫、作物へのバーコードシール貼りなどを行っている。野外でのアルバイトであるため、雨天時は中止になることもある。一日の仕事の例をあげると、5人でキャベツ収穫を行い、1箱8玉を400箱収穫する。キャベツを収穫して箱に詰めたり、箱を組み立てたりする。

勤務時間は、8時から16時まで、7時から15時までなど、作業内容によって変化する。昨年度は平日5日間勤務していたが、現在は週3回勤務が平均である。⑥さんの都合による。

シフトは、仕事さえあれば必ず入ることができる。雨天時には、中止の場合もある。

時給は1000円で、交通費500円が支給される。給与は昨年までは、日払いかつ手渡しで支払われていた。今年は、その月に勤務すると思われる金額を事前に手渡しで支払われているという。

雨天で勤務が中止になったときはどうするのか疑問に思ったので尋ねたところ、その分は同じ月の別日で勤務するか、もしくは翌月での勤務で賄うのだという。雨天で仕事が休みになることも考慮した(少し少なめの)金額が支払われているようである。

アルバイトにはとくに不満はない。アルバイト先には、雇い主のほかパートさんが働いているが、みな優しくて良好な関係を築けているようである。また、自分の都合を踏まえたシフト調整ができることや、休憩が昼休憩の1時間だけでなく、10分から15分の休憩が2回ある(この小休憩は、飲み物が支給される上に勤務時間として換算される)のも⑥さんが働きやすいと感じている点だ。

大学の授業には基本、出席することができている。対面とオンラインで選択できる科目では、オンラインを選択している。課題も提出できている。学費は親が負担している。

 

 

⑦さん

飲食店に勤めて4年が経過した⑦さんから話を聞いた。

仕事を始めたきっかけは友人の紹介である。

仕事内容は、始めた当初は接客と厨房での調理だったが、長く働いているうちに、マネージャー業など店舗運営に携わること全般の仕事を行うようになった。具体的には資材発注、人件費管理、その時に最も良いセールスが取れるように細かい指示出しや目標設定、通常の運営するのに問題がないかの確認を30分から1時間に1回行うなどがある。

働くのが好きな⑦さんは、扶養の103万の壁ギリギリまで稼ぐ計算をしながらシフトに入っている。月の勤務時間数は平均で90時間ほどだという。自由シフト制なので、固定された曜日や時間はなく、週に一回シフト希望を提出し、シフトが作成される。週一で決められるのはたしかに働きやすいかもしれないが、お店側が大変ではないかとふと思った。しかしそうなっているのだというのが⑦さんの回答である。

コロナ禍でも、仕事は減ることなく働き続けることができていた。コロナ禍では、イートインする客こそ減ったが、(スムーズに提供出来る)テイクアウトの利用客が増えたことで、売り上げ状況にさほど変わりはなかったという。

賃金は、時給920円で、月の収入は平均で8万円である。1日8時間を超えた場合には残業手当がつく。賃金の支払い時間の単位は1分ごとである。交通費は支給されていない。福利厚生として、社割30%offで店舗で商品を購入出来る。

有給を取っていた先輩からたまたま聞いたので、有給休暇制度はあると思うのだが、ほとんどの人が知らないし、使ってもいないとのことである。お店からもとくに説明を受けていない。

店舗運営に関わって覚えることが多いのと、土日祝日の店舗の混み具合は平日の2倍以上になり仕事量も増えるのだが時給は変わらない点が⑦さんの不満だ。逆に、希望にそってシフトを1週間ごとに(「タイムリーに」)自由に決められるのは、大学との両立がしやすく気に入っている。幅広い年代の人と関わりをもって働くことができている点にも満足している。

実家暮らしで、アルバイトで稼いだお金は自由に使える。奨学金も利用していない。

 

 

⑧さん

友人の紹介で半年前より、専門用品の小売店で働いている⑧さんに話を聞いた。彼はもともと高卒で働き始めたが、人間関係がうまくいかなかったのと体調を崩したために半年で離職して、その後、本学に入学している。

アルバイト先では、50時間の手厚い研修(5時間は座学、残り45時間はサポートを受けながら実務)を受けて今に至る。雇用契約書も受け取っている。

契約は1年更新の仕組みである。ただ、お店の売り上げがあまり良くないらしく、この先も雇用更新がされるかは分からないという。

⑧さんの担当はレジ業務で、勤務は、週2,3日ほどである。1日の勤務時間は、10時半から15時半程までが多い。休憩はない。半月ごとのシフト制勤務で、休み希望も通る。時間外労働は基本的にない。関連して、タイムカードは5分単位で処理されているとのことである。

賃金は、時給920円である。研修期間中も同じ金額だった。交通費500円が別に支給されているほか、1年ごとに時給が10円昇給する。福利厚生として社員割もある。制服があり、お店から借りることができるが、自店で買ったものの着用が可能のため、⑧さんは、社員割でよく買い物をするそうである。

有給休暇もあるが、⑧さん自身はまだ使ったことはないそうである。

同じ店舗には友人も働いているほか、人間関係は良好である。ただ、土日は業務が忙しくなるのが大変である。

学業面では、オンライン授業がメインのため、アルバイトによる影響などはとくにない。

お金には困っていないらしく、毎月の収入金額はとくに気にとめていないようで「わからない」という。実家暮らしで、学費は親負担である。奨学金は利用していない。

 

 

⑨さん

飲食店を掛け持ちしている⑨さんに話を聞いた。以下は、そのうちの一つの聞き取り結果である。

この仕事は、インターネットの求人で見つけた。雇用契約書は直接もらえた。

仕事の内容としては、皿洗い、調理補助、仕込み作業である。週4回程度の出勤で、勤務時間は10-16時の固定で働いている。シフトの制限はない。出たい時に出られる。完全希望制である。

時給は1,000円。年103万円の壁を意識して、月収は9万円を目安にして働いている。交通費は1ヶ月1万円まで支給される。⑨さんの場合、1回400円ちょっとをもらっている。有給休暇は、3ヶ月勤務すると取得可能になるとのことである。

勤務先への満足としては、賄いがとにかく美味しくて安いことが挙げられる。勤務シフト量や実際に支払われている収入については、希望通りで満足している。仕事も楽しく、時間が経つのが早く感じる。不満は、メニューが多くて覚えるのが大変であること、バイト先の社員さんのアドバイスの方法が少し陰湿的な(嫌味っぽい?)ことである。

悩みは、掛け持ちでアルバイトをしていることもあって、疲労で遅刻や欠席が増えたことだ。また、時間の余裕が持てず、課題の提出やテスト勉強の時間が確保できずにいる。「カツカツである」とのことだ。

⑨さんは一人暮らしをしている。学費は両親に支払ってもらっているが、仕送りは受けていない。奨学金は、給付型で3万を利用している。また、アルバイトをしないと家賃の支払いなど生活費の捻出が困難になるほか、友人との交流もできなくなる。

 

 

⑩さん

居酒屋に勤めている⑩さんに話を聞いた。

知り合いの紹介で、今の居酒屋に2年半勤めている。そのためか、契約書は多分もらっていないのではないかという。

仕事内容としては、ホールで注文を聞いたりドリンクフードを出すなどだ。勤務時間は、お店の混み具合によってバラバラだが、3〜5時間程度であがれる。勤務は、自分の入りたい日に入ることができる。時間外労働はない。

時給は、1000円で22時以降は25%割増がつく。交通費は1回420円が支給される。

有給休暇についての説明は受けたことがない。制度があるのかどうかもわからない。

バイト先にはすごく良くしてもらっているため、不満はとくにない。希望するシフトに入ることができる点もよい。賄いも、混んでいるときでも作ってくれるので大変満足している。アルバイト以外でもお世話になった経験があるため、その恩返しとして働いている。

コロナ初期と比べるとお店は忙しく売り上げも大幅に上がっているそうだ。平日でも、予約で埋まっている。なのでむしろ、人手は足りていない。

大学との両立の点では、テスト前など勉学に支障が出ない程度に働いている。また、勤務先がしっかりと学業へ支障が出ないように配慮してくれるようだ。

⑩さんは、実家暮らしである。給付型の奨学金(毎月3万8千円)を利用している。この奨学金で学費を支払っている。

なお、⑩さんはもう一つのバイトを掛け持ちでしている。ただ、そちらではあまり稼ぐことができておらず、お小遣い稼ぎ的な収入にとどまる。

 

 

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