川村雅則「コロナ下の学生生活・アルバイトから(コラム)」

北海学園大学経済学部の学部報『econ.(エコン)』[1]第46号(2022年8月発行)に掲載されたコラムです。NAVIに掲載するにあたって、改行のほか注釈を加えました。どうぞお読みください。

 

『econ.(エコン)』第46号表紙より。

 

「From a Distance 18 コロナ下の学生生活・アルバイトから」

 

大学生のアルバイト問題をテーマにした調査・研究に取り組んでいます[2]

第一に、コロナも3年目を迎え、学生のアルバイト状況には落ち着きがみられます。それにしても、まさか学生たちに、休業手当の支払い(休業時の所得補償)制度について、かくもレクチャーが必要になるとは思ってもいませんでした。それまでは逆に、人手不足を背景にして勤務に勝手に入れられるという相談が多かったのですから。

ちなみに休業手当不支給の背景には、勤務日や勤務時間が一定期間ごとに確定される、いわゆるシフト制勤務をめぐる問題があります。勤務が約束されていたわけではないのだから、というわけです。シフト制労働と休業時の所得補償──ことは学生アルバイトだけに限らぬ非正規雇用問題の重要争点として浮上しました[3]

第二に、とりわけコロナの初期に、アルバイトを学生ができぬことで休退学の危機が叫ばれました。このことは年輩の方々にはもしかしたら奇異に思われたかもしれません。アルバイトができぬからといってなぜ休退学に?と。

しかし、今日の大学生の学費は、保護者による負担のほか、将来返済が必要な(いわば借金である)貸与型奨学金やアルバイト収入に依存しています[4]

授業料等の減免や給付型奨学金で構成された高等教育の就学支援新制度がコロナと重なる2020年度から開始されたとはいえ、全ての学生に行き渡るにはまったく不十分。高等教育に投じられた予算が少なすぎます。学内で始めた食糧支援を多くの学生たちが利用しているのも、彼らの困窮が水面下で広がっていたことを示唆します[5]

最後に大学運営のことを。対面授業からオンライン授業への急転、部活・サークル活動の自粛など、コロナ下で様変わりした大学生活もコロナ以前に戻りつつあります。キャンパス内の賑わい、学生たちの元気な姿をみるとほっとします。

それにしてもコロナ下では、当然のことながら学生たちには学生たちなりの要求があって、中には、教職員との間に緊張感をはらむ内容のものもあったな、と思い起こしています。大学運営の構成員であるはずの彼ら学生たちを顧客・客体ととらえてしまっていないかと自戒。

「パンデミックが僕らの文明をレントゲンにかけている」(パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』早川書房)ことがあらゆる領域でリアルに感じられる中で、ポストコロナの大学や社会を学生たちと構想していきたいと考えています。

(2022年6月30日脱稿)

 

 

[1] 北海学園大学経済学部のサイトで読むことができます。『経済学部報「econ.」』

[2] 2022年度の調査活動も始まっています。川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載1)』。

[3] この問題については、労働組合「首都圏青年ユニオン」が顧問弁護団と共同で「シフト制労働黒書」を発表するなど、問題の「発掘」や解決に精力的に取り組んでいます。

[4] 川村雅則ゼミナール「大学生の学費負担・奨学金利用に関するデータ」を参照。

[5] 食糧支援活動は、本学のウェブサイト(「学生のための食糧支援プロジェクトについて」2022年6月8日)を参照。

 

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