川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載1)』

2022年度も、北海学園大学の学生を対象に、大学生のアルバイト事情や学費負担、奨学金の利用状況など(以下、アルバイト等)をテーマとした調査・研究活動を6月から開始しました。今年度は、連載というかたちで配信をしていきたいと思います。そんなことが可能なのだろうか、という心配もありますが、事情は本文に書いたとおりです。なお、誤字脱字や内容上の誤りなどをみつけましたらその都度訂正をしていきます。大きな訂正を行いましたら注記します。どうぞお読みください(2022年7月17日記)。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大が始まって3年目を迎えました。コロナ初期の混乱に比べると、感染は徐々に収束をみせてきているように6月段階では思っていました。この原稿もそのようなトーンでまとめていました。

 

図表1 月別にみた「学生アルバイト」人数の推移(2019年1月~)

注:対象は、15~24歳の「通学のかたわらに仕事」をしている男女。
出所:総務省「労働力調査(基本集計 第I-2表)」より作成。

 

例えば、総務省「労働力調査」でも、大学生のアルバイト(の代替として使っている「通学のかたわらに仕事」をしている労働者)[1]の規模が回復傾向をみせています(図表1)。学生から話を聞いても、後で述べるような問題状況こそ語られたとはいえ、以前のような勤務シフトの削減は6月時点ではとくに聞かれませんでした(むしろ、忙しくなっているという声も聞かれました)。

ところが、本日(7月17日)時点では、全国的には、コロナの新規感染が過去最多で、第7波の急拡大が指摘されています。学生たちのアルバイト状況にもまた、マイナスの影響の及ぶことが懸念されます。我々の今年度の調査・研究活動も、問題意識や内容を変化させながら、進めていくことになるかもしれません。そのことを述べた上で、6月時点での問題意識をご紹介します。

 

図表2 四半期別にみた飲食業で働く非正規雇用者数の推移(2019年~)

注:変化をみやすくするため最小値はゼロではない点に注意。
出所:総務省「労働力調査(基本集計第Ⅱ-1表)」より作成。

 

第一に、2021年度調査でみられたとおり、業種による違いはあるかもしれない、ということは意識していました。

例えば、コロナ感染で大きな影響を受けた飲食業でも勤務量は改善しているだろうか、ということです。総務省「労働力調査」で、飲食業で働く非正規雇用者(学生に限定されていません)を確認したところ(図表2)、2022年1月~3月期のそれは、2019年・20年の同時期に比べて、20万人も低い値です[2]

関連して第二に、図表1は人数の規模であって、勤務量を示すものではありません。アルバイトに入れるようになったけれども、以前と同じような勤務量を働けているとは必ずしも限りません。そのことも念頭において、聞き取りを行っていこうと確認しました。

        

 

第三に、対面授業が再開されたことで、アルバイトをしづらくなったという声が学生たちから聞かれました。オンライン(オンデマンド)授業下であれば、好きな時間帯に勤務シフトを入れることができたのが、対面授業の再開でそれができなくなったというのです。

もちろんこれは、コロナ以前の修学・アルバイト状況に戻ったということに過ぎず、混乱はいずれ収まる問題かもしれません。ただ、よくよく話を聞いていると、「対面授業がこんなにあるのは始めてで、ちょっと戸惑っています」などの声が学生たちから少なからず聞かれました。コロナ対応の授業への切り替えでいつもバタバタしていた(今もしている)イチ教員としては、なるほど、これは盲点だったかなと思いました。つまり、とりわけ、コロナ元年から学生生活が開始された3年生たちは、通常の大学への定着とは異なる経験をしているわけです。

もちろん、オンライン授業は行われていましたし、ゼミや演習は対面で行われていましたから、大学生活がこれから始まるというわけではありません。ただ、コロナ下のこの2年は、色々な意味でいつもと違ったのは間違いありません。ですから、オンライン授業から対面授業への切り替えは、アルバイトをはじめ学生生活にどのような影響を与えているのか、少し意識しながら、広く聞いてみようということになりました(という問題意識が、第7波の急拡大で果たしてどうなることやら。授業に関して言えば、夏期休業の開始までなんとか無事に終えられればよいのですが)。

最後に、以上のような就業機会や勤務量の問題に加えて、コロナ以前からみられた問題にも焦点をあてます。

コロナ下では、就業機会の喪失に伴う休業手当の不支給問題(とりわけ、シフト制労働者のそれ)がクローズアップされ、そこに意識を奪われていましたが、学生たちからあらためて話を聞いていると、賃金の不払い、勤務シフトの一方的な変更、有給休暇の不支給などの問題も聞かれます。ワークルールが遵守されていない(場合によっては、そもそも労使間で認識されていない)というこの問題にも、あらためて、焦点をあてたいと思います。

今年度もウェブを通じたアンケート調査の実施を予定しています。予備的な聞き取り調査を行い、その結果に基づき調査票を作成する予定でした。

ただ、上にも書いたとおり、調査を開始した6月中旬時点から状況が変化していますから、適宜、調査の結果を配信することに方針を切り替えたいと思います。『白書』というかたちで年末にまとめて発表しても、「(分量が多すぎて)学生には読まれないんじゃないですか」と以前に学生たちから指摘されたことも理由にあります(それを言っちゃーおしまいよ、ですが)。

いずれにせよ、今年度は、昨年度以上に、単発での配信を試みてみようと思います。もちろん、単発で出すかまとめて出すかという配信の形態よりも、配信する「中身」が大事であることはゼミ内でしっかり確認、共有をしたいと思います。

それでは、今年度の調査・研究活動にお付き合いください。

 

 

[1] このデータを使い始めた際、学生のアルバイト人数を示すものとしては少なくないかなと思い、総務省にも照会したのですが、納得のできる回答はとくに得られませんでした。変化をみる上では役立つかと思って使っています。

[2] 総務省「労働力調査(詳細集計 第II-1表)」を使えば、「在学中」の労働者の人数規模が分かりますが、業種が「宿泊業、飲食サービス業」になるため割愛。

 

(続く)

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載2)』

 

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