川村雅則ゼミナール「新型コロナウイルス禍の下での学生アルバイト等(地域研修報告書2021)」

北海学園大学経済学部で取りまとめられている『地域研修報告書2021』に掲載された、ゼミで実施している学生アルバイトや奨学金利用・学費負担等に関する調査(2021年度)結果の要約版です。どうぞお読みください。

 

 

(1)はじめに

 

今年度もウェブ上でアンケート調査を実施した。本学に在籍する学生およそ8千人近くに配信を行い、696人(1部500人、2 部196人)から有効回答を得た。ウェブ環境が整備された者に回答が偏っている可能性も念頭におきながらみていく(詳細は『白書』を参照されたい)。

 

(2)アルバイト就業

 

図表1  2020年度のアルバイトでの経験(求職活動経験も含む)【複数回答可】

 

コロナ下で勤務シフト・勤務時間数の減少を多くの学生が経験していた(図表1)。

「勤務シフト・労働時間が減った」、「勤務シフト・労働時間がゼロになる期間があった」、「バイト先が休業することがあった」など、勤務の減少(ゼロを含む)が広く経験されており、三ついずれかの項目に回答した者(勤務が減ったかゼロを経験した者)は、重複を除くと46.6%(1部では49.7%、2 部では39.4%)である。

 

図表2  業種(飲食店、小売店)別にみた、緊急事態宣言下(2021年5月16日~ 6月20日)でのシフト量・労働時間の変化

 

学生アルバイトの二大業種である「飲食店」と「小売店」で働く者のそれぞれに焦点をあててみた。やはりというべきか、コロナの影響を大きく受けている者は「飲食店」群で多かった。緊急事態宣言下(2021年5,6月)での勤務量の変化を尋ねたところ(図表2)、「小売店」群では「変化していない」が71.1%であるのに対して、「飲食店」群では「ゼロになった」が18.6%、「減った」が48.3%であった。

 

図表3  休業手当が支給されたか【複数回答可】

 

勤務の減少は広く確認されたが、にも関わらず、休業手当が支給されていなかった。勤務の減少を経験した者に対して休業手当が支給されたかを尋ねたが(図表3)、半数は、「とくに何も支給されなかった」と回答している。

 

図表4  有給休暇制度に関する認知・理解状況と、自分のアルバイト先での有給休暇制度の利用の可否

 

図表5 休業手当制度に関する認知・理解状況図

 

今回は、ワークルールの認知・理解状況についても調べてみた(図表4・5)。

条件を満たせば学生アルバイトでも有給休暇を使うことができることを知っている者は4 分の3に及んだものの、自分の現在のアルバイト先で学生アルバイトが有給休暇を使うことができるかどうかは「わからない」が44.6%で、15.6%は「できない」と回答している。

また休業手当については、(a)学生アルバイトでも休業手当が支給されることは「知っていた」が6 割強であるが、(b)労働基準法上、休業手当は平均賃金の6 割以上が支給される必要があることについては、「知っていた」は47.9%にまで低下し、(c)お店が完全に休業したり1日単位での休業の場合だけでなく、勤務時間が短縮されるような場合でも休業手当が支給されることを知っていたかという質問への回答は、4 割弱にまでさらに低下した。より実践的なワークルール教育の必要性が示唆される。

 

(3)経済的な状況や心身の状況

 

コロナ禍の長期化で学生たちのメンタル状況が懸念される。

図表6  所属の部×学年別にみた、経済的な状況や心身の状況【複数回答可】のうち、「大学で友人ができない」、「サークル活動や部活動に入り損ねた」、「大学生活がつまらない」の割合  全体=696人

図表6は、経済的な状況や心身の状況のうち「大学で友人ができない」、「サークル活動や部活動に入り損ねた」、「大学生活がつまらない」の割合を取り上げたものであるが、1部でも2 部でも「2 年生」の結果がよくない。大学生活2 年間がコロナで制約を受けていることの反映と推測される。

 

図表7  所属の部×住まい別にみた、コロナ下における収入の減少に対してとった対応策【複数回答可】のうち「食費を削った」の割合

 

図表7は、コロナ下における収入の減少に対してとった対応策のうち「食費を削った」割合である。実家・親元以外群で食費を削った者が多い。図表は省略するが、本学で開催されている食糧支援について今後も利用を希望する者は1部で26.8%、2 部で37.2%と多かった。

 

(4)調査結果を踏まえた今後の活動について

 

例年、調査結果を取りまとめてそれで活動を終わらせてしまっていることに疑問を感じたゼミ生たちが、今年度は、調査結果に基づいて何らかのアクションを起こそうと提起して、その賛否を調査で尋ねた。

 

図表8 調査結果に基づき大学への申し入れを行うべきか 全体=696人

図表8はそのうちの1つで、大学への申し入れを行うべきか尋ねたものである(ほかに、「学習会の開催」、「学内外への周知・広報」、「政治への働きかけ」の実施への賛否を尋ねた)。結果は、実施すべき(強く思う、思う)と多くが回答している。

背景には、学費負担への疑問や批判─図表は省略するが、今年度も遠隔授業が中心であるのに対して授業料負担が例年通りであることへの不満(「非常に納得ができない」30.9%、「納得ができない」34.3%)─などがある。

『白書』はこちらで公開➡ https://roudou-navi.org/

 

 

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