川村雅則ゼミナール「2021年度学生アルバイト調査・研究報告その2」

私たちのゼミでは、2011年から毎年、学生アルバイトや学費負の実態について調査を行ってきました。今年度も、新型コロナ・ウイルス感染拡大の下での学生のアルバイト状況などを明らかにすることを目的としたアンケート調査を、1部(昼間部)と2部(夜間部)の両ゼミで行いました。詳しくは、毎年発行している『学生アルバイト白書』にゆだねますが、『白書』以外にもコンテンツを作ってみようということで、2部のゼミ生たち(13人)と、調査結果の報告会(座談会)を開催し、その結果をまとめてみました。お読みください。なお学生のアルバイト事情については、『白書』のバックナンバーや、北海学園大学で行われている「学生生活実態調査」の結果もご参照ください(2021年10月9日記)。

 

2021年度2部アンケート調査結果報告会・座談会(アルバイト編)

 

2021年度の調査の概要と、調査の意義

 

川村 本日はよろしく。

まず、北海学園大学の学生を対象にした今年度(2021年度)のアンケート調査の説明を私からしますね。

第一に、調査方法は、昨年度同様、今年度も、Googleフォームを活用したウェブアンケート調査です。

第二に調査内容は、今年度も昨年度と同様の問題意識で作成しました。ただ、分量が多いと負担が増えて回答が忌避されますから、昨年度の中心的な設問であったオンライン授業に関する設問は割愛しました。具体的には、①属性のほか、②アルバイト就業に関すること、③学費負担・奨学金利用、④生活全般に関することを調査の柱としました。

今日は、②のアルバイトに焦点をあてて話を進めていきましょう。

なお、Googleフォームで作成した調査票は、学内イントラネットG-PLUS!で配信を行いました。2021年7月9日(金)正午に配信を行い、回答は、7月17日(土)8時に締め切っています。在籍者7977人(2021年5月1日現在)に配信を行い、709人から回答を得ました。そのうち無回答と欠損の多かった13名を除く696人(2部生196名、1部生500人)が有効回答です。2部生約2200人のうち回答は200人ですから、もっとPRが必要ですね。

さて、この調査のことについて誰か何かコメントはありますか。

 

学生 目的意識をもって調べるということの重要さをあらためて感じました。学生同士でのアルバイトの話題といっても、アルバイトをしているか、していないか、とか、何のバイトをしているかぐらいで、あとは、給料の話ぐらいでしょうか。それが問題意識をもって、働き方や休業手当などに光をあてて詳細を明らかにする──こういうのはゼミで初めての体験です。

 

学生 あと、調べるというのは何も知識をもたずに行うものではなく、調べるためにこそ事前にいろいろと勉強しなければならないというのもあらためて今回学んだことです。

 

川村 調べるということの重要性を理解してもらっているようで嬉しいです。

 

2部生の働き方と、2020年度におけるアルバイトでの経験

川村 2部生はもともと、昼間に長い時間を働いて夜に大学に通うというパターンでしたよね。誰か自分の働き方を参考までに紹介してもらえますか。とりあえずコロナ以前のことを教えてもらえるかな。

 

学生 僕は飲食店でのバイトですが、朝が早くて勤務は7時前のスタートです。休憩を含めて、勤務は14時半までです。週に5日、多いときには週に6日働くこともありました。

 

川村 かなりの時間数ですね。

 

学生 はい。30時間を超えていました[1]。ただ、社会保険に入るには枠があるみたいで、学生アルバイトである自分の場合には入れないとお店からは説明されました。

コロナの初期の頃はお店も休業になって、授業もオンラインになったので、実家に戻って別のバイトをしていました。その後、大学の対面授業が再開され、バイトも再開したので、こちらに帰ってきました。全員をシフトに入れなければならないからということで、コロナ前のようには働くことはできませんでしたが、それでも僕の場合には、まだ入れたほうだと思います。

 

川村 2年目を迎えて記憶もおぼろげになってきたけれども、コロナ初期のころはとくに、学生たちの働き方も大きな影響を受けていましたよね。

 

学生 はい。今は落ち着いて働けています。むしろ忙しいくらいです。

あ、そう言えば、コロナ以降、1回の契約期間や契約の時間数は以前より短く設定されました。ただ契約の時間数を超えて働いているのですが。

 

川村 短い期間で契約したり時間数を短く契約するのは、企業にしてみれば、先が見えない中でのリスク回避ということなのでしょうね。

 

川村 では、今年度の調査で尋ねた2020年度のアルバイト状況(複数回答可)の結果をみてみましょうか。今日は2部生の調査結果の報告会ですから、いつもと異なり、2部生の調査結果を左側に配置して、右側には、1部生の結果を参考までに配置しています。2部生の結果を誰か説明してもらえますか。

 

 

表1 2020年度のアルバイトでの経験【複数回答可】

 

学生 2部生の有効回答196人のうち、2020年度にアルバイトをしていたのは142人でした。

そのうちまず、「とくに問題なく、安定的に働くことができた」が2部生では35.9%でした。

それ以外の回答をみると、「勤務シフト・労働時間が減った」が34.5%、さらに「勤務シフト・労働時間がゼロになる期間があった」が15.5%、「バイト先が休業することがあった」が23.9%です。この三つの回答について、重複を除くと、142人中56人でした(39.4%)。4割が減ったとかゼロになった経験をしていることになります。ちなみに1部ではこの値はさらに高く、322人中160人(49.7%)です。

こうしてみるとやはり、自分たちと同じように、アルバイトが減った経験をした学生が多くいたんだなぁということが分かります。

 

川村 「バイト先を解雇された」や「バイト先の廃業・閉店を経験した」は数パーセントですが、学生の話を聞いていると、解雇こそされてはいないものの、かなりの長期にわたって勤務シフトがゼロ、つまり、事実上の失業状況におかれているケースもありましたから、ダメージは大きいですよね。

ちょっとここで、2020年度の労働時間(以下、「勤務時間」ともいう。同様の意味で使用)に過去のデータをくっつけた表をみてみましょうか。調査内容などが異なりますから、厳密な意味での比較はできませんが、参考にはなると思います。2020年度の「もっともよくあったパターン」で回答してもらいましたが、2019年度以前と比べると時間数は短かったことが確認できると思います。

 

表2 本調査(2020年度)及び過去の調査における一週間の労働時間数

注1:2019、2018のデータは、私たちのゼミの調査によるもので、2017データはサンプル数の多い「学生生活実態調査」によるものである。

注2:本調査では2020年度の「もっともよくあったパターン」で回答してもらったのに対して、過去の調査では普段・平時のそれを尋ねていること、ならびに、過去の調査では、(人数は多くないが)アルバイトをやめた者の直近のデータも含めているので、厳密な比較はできない点に留意されたい。
出所:2020年度のデータ以外は、『白書2020』より転載。

 

学生 先ほどの表に戻ると、他にも、「仕事を探したが、見つけるのに苦労した」が18.3%みられます。

一方で、「収入を増やすため労働時間数や仕事・アルバイト先を増やした」が14.1%のほか、「コロナで仕事が逆に忙しくなった」が13.4%です。勤務量の減少とは逆の状況が発生しています。

 

川村 この点は業種の違いが反映されている可能性があります。後でそのことを確認しましょう。

 

現在のアルバイト実施状況と、アルバイト収入の使途

川村 さて、表3は、現在のアルバイト実施状況をまとめたもので、表4は、2部生に限定して、アルバイトをしているか、していないかを学年別に整理したものです。

 

表3 現在のアルバイト実施状況【複数回答可】

注:2部生の1人が、アルバイトをしていないが、「探している」と「探してもいない」の両方に回答している。どちらが誤答か分からないためそのまま取り扱う。

 

表4 学年別にみた、アルバイトをしているか、していないか

注1:対象は2部生に限定。

注2:表3の結果を、アルバイトをしているか、していないかに集約して学年別に表示。

 

学生 現在のアルバイトの実施状況をみると、2部生では、「固定的なアルバイトを1つのみしている」が半数で、「固定のアルバイトをかけもち」も1割を占めています。1部生ではそれぞれ、57.0%、8.8%です。2部生の学年別の結果をみると、まだアルバイトをしていない学生が「1年生」で多いです。

 

川村 人数もそう多くないですから一般化はできませんが、アルバイトの実施率が2部生で低いというのは少し意外でした。

ただ、この1年生の「アルバイトをしていない」38人のうち、26人は「(アルバイトを)探している」学生たちですから、労働市場の悪化が影響している可能性も念頭におく必要はあるかもしれませんね。

ところで、2部生には、経済的な条件を理由に2部を選択した学生が少なくないと思います。授業料は1部の半額ですから。その意味では、アルバイト収入が経ることのダメージが大きかったのではないかな。次の表を説明してもらえるかな。

 

表5 アルバイト収入の使途

 

学生 現在アルバイトをしている学生に、アルバイト収入の使途について尋ねました。

「学費・生活費を稼ぐため」が1部生では9.6%であるのに対して、2部生では24.4%と倍以上です。さらに、「どちらかといえば学費・生活費を稼ぐため」「どちらも半々」までを足し合わせると全体のおよそ3分の2弱を占めます。1部生でのこれらの割合ももちろん少なくありませんが、2部生ではもっと多いです。

 

川村 過去の調査でも同様の結果でしたよね。

 

学生 2部は1部に比べると学費が安いので、働きながら学費や生活費をまかなうというケースが多いと思います。僕自身がそうですし、友達でもそういうのは結構聞きます。

 

川村 表5の数値がまさにそれを示していますよね。

 

緊急事態宣言下での勤務状況

川村 ここで、緊急事態宣言下のアルバイト勤務状況をみてみましょうか。

今回の調査では、緊急事態宣言下(2021年5月16日から6月20日まで)でどの位アルバイトが減ったかという問題意識で、宣言下の勤務状況と宣言前(2021年4月)の状況を尋ねました。勤務量の変化を明確にみるために、勤務期間の短い者を除きました。さて結果はどうでしょうか。

 

表6 緊急事態宣言下での勤務シフト量・労働時間の変化

注:勤続期間で「働き始めたばかり」「1,2か月」と回答した者は対象から除いた。

 

表7 緊急事態宣言下での週の労働時間数と、緊急事態宣言に入る前(2021年4月)の週の労働時間数

注:表6に同じ。

 

学生 まず、緊急事態宣言下で勤務が「減った」のは2部生では24.3%でした。「ゼロになった」も3.5%です。最大は「変化していない」62.6%です。それに対して1部では、「減った」が35.1%で、「ゼロになった」も10.5%もみられます。

ただ、僕自身もそうですが、今回の緊急事態宣言下では、コロナ初期の混乱期に比べると少し落ち着いた感じはありました。

 

川村 学生の就労機会・時間数は、「減った」イメージが強いですが、業種による差がありますよね。学生と話をしていても、飲食店では仕事が減っているのに対して、小売りは忙しくなったケースが多いように思います。それから、小さなお子さんを抱えた主婦パート層が勤務に出られなくなったとか、辞めた学生バイトの分を一手に引き受けることになったとかの理由で逆に忙しくなったケースも聞きますね。

次の表8は、回答者の業種・職種(以下、業種)をまとめたものです。2部生は1部生に比べて、飲食店で働く者が少なく、小売店が多く、かつ、オフィスワークが多いです(調査票では、「コールセンター、テレアポ、事務職など」と例示)。こうした業種の違いが表6や表7の結果にも反映している可能性がありますね。

 

表8 現在のアルバイトの業種・職種【複数回答可】

 

川村 業種による差をみてみましょう。次の表9は、2部生だけでなく1部生も含んでいますが、勤務時間の減少は、飲食店で働く者で顕著です。

 

表9 飲食店で働く学生と小売店で働く学生の、緊急事態宣言下での勤務シフト量・労働時間の変化

 

表10 飲食店で働く学生と小売店で働く学生の、緊急事態宣言下での週の労働時間数と、緊急事態宣言に入る前(2021年4月)の週の労働時間数

 

学生 飲食と小売ですごい大きな違いがありますよね。「減った」が小売店で働く者では16.7%であるのに対して、飲食店では48.3%です。「変化してない」の割合も、それぞれ、71.1%と25.4%ですから、3倍近い差ですね。

 

川村 そうですね。ちなみに、サンプル数が少ないので、これ以上の分析結果はここでは示しませんが、飲食店で働く者同士でも、減少したとの回答は1部生でより多かったです。2部生の場合には午前中や昼に働いているのに対して、1部生では夜に働いているケースが多いので、コロナ禍のダメージは1部生でより大きかったのではないかと推測しています。働く時間帯の問題ですね。

 

学生 そう言えば、僕の店(飲食)でも、夜に働いている学生たちはシフトに入れなかったり、昼のシフトに移ってきていました。

ちなみに緊急事態宣言があけた最近は、とても忙しくなって、毎日、満席状態が続いています。緊急事態宣言によって人の行動パターンが大きく変わるものだということを肌で感じています。

 

川村 逆に言えば、今後また緊急事態宣言が出されるときには、お店やそこで働く人へのしっかりとした支援が必要になりますよね。以下は、2020年度のアルバイト経験で、1部生の回答も含むのですが、飲食店で働く学生からの自由記述の幾つかをここでご紹介します。

 

【30】アルバイト先の飲食店が緊急事態宣言により1ヶ月以上休業しました。就活が始まったため新たにかけ持ちするには時間が足りないと思ってやめました。私は仕送りがなく家賃も学費も生活費も運転免許取得費用のローンも全て自分で支払っています。奨学金を借りていますがそれだけでは到底足りず、週5でアルバイトを入れていました。稼ぐ予定の8割を休業手当として貰いましたが、8割では生活するのに手一杯で困りました。

【104】アルバイト先が飲食業のせいか客入りがコロナ前と比べて急激に減った。その結果、特にやることもなく最終的に社員を優先するためにシフトを減らされた。

【292】2月ごろは飲食店で働いていましたが、先が見えないことで細かくアルバイトの減少が伝えられました。〔シフトが決まる〕2週間先にはシフトが入るかもしれないということでなかなか新しいことを始められず、もどかしかったです。

【310】バイトの募集が減り、バイトに受かることすら困難な時期があった。バイトに受かっても飲食店はシフトがかなり減少した。

【481】2020年3月末オープンの飲食店だったため、開店してすぐ(4月中旬)に約1ヶ月の休業。さらに再開した後も秋頃までは予定していたシフトの半分の日数しか働けなかった。

【614】一つのアルバイト先では厳しくなったため、アルバイト先を増やした。しばらくは二つを合わせればコロナ前のアルバイト代を稼ぐことができていたが、どちらも飲食系であったため、次第に、新しく始めたほうが一切シフトに入れない状況が数か月続いた。

 

 

休業手当の支給状況

川村 今回の調査でも休業手当の支給のことを尋ねましたね。労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定められていることを念頭においています。

 

学生 学生には休業手当は支給する必要はないとか、コロナだから休業手当は支給する必要はないとかの理由だけでなく、シフト制勤務における休業手当の問題がありました。

学生に限らず、シフト制で働く非正規労働者が、シフト制下では勤務が保障されたわけでないことを理由に、休業を命じられたという扱いを受けられずにいます。このことは、社会的にも大きな問題になっていて、ゼミでは、関連する新聞記事や資料[2]を読んで問題意識を深めました。この問題については、法律もきちんと整備されていないことを知りました。

 

川村 そこで今回の調査ではまず、学生たちの働き方がいわゆるシフト制なのかどうかを尋ねたのですよね。そしてインターネットで調べたら、シフト制にも「自由シフト制」と「固定シフト制」とがあることを知りましたね。

 

学生 はい。そして、今回の調査結果では、学生の多くはシフト制(自由シフト制、固定シフト制)で働いていました。2部生では84.0%、1部生では90.9%でした。

 

川村 学生のアルバイトと言えば、シフト制が当たり前なのですね。

 

学生 そして調査では、すでに話に出ているとおり、勤務シフトや勤務時間数が減っているかどうかと、休業手当が支給されたかどうかを調べてみました。今年度の経験に限らず、ちょっと幅を広くとって2020年度以降の経験を尋ねました。

まず、勤務シフト量・労働時間が減ることを2020年度以降に経験したのは、2部生では49.6%でした(1部生では51.9%)。約半分です。彼らを対象にして、休業手当が支給されたかどうか、支給された場合には平均給与の何割が支給されたか、をまとめたのが次の表です。

 

表11 休業手当が支給されたかと、平均給与の何割が支給されたか(いずれも【複数回答可】)

 

川村 ゼミ内での予備調査でも、あるときは休業手当が支給されたけれどもあるときは支給されなかったとか、このバイト先では支給されたけれどもあのバイト先では支給されなかった(かけもちでバイトをしている学生)など、複数の経験をしている学生がいたので、複数回答可に設定したのですよね。

 

学生 はい。それで結果は、まず前者は、「休業手当が支給された」は38.5%にとどまりました。ただ、ほかの手当が出ていたり有給休暇で処理されているケースが合計で2割を超えていました(「休業手当ではないが、シフト・労働時間の減少に対する手当が支給された」12.3%、「有給休暇の使用で処理された」10.8%)。ちなみにこれらの選択肢も、予備調査に基づき設定した、昨年度からの変更点です。

 

川村 ただ、そこまで含めても、「とくに何も支給されなかった」がなお4割残ります。1部生では52.9%です。不支給の割合が大きいですね。

 

学生 はい。その上で、ということになりますが、下段の結果のとおり、平均給与の何割が支給されたかという点については、2部生では、回答者の多くが6割以上を受け取っているようです(1部生では24.4%が6割未満。複数回答可である点に留意)。

 

川村 そうですね。ただ、以前もゼミで話題にしましたが、じつはこの休業手当の支給状況についてはよく分からないこともあるのですよ。あとであらためてふれることにしましょう。

 

 

アルバイト収入の減少で生じた支払い・捻出の困難

川村 アルバイトをしている学生全員を対象にして、緊急事態宣言下で勤務シフトや勤務時間が減ったりゼロになったかをあらためてみてみました。すると、2部生では131人中53人(40.5%)でした。1部生では364人中180人(49.5%)です。

彼らに対して、アルバイトの減少で支払い・捻出に苦労したことはなかったかを複数回答可で選択してもらい、結果をまとめたのが次の表です。

 

表12 勤務シフト量や労働時間が減少した、ゼロになったことで支払い・捻出に苦労したこと【複数回答可】

 

学生 最も多くあげられているのは「遊興費や趣味に使えるお金」です。2部生で69.8%、1部生では57.2%です。

ただ、次が2部生と1部生で大きく異なります。2部生では「生活費」という回答が56.6%と1部生(27.8%)の倍です。1部生ではそもそも、「勤務シフト量や労働時間は減ったが、支払い・捻出に苦労するものはとくになかった」も4分の1を占めています(26.1%)。この値は2部生では9.4%にとどまります。

 

川村 ほかにも「教科書代や通学費」、「授業料」が30%台(32.1%、30.2%)で続いていて、1部生の18.9%、11.7%よりも多いですよね。対面授業が一部再開されましたが、対面とオンラインがごちゃまぜの状態だと大学に通う定期代がもったいない、(通学費の面から)オンラインならオンラインで統一して欲しい、という学生からの訴えは理解できます。たかが交通費ではないのが実態なのです。

 

学生 数万円というお金であっても、それが得られることを前提に大学に通っているものですから、なくなったときのダメージが大きいです。僕は一人暮らしで、貯金とアルバイト収入で学費と生活費の全てを自分でまかなっています。仕送りはなしです。奨学金は月3万円を借りていますが、なるべく手を付けずにやってきました。でもコロナ下で手を付けざるを得ませんでした。

 

川村 仕送りナシは2部生では多いですよね[3]。ちなみに、月3万円の奨学金を借りて、主に貯金をしてきたとのことですが、奨学金をまったく借りずにアルバイト収入だけというのは考えませんでしたか?

 

学生 奨学金を全く借りないというのはちょっとおっかないです。実際今回のコロナ下では、奨学金を借りていたからこそ助かった面があります。なるべく使わずに一括で返す予定ではありましたけれども。

 

川村 そうでしたか。先日、2部の授業である学生が言っていました。コロナでバイトが休みになり授業もオンラインになってみて始めて、昼に働いて夜に大学に通う自分の生活っていうのはものすごく忙しいものだったんだなぁとしみじみと感じた、と。本当にそうですよね。2部の学生には苦学生が多いですよね。

最後に、表12に関わる2部生の自由記述を幾つか紹介しておきます。

 

【84】食費にお金をかけないようにした。

【112】交通費や教科書代は特に負担になった。

【320】食費、水道光熱費などの生活費。趣味にお金は使わなくなった。

【325】収入は生活費を支払うのでギリギリもしくは足りない時もあり、学費のために借りている奨学金を生活費に回すしかないことも多々ある。その結果、奨学金を使っているため学費の支払いが苦しくなり、延納してなんとか支払っている状況。実際延納しても期間が足りず本当に苦しい。なので、就活活動に要する費用なんてものはほぼない。

【410】とにかく授業料と生活費が足りなく苦労しています。どうしたらいいのでしょうか。とても不安です。私は一年生の頃から生活費も光熱費も学費もアルバイトと奨学金で全て賄っています。そのため、収入が減ったことにより生活も苦しく心の余裕がありません。

【586】アルバイトの給料で授業料を払い、奨学金で生活費等を賄っていましたが、給料の減少により奨学金だけでやりくりしなければいけなかったため、生活がカツカツになった。

 

ワークルールの認知・理解状況

川村 話を休業手当に戻して、そもそも、こうした法制度、ワークルールがどれだけ知られているかを今回の調査では調べてみましたね。まず、認知度が比較的上がってきていると思われる有給休暇ですが、どうでしょうか。

 

表13 勤続期間などの条件を満たせば、学生アルバイトでも有給休暇を使うことができることを知っているかと、現在のアルバイト先では、学生アルバイトが有給休暇を使うことはできるか

 

学生 勤続期間などの条件を満たせば、学生でも有給休暇をとれることについて尋ねてみると、「知っていた」は2部生では84.7%とかなり高い割合だったと思います(1部生は71.4%)。

ただ、ちょっと僕自身はこの結果に疑問なんです。ほんとにみんな知っているんだろうかと。知っている割には、過去の調査では、有給休暇を使ったことがある学生はそこまで多くなかったですよね。

 

川村 そうですね[4]

今回の調査は、アルバイトをしている学生に限定されていること、なおかつ、私の授業履修者が多く回答している可能性があることから、「知っていた」という回答が高く出た可能性はありますね。

ただ、下段の結果をあわせみると、上段の結果は、額面通りに受け取るわけにはいかないかもしれませんね。このデータは、私には非常に興味深かったです。制度を知っていると回答していながら、自分のアルバイト先で学生アルバイトが有給休暇を使うことができるかできないかを尋ねたら、「わからない」とか「できない」という回答が約半数を占めているのですから。2部生では、「できる」がかろうじて半数ですが。

 

学生 この結果はしっくりきますね。

 

川村 「知っている」というのも、制度の名称を知っているという次元から、内容まで深く理解しているという次元までいろいろあります。もう少し細かく尋ねたほうがよいかもしれませんね。次回の課題にしましょうか。

さて、休業手当についてみていきましょう。次の表を説明してもらえますか。

 

表14 学生アルバイトでも休業手当が支給されることを知っているか、労働基準法上、休業手当は平均賃金の6割以上が支給される必要があることを知っているか、お店が完全に休業したり1日単位での休業の場合だけでなく、勤務時間が短縮されるような場合でも休業手当が支給されることを知っているか

 

学生 はい。先ほど紹介された労働基準法第26条を根拠とする休業手当ですが、まず第一に、学生アルバイトでも休業手当が支給されることを知っていたのは62.6%でした。

第二に、休業手当の計算方法についての理解度をみると、平均賃金の6割以上が支給されるものであることを知っていたのは57.3%です。この理解状況は1部生より10ポイント以上高いです。

そして第三に、お店が完全に休業したり1日単位での休業の場合だけでなく、勤務時間が短縮されるような場合でも休業手当が支給されることを尋ねましたが、これは半分を割りました。42.0%です。どの項目も、1部生よりも2部生で理解度が高いものの、一番目、二番目、三番目と理解度が低くなっています[5]

 

川村 私自身は、思ったよりは理解されているほうかな、と感じました。労働法や労働組合を学校で学ぶ機会をつくること(労働教育)に力を入れてきましたが、パンデミックが生じて、休業手当の制度を知る必要性に学生がここまで迫られるとは想定していませんでした。そういう意味では、それなりに皆さん知っているなという感想をもちました。

 

学生 僕自身は、アルバイト先で休業手当が、最終的には支給されたのですが、支給されるまでには時間がかかりました。

初期の頃は、有給休暇をじつは使われていました。僕自身は申請も何もしていないのに、お店のほうで学生アルバイトについて一括して有給休暇で処理がされていました。でもそれも、おかしなことだと気づく学生は少なかったと思います。

そもそもいくら労働法を学んでいても、やっぱり職場では聞きづらいです。売上げも落ちていてお店も大変なところに、僕ら学生バイトに休業手当は出るんでしょうか、というのは。

 

川村 学生側のその気持ちはよく分かりますよ。ただ、皆さん自身、学費や生活費がかかっているわけですから、やはり、職場での疑問は、使用者側に聞けるようにしたほうがよいですよね。その意味では労使関係、労使コミュニケーションの視点が大事ですね。

 

学生 雇用保険に加入していない学生にも休業手当を支給することと、そのために助成金の利用を国が呼びかけていること[6]や、休業手当が支給されない労働者に対して新たな制度が作られたことなどをゼミで学びました。そういうのも知らない学生が多いのではないでしょうか。

 

学生 ゼミでも議論になりましたけれども、休業手当に関してはもう少し細かく聞きたいですよね。例えば、休業手当についてはアルバイト先でどう説明されているのか。学生バイトには支給できないと言われたのかどうか。それに対して学生側は、どう感じたか、どう対応したのか、などなど。

それから、これもゼミで議論しましたが、平均賃金の100%の支給というのも検証する必要があると思います。僕自身もそうですが、結局、勤務が減って収入が減った月も含めて平均賃金が算出されているので、6割保障といっても、ずいぶんと少ないんだなと思いました。

 

川村 アンケートではなく、聞き取りで詳細を把握する必要があるね。

あと、誤解も多い三番目の点を強調しておきたいと思います。休業手当という名称のせいなのか、お店が完全に休業してはじめて支給される手当のように誤解されているケースがありました。そもそも、コロナ以前から、お客さんがいないからと、シフトを取り消されたり早上がりを要請されることがあると思います。そういう意味では休業手当は、コロナとは関係なく知っておかれるべき課題なのですが、その点の理解度が十分ではないように感じています。

もっともそれは、日常において、賃金補償なく学生アルバイトが柔軟に活用されていることを示すものでもあると思いましたが。

 

学生 うちのゼミではワークルールとか学ぶ機会がありますが、多くの学生は学ぶ機会はありません。それに教室で条文を読んでいるだけでは頭に入らないのではと思うんですよ。一番は、休業手当は出るのか出ないのか、うちの店ではどういう扱いなのかなど、もっとも知りたいときに具体的に教えてもらうことができれば、頭にすっと入ってくるんじゃないでしょうか。

 

川村 そういう意味では、皆さん自身の体験などを教材にした、よりリアルな、実践型の労働教育が求められている、と言えるでしょうか。労働組合や労働局の方を講師にして、例えば休業手当の受け取り方を具体的に学ぶなどのことも検討してみましょうかね。

 

 

(続く)

 

(注釈)

[1] 「2017年度学生生活実態調査」によれば、2部生の普段の一週間あたりの勤務時間で「30時間以上」という回答は16.3%である

[2] 首都圏青年ユニオンと顧問弁護団による「シフト制労働黒書」を参照。

[3] データは少し古いが、「2015年度 学生生活実態調査」によれば、自宅外で暮らす学生に尋ねた毎月の仕送り額は、2部生では「なし」が44.4%だった(1部生でも15.7%は「なし」)。

[4] 1部生の結果になるが、2019年度の『白書』によれば、これまでのアルバイト経験で、有給休暇を「実際に取得したことがある」は16.1%だった。

[5] 野村総合研究所による調査でも、休業手当の支給状況や理解度が詳しく調べられている。例えば、ニュースリリース「コロナによりシフト減少中のパート・アルバイト女性の6割近くが「短時間休業でも休業手当を受け取れること」を知らないと回答」2020年12月29日を参照。

[6] 学生アルバイトなど雇用保険被保険者以外への休業手当に対しては、「緊急雇用安定助成金」。厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」のページを参照。

 

 

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