川村雅則「手当支払いは半数、接客トラブルも・・・/コロナ下学生バイト事情」

「手当支払いは半数、接客トラブルも・・・/コロナ下学生バイト事情」『しんぶん赤旗』朝刊2021年9月24日付

 

2021年度も『学生アルバイト白書』の作成に取り組んでいます。『白書』をまとめるだけではなく、調査結果をふまえたアクションを何か起こしたい、という学生からのリクエストにこたえて、今年度は、例年よりも早くにアンケート調査活動を行いました(2021年7月実施)。現在、調査結果のとりまとめ中ですが、このたび、「しんぶん赤旗」の取材で要点をお話しする機会を得ました。以下がその記事です(2021年9月24日付)。中間報告という位置付けとなりますが、ご覧ください。

 

写真は、2020年度版白書の表紙。今年度は果たしてどんな表紙になるか。

 

 コロナでバイトのシフトが激減した、解雇された、感染も不安…。ゼミの学生とともにつくる11冊目の「学生アルバイト白書」に向けて調査結果をまとめた、北海学園大学経済学部教授の川村雅則さんに聞きました。

 

─学生のバイト事情に変化はありますか?

バイトを始められていない1年生の回答が多かったこともあり、寄せられた回答700人中、バイトをしているのは500人ほどでした。昨年度は、勤務が減ったかゼロを経験したのは、重複を除き47%でした。今年度は見極めが難しいですが、まず勤務量は総じて回復しておらず、かつ、業種による差を感じます。

業種間で差が

グラフ1 緊急事態宣言前と宣言下での週の労働時間数の変化

 

学生の2大バイトである飲食と小売りで、週あたりの勤務時間が15時間未満という学生の割合を比べてみました。緊急事態宣言前は飲食で約半数、小売りで3人に1人だったのが、宣言下ではそれぞれ4分の3、4割にまで拡大(グラフ1)。飲食でのダメージが大きい一方で、小売りは店が忙しくなり「寸志(ボーナス)が出た」という学生もいました。休校措置などで子どものケアが必要になった主婦層に代わって、シフトが増えた学生もいます。逆にホテルやイベント関係は厳しい。契約は切れてないけれども、シフトゼロで事実上の失業状態もいます。

グラフ2 休業手当に関する理解状況
(左)学生アルバイトでも休業手当が支給されることを知っていますか?
(右)勤務時間が短縮されるような場合でも休業手当が支給されることを知っていますか?

 

勤務の減少を経験した学生で、休業手当か何らかの手当が支給されたのは半数です。学生の9割はシフト制で働いていますが、勤務の減少に休業手当が支給されることを知っていたのは4割ほどです(グラフ2)。法整備とあわせて知識の普及も必要です。

 

─感染対策はどうでしょうか。

業種による差もありますが、まめな消毒やアクリル板・ビニールシートの設置など、それなりの対応がされているようです。ただ空気感染の危険性が明らかになった中で、換気の対策が万全なのかは微妙です。学生も、感染のおそれを感じながら働いているようです。

接客の最前線を担うことからくるトラブルもあります。お客がきちんとマスクをしてくれない、お客からの嫌がらせ(カスタマーハラスメント)がひどかったなどです。マスク不足の当初は「店に品物がないのか」と怒られた学生もいました。

─経済的な困窮は?

昨年から学内で食糧支援活動をしています。収入減を経験している学生は、貯金の取り崩しや食費、交際費などを削って対応しているようです。「暖房を節約して毛布にくるまっている」という学生もいました。

1人暮らしの学生を中心にメンタルが心配です。「大学生活がつまらない」、「大学で友人ができない」という回答が1年生より2年生で多い。コロナで2年間を失いかねないのです。友人との交流や居場所づくりを通じて大学生のアイデンティティーを獲得する時期なのに、胸が痛みます。

意見反映して

─意思決定の場への学生の参加の必要性も、指摘されていますね。

突然のオンライン授業に放り出され、課題をこなすだけの毎日。大学によっては、まだその状況が続いています。感染防止のためとはいえ、バイト禁止の通知が出された大学も。学生の経済状況が看過されています。

彼らの意見が集約され反映されるルート作りが、学内で必要です。大学人の疲弊は身にしみて感じていますが、大学をこえた情報や実践の交流を展望しながら、学生の主体性を引き出していきたいです。

グラフ3 今後の活動で実施すべきだと強く思うことは?

 

今回の調査結果を生かして今後実施すべきことを、学生に尋ねてみました。「強く思う」に限っても「大学への申し入れ」が5割、「政治への働きかけ」が4割でした(グラフ3)。「今の若い人は政治に関心がない」のではなく、彼らと真剣に向き合うことが求められているのではないでしょうか。

─いまどんな施策が必要でしょうか。

まずは経済的な支援。修学支援の拡充で、学費無償化に道筋をつけていくことです。加えて、大学運営や政治・政策分野での学生・若者の参加保障ではないでしょうか。中高における校則問題への当事者参加の取り組みは、とても重要だと見ています。バイトについても教育界と経済団体との協定締結など、ニューノーマル(新しい常態)を見据えた取り組みが必要ではないでしょうか。

 

 

 

 

(関連記事)

川村雅則「コロナ禍における大学生のアルバイト等の実態」

川村雅則「「学生アルバイト白書」からみえるコロナの下での学生の実態と思い」

 

(参考資料)

川村雅則ゼミナール『北海学園大学学生アルバイト白書2020』2020年12月発行

首都圏青年ユニオン・首都圏青年ユニオン顧問弁護団『シフト制労働黒書』2021年5月発行

 

 

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