川村雅則「伝える努力──情報収集行動にみられる世代間の断層をこえて(?)」

首都圏青年ユニオンで発行されている『ニュースレター』第245号(2021年9月26日号)にコラムを書きました。タイトルはわざとかためにして、問題を提起しました。教育関係者はもちろんのこと、労働組合関係者にお読みいただきたい内容です。ニュースレターでは割愛せざるを得なかった資料もつけました。/なお、首都圏青年ユニオンには「支える会」なる組織があります。青年の奮闘を支えていただけますよう呼びかけます。

 

 

はじめに

連日6,7時からの仕事始めで残業代はつかず/新人教育担当者のあたりがきつく日曜も死ぬ気で勉強だと指導/キレた上司にカッターの刃をちらつかされて──いずれも卒業生からの労働相談です。卒業生の全員がこんなひどい職場に勤めたわけではもちろんないとはいえ、卒業後の彼らの状況をつかめていないだけに、いったいみんなどんな働かされ方をしているのだろう、と心配です。

学生や若者に労働情報を届けたい

必要な情報を彼らに伝えたい──そのような思いで、日ごろ交流のある労働組合の方々と一緒に、労働分野の情報発信・交流事業を今年の4月から、やや無鉄砲ながら始めました。スマホで読めるサイト作りです。

卒業生だけでなく、アルバイトで働く学生に対しても同様の思いです。ご承知のとおり、学生アルバイトが基幹労働力と化しているその一方で、彼らがぞんざいな扱いを受けていることは珍しくありません。「学校で労働法・労働組合を学ぶ」機会の提供が我々の課題ではあります(同タイトルの本も共著で出しました)が、取り組みは十分ではありません。

なぜスマホ向けサイト?

もともとウェブサイトを作って個人で情報発信はしてきましたが、やはり昨今の若者の情報収集事情を考えると大幅な更新(アップデート)は必至でした。今回の事業を始めるにあたって少し整理してみたのですが、例えば、数年前(2017年度)に私の勤務校で行われた、有効回答が約4千人の「学生生活実態調査」によれば、平日におけるスマホの利用は、「2~3時間未満」と「3~5時間未満」にそれぞれ3割前後の山があり、5時間以上も4,5人に1人(23.6%)の割合でした。しかも休日の利用はさらに長時間。ちなみに、逆に、1日の読書時間(漫画は除く)は、「なし」が48.8%で、紙の新聞を読む機会は、「まったく読まない」が58.3%でした(がっかり)。

こうした現状に対して、本・新聞を読もうではないか、という姿勢は堅持しつつも、一方で、学生に限らず社会全体において、スマホがそんなに使われているというなら、スマホ向けの、役立つ労働情報サイトを作ってみようかなと思ったわけです。ちょっとだけ方針転換です。

夢は情報発信・交流の場づくり

もっとも、読者を若者に特化したわけでもありませんから、配信記事はごった煮です。私なぞ、論文をそのまま貼り付けているだけです。

それでも、サイト訪問者が元気になってくれたら、各地の取り組みに役立てていただけたら、という思いで、管理人一同、せこせこと情報の発信につとめています。

なお、ここまで書いておきながらなんですが、私はいまだ非スマホユーザーです。問題意識の割にはのんきに思われるかもしれませんが、何ごとも精進。情報発信にとどまらぬ「交流」の場づくりを目標に掲げ、新規事業に取り組んでいます。

資料(プロジェクトを始めるにあたって整理した、若者の情報収集行動に関するデータ)

1)北海学園大学「学生生活実態調査」のうち『2017年度 学生生活実態調査報告書』

・1日の読書時間(漫画は除く。有効回答3964人)は、「なし」48.8%、「30分未満」27.7%、「30分~1時間未満」16.4%、「1時間以上」7.1%。

・紙の新聞を読む機会(有効回答3960人)は、「まったく読まない」58.3%、「週に1回程度」23.5%、「週に2,3回」8.9%、「週に4,5回」3.4%、「毎日・ほぼ毎日」5.9%。

・平日におけるスマホの利用状況・時間(有効回答3927人)は、「1~2時間未満」10.1%、「2~3時間未満」28.0%、「3~5時間未満」33.3%、「5~7時間未満」14.2%、「7時間以上」9.4%。

なお、「スマホを持っていない」のは1.1%で、残りの回答選択肢である「ほとんど使わない」、「30分未満」、「30~1時間未満」は合計で3.9%。また、休日におけるスマホ利用状況・時間は、平日よりもさらに長時間化。

・スマホの主な利用目的(複数回答可、有効回答3951人)は、「SNS(メール、LINE、FBなど)」79.7%、「動画の視聴」63.7%、「ゲーム」54.9%、「ネットサーフィン」48.8%、「学習目的」30.4%、「通話」23.4%

 

2)全国大学生活協同組合連合会「第55回学生生活実態調査の概要報告」

・「1日の読書時間「0」分は48%。平均時間は30分と前年から大きく変化せず」とのこと。

 

3)新聞通信調査会「メディアに関する全国世論調査(第12回調査)」

・ニュースとの接触頻度で、「ニュースを毎日読む・見聞きする」人の割合は、40代までは「インターネットのニュース」が最多。18~19歳43.1%、20代51.0%、30代69.0%、40代60.9%。

・「政治に関すること」を読んだり見たりするメディアで18~19歳も20代も最多は「インターネット」。18~19歳は48.3%、20代は47.6%。なお、民放テレビが18~19歳では僅差(46.6%)、20代では同数。

・「新聞の読み方」で「新聞や新聞記事は読まない」が18~19歳では63.8%、20代では66.9%。

 

 

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