川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載7)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載7)』2024年2月15日

 

2024年2月14日、『北海学園大学 学生アルバイト白書2023』づくりの締めとして、札幌市議会各会派に「陳情」*活動をしてきました。

学生アルバイト環境の整備やワークルール教育の推進に議会でも取り組んでいただきたいというのが「陳情」*の趣旨です。

*地方自治法上は「陳情」という言葉になるのでしょうが、調査・研究活動に基づく資料の提供と要請というイメージでとらえてください

 

 

注:各会派に要請。当日は本会議の開催日で、幸運にも多くの議員に直接要請をすることができました。

 

 

例年述べていることですが、調査活動にとどまることなく、調査でせっかく明らかになった結果をエビデンスにしながら、学生アルバイト問題の解決に貢献するような具体的な活動に取り組んでみたいと、今年度の取り組みの始まり(連載1)で書きました。

その中で、「条例づくりに取り組んでみ」ると書きました。

日本労働弁護団が中心となって取り組んでいる「ワークルール教育推進法(案)」の「条例」版をイメージしてのことでした。

 

アルバイトは、働くということに生徒・学生・若者が最初に出会う機会です。長い職業人生の「入口」での経験はとても重要だと思います。アルバイト経験が学生たちにとってよりよい機会になるような環境の整備を、教育機関・大学関係者だけでなく、もっと広く社会全体で取り組むことができたらと思います。

「陳情」で今年度の取り組みは時間切れとなってしまいましたが、次の『白書』づくりの際には、ここからさらに前進をしていきたいと思います。

 

以下は、各会派に当日に持参した文書・資料です。

なお、今回の「陳情」の取り組みと調査の結果への取材のお願いを、札幌市政記者クラブに投げ入れてきました。報道機関からの取材の依頼をお待ちしています。

 

要請文書

 

2024年2月14日

札幌市議会議員の皆さま

北海学園大学経済学部

川 村 雅 則

ゼミナール学生一同

 

前略、日夜にわたる市政のための活動に敬意を表します。

 

さて、私たちは、大学で学生のアルバイトに関する調査・研究活動を続けてきました。大学生のほとんどが学生時代にアルバイトを経験します。高校生のときからアルバイトを経験している者も少なくありません。

アルバイトをしなければ学業の継続が困難である、という問題はさておくとして、社会で働くということ自体には、人を成長させる効果があると思います。ただ一方で、仕事の世界のルールが守られていなかったり、使用者あるいは労使の双方が仕事のルールを知らないことによって、問題の発生することが少なくありません。

別紙は、今年の私たちの調査で明らかになった学生アルバイト・ワークルールをめぐる問題の一部です。

こうした状況の是正のために、高校や大学など教育機関でも様々な取り組みがなされています(本学で使われている書籍『学生のためのワークルール入門』も同封します)。

しかしながら、個々の学校や個々の教員の努力だけでは限界があります。

学生たちは、アルバイトを通じて仕事の世界に入ってきます。札幌市におかれましても、学生たちが、トラブルなどに巻き込まれることなく、活き活きと働くことができる条件の整備に取り組んでいただきたいと思います。

*日本労働弁護団が中心となって取り組んでいる「ワークルール教育推進法」の条例版のようなものができないかと考えています

 

なお、本日はとくにアポイントメントもとらずにお邪魔しました。もしお時間をいただけるようであれば、あらためてお伺いして、資料の説明をさせていただきたいと思います。

ご多忙のところ大変恐縮です。以下までご連絡をいただければ幸いです。

 

〔研究室の連絡先。略〕

 

2023年度 北海学園大学 学生アルバイトの実態・ワークルールの認知状況に関する調査結果のポイント

 

北海学園大学に在籍する全ての学生を対象にして2023年11月にウェブアンケート調査を行いました。有効回答410人のうち「現在アルバイトをしている」368人(1部280人、2部88人)を対象に集計・分析を行いました。皆さんに知っていただきたいポイントは以下のとおりです(1部生の結果を中心にみていきます)。詳細は、2023年度のアルバイト白書の結果をご覧ください。https://roudou-navi.org/

 

 

連載4 連載5 連載6

 

 

 

  1. 27.9%が「高校生」から、62.5%が「大学1年生」から、働き始めている(2部では47.7%、47.7%)。
  2. 最初のアルバイトを始めた際にワークルールは「あまり知らなかった」が51.1%、「全く知らなかった」が27.1%
  3. 現在もなお、「あまり知らない」が23.9%、「全く知らない」が13.9%。
  4. 現在ワークルールを知っているもの(よく、まあ)に限定して、ワークルールを知った手法・契機を尋ねたところ(複数回答可)、「高校の授業を通じて」はわずか8.1%、「大学の授業を通じて」は57.8%。
  5. 現在のアルバイトで働き始める際に労働条件や雇用契約書などの書面を受け取ったかは「受け取った」が74.3%を占めるものの、「受け取っていない」が9.6%、「わからない、覚えていない」が15.4%。〔なお、別の追加調査で確認したところ、受け取っていることは、読んで内容を必ずしも理解しているわけでは必ずしもなかった。連載6を参照
  6. 過去のアルバイトを含め、求人情報と実際が違った経験が「ある」は27.5%(2部は38.6%)。
  7. 学生アルバイトが有給休暇を取得出来ることは知られている(「よく知っている」42.1%、「まあ知っている」37.9%)であるものの、現在のアルバイト先で学生アルバイトは有給休暇を使用できるかは、「わからない」が46.1%で、「使用できない」も15.0%みられた。
  8. 給料の支払い単位時間が1分単位でなければならないことを「知っている」のは66.8%だが、実際に「1分単位」で処理されているものは46.9%。
  9. 制服への着替え時間にも賃金が支払われる必要があることを「知っている」のは65.4%であるものの、一方で、制服への着替えに賃金が支払われていないと回答したのが50.7%。
  10. 休業手当制度については、「よく知っている」が15.4%、「まあ知っている」が23.6%にとどまる。
  11. 同制度はシフトカットや早上がりにも適用されるが、前者では4%が、後者では75.0%が、適用されることを「知らない」。
  12. ゆえに、「シフトカットの経験があり、なおかつ、休業手当は支払われていない」ものが26.6%、「早上がりの経験があり、なおかつ、休業手当は支払われていない」が32.25%。
  13. 学生アルバイトでもハラスメント経験・被害が少なくない。アルバイト先の店長や従業員からのハラスメントとしては、「店長や従業員に威圧感を感じる」が28.2%、「自身の性格や人格を否定されるようなことを言われた」が10.54%、「暴力や暴言を受けた」が7.9%。客・利用者からのハラスメントとしては、「理不尽なクレームや言動を受ける」が32.5%。
  14. 過去のアルバイトを含め、アルバイト先の労働条件や労働環境を「改善したいと思ったことがあり改善の行動を起こした」が17.5%と「改善したいと思ったことはあるが、改善の行動は起こさなかった」が40.0%。「改善したいと思ったことはない」は40.7%にとどまる。
  15. ワークルールを学ぶ必要性は、「とても感じている」が43.2%、「まあ感じている」が47.5%。

 

 

 

(参考資料)

■川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載1)』2023年7月29日
https://roudou-navi.org/2023/07/29/20230729_kawamuramasanori/

■川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載2)』2023年9月30日
https://roudou-navi.org/2023/09/30/20230930_kawamuramasanori/

■川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載3)』2023年10月26日
https://roudou-navi.org/2023/10/26/20231026_kawamuramasanori/

■川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載4)』2023年12月11日
https://roudou-navi.org/2023/12/11/20231211_kawamuramasanori/

■川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載5)』2023年12月29日
https://roudou-navi.org/2023/12/29/20231229_kawamuramasanori/

■川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2023(連載6)』2024年1月2日
https://roudou-navi.org/2024/01/02/20240102_kawamuramasanori/

 

 

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