小松康則「みんなが話せる楽しい会議で、女性や子育て世代が元気に活躍」

学習の友社発行『学習の友』第832号(2022年12月号)に掲載された、小松康則さん(大阪府関係職員労働組合(大阪府職労)執行委員長)の原稿の転載です。労働組合活動を元気にする上でのヒントが盛りだくさんです。どうぞお読みください。

 

 

組合活動の活性化をめざして試行錯誤の連続

大阪府職労では役員の減少、仕事の多忙化などの困難な状況のもと、どうすれば多くの組合員が参加し、活動を活性化することができるのかということが大きな課題でした。いつも「世代交代」や「若手・女性の参加」を意識して活動していましたが、全てがうまくいったわけではありませんでした。

2017年12月に初めてコミュニティ・オーガナイジングに出会い、その後もスタッフやコーチとして関わり続け、自分自身もキャンペーンを進めることで、チームの立ち上げや運営など、さまざまなノウハウを学ぶことができました。それらを労働組合活動にいかそうと、試行錯誤しながら進めてきました。

 

「とても発言できる雰囲気じゃない」会議

大阪府職労の機関会議は、執行委員会が月3回、支部役員も参加する拡大執行委員会が月1回というのが基本で、いずれも夜7時から2時間程度の会議で、終わった後は飲みに行くというのが定番でした。

会議では委員長があいさつや情勢報告をし、経過報告や当面する取り組みを報告し、意見を求めるという内容でした。だいたい発言する人は固定化され、一部の人が長く話したり、話さない人は一言も話さないということもよくありました。ある役員から「(課題が多く長い報告を)聞いてるだけで疲れるわ」と言われたこともあります。新しく役員になった人には「難しくてわからない」「とても発言できる雰囲気じゃない」と言われたこともありました。

 

みんなが自由に話せる工夫、みんなでつくる会議

これまでの「上から下へ」の一方通行の会議ではなく、みんなが気軽に自由に話せる会議をめざし、いろいろな改革をしてきました。まずは、みんなの大切な時間を有効に使うため、きちんとタイムキープすることから始め、Googleドキュメントなどを活用して議事録を共有し「見える化」しました。これによって会議に来れなかった人も会議の内容がわかるというメリットもありました。

そして、どの会議も初めに「チェックイン」の時間をとって、参加者全員が「今の気持ち」などを30秒~1分ぐらいで自由に話します。職場で起きたことや日々思っていることなどが次々に出されます。そして、チェックインのあとは「セレブレーション(お祝い)」です。前回の会議以降にできたことを出し合ってお祝いします。少しでもできたこと、チャレンジしたけどうまくいかなかったことも含めて、みんなで共有します。

そして、会議の最後には「振り返り」の時間を必ずとって「①よかったこと、②改善・工夫点、③学びや気づき」を一人ずつ話します。この「振り返り」で出される声がその後の会議や活動にもいろいろいかされることもあります。

 

小グループで話すと次々アイデアが湧いてくる

会議で大事にしていることは「みんなで話し合う時間」です。これまで長々とやっていた情勢報告や経過報告、当面する取り組みは、思いっきり短くし(資料で伝わるものは資料で済ませる)、この会議で話し合いたいテーマを2つ~3つ決めて、3~4人の小グループで話し合ってもらい、どんな意見があったかを全体にシェアします。参加者からは「初めは何の意見もなかったけど、話しているうちにどんどんアイデアが湧いてくる」「人の話を聞いてまとめる練習になる」などの感想も出されています。

こうした試行錯誤や現場の声から出発するキャンペーン、オンライン環境の整備を重ね、会議の回数も減らしつつ、時間帯もみんなが参加しやすい土曜日の午前中にするなどの工夫も続けてきました。その結果、労働組合活動への参加や役員になるハードル、負担も低くなっていたのではないかと思います。そして、昨年10月の本部役員選挙では、子育て中の女性や若手組合員が「いまの活動なら私にもできる」と、次々に役員を引き受けてくれることになり、本部役員の6割が女性となり、半数以上が子育て中のメンバー構成となりました。

会議を完全オンライン化し、自宅で子どもと過ごしたり、家事をする傍らでも参加できるようにしました。「子どもの習いごとの直前まで会議に参加できるので助かる」「洗濯機を回しながら参加できる」「会議がストレスにならなくなった」という声が出されています。

 

女性が増えたことで生理の話題が話せる雰囲気に

こうして女性役員が増えたことで生理の話や「生理休暇が取りづらい」という問題もよく話されるようになりました。本部役員のLINEグループでも「生理でしんどいので会議に出られないかも」という連絡も入るようになりました。会議の中でも「生理をタブー視する職場の雰囲気を変えたい。生理休暇が取りやすい職場にしたい」という声が大きくなり、生理休暇を取りやすくするためのパンフレットやポスターを作ろうと、保健師や看護師を含む女性役員と若手男性役員も加わったSRHR(性と生殖に関する健康と権利)推進チームが誕生しました。

 

関心のある課題をチームで進める運動

労働組合の組織は、職場や性別、年齢などのカテゴリーに応じて組織が分けられています。しかし、大阪府職労が取り組んできた「保健師、保健所職員増やしてキャンペーン」や「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)推進チーム」は、カテゴリーではなく、価値観や関心で結びついたメンバーがチームを作り運動を進めています。

そして、いま、執行委員会では、もっと組合員がやりたいことや解決したいと思っていることを出し合って、チームを作って運動を進めていけるような活動がしたいと話し合っています。

 

 

(関連資料)

大阪府職労 第101回定期大会 No Union No Life 声をあげることで変えられる! 「仕方ない」から「あきらめない」へ

 

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