川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載8)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載7)』の続きです。

 

 

川村:他にはどんな調査結果がありますか。

学生:先ほどの働きやすさ/働きづらさの調査結果にも関わって、アルバイト先までの通勤に要する時間を調べておきました。

通勤に時間がかかる場合には働きづらいんじゃないかなと思って。とくに、例えば、オンライン授業のときには家からすぐ近くで通うことのできていたのが、対面授業になったことで、学校から向かうことになって時間を要することになったケースとかがあるんじゃないかと思って。

川村:なるほどね。結果をみせてもらえますか。

学生:実家暮らし/一人暮らしや通学時間などの情報もあるんですが、合体させてしまっていいですか。

川村:いいですよ。

学生:中途半端な結果になってしまったんですが、通勤にかかる費用とか通学にかかる費用も聞いたんですが。

川村:全部くっつけてみましょうか。

学生:了解しました。

 

(がちゃがちゃがちゃがちゃ)

 

図表1 住まい、通学に要する時間と費用及び通勤に要する時間と費用

回答者 住まい 通学 アルバイト先への通勤
通学時間 通学費用の負担者 通学費用の金額 通勤時間(家から) 通勤時間(大学から) 通勤費用
No.1 実家暮らし 50分 自己負担 1か月約2万円 40分 10分 かからない
No.2-1 実家暮らし 30分弱 親負担 1か月6千円 20分 × 全額支給
No.2-2 40分 10分 全額支給
No.3 実家暮らし 30分 自己負担 定期3か月分 7分 30分 かからない
No.4 一人暮らし 10分 非該当(負担はゼロ) 非該当
No.5 実家暮らし 1時間20分~1時間30分 親負担 定期 20分 1時間10分 オンライン時は支給、現在は「かからない」
No.6 実家暮らし 1時間 親負担 1か月約1万5千円 5~10分 × かからない
No.7-1 実家暮らし 30分 親負担 6900円 5分 30分 200円(大学から)
No.7-2 30分 15分 250円(家から)、210円(大学から。定期の範囲内だが全額支給)
No.8 実家暮らし 1時間 奨学金 1か月1万6千円 10分 × かからない
No.9 実家暮らし 1時間30分 自己負担 1か月1万2千円 10分 × かからない
No.10 実家暮らし 1時間 自己負担 1か月1万5千円 15分 1時間 かからない(定期の範囲内)
No.11 実家暮らし 50分~1時間10分 親負担 1万5千円 15分 30分 かからない
No.12 一人暮らし 10分 非該当(負担はゼロ) 10分 × かからない
No.13 実家暮らし 1時間 自己負担 1万5千円 10分 × かからない(5000円が支給)
No.14 一人暮らし 5分 非該当(負担はゼロ) 非該当
No.15 実家暮らし 40分 自己負担 7千円 10分 20分 夏冬春休みのみ支給
No.16 実家暮らし 1時間 自己負担 1万5千円 20分 × かからない
No.17 実家暮らし 1時間 自己負担 定期1万5千円 30分 40分 全額支給
No.18 一人暮らし 5分 非該当(負担はゼロ) 15分 20分 片道分のみが支給
No.19 実家暮らし 3時間 親負担 3万円 25分 × かからない(162円が支給)
No.20 一人暮らし 30分 自己負担 定期 25分 15分 かからない(定期の範囲内)
No.21 実家暮らし 30分 定期6千円 10分 20分 片道分のみが支給
No.22 実家暮らし 1時間30分 親負担 約1万5千円 5分 1時間半 かからない
No.23 一人暮らし 10分 非該当(負担はゼロ) 10分 20分 かからない
No.24 実家暮らし 40分 親負担 定期3か月約2万円 5分 40分 かからない
No.25 実家暮らし 5~10分 自己負担 10分 × かからない
No.26 実家暮らし 40分 親負担 約2万円 30分 10分 かからない
No.27 実家暮らし 1時間 定期 20分 30分 バス代が支給
No.28 実家暮らし 1時間 親負担 10分 1時間 かからない
No.29 実家暮らし 1時間 親負担 1万7100円 30分 30分 かからない

 

学生:まず通学時間は、「一人暮らし」をしている回答者6人では短いです。「30分」の回答者が1人いますが、他は10分以内(「5分」か「10分」)です。

「実家暮らし」の場合には、1時間に満たないケースが9人で、1時間以上かかっているのが14人で、最長は3時間ですね。

川村:3時間は長いね。

学生:対面授業になってから通学費用がかかるようになったというケースが多いと思ったので、負担者と金額を尋ねました。

前者の結果ですが、「親負担」が11人、「自己負担」が10人、とくにかからない(表中では「非該当」)が5人、不明(表中では「?」)が2人、最後に「奨学金」が1人です。

川村:ん?奨学金?

「奨学金」と「自己負担」の関係はどうなっているのかな?奨学金で自分で払っている、というケースは「自己負担」にならないの?

学生:あ、そうじゃないです。「奨学金」は奨学金でまかなっているケースですが、「自己負担」はアルバイト収入でまかなっているケースです。

川村:なるほど。そうだとすれば、「自己負担」というより「自分のアルバイト収入」と記載したほうがよいかな。「誰」が負担しているのかという視点を入れながら、「何」で負担しているのか、という視点で整理した感じですね。

学生:なるほど。

川村:通学費用の金額欄には、金額だけでなく、いろいろな情報が入っていますね。1か月分とか3か月分という情報もあれば、定期と書いているケースもありますね。

学生:分かりづらくてすみません。ちゃんと聞けたのと聞けていないのがありまして、聞けたものだけ書きました。

川村:おそらく、1か月分が回答されるのが標準的なパターンであって、ときどき、3か月分の定期を使って通学しているケースから回答されることがあるんじゃないかな。

ですから、1か月分の通学費用を教えてください、という質問を基本にして、もし3か月分の定期を使っている人から回答があった場合には、その旨を書いておくとよいかもしれませんね。例えば、「1万円(3か月分の定期代が3万円)」など。

定期を使っているかどうかも把握する必要があるなら、(1)定期を使っているかどうか、(2)使っている場合には何か月分の定期を使っているか、を先に聞いて、その上で、(3)1か月分の通学費用の金額を尋ねてもよいかもしれません。

学生:なるほど。たしかに今回は、金額、定期の使用の有無、期間などがごっちゃでした。

 

 

川村:通勤の調査結果も面白いですね。通勤は、家からの場合と大学からの場合があるわけだ。「通勤時間(大学から)」の「×」はどういう意味ですか?

学生:アルバイト先には基本的に家から通っていて、大学から通うことはない、という意味です。

川村:非該当を意味するわけですね。「×」の意味を表の注釈に書いておく必要がありますね。「注:「通勤時間(大学から)」に「×」が書かれたケースは、家から通っているケースである」とか、ですね。

学生:はい。

学生:通勤費用はちゃんと聞けていなくて。

「かからない」というケースはよいのですが、残りは、金額を書いているケースもあれば、「全額支給」というケースもあって。他にも、「片道分のみが支給」とか、「バス代が支給」とか。

川村:金額だけ回答されていたり「バス代が支給」というのは、全額支給なのか、一部支給なのかが分かりませんよね。

学生:そうなんです。

川村:「かからない」の後に金額が書いてあるのは、「かからない」けれども、支給されているというケースですね。

学生:はい。

川村:なるほど。

ちなみに、今回の調査結果ではみられなかったようですが、よくある混乱は、交通費が「支給されていない」という回答は、交通費がかかるのだけれども「支給されていない」ケースなのか、かからないから「支給されていない」ケースなのかがごっちゃになっているパターンです。ここは注意をしてください。

そのことも踏まえて考えると、(1)アルバイト先への通勤に費用がかかるか、(2)かかる場合には、費用は支給されているか、(3)いくら支給されているか、という順番で聞くとよいでしょうね。

ただ学生の場合、費用が「かかる」のだけれども、定期で処理するようアルバイト先から求められているパターンは少なくないと思いますから、(2)を尋ねる際にはそのことも意識したほうがよいでしょうね。

学生:私も定期で処理しています。

川村:対面授業が一部解禁になった際、一日一コマとかのために交通費をかけて通学するのはもったいない、などの声を聞きましたが、こうしてみると、確かに、交通費はばかになりませんよね。しかも、アルバイト収入からまかなっているケースが結構いるのですね。

学生:あ、そのことに関連して、アルバイト収入を何に使っていますか、という賃金の使途も聞いたんですよ。ただ、これがちょっと、聞き方とか整理の方法が統一していなかったものですから、全然使えなくて。

川村:まあ、全然使えないことはないでしょうし、今後の教訓になりますから見せてください。

学生:じゃあ、ついでに、希望する金額がアルバイトで稼げているかどうかも尋ねたので、それもあわせて表にしてもいいですか。

川村:どんな情報ですか。

学生:(1)現在のアルバイト収入で得ている金額(連載5にあげた図表3を参照)と、(2)本来希望するアルバイト収入の金額とを比べて、(3)希望する額を得られているか、得られていないかを整理したものです。

川村:いいですね。ただ、(3)の情報だけでなく、(2)希望する収入の金額そのものも示したほうがよいですよ。(2)を示さずに(3)だけ示すのは、望ましくありません。

学生:反証可能性うんぬんってやつですね。分かりました。

 

(がちゃがちゃがちゃがちゃ)

 

図表2 希望するアルバイト収入額、対面授業時の収入額、その差及び賃金の使途

回答者 希望するアルバイト収入額 対面授業時の収入額(再掲) 賃金の使途
No.1 7万円 2~5万円 マイナス 交際費、自分自身の日用品への支出
No.2-1 8万円 1~2万円 マイナス 交際費、趣味
No.2-2 2~3万円
No.3 5万円 5~6万円 たまに食費、残りは貯金
No.5 5万円 5~6万円 趣味、貯金
No.6 6万円 6万円 ○(ゼロ) 自由(交際費)
No.7-1 5~7万円 2~3万円 マイナス 掛け持ちバイトのうち一つの分は交際費と趣味に、もう一つの分は貯金
No.7-2 2~3万円
No.8 5~6万円 2~3万円 マイナス 自由(交際費)
No.9 6~7万円 6~7万円(数千円減少) ○(ほぼゼロ) 奨学金返済用に数万円貯金、残りは自由(交際費)
No.10 6万円 5万円 マイナス 交通費や教科書代、残りは自由
No.11 7万円 6万8千円~7万円 ○(ほぼゼロ) 飲食、娯楽、通信費
No.12 7万円 5~5.5万円 マイナス 食費が1万円、交際費1万円、雑費1万円、貯金2万
No.13 6万円 6~7万円 交際費に2万円、交通費など1万円、諸経費で1万円ほどで残りは貯金
No.15 8万円 8万円 ○(ゼロ) 交通費、学費、貯金
No.16 5万円 3~5万円 マイナス 〔聞き取り漏れ〕
No.17 7~10万円 7~10万円 ○(ゼロ) 交通費、交際費、趣味
No.18 5万円 4万円強~8万円 〔聞き取り漏れ〕
No.19 8万円 9万円 服や食費、交際費
No.20 7~8万円 7~8万円 ○(ゼロ) 服や友達と食事、残りは貯金
No.21 10万円 8~10万円 マイナス 娯楽
No.22 5万円 7万円 娯楽
No.23 8万円 5~6万円 マイナス 生活費(食費)、交際費
No.24 4万円 3~4万円 マイナス 交際費、洋服代
No.25 6万円 8~9万円 交通費、遊び、貯金
No.26 5~7万円 5~7万円 ○(ゼロ) 交際費、交通費(通学2万)
No.27 6万円 6万円 ○(ゼロ) 半分貯金、残りは食費や娯楽
No.28 6万円 6万5千円 趣味、貯金
No.29 7万円 7万円 ○(ゼロ) 趣味(服とアクセサリー)、貯金

 

学生:まず、希望するアルバイト収入額と実際の収入額との差をみると、17人は得られています。表中の「○」表記です。トントンの場合は「○(ゼロ)」と表記して、実際の収入額が希望額を超えている場合には「○」としました。「○(ほぼゼロ)」としたケースも2人います。

逆に、希望額に達していない場合には、「マイナス」としました。人数は10人です。前に先生がそうしていたように、希望額が「5万円」で実際の収入額が「3~5万円」のようなケース(No.16)も「マイナス」にしています。

川村:後者(実際の収入額)の中間値は4万円と考える方法からも妥当かと思います。

学生:この分類ですと全体の6割弱が希望する額を得られているのに対して、4割強が希望額を得られていない、ということになりました。

川村:ふむふむ、なるほど。

ちなみに、希望する額が結構高めの学生もいますね。

学生:えーと、計算をしてみると、8万円以上を稼ぎたいとしているケースが4、5、6、、、7人ですね。「7~8万円」「7~10万円」を含みます。

川村:学生生活には何かとお金がかかる、ということでしょうね。

学生:そこ!そこがちゃんと調べられなかったんですよ。

川村:先ほどそう言っていましたね。どういうことですか?

学生:結局、メインの使途だけ回答している人もいれば、細かく回答してくれた人もいまして。それこそ、先ほどの図表でみたとおり、通学費用をアルバイト収入で負担しているケースは10人のはずなのに、賃金の使途で通学費をあげたのは6人なんですよ。たぶんメインの使途だけを回答したんだと思います。

川村:なるほど。おそらく、そもそもの聞き方が「アルバイトの収入ってどういうことに使っているの?」という感じで、メインだけの回答だけでも構わないような聞き方だったのでしょうね。金額についても、聞いていないケースもあれば聞けているケースもありますね。

学生:そうなんです(涙

川村: あと気になったのは、言葉というか語意ですね。例えば、「交際費」、「遊び」、「娯楽」、「食費」などは異なる概念なのかどうか。「食費」は、一人暮らしの場合には生活費に近いでしょうけれども、実家暮らしの場合には交際費に近いのではないでしょうかね。いわゆる会食ですね。

「貯金」についても、逆に言えば、「貯金」の記述がないケースは、アルバイト収入の全部を使い切っていると誤解されかねませんね。

お、「雑費」という言葉も見られますね。これはどういう費用かな。

学生:(涙

 

川村:まあまあ。初めて取り組んだ際によくある失敗ですよ。

しかし、アルバイト収入の使い道というのは、もしも正確に聞くことができたら非常に貴重な情報になると思いますので、機会があったらぜひまた挑戦してみてください。

ちなみに、アルバイト収入の使い道というのはどう聞けばよかったと思いますか。前に助言したのを踏まえて考えてみてください。

学生:えっと、予想される選択肢を示しながら、一つ一つの回答を聞く。その際に、可能であれば金額も聞く、という方法が考えられますかね。

川村:もしそんな正確なデータが得られたら、とても貴重だよ。

学生:あとは、そもそも我々の問題意識の一つが、アルバイト収入を自由に(交際費などに)使えているか、それとも、学費や生活費に使っているか、という点にあったわけだから、まずそこを聞いた上で、それぞれの割合や金額を聞いてもよかったかも。例えば、収入8万円のうち、5万円は交際費や服など自由に使って、残りの3万円は学費や生活費に使っている、など。

川村:ふむ、その場合、スマホの通信費用はどちらに入るかな。

学生:自由に使えるお金じゃないですか?

川村:たしかにそういう側面もあるけれども、一方で、オンライン授業になって、学費に近い側面も出てきていないだろうか。学生をみていると、オンライン授業にスマホで対応している学生も結構いるじゃない。

我々の2020年調査では、遠隔授業を受講するのに使う媒体(複数回答可)で「スマホ」をあげていた回答者は半数を超えていました(『白書2020』の図表Ⅱ2-8)

学生:じゃあ、スマホの通信費用は「学費・生活費」に分類すればいいんですか。

学生:でも、スマホ利用はゲームとかが中心の学生も多いんじゃない。

(がやがや)

川村:えーと、スマホの通信費を例にあげてみましたが、ここで私が言いたいのは、自由に使えるお金とそうでないお金という分け方をして回答を求める際に、調査する側はもちろんのこと、回答者にも、混乱が生じないように、内容を事前に整理しておくことの重要性です。その点を理解してくだされば結構です。

学生:調査って奥が深いですね。

川村:はい(苦笑)

学生:ところで、調査をしている中で気づいたんですが、対面授業に切り替わったことで出費が増えているという声が聞かれました。

例えばNo.5は、実家暮らしで今まで昼食をほとんど家で食べていたけれども、オンラインに切り替わったことで、「授業後の昼食代の計算が上手くできず大量出費してしまい給料の大半が消えた」そうで、現在は学食を使って節約し、残りを趣味や貯金に回していると聞きました。

No7も「対面授業になったことで特に洋服代への出費が増え、月1万5千円位使うようになりました」と回答しています。

対面授業に切り替わったことでの出費の増減を尋ねることまでは、今回の調査では、事前打ち合わせしていなかったので、次回はこの点を明らかにしたいと思います。

川村:ふむ、いいですね。

 

 

学生:あと、これもアルバイトと無関係ではないと思うのですが、オンライン授業がよいか対面授業がよいか、とその理由も尋ねておきました。こんな感じです。

 

図表3 希望する授業の開講形態およびその理由

回答者 希望する授業の開講形態 理由
№1 併用 選べるのが理想。対面でもレジュメを読むだけの授業などはオンラインの方がいい。
№2 併用 ハイブリッドが理想。対面でもオンラインでも変わらない授業については、オンラインであれば、他のアルバイトであったり用事を入れられるから。
№3 併用 授業による。補足やディスカッションのある授業は対面で、レジュメを読むだけの授業ならオンラインのほうがいい。
№4 オンライン 対面では、授業が終わったら見返せないためオンラインのほうがいい。
№5 併用 レジュメの配布や穴埋め、それ以外の話題がある授業は対面で、pdf配布で穴埋めもなくレジュメを読むだけの授業はオンラインがいい。
№6 併用 対面の方が集中できるが、体力的な負担が大きいため、オンラインと併用がいい。
№7 併用 対面だと集中しやすく友達にも会える。課題もオンライン時より減った。オンラインだと、バイトや遊びなど時間を自由に使うことができることに魅力を感じているため、併用がいい。
№8 対面 先生に直接質問ができて学びになるため、対面がいい。
№9 併用 対面だと課題を溜めることがなく、授業が頭に入りやすいが、動画を見るだけの授業ならオンラインで十分なので、併用がいい。
№10 併用 オンラインだと課題を溜めてしまうため対面がいいが、授業によってはオンラインと併用がいい。
№11 対面 対面だと授業を溜めなくて済むから気持ち的に楽で、生活リズムを整えやすくメリハリがつくため。
№12 対面 オンラインだと課題を溜めることがあるが、対面だとやる気が出るし、理解が深まるため。
№13 併用 対面でしかできない授業は対面がいいが、授業によっては対面とオンラインの質が変わらないのもあるため、そのような授業はオンラインでいい。
№14 対面 対面だとメリハリがつき授業に集中できるため。なお、コロナの影響を受けた世代に対しては救済処置のようなものがあったほうがよい。
№15 対面 対面授業のほうが集中できるから
№16 オンライン 対面だとバイトの勤務時間が遅くなり自分の時間があまり作れない。大学への通学の時間もかかるためオンラインがいい。
№17 オンライン オンラインだとバイトのシフトを好きな時間に入れることが可能なため。
№18 併用 対面でスライドをただ読むだけの講義ならオンラインがいいが、発展的な講義なら対面がいい。
№19 対面 オンラインだと課題を溜めてしまうが、対面だと友達に会えるため。
№20 オンライン 現時点で、一日に一コマの対面授業という日が三日間ある。一コマのために学校に行くのが少し面倒なため。
№21 オンライン バイトを入れやすく、自分の時間を有効に使えるためオンラインがいい。
№22 対面 オンラインの時より睡眠時間が減っていて、体力的にも少しきつい部分があるが、毎日友達に会えるのが嬉しいため。
№23 併用 対面のほうが学業優先という面ではしっかり授業を受けられるので良いが、収入の面では少し生活が苦しくなったため。
№24 併用 午前で終わる授業が多いため。併用のほうがバイトの時間を確保できるため。
№25 対面 オンラインだと長時間画面の前にいるのが辛く、授業動画や課題がたまっていくのが苦痛であるため。
№26 対面 オンラインだと電気代が高くなり、対面のほうが授業に集中できるため。
№27 併用 対面とオンラインのどちらにも良さがあり、どちらのほうが良いとは言えないため。
№28 オンライン 対面だと通勤時間が長いため。
№29 オンライン 講義の受け方とシフトの組み方が自由なため。

 

学生:結果は、「対面」が9人、「オンライン」7人、「併用(ハイブリッド)」が13人です。

先ほどお伝えしたとおり、アルバイトとの関係でオンラインが希望されています。例えば、No.16は、対面だとバイトの勤務時間が遅くなってしまうから。No.17は、オンラインだと好きな時間帯にアルバイトを入れることができるか。No.21も、シフトを入れやすいから。No.28やNo.29もそうですね。

川村:ふむ、そうだね。ただここでの希望は、アルバイトとの関係だけではなく、授業内容にも少なからぬ影響を受けていますよね。「理由」にも書かれていますが、レジュメを読むだけの授業ならオンラインで十分、対面でなければ受けられない内容でないならオンラインで十分、といった回答です。

こうした回答は、耳が痛いというか、教員としてはしっかり受け止める必要がありますね。

学生:ただ、対面のほうが授業に集中できたり理解も深まるという回答もありますよ。私自身、オンラインだと課題を溜めてしまうし、対面だと友達に会えたりもするから、対面がいいですね。

学生:「併用」が一番多かったことに示されているように、選択ができたらいいなーと私は思いますね。

川村:そういう声はよく聞きますね。授業を「作る」側としてはなかなか苦労も多いのですがね。

ただ、こういうことを学内で、教員と学生とで集団的に話し合ってよりよい方向にもっていけたらいいなーとオンライン授業が始まったコロナ下でずっと思っているんですよ。皆さんには皆さんの言い分があり、教員には教員の言い分があるわけで、異なる利害の調整を実践的に体験しておくことは、将来にも役立つと思うんですよね。

学生:そういう機会というか仕組みがあったらいいですね。

 

 

学生:これが最後の調査結果になりますが、奨学金の利用状況です。給付型と貸与型を尋ねています。

 

図表4 奨学金の利用状況と利用金額(月額)

回答者 利用の有無・種類 金額
№1 なし
№2 なし
№3 なし
№4 なし
№5 なし
№6 なし
№7 なし
№8 貸与型 月3万円
№9 貸与型 月5万円
№10 貸与型 月5万円
№11 なし
№12 なし
№13 なし
№14 なし
№15 貸与型 月6万円
№16 なし
№17 貸与型(第一種) 月8万円
№18 なし
№19 給付型 月12800円
№20 なし
№21 なし
№22 貸与型 月5万円
№23 貸与型 月3万円
№24 なし
№25 なし
№26 なし
№27 貸与型 月6万円
№28 貸与型 月4万円
№29 なし

 

学生:大学生の2人に1人が奨学金を利用していると指摘されますが、今回の調査では、29人中、利用者は10人と3分の1ちょっとでした。そのうち9人は「貸与型」です。

「貸与型」について、種類を聞いてくることをちゃんと事前打ち合わせしていなかったので、種類は「第一種」という回答が1人で、残りは不明です。金額(月額)は3万円から8万円まで幅があります。

川村:この「給付型」(No.19)は、金額から判断すると、日本学生支援機構による給付型奨学金ですね。そもそも今回の調査では、日本学生支援機構の奨学金に限定して尋ねたんだろうか。北海学園大学や自治体あるいはその他の諸団体による奨学金(給付型奨学金)の利用は尋ねているんだろうか。

学生:あ、日本学生支援機構の奨学金だけに限定などはせずに、奨学金の利用状況を尋ねたつもりですが。

川村:ふむ。結果として、支援機構の奨学金だけが利用されていたというわけか。いや、奨学金の利用者がちょっと少ないと思ったものですから。

まあ今回の調査では、話を聞きやすい学生に聞いているのであって、全体状況がうまく反映されているかどうかまでは分からないですからね。了解。

それよりも、聞き取り調査ならではの調査は何かできなかったかな?

学生:どういう内容ですか。

川村:例えば、奨学金を「利用していない」学生には、(1)利用する必要性はないのか、(2)必要性があるという学生には、ではなぜ利用しないのか、などだね。返済が怖いからと貸与型奨学金を利用しないという声を聞くからね。

あるいは、奨学金を「利用している」学生には、(1)どういうことに使っているのか、(2)管理は誰がしているのか、(3)将来、どのような返済プランを立てているか(毎月の返済額と完済までに要する期間など)、(4)返済に対しての不安などはないかどうか、などが考えられるね。

奨学金返済をめぐっては色々と問題になっていて、安定した仕事に就けずに返済ができない、とか、いわゆるブラック企業に就職をしたが奨学金の返済のめどが立つまでは離職ができないから、と無理をして働き続ける、とか。ゼミの卒業生でも過去に実際にそういうケースがありましたからね。

 

 

学生:そうか。もっとちゃんと聞いておけばよかったなー。

学生:私が聞けたのはこういう感じです(No.9)。「奨学金は月5万の貸与型を利用している。学費にあてている。奨学金で補えない分の学費は親が負担。奨学金の将来の返済者は自分自身。」「アルバイト代の使い道として、奨学金返済用に数万円を貯金している。その他は交際費や趣味など、自由に使えている」という感じです。

川村:いいですね。

今回の調査では学費負担のことは尋ねていないようですが、(1)「誰」が/「何」で、つまり、どのような原資で学費を負担しているのか、(2)学費の負担はどの位重いか、など調べることも大事だと思います。

学生:学費は親が支払っているケースが多いから、負担までは分からない、という回答が多いんじゃないでしょうか。

川村:そう思います。 その場合には、「分からない」という回答が多数となりますが、それ自体が重要な情報ですし、一方で、親・学費負担者の姿をみて(親・学費負担者から話を聞いて)、学費負担の重さを理解しているケースもあると思います。

さらに言えば、ワークルールの認知状況に関する調査が象徴ですが、調査自体が学ぶ機会にもなる、つまり、調査者はもちろんのこと、回答者の側も、調査をきっかけとして学びを得ることが少なくありません。ぜひ、聞き取りをしながら、対話をしてみてください。

 

(続く)

 

 

(参考情報)

奨学金に関する情報は、独立行政法人 日本学生支援機構のウェブサイト中の「IR資料」など参照

 

 

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載1)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載2)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載3)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載4)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載5)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載6)』

川村雅則ゼミナール『北海学園大学 学生アルバイト白書2022(連載7)』

 

 

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