川村雅則「札幌市の公共調達等に関するデータ(1)」

NPO法人建設政策研究所が隔月で発行している雑誌『建設政策』第202号(2022年3月号、特集:コロナ禍で建設産業はどのような影響を受けたか)に掲載された拙稿の転載です。

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1.はじめに

札幌市の公共調達と、そこでの雇用、労働条件に関するデータを整理する。2023年の統一地方選挙をめがけて、公契約条例の制定に札幌市議会が全会一致で賛同するような状況を作っていきたいと考えている[1]

 

2.公共サービスの従事者問題と、議員・議会が果たす役割

直営部分である公務員(非正規を含む)のほか、建設工事・委託業務・指定管理者など公共民間部分をあわせた、公共サービスの従事者の雇用・労働の改善には、使用者ならびに発注者としての地方自治体(行政機構)の責任が問われる。あわせて、地方議員・議会というアクターにも責任が問われよう。民間企業における労働問題・労使関係と異なり、地方政府[2]では、議員・議会の果たす役割が小さくないはずであるし、本来、そうでなければならないと考える。

ところが現状では、このテーマにかかわらず、そもそも議員・議会に対する国民の側の不信感が強い状況にある[3]。「議会基本条例」が全国の半数近い自治体で制定された[4]のには、こうした不信感の払拭という面も含まれているのではないだろうか。

さて、この議会基本条例においては、地方分権社会の到来の中で議会が果たす役割が増している、という前提に立って、市長等の事務の執行を監視・評価することや、議会もまた自ら、市政の課題に対する調査・研究や政策立案・提言を行うことなどが求められている、といった内容が強調されているのではないだろうか(筆者は札幌市議会のそれを参照)。もっともな意見の表明であり、全面的に賛同する。議員・議会には、立法権をもって、この公共サービスの従事者問題にも政策立案・提言を求めたい。

同時に我々自身も、この分野における政策課題を議員・議会に持ち込むことができているかを自戒したい。総務省の調べ(「地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等」)によれば、都道府県議会と市区町村議会(指定都市を含む)の議員数は、合計で3万2千人を超えるという(内訳は2,643人、29,606人。2020年12月31日現在)。従事者問題を含めて公共サービスのあり方を適正化・強化するということは、公共の削減を進めてきた国の方針と対峙することを意味する。議員・議会リストラをあおるような風潮に対して、逆に、このテーマに関心をもつ議員をつないで、地方から国を変えるような共同、運動が求められているのではないか。

 

3.札幌市の公共調達に関する基礎データ

さて、公契約条例の制定ないし公契約の適正化の機運を高めるためには、公共民間労働に従事する労働者の人数や基本的な労働条件を把握したい。しかし、直営部分(公務員)のそれは自治体によって把握されているものが使えるが、公共民間部分の把握は容易ではない。自治体が情報をほとんど持っていないし、そもそも、そのような情報を集める必要性が感じられていないようにも思われる。ゆえに独自調査も行いながら、現状把握が必要になるわけだが、①まずは、公共調達の契約件数や契約金額を整理することから始めよう。その上で、②自治体が把握している、この分野における雇用・労働条件の情報や、③自分たちで調べ上げた、この分野における雇用・労働条件の情報を整理していこう。

本稿では、札幌市から2022年1月に提供いただいたデータを、建設工事及び関連業務(表1)、役務(表2)、物品購入等(表3)、指定管理者(表4)の順番に整理した。

建設工事の金額には、建設資材の費用分も多く含まれるとはいえ、合計で年に1700~1900億円近くものお金が投じられていることが分かる。公契約の適正化を通じて、ここで働く人たちの労働条件が適正化されることの意義や影響は大きい。

(続く)

 

表1-1 札幌市の工事の発注状況(2018~2020年度)

単位:件、億円

2018年度
(平成30年度)
2019年度
(令和元年度)
2020年度
(令和2年度)
件数 契約金額 件数 契約金額 件数 契約金額
競争入札 1,234 912.64 1,199 937.20 1,221 1011.29
一般競争入札(WTO) 1 25.59 1 21.20 1 37.40
制限付一般競争入札 1,233 887.06 1,198 916.00 1,220 973.89
一般案件 897 616.99 876 629.80 856 604.60
成績重視型 146 149.39 122 131.08 148 197.89
総合評価方式 190 120.68 200 155.12 216 171.41
随意契約 185 24.44 180 57.74 126 32.64
見積合せ 134 3.60 110 1.90 79 0.99
特定 51 20.84 70 55.84 47 31.65
合計 1,419 937.08 1,379 994.94 1,347 1043.94

注1:数字は、11月30日までに開札した案件を集計したもの。
注2:契約金額は、当初の契約金額を集計したもの。
注3:各数値ごとに四捨五入しているため、合計値が一致しないことがある。
注4:「一般案件」とは、制限付一般競争入札のうち、成績重視型及び総合評価方式を除いたもの。
注5:指名競争入札は、現在、札幌市では実施していないので欄を削除。
注6:令和元年度に発注した詳細設計付工事の一般競争入札(WTO)案件については、上記1及び2の集計対象に含んでいない(「清田区里塚地区市街地復旧工事」・契約金額3,706百万円)。
出所:札幌市提供資料より作成。

 

表1-2 札幌市の工事関連業務の発注状況(2018~2020年度)

単位:件、億円

2018年度
(平成30年度)
2019年度
(令和元年度)
2020年度
(令和2年度)
件数 契約金額 件数 契約金額 件数 契約金額
競争入札 566 37.01 571 37.12 565 33.01
一般競争入札(WTO) 0 0.00 0 0.00 0 0.00
制限付一般競争入札 566 37.01 571 37.12 565 33.01
一般案件 494 31.64 459 30.36 427 22.86
成績重視型 54 4.25 74 4.57 58 4.15
総合評価方式 18 1.11 38 2.19 80 6.00
随意契約 258 11.90 263 10.09 209 13.30
見積合せ 51 0.43 53 0.39 18 0.13
特定 207 11.47 210 9.70 191 13.17
合計 824 48.91 834 47.21 774 46.31

出所:表1-1に同じ。注1~注6も同じ。

 

表2 札幌市の役務の発注状況(2018~2020年度)

単位:件、億円

2018年度 2019年度 2020年度
件数 契約金額 件数 契約金額 件数 契約金額
合計 2,320 415.34 2,248 456.47 2,185 460.51

出所:表1-1に同じ。

 

表3 札幌市の物品購入等の状況(2018~2020年度)

単位:件、億円

2018年度 2019年度 2020年度
件数 金額 件数 金額 件数 金額
製造業 569 23.57 545 21.37 541 17.69
卸小売業 1534 54.23 1249 54.73 1147 67.69
一般サービス 7 0.11 9 0.10 3 0.04
卸小売業(再生資源) 182 1.47 154 1.40 142 1.59
合計 2292 79.38 1957 77.61 1833 87.01

注:金額の指定日は2022年1月7日、件数の指定日は2021年12月24日。
出所:表1-1に同じ。

 

表4 札幌市の指定管理事業の状況(2018~2020年度)

単位:億円

収入(決算。消費税込)
合計 指定管理業務収入 自主事業収入
小計 指定管理費 利用料金 扶助費・措置費・給付費・運営費 その他
2018年度 295.37 254.36 171.12 48.60 21.62 13.02 41.01
2019年度 300.46 267.75 175.38 51.98 21.18 19.21 32.71
2020年度 259.28 239.59 183.65 25.89 20.60 9.45 19.69

注:札幌市では、指定管理者による管理運営が行われている施設数は、2021年4月1日現在で420施設。
出所:表1-1に同じ。

 

[1] 本稿で行った作業は、川村雅則(2019)「公契約条例に関する調査・研究(Ⅲ)」『北海学園大学経済論集』第67巻第2号を踏襲している。

[2] 議会の立法権を意識して、地方政府と呼ぶ。曽我謙悟(2019)『日本の地方政府──1700自治体の実態と課題』中央公論新社を参照。

[3] 全国都道府県県議会・市議会・町村議会の三議長会が国民を対象に実施した、地方議会に関するアンケート調査結果が公表された。「どちらかと言えば」まで含むと、「議員の人数は多すぎる」に対しては59.5%(そう思う24.2%、どちらかと言えば35.3%)が、「議員の報酬は多額だ」には61.9%(26.4%、35.5%)が賛同したのに対して、「議員は忙しい」は31.4%(4.6%、27.8%)にとどまった、とのことである。『北海道新聞』朝刊2022年2月3日付。

[4] 議会基本条例の全国の制定状況については、自治体議会改革フォーラムとNPO法人公共政策研究所という2つの組織による調査結果が、一般財団法人地方自治研究機構のウェブサイトで紹介されている。同サイトでは、条例制定の背景も整理されているのであわせて参照されたい。http://www.rilg.or.jp/htdocs/index.html

 

 

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