川村雅則「道内建設季節労働者はいま(2)──2019年度アンケート・聞き取り調査の結果より」

NPO法人建設政策研究所が隔月で発行している雑誌『建設政策』第198号(2021年7月号)に掲載された原稿「2019年度 道内建設季節労働者調査の結果(3)聞き取り調査より②」の転載です。警備会社につとめる交通誘導警備員(以下、警備員)[1]Aさんとその妻であるBさんからの聞き取りの結果をまとめました。元の原稿では、紙幅の都合により全て割愛せざるを得なかった図表と本文の一部(聞き取りの結果)を、こちらのウェブサイト原稿では掲載しています。『建設政策』前々号と前号に掲載された拙稿を集約した「道内建設季節労働者はいま──2019年度アンケート・聞き取り調査の結果より」とあわせてお読みください。

なお、警備業の理解に関しては、本稿で取り上げた参考文献のほか、警察庁がまとめた「警備業の概況」[2]が役立ちます。

 

NPO法人建設政策研究所発行の『建設政策』第198号(2021年7月号)

 

 

 

1.Aさんの職歴と、警備員の仕事、基本的な雇用条件など

1)Aさんの職歴

Aさんの年齢は40歳代後半。高卒で最初に就いた仕事を10か月位で離職。その後は、大工、鉄筋屋など建築関係の仕事に従事。当時、一番長く勤めたのが鉄筋屋(3,4年)。「親戚がやっていたのを手伝っていたような感じ。だから、〔契約書などは〕何も交わしてないですね。ただ、〔ウチに〕来ないかみたいなかたちで」。建築関係の仕事で働いていたときには雇用は、季節雇用かアルバイトのような扱いで、社会保険は、国民健康保険、国民年金だった。給与も手渡しで、月払いのこともあれば、一日・一週間の支払いのこともあった。一度だけ道外の製造工場で期間工として働いたことがあるが、それ以外は地元の会社で働いている。

Aさんが警備の仕事に就いたのは20歳代の後半からである。それ以来、20数年の間、7社で警備の仕事を経験している。長い会社では7年位、短い会社では2,3か月の勤続期間である。

 

2)警備業界のこと、警備員の仕事

現在の勤め先であるY社もこれまでに勤めてきた他の警備会社も、従業員数は20数人、多くて30人位であった。労働集約産業である警備業では小零細規模の事業者が多い。表1は「概況」から作成したものであるが、「5人以下」が25.3%、「6~9人」が10.5%、「10~19人」18.5%とここまでで全体の半数を超える。

 

表1 警備員数別にみた警備業者数

出所:警察庁「令和元(2019)年における警備業の概況」より作成。

 

警備会社は、元請から直接仕事を発注されれば一次の下請になり、一次下請の道路建設会社から発注されれば二次下請になる。

後でAさん自身の経験も紹介するとおり、警備員の特徴は、警備会社間での移動が多いことである。警備会社はどこも慢性的な人手不足なので、申し込めば採用はされる。

 

表2 在籍年数(勤続年数)別にみた警備員数及び全産業労働者数

注:対象は男性。警備員の雇用形態別人数は不明。
出所:警察庁「令和元(2019)年における警備業の概況」、総務省「労働力調査(詳細集計Ⅱ-15、2020年平均)」より作成。

 

表2は、男性に限定して、警備員数と全産業労働者数を在籍年数別に比較したものである。「概況」と、総務省「労働力調査」から作成した。同表からみると、警備員の在籍年数は短い年数に分布しており、男性非正規雇用者に近い。

 

表3 年齢別にみた警備員数及び全産業労働者数

注:対象は男性。警備員の雇用形態別人数は不明。
出所:警察庁「令和元(2019)年における警備業の概況」、総務省「労働力調査(基本集計第I-2表、2020年平均)」より作成。

 

高齢の労働者も多く働いている(あまりに高齢だと現場のほうから断られることもあるとのことだが)。表3は、上と同じく、男性に限定して、警備員数と全産業労働者数を年齢別に比較したものである(「概況」と「労働力調査」から作成)。警備員では、60歳以上が44.7%、65歳以上が31.0%、そして70歳以上が15.3%である。

 

表4 北海道における警備員の有効求人倍率の推移

注:パートを含む常用。
出所:北海道労働局『レイバーレター各年度版』より作成。

 

警備員は人手不足の職種である。北海道における過去5年の警備員の有効求人倍率をみると、3,4倍の高さである(表4)。

なお、人手不足で警備会社同士で人を貸し借りもすることもあるとのことだが、法的に問題ないかたちでそれが行われているのかは、Aさんには分からない。

警備の仕事は、建築関係など「固定」の仕事を除けば、その日によって異なる。仕事は管制によって割り振られる(後述)。1人だけで現場に行くというのはまれで、複数人数での派遣がほとんどである。

 

3)Y社のこと、基本的な雇用条件

Aさんが働くY社は、従業員数は20数人程度で、地元で事業を行っている有限会社である。交通誘導の仕事(2号警備業務)がメインで、他には、大型小売店など駐車場の警備やイベント関係の警備ぐらいである。交通誘導の仕事は、市が発注する公共工事である。

Y社は親会社であるZ建設会社から仕事をもらっている。Aさんの認識・経験では、多くの警備会社は、どこかの会社が親会社になって仕事をもらっているとのことである。

Aさんのこの数日の仕事は、外灯や標識など道路付属物の腐食の点検警備で、クルマで移動しながら交通誘導を行う。街中ではなく海岸沿いなどを走っている。7時前後に家を出て、17時、18時に仕事を終えて、帰宅が19時位と割合落ち着いている。過去の点検警備では、一日で300キロ以上走ったこともある。

Y社でのAさんの勤続年数は、5年目。通年で雇用され、「社会保険(被用者保険のこと。以下同様)」に加入している(「社会保険」に加入できたのは3件前の会社から)。

Y社の従業員の年齢構成は、20歳代が数人で、最高齢は80歳代、Aさんは中堅ぐらいである。若い労働者は入って数日で辞めてしまうケースも多いそうである。

 

2.働き方(働かされ方)

1)離職・転職の背景

Aさん自身の離職理由を尋ねたところ、「入社前に聞いていたのと話が違うようなことが結構多い。それが一番」であるという。「待遇とか悪いと次の違うところに行く」というケース、つまり、業界内で渡り歩くことは珍しくないようである。

例であげられたのはひどい働かせ方である。「やはり人の使い方。24時間勤務の現場を、2交代制で12時間12時間やらせてみたり、さらに誰かが休んだ場合には、継続して、一人で24時間就かなければいけない」などを経験している。こうした24時間勤務を3日連続で行った人もいるそうだ。

もっとも、そうした働かせ方は現在のY社でも無縁ではなく、実際Aさんも、今年何度か24時間勤務を経験している(どんな仕事かを尋ねたところ、例えば、道路に穴が開けっ放しで、車が通行出来ない場合には、その通行止めの区間に24時間はりつくことになる、など)。

2,3か月ですぐに辞めた会社の場合は、深夜手当の計算がごまかされていた。ほかには、基本給が低額で固定されるケースだ。12~13万で設定されるため、結局、残業で稼がなければならない。

いずれにせよ、入ってから条件の悪さが分かることが多い(後述の、現場までの燃料手当支給をめぐる問題も参照)。

 

2)仕事の差配、勤務・働き方

警備員の配置や勤務など仕事に関することは、管制と呼ばれる職制が決める。

派遣場所や勤務時間数などの勤務条件はいつ頃に決まるのかを尋ねたところ、「その日の勤務が終わったら」だそうだ。現場の仕事が終わったら会社に電話をする(「下番報告」という)、そこで始めて次の現場(同じ現場を含む)が分かる。休みの日の場合には、前の日の夕方までに連絡をする。

管制自身は、1週間分など一定期間の管制表を作り、それに基づいて仕事を差配しているのだとは思うが、Aさんたち現場の警備員はそれを見る機会はないので、固定の仕事の場合も含めて、「とりあえず連絡をして次の日の現場を聞く」というのがパターンだという。「だからいつどこに行くかというのは会社のさじ加減次第」。Bさん曰く「仕事から私が帰ってくると、明日は〔遠方の〕どこそこだからと告げられ、ええっとなる。じゃあ早く起きなきゃ、明日は4時起きだとか。それが日常。冬で遠方の場合だと、3時に起きで準備。こういうことが余裕をもって分からない」。

休日出勤の依頼も少なくない。Aさんは日曜日が休みだが、日曜日に割り振られている従業員が出られない場合には、Aさんに呼び出しの電話がかかってくる。休日出勤のほかに、緊急出勤の要請もある。例えば、夜中の水道管破裂などだ。寝ているときに電話で呼び出されるのはさすがに辛いという。なお、休日出勤をしても、代休がとれるかはまちまちで、無いときもある。

管制の中には、警備員の年齢や健康状態を無視して仕事を割り振る者もいる。ただ、いくら経験が長くても、歳をとってくると注意力がなくなるなど、高齢者だけで固めてしまうとまずい現場もある。

工事の時間がのびるとAさんたち警備の仕事も残業が発生する。現場が早くに始まることになれば、それにあわせて早出になる。工事本体の進み方に警備の仕事も左右される。例えば、予期せぬトラブルで、工事で穴を掘っていたら水が出て止まらないとなると、22時、23時にもなる。以前、朝の8時から始まって、24時まで帰れなくなったことがある。しかもそれが3日続いた。結局そういうときも交代要員がいなくて対応しなければならない。

仕事中の休憩時間については、以前は休憩が取れないことも多かったが、今は役所の方でも厳しくなっていて、30分とか書かれていると、指摘を受けるので、1時間は必ず休むようにしている。

 

3)管制の仕事ぶり

どこの警備会社も従業員数が足りずに仕事が忙しかったのは共通しているが、管制の仕事ぶりもそこには反映している。その点で、Y社の管制は仕事を適切に行えていないとAさんの目にはうつる。

「現場の取りすぎなどをなくしてもらえれば、3交代でも出来ると思うのだけれども、結局会社の利益やらなんやら考えてしまうから、12時間連続とか24時間連続とかをさせることになる。〔3人ではなく〕2人だと1人分のお金が浮くから、みたいな感じで、ちょっとキツイが2交代でやってくれとなる」。

こうした厳しい仕事でも「会社命令だと押し付けてくる」。「出る人がいないのだからしょうがないしょ、みたいな感じで」。

休みが確定した日でも朝方に電話がかかってくることがある。「やっぱ出れない?出れないの分かっているけれど電話した」と。待機の日でもないのにAさんには理不尽に感じる。管制としての仕事がきちんとできておらず、人繰りであちこちに電話をしているよう。地図もきちんと読めないのか、「行けば分かるから」と指示されることもあるとのことである。

 

4)有給休暇の使用

働き方改革にともない、今年(2019年)から5日間、Y社でも有給休暇が取れるようになった。以前は、制度があるのかないのかさえも会社に聞けない状況だった。但し日程は会社で指定することが文書で通知され、具体的には、GWやお盆休みにあてがわれることで処理をされた。「5日は、会社の方で決めさせていただきます的な」対応だった。

それ以外で有休が取れることは無いのだが、ただ今年は、体調不良で休まざるを得なかったとき(後述)、さすがに長期に無給扱いだと生活にもひびくので、Bさんが意を決して、会社に電話をかけて有休使用が認められることになった。「こっちから言わなかったら普通に欠勤扱いにされたと思う。ただ本人〔Aさん〕も自分からは言いづらかったから、「本人は病気で休んでいるので、私のほうからかけさせてもらったんですけれどって」電話をかけることができた」のも功を奏したようである。「言わなきゃだめだなって」このときに思ったとのことである。

 

3.賃金・処遇

1)公共工事設計労務単価、建退共制度

冒頭に書いたとおり、Y社の仕事は公共工事がメインである。

 

図表5 北海道における交通誘導員の公共工事設計労務単価の推移

注:2020年3月の括弧内の金額は、労働者の雇用に伴って必要となる、法定福利費の事業主負担額、労務管理費、安全管理費、宿舎費等を、公共工事設計労務単価に加算した金額。
出所:国土交通省「公共工事設計労務単価」より作成。

 

2020年3月から適用される公共工事設計労務単価を例に言えば(表5)、交通誘導員Aで13,900円、交通誘導員Bは11,800円(雇用にともない必要になる経費を加算すると19,500円、16,600円)、時間当たりになおすと1,738円、1,475円である(同、2,438円、2,075円)。今回の聞き取りでは、2019年の数値・書類を示しながら質問をしたのだが、公共工事設計労務単価のことも、建設業退職金共済制度(建退共制度)のことも全く知らないとのことだった。ただAさんは以前に会社で、請求関係の書類をみせてもらったことがある。その書類には、警備員の人件費がA、B、Cの3つ位に分かれて記載されていたことをおぼろげながら覚えていた。

筆者からの一通りの説明を聞いたAさんの感想は、結局、Y社か元請にその分が取られているのだろうか、というものである。Bさんはこの設計労務単価に非常に驚いた。「私びっくりしたんです、それ見て。ええって。1日に本当はこんなに出るのって。こんなに出たらうちの生活が全然変わってくるのにって」。

建退共制度についても、現物を見てもらいながら確認したが、証紙も手帳も見たことがなければ、現場で話を聞いたことも、一度もないとのことだった。

2)基本給、諸手当、年収など

Y社での基本給は時給900円である。1日働いて7,200円。日給月給制。「一日出てナンボ」の世界である。

基本給の金額は、今入ったばかりの初心者も経験者も全員が一緒であるという。資格手当などで差はついているとはいえ、基本給が一緒というのは、従業員同士でもめる原因になるという。「もう何十年もいる人にしてみれば、仕事が出来ないのに俺と同じ給料なのかとなる」。

基本給は入った当初に比べると上がっている。当初は時給800円位から始まって、50円上がって、そして、現在の900円になった。おそらく最低賃金の引き上げに連動しているのではないかと推測している。

基本給のほかに支給されるのは、業務手当、資格手当、早出・残業手当、送迎手当(同僚の送迎)、遠方手当である。

業務手当は、今年からつき始めた手当で、とくに説明は受けていない。おそらく、職長や現場リーダーになると支給されるのだと思う。Aさんには業務手当が5千円、資格手当(交通誘導2級)が5千円、支給されている。配偶者、家族手当や寒冷地手当などはない。一時金・賞与の支給もない。昔は、正月に餅代のようなものが支給されていたと聞いている。

以上を合計すると、月の給料は約20万円。手取りで18万円。但し仕事の量に波があるため毎月の金額は一定していない。天候が悪くて工事が順調に進まない場合などは、忙しくなる。逆に、お盆休みがある8月と正月休みがある1月、そして、公共工事のない4月が「暇」であるという。2019年は統一地方選の影響も受けた。

経験が長いこともあってか、Aさんは会社の中では、優先的に仕事を与えてもらっていると感じている。逆に言えば、自分には仕事が与えられているが、待機を継続している人もいる。その「ギャップが凄い。天と地」。高齢の従業員の中には、4月に1日しか出られなかった人もいる。家庭がある人を優先してくれるのは有り難いけれども、仕事に入れない人が出たり年金をもらっている人が後回しされるのは、申し訳ないという思いもある。

以上のような収入状況は、Y社の条件が特別に厳しいというわけではなくて、経験したところや聞く範囲では、大体同じ感じではないかというのがAさんの評価である。Bさんも同じ感想をもっている(「大手は別として、どこも同じ感じですね。待遇も給料形態もほとんど変わらない」)。月に波はあるけれども、Y社での年収は240万円位である。

なお、経験した7社のうち条件が相対的によかった会社で7年ほど勤めたが、親会社が潰れて、離職を余儀なくされている。

参考までに、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」で警備員(男性)の年収を試算したところ(表6)、「10~99人」280.6万円、「100~999人」322.0万円、「1000人以上」427.6万円である。

 

表6 企業規模別にみた警備員の賃金・労働時間

注1:時給は「所定内給与額」を「所定内実労働時間数」で除したもの。
注2:年収は「きまって支給する現金給与額」に12を乗じて「年間賞与その他特別給与額」を足し合わせたもの。
出所:厚生労働省「2020年 賃金構造基本統計調査」より作成。

 

3)燃料手当をめぐる問題

燃料手当(通勤手当、交通費)の支給では苦労がある。燃料手当の支給は会社によって様々で、今のY社も前の会社も実費が会社から支給されるが、定額支給の会社もあれば、会社基準で支給するところもある。例えば、遠方に行く場合には万単位でガソリン代がかかるのにリッター何キロ計算で数千円しかもらえないなどである。超過分は自費負担になる。そういう支出面も調べた上で会社を選ばないと大変なことになる。

例えば、1人目の子どもが産まれたときに勤めていた会社は「社会保険」に入れてもらえずに非常に苦労したのだが、逆に、「社会保険」に入れてもらえたけれども燃料が自費負担で大変だったこともある。

 

4)待機と賃金補償

仕事が中止になった場合には、会社に対しては何らかの補償があるとは思うのだけれども、自分たちには補償がない。急な中止には半日補償が行われるなど、ハローワークの求人でも書かれているけれども、実際にそれを実行しているところは聞かない。現場に行って、日報にサインをして、現場監督にサインしてもらって初めて給料が支給される。だから現場まで行くことが最低限必要。現場に行く前に休みの電話が会社から自分たちにきてしまうと給料は発生しない。仕事(現場)に出た上で、12時で終わる場合には半日分の賃金が支給される。

仕事が中止の判断がされない場合には、自宅待機となる。所得補償はなく、ただ拘束されているだけ。しかも待機になったら実際には、そのまま休みになってしまうことがほとんどであるという。それなら待機よりも休みと言ってくれたほうが、まだ自由になる。しかも最終的な仕事中止の連絡もない。「とりあえず、午前中から昼の間〔は待機〕。昼を過ぎたら、今日は〔仕事は〕無いな」という感じで、自分でその判断をしなければならない。

会社から連絡がない理由は分からないが、そのような慣行なのだという。この点は不満で、半日分でもよいから給料を補償して欲しいのと、待機の解除を自分で判断するのも大変なので会社から連絡をして欲しいと思っている。

 

4.健康状態、安全衛生

健康診断では、要精密検査。お酒はほとんど飲まないが、コレステロール、中性脂肪、肝機能など引っかかっている。

健康診断上の心配はないが、熱中症などが怖い。「家の中でも暑い、暑いと言っている状態を、炎天下の中で、鉄板の上に立っていたりするので、それこそ焼肉状態。アスファルトも反射熱が凄いので、舗装の現場はきつい」。

今年(2019年)の夏は非常に暑かったため、体調を崩して、1週間位休んだ。暑さのせいだけでなく、24時間勤務を複数回こなしたこともこたえたと思う。過去に入院も経験している。また、夏に熱中症で亡くなった高齢の同僚も過去に2人ほどいた。

AさんをはたでみているBさんによれば、そのときは気が張っていても、一旦落ち着くとふっとこたえる。毎年というわけではないのだけれど、夏が終わった後に体調崩す、夏の疲れが秋に出ることが今までも何度かあったとのことである。

冬期間は逆に、寒さ対策が必要になる。セーター2枚、ももひき2枚を重ね着する。特に、海岸線などは風をもろにうけるし、山での仕事だと、滑る・転倒などの事故もある。去年も下りの坂道で転倒することがあった[3]

現場に行くまでの間に猛吹雪で前がまったく見えなくなり、帰れなくなったこともある。そのときは車中泊をした。そのような経験上、冬場は、毛布や布団を車に積んで、泊まることができる状況にしている。

 

まとめに代えて

一部大手を除けば、中小零細事業者が中心の警備業は、労働集約的な産業である。参入障壁も低いようで、Aさんからの聞き取りの限りでも、労働条件が厳しく、かつ、競争の手段化している印象を受けた。横断的な規制の必要性を感じる。

Aさんの働く現場は、我々の関心事である公共工事現場であったが、賃金は公共工事設計労務単価を大きく下回り、建退共制度は説明さえされていなかった。労働時間・働き方も、人手不足を背景にした長時間勤務のほか、自宅待機時の所得保障の欠如など、問題が少なくない。引き続き、警備業に関する調査・研究を深めたい。

 

(参考文献)

柏耕一(2019)『交通誘導員ヨレヨレ日記』フォレスト出版株式会社

森田秀俊、吉川和子(2018)『警備・ビルメンテナンス業の労務管理ハンドブック』日本法令

 

 

【注】

[1] 名称は2001年度までは交通警備員、現在は交通誘導員。交通誘導員Aは、交通誘導警備業務に係る一級又は二級検定合格警備員(Bはそれ以外)。

[2] 「令和元(2019)年における警備業の概況(以下、概況)」によれば、2019年12月現在、(1)警備業法第4条に基づく認定業者数は9,908業者で、警備員数は57万727人である。(2)警備員のほとんどが男性で、女性は3万6,973人(6.5%)である。(3)警備員の1割程度(5万4,896人)が臨時警備員で、残りは常用警備員と分類されている(常用とは雇用契約において定めがないか又は4か月以上の雇用期間が定められているものをいう、とされている)。但し、国勢調査(2015年)の結果では、警備業では、雇用者のうち4割弱が非正規雇用者である。

[3] 厚生労働省「労働災害発生状況」によれば、警備業における2020年の死傷災害は1,792件で、事故の型別にみると、「転倒」693件、「交通事故(道路)」238件、「墜落・転落」228件が多い。とくに「転倒」のウェイト(38.7%)は全産業(131,156件中30,929件、23.6%)に比べても高い。

 

 

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