労働相談

よしね室長の労働相談!最前線② 労働条件の不利益変更にご用心!

札幌ローカルユニオン「結」の吉根です。

前回は、解雇や雇い止めの話をしました。

吉根室長の労働相談!最前線① 量販店によるテナント労働者の雇用破壊/コロナ禍を理由とした即日解雇とたたかう

 

今回は、働いている側にとっての労働条件の不利益な変更をめぐる問題の考え方と、具体的な労働相談事例を扱います。

 

労働条件の不利益変更はそう簡単に認められるものではない

新型コロナウイルスによる経営悪化が大変な状態になっています。ホテル・飲食業、観光バス、タクシーも通常の60%以上売上げが落ち込んでいると連日報道されています。

相談室にも連日時短や休業についての相談が入っています。週4日の勤務が3日、2日と減らされ「明日から当分の間休んでください」と言われたが保障はされるのでしょうかという相談が多くなっています。中には、コロナ問題と直接関係ない事業場で便乗合理化(労働日数や時間の削減、解雇)も行われているようです。

相談の多くは、中小の事業場で働く労働者からで雇用契約書を交わしていない方も多く、労働条件が曖昧なまま働いているケースもあります。テレビ等で雇用調整金が出ると知って、「どうすればもらえるのでしょうか」と相談してこられる方もいます。

労働契約法は、労使対等の原則に基づいて労働条件を「労使合意」で決めることを定めています。使用者が労働条件を一方的に(不利益に)変更することは出来ません。

労働契約法
(目的)
第一条 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
(労働契約の原則)
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 

新型コロナウイルスが原因であっても労使対等の原則で話し合いによって問題解決を図るのが原則です。使用者が自発的に休業する場合は、労働基準法第26条で休業手当(通常の60%以上の賃金)を労働者に支払わなければなりません。まさに労働組合の出番です。

天変地異など使用者に責がない休業であれば、休業手当を支払う必要はありませんが、現下の状況では支払い義務があります。使用者が国に申請して雇用調整助成金を受給するかどうかはそれとは別問題です(申請をして使うべきです)。

この機会に解雇など合理化をねらう使用者もいるようです。「〇月〇日で退職して欲しい」「退職を考えて欲しい」と退職勧奨が行われています。期間の定めのある労働者であればなおさら、経営悪化だけを理由に解雇することは出来ません。退職勧奨されても、労働条件の不利益変更をもちかけられても、「認めません」と言って労働組合に相談をしてください。

 

 

ミスでいきなり給与2割カット

以上が一般論でした。

しかしながら実際の労働現場では、労働条件の一方的な不利益変更が日常的に行われています。

「結」がうけた労働相談の具体例を紹介しましょう。

全国大手の美装会社の札幌支店の設備管理部門に所属し、札幌市内の会館施設で働いているAさんは、今年4月、設備管理から清掃管理に職種変更する内示を受けました。

労働契約では、従事すべき業務は設備となっています。

会社は、Aさんが重大ミスを連続して起こしたとして職種変更を命じ、応じないなら自分から退職しろと迫りました。

会社が言うAさんが起こした重大なミスとは、職場建屋オートロックシステムなのに屋近似にうっかり鍵を所持しないまま建屋外に点検に出て閉め出されたこと、その2週間後、施設の電力使用量を顧客へ間違って報告したことです。二つとも、うっかりミスで設備管理者として責任は重大ですが幸いなことに損害は発生しませんでした。

職場は、Aさんを含め4人体制ですが、業務を統括するのはベテランで今年退職を予定していた設備業務責任者のY氏でした。Aさんは、今年4月からYさんに代わり、責任者になることが決まっていましたが、Y氏から責任者業務引継が真面目になされませんでした。電力量報告ミスは、そのために起こったとも言えます。

問題は、会社がミスの要因について検証もせず、Aさんに弁明の機会も与えず基準内賃金で3万円も減額(割増賃金を含めると4万5千円の減額)となる清掃業務に職種変更をさせようとしていることです。Aさんは、会館施設に配置換えされるまで厚別区の商業施設で2年間、何ごともなく設備管理業務を務めています。

ミスは誰にでもつきものです。

仕事上のミスは職務懈怠として労働契約違反にあたりますから、これを戒め反省・改善を促すために就業規則に懲戒処分(訓告・戒告・減給・出勤停止・解雇)が定められています。

ところが会社は、いきなり懲戒処分より重たい職種変更をAさんに押しつけようとしました。

結は、2回の団体交渉で、賃金の20%近い減額となる職種変更は、労働契約に照らし合理性がないこと、弁明の機会も与えず、いきなり処分するのは手続き上許されないと職種変更撤回を求めています。Aさんのミスに対し職種を変更する合理性はありません。

Aさんは、撤回されないなら民事で争うことも視野に闘っています。

 

いかがでしょうか。

この労働条件の不利益変更も、国によせられる労働相談の中で上位にあがっている相談内容なのです。

不利益変更を打診されたときはすぐには返事をせずに、まずは労働組合にご相談を。

札幌ローカルユニオン「結」 は皆さんの力になります。

 

以上、札幌ローカルユニオン「結」機関紙「よしね室長の労働相談!最前線」no.60、no.63より。

 

(参考)厚生労働省「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」2020年7月日

 

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