労働相談

よしね室長の労働相談!最前線⑩ コロナで月の手取りが3万円?/許されないコロナ不況理由の労働条件不利益変更

札幌ローカルユニオン「結」の吉根です。

働くことに関する知識を得る機会が労働者にもっとあったなら、、、社会や政治に関心をもつ機会が労働者にもっとあったなら、、、労働相談業務に従事しているとそう思うことが少なくありません。コロナ禍においてはなおのことです。

2つの相談事例・取り組み事例をご紹介します。

 

コロナで月の手取りが3万円?

中小・零細の事業者団体である民主商工会から紹介された、とトラック運転者から相談が入りました。なぜ、労働組合でなく事業者団体に先に相談したのかを尋ねると、労働組合が一体どういう団体かも分からないから、日ごろ相談を受けている団体に電話したとのことでした。

相談者が勤務している運送会社は、従業員が20人程度。運転者の給料は日給月給です。ところが、コロナ禍で仕事が減ってしまい、2019年には月収17~18万円あったものが、少ない月だとなんと手取りで2,3万円にしかならないというのです。私は驚いて、雇用契約書や就業規則では労働条件がどのようになっているかを相談者に確認しました。日給月給だからといって、こんなことはあってはなりません。

ところが相談者は、雇用契約書は無い、就業規則も見たことがないと言うではありませんか。聞けば、所定の勤務日も所定の労働時間も定まっておらず、会社から指示された日だけ働くことになっている。1日出勤すれば労働時間に関係なく8千円がもらえるだけで、コロナ前なら一定の仕事があったが今はどうしようもないと半ばあきらめモードです。

雇用調整助成金のことを知っているか尋ねましたが、これも知らないと言います。こうなると電話の相談ではどうにもなりません。他の従業員も同じ状態なのか相談者に尋ねると、「そうだ」というので、面談で話し会いましょうと来所を勧めました。

相談者は、考えてみるがそちらで生活費を融資してくれないのかと生活資金の借り入れについて尋ねてきました。私は、労働組合なので生活融資などは行っていない、とその点は丁寧にお断りしました。労働組合でもできることとできないことがあります。但し、このケースでは、労働法や労働組合でできることがたくさんあるのにそれが認識されていないのです。

コロナで仕事が減って生活困窮に追い込まれたのは、相談者個人の責任ではありません。社会全体が負う責任のはずです。職場でも生活の場でも、全ての場で自己責任が押しつけられています。これを変えるには政治を転換しなければなりませんが、その為にも共に支えあってたたかう労働組合をもっと大きくしなければと痛感します。

私は相談者に「是非、皆さんと話し合って労働組合へ加入して下さい」とお願いしました。

 

 

許されないコロナ不況理由の労働条件不利益変更

Aさんは、2021年4月の中旬に結に加入して、現在、団体交渉を継続しています。

Aさんは、今年1月に運輸物流事業K社の札幌支店に事務員として採用されました。K社は、創業者が会長、息子が社長という典型的な同族会社で、札幌市内に本店(社長宅兼用)を置くほか、市内別箇所に札幌支店、青森に青森支店を構えています。また社長は、倉庫業G社を別に立ち上げ、札幌支店と同じフロアに事務所を置いて、K社事務職員に事務業務を兼担させています。

さて、Aさんは、4月に入って、コロナ不況を理由に事務職員の給与を10~20%減額すると会社から通告され、同意書への署名・押印を求められました。その際、事務職員5人のうち2人は退職し、2人は同意した、あなたも同意しなければ、青森支店若しくはG社に転籍させると言われ、数日後に返答を迫られているのだがどうしたらよいのでしょうか、と困り果てて札幌地区労連に相談をし、結に加入したのです。

Aさんの給与は、基本給が14万円、固定残業手当が2万円、通勤手当が1万円ですが、他に、G社と業務委託契約を結ばされ、G社から7万円の委託料が別に支給されていました。同じ事務所内で名目上、法人格が違うK社では雇用労働者として、G社では個人委託労働者として働かされていたのです。これだけでも異常ですが、Aさんによると給与減額は、札幌支店の事務職員だけで、ドライバー(運転職)も青森支店の従業員も、給与減額はされないとのことでした。

不況を理由に一部従業員にだけ賃下げを押しつけるのは余りに不合理ですし、従わなければ配転若しくは転籍という脅迫は許されません。

私は、社長との面談を録音するのと、このような差別的な内容に決して同意をしないようAさんに指示をしました。数日後、Aさんから、「賃下げに同意しなければ配転か転籍にする」と言った社長の発言を録音したが、翌日にG社への転籍辞令が交付されてしまった、と連絡がありました。結は、4月30日付で会社に対して、「労働条件不利益変更を強要し、拒否されると本人の同意なく他社へ転籍を命じた不法行為を撤回せよ。」と要求し、団体交渉の開催を申入れました。

現在、会社からは、団体交渉に応ずるため弁護士と打合せをするので時間が欲しい、Aさんの転籍処分を留保し賃金は保障する、と連絡が入り、団交日程の回答待ちとなっています。

コロナ禍だからといって何でもあり、ではありません。労働者の雇用や生活に責任を持つべき企業経営の劣化が凄まじい勢いで進んでいることを日々の相談業務で感じます。これを一つでもくい止めたいとの気持ちで団交に臨みます。

 

 

皆さんも職場でトラブルにあったときには、労働組合にご相談を。

札幌ローカルユニオン「結」 は皆さんの力になります。

 

以上、札幌ローカルユニオン「結」機関紙「よしね室長の労働相談!最前線」no.72、73より。

 

 

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