労働相談

よしね室長の労働相談!最前線① 量販店によるテナント労働者の雇用破壊/コロナ禍を理由とした即日解雇とたたかう

私は札幌ローカルユニオン「結」という個人加盟の労働組合で、顧問をしている吉根清三と言います。仕事は、困っている労働者から労働相談を受けて、その問題の解決に取り組むことです。

労働相談と言ってもピンとこないかもしれませんね。職場で困ったことがあっても我慢をして働き続ける人がほとんどで、どこかに相談をしようなどという発想はもたない人が多いかもしれませんね。

でも本当は、困ったときには、労働問題の解決のプロに相談をするのが一番よいのです。そして、その相談先、労働問題の解決のプロというのが労働組合なのです。

では、労働組合にはどんな労働相談が寄せられるのか、そして、どんなふうに問題を解決をしていくのか、ご紹介していくことにしましょう。まずは、2つの解雇事件です。

 

量販店によるテナント労働者の雇用破壊

「もう、あんたの入る店はない」~突然の退職勧奨

デパートや百貨店など量販店にフロアを持つテナントで働く販売員に対する量販店からのハラスメントの相談をうけて、労使交渉を行いました。

大阪に本社がある化粧品メーカー札幌営業所勤務のAさんは薬品・化粧品を扱うB量販店に販売員として派遣され、来店客へ化粧品を販売する業務を10年以上行ってきました。

 

昨年末、Aさんは会社からB量販店への出入り禁止を通告されました。出入り禁止によってAさんは、月間20日あった出勤日が5日(4分の1)に減らされ、上司から「もうあんたの入る店は無い」と退職勧奨を受けました。

出入禁止理由は、量販店が、Aさんの「態度や目つきが悪く嫌な思いをした」と来店客からクレームが入ったことで、二度と入店させるなと言ってきたというものでした。

 

取引先への不当な要求は独金法違反

会社の指示は、全てラインで行われ、Aさんは、弁明する機会さえ与えられませんでした。

会社は、一方的にAさんを月5日勤務のシフトに変更し、出勤しない日を年次有給休暇扱いにしました。Aさんは、仕事を取りあげられ、希望していない年休を取らされるのは納得行かないと、来所し労働組合合(札幌ローカルユニオン結)に加入しました。

 

結は、大阪本社にさっそく団体交渉を申入れ、Zoomによる交渉の場で出禁撤回と不利益の回復を要求しました。しかし会社は、Aさんが多数の非違行為を行って来たと主張しました。

組合は、会社の主張は何年も前にあった出来事を歪めて理由とするもので合理性が無いし、客の主観(嫌な思いをした)を重視した量販店の指示によって労働条件を変えられるのは問題であることを指摘し、再考を求めました。量販店がその優位性を利用して下位の取引先に不当な要求を行うことは独金法違反になります。

 

結は、電気製品量販店がその優位性を利用して下位の取引先に不当な要求をした事件で独禁法違反に該当すると闘った実績も示し、会社が誠実に対応しないなら量販店に直団交を申し入れると通告し会社に不法行為の撤回を迫っています。

 

 

コロナ禍を理由とした即日解雇とたたかう

コロナで即日解雇?

新型コロナウイルスによる経済活動破壊で倒産や雇用破壊が連日のように報道されています。

札幌地区労連への相談から結に加入した3人も会社がコロナ禍で経営が悪化したことを理由に5月に解雇されました。

3人は、東京の目黒区に本社がある化粧品会社の札幌事業所で、美容室や美容関連業へ商品を販売する営業に携わっていました。会社は、事前に納得できる説明をすることなく「新型コロナウイルスの影響による売上減少に伴い、事業を縮小せざるを得ない状況になったため。」との解雇通知書を交付して3人を即日解雇としたのです。

3人は、営業職で顧客との関係で年次有給休暇を取得しづらいため未消化の年休が20日以上残っていたことから、買い取りを要求したところ拒否されました。正社員として長い人で10年以上貢献してきたにも拘わらず、解雇予告手当以外、何の保障も無く会社から放り出されたのです。

労働組合につながって金銭和解

3人は、せめて年次有給休暇を買い取って欲しいと札幌地区労連に電話し結に加入し、交渉で解決を図る道を選びました。

整理解雇の4要件に照らして合理性のない解雇だとして結は。団体交渉を申し入れ、団体交渉では3人がそれぞれ、経営状況の悪化について、まともな説明もせず、休職にするなど雇用確保の努力もせず解雇したことを告発しました。

東京から団体交渉に参加した代理人弁護士は、会社による解雇が乱暴であったことを認めましたが、経営が危機的状況にあるとの一点張りでした。この事案に就いては、交渉後に3人と様々な角度から検討して金銭和解を求める方針となり、8月に会社と和解合意しました。

 

いかがでしょうか。

自分が解雇されるだなんてちょっとイメージがわかないですよね。

でも、国によせられる労働相談の中でも、解雇や雇い止め、退職勧奨などは数が多いのです。

皆さんも職場でトラブルにあったときには、労働組合にご相談を。

札幌ローカルユニオン「結」 は皆さんの力になります。

 

以上、札幌ローカルユニオン「結」機関紙「よしね室長の労働相談!最前線」no.69、no.65より。

 

(参考)

厚生労働省「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」2020年7月日

 

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