よしね室長の労働相談!最前線⑪ 深刻化するパワハラ。しかし労働組合という解決の道がある

札幌ローカルユニオン「結」の吉根です。

今日はパワハラについて投稿します。

 

 

増え続けるパワハラ相談

パワハラやセクハラなどハラスメントに関する相談が増えています。

報道によればコロナ禍の影響でリモートでの在宅労働など家庭で過ごす時間が多くなったことで、DV(ドメスティックバイオレンス)も増えているそうです。コロナ禍で収入が減って、厳しい生活を強いられた労働者がやり場のないストレスを弱者にぶつけているのでしょうか。

経済活動の低迷が続く中、生き残りを掛けた事業活動を行っている企業においても、労働環境の悪化で労働者が強いストレスを受けていると考えられます。

上司から信じられないイジメを受け、うつ病など精神疾患に罹患し長い間苦しんでいる仲間のいかに多いことか。

結は、いま4件のパワハラに起因した労使交渉を続けています。相談者の方は、パワハラで傷付けられ、うつ状態、双極性障害、適応障害などを理由に休職を強いられたり、過小な業務に変えられたり、差別され一層傷付けられています。

休職を強いられている方の中には、就業規則の休職条項(例えば、休職期間は6か月とし、休職期間内に復職出来ない場合、休職期間満了をもって退職とする、など)で退職させられることに怯え、メンタルがさらに悪化する方もいます。

使用者の悪意によって休職を強いられた場合は、主治医が復職可能の診断を出しても使用者が復職を認めない場合もあります。その場合、傷病手当も出ないため退職するか、民事訴訟で休職の不当性を立証しなければなりません。

ハラスメントの相談がこれだけ増えているのは、労働者が本当にバラバラにされて、孤立し、職場が無法状態となっている証拠です。

 

 

 

自主退職を迫るパワハラ

名の知れた情報通信企業K社。

しかし、相談者Aさんの話を聞いて、余りにも杜撰で労働者を馬鹿にしたK社の労務管理に驚いています。

相談者Aさんは、2021年12月に某派遣会社から、K社のコールセンター(X社)に派遣されましたが、今年になってX社から、正社員の雇用契約を働きかけられ、これに応じることにしました。3月末に入社説明会が行われましたが、正社員での雇用と言われていたのが、期間雇用(2か月)の契約社員での雇用契約の話に変わっていました。

X社に転籍するために派遣会社との雇用契約は4月で解約に合意していたことから、約束が違うとX社への入社を断ることになれば、Aさんはいきなり失業者となってしまいます。

Aさんは、生活のためやむを得ず、不当に提示された雇用契約に応じましたが、納得出来ず、会社の企業倫理委員会に不服を申し立てし、3回の話し合いを経て、4月1日に遡及して正社員での雇用契約に変更をさせました。

Aさんの業務は、テレコム契約者からの様々な相談に電話で対応し、電話解決出来ないものは関係部署へ依頼するサービス部門です。適正な対応をするためには、一定の知識を身に付ける十分な研修を受ける必要があります。Aさんは、お客様に適正なサービスを提供出来るレベルになっていないから、もっと研修を受けたいと希望しました。しかし会社は、Aさんの申し出を拒否し、研修もそこそこに、Aさんを業務シフトに組み込みました。

結果、Aさんは業務知識が未熟なままの電話対応の中で、些細なミスを連発してしまいます。会社は、SV(スーパーバイザー)やGL(グループリーダー)を通じ、業務指示・教育の名の下に執拗な叱責、報告書・始末書の提出を続けています。そのためAさんは体調を崩して欠勤を余儀なくされました。

会社の狙いは、会社の言うことに黙って従わないAさんを自主退職に追い込もうとしているように思います。相談室は、人事部に対して、不当なパワハラを受け体調を崩したとして安全配慮を上申するようアドバイスしました。Aさんが、組合に加入して交渉での問題解決を希望すれば、新たなたたかいが始まります。

 

 

Sさん労災認定勝ち取る

暗い話題ばかりですが、朗報もあります。

労災が認定されたとの知らせが組合員のSさんからありました。2020年9月に会社社長と専務から二人がかりで退職を強要され、メンタル不全となったSさんですが、2020年12月に退職した後も症状が改善しないため、2021年7月に労災保険の給付申請を行っていました。その労災が認められたのです。

職場環境の悪化(パワハラ・セクハラ等)が原因でメンタル不全に罹患しても、精神障害の労災認定率は30%前後とまだハードルが高いのが実態です。

Sさんは、会社から長年に渡り、人格を否定するハラスメントを受け続け、2020年9月の退職強要(退職願いを書くか、それとも、解雇されるか)によって精神障害を発病しました。頭から恐怖心が離れない、頭痛や睡眠障害で体調を完全に崩し就労することが困難になりました。

仕事ができなければ直ぐに生活に困窮しますが、労災申請しても判断が出るのは、おおよそ半年後です。余程の蓄えが無ければ労働者は干上がってしまうので、労災申請など悠長なことをしている暇が無いのです。また認定率が低いので申請したからと言って認定されるかどうかさえ分かりません。理不尽なハラスメントを受け精神障害に罹患しても諦める労働者なんと多いことでしょう。

しかしSさんは、諦めませんでした。

就労が困難なので、傷病手当てを受給して生活を守りながら、他の仲間の団体交渉にも参加して仲間を励まし、悩みながらも挫けずに、認定NPO法人いのちと健康を守る北海道センターのアドバイスを受けながら、理不尽な仕打ちは許せない、と労災認定を求めて労基署に申請をしました。結も組合員であるSさんを全面的に支えてきました。

そしてこのたび、労災の認定を勝ち取ることができたのです。本当によかったです。

 

ハラスメントの渦中にあると、先が見えずに、絶望してしまうことが多いと思います。

しかし、労働組合という問題解決手段があります。

皆さんも職場でトラブルにあったときには、労働組合にご相談を。

札幌ローカルユニオン「結」 は皆さんの力になります。

 

以上、札幌ローカルユニオン「結」機関紙「よしね室長の労働相談!最前線」no.81、83、88より。

 

 

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