労働相談

よしね室長の労働相談!最前線⑤ 退職強要!

札幌ローカルユニオン「結」の吉根です。

前回は、ハラスメントに負けずに闘う組合員のケースを紹介しましたが、日本の職場のハラスメント被害は深刻です。そしてよく誤解されがちですが、大企業ではそういったハラスメントとは無縁である、というわけでは全くありません。むしろ、厳格な労務管理によって問題を構造的に発生させている場合もあるのです。今回はその一例を紹介しましょう。

 

解雇 or 退職勧奨(退職強要) !?

 

Oさんは、一部上場の大手生命保険株式会の営業マンです。2019年9月、営業成績を理由にいきなり自己都合退職勧奨を受けました。

会社は、営業成績が一定額を超えないと解雇に該当するという条項を就業規則上に設けています。この条項を楯にして、解雇か自己都合退職かを営収が低い社員に対して迫り、自己都合退職に追い込んでいるのです。

今回Oさんは、営収が十分に獲得できませんでしたが、家族の生活もありますから、会社からの退職には同意しませんでした。すると会社は、「解雇扱いになると将来的に不利になるぞ」などと脅して、会社都合の場合は雇用保険が直ぐに支給されるのだから(特定受給資格)、と言ってハローワークに同行して、その場で退職届を書くようにOさんに迫るほどでした。

退職か解雇かをしつこく会社に迫られたOさんは、もうこの二者択一しか無いのだろうかと悩み、眠れない日々が続いたそうです。結局、具合が悪くなってしまい、年次有給休暇を使って仕事を休むことになりますが、会社からは、執拗な退職強要(退職届を提出してくださいと書類を一方的に送りつけること)が続き、その後、10月末日で、会社都合扱いで雇用契約を解除されました。本人が退職を希望していないのに一方的に退職手続履行を執拗に迫り、一方的に雇用契約を解除したのは不当解雇そのものです。

一部上場の大企業が、このような退職強要を行ったこと、気に入らない労働者を職場から放り出したことに、私は強い怒りを覚えました。

労働相談で「結」を訪問したOさんから、尋常でない雰囲気を感じた相談員が診療内科(メンタルクリニック)の受診を勧めたところ、うつ病に罹患していることがわかり、現在Oさんは、パワハラによる労災申請を行ったところです。そしてOさんを組合員に迎えた「結」は、会社による不法行為を厳しく追及し、地位確認と損害賠償を団体交渉を通じて求めていく方針です。

 

総合商社での執拗な退職強要

Oさんの事件の後、お世話になっている弁護士先生から、別件の退職勧奨問題についてSさんを紹介されました。

Sさんは、木材の総合商社で働く営業マンです。上司のパワハラと長時間労働で2016年にメンタル不全になり、同年5月から2017年4月まで休職をしていました。

その後、病気を癒やして、会社の職場復帰プランに基づいて職場復帰。また働いていましたが、2018年に入って業務多忙で過労気味になったため、主治医と相談して、リフレッシュ休暇を5月に取ることにしました。

ところが休暇の申請をしたものの認められず。仕方がなく、業務の引き継ぎをした後に1週間の年次有給休暇を取得したところ、今度は上司から、「1か月休め」と一方的に休職に追い込まれてしまいました。

休職理由も告げられず、休職辞令の交付も無ければ、休職期間もわからないままにSさんは職場から放り出されてしまい、そのためにメンタル不全が悪化。結果、2018年11月から3か月間の入院を余儀なくされました。それでもSさんは、退院後、就労可能の診断を主治から受けて、会社に復職を求めるのですが、今度は、ずるずると引き延ばしにあい、2019年7月末にようやく復職が認められました。

ところが会社は、今度は、やったことも無い経理業務にSさんを配置換えして、「自分で仕事を見つけろ」と仕事を取り上げ、さらに10月からは、苫小牧の子会社への通勤を命じました。

中学と大学生の二人の子どものため、Sさんは、虐めに耐えて就労を続けましたが、年が明けた2020年2月、退職強要を受けて、もう我慢が出来ずに、弁護士先生に相談して、私たちの労働組合「結」に加入した──これが一連の経緯です。

「結」は、Sさんが加入した当日に、退職強要を行ったことと安全配慮義務違反について、団体交渉を開催するようFAXで会社に対して要求。今後は、Sさんの復職条件について誠実に話し合う誓約を会社から取り、現在は、組合から提出する条件を起案しているところです。

 

 

いかがでしょうか。

退職を拒否しているのに、「貴方の退職を受理しました」と退職手続きを進めて労働者をメンタル不全に追い込む一部上場の大手生命会社。労働者を一方的に休職させ、仕事をさせずメンタル不全に追い込んだ上、退職を強要する総合商社──就職前の若い方々は、自分の身に置き換えてイメージすることは難しいかもしれませんが、これは決して珍しくない、日本の企業社会で起きている事実なのです。

 

皆さんも職場でトラブルにあったときには、労働組合にご相談を。

札幌ローカルユニオン「結」 は皆さんの力になります。

 

以上、札幌ローカルユニオン「結」機関紙「よしね室長の労働相談!最前線」no.57、no.59より。

 

 

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