労働相談

よしね室長の労働相談!最前線④ 退職勧奨・マタハラをはねのける/セクハラ・パワハラと闘う女性ドライバー

札幌ローカルユニオン「結」の吉根です。

前回は、職場のひどい実態をお伝えしました。多く寄せられる労働相談は、パワハラやセクハラなど各種のハラスメントです。国への労働相談でも「いじめ・嫌がらせ」が毎年トップにあがっています

私たちが受けている労働相談でも、メンタル不全となった労働者からの相談が増えています。5,6年前までの数値になりますが、道労連、札幌地区労連がまとめている労働相談の件数のうち「いじめ・パワハラ」に分類された相談の推移をみると、2005年度は相談件数のなかで5%程度であったのが、2008年度には10%、2014年度には20%、15年度には30%、16年度には42%と急激に増えています。

いじめ・パワハラは、文字通り、労働者のいのちにかかわる深刻な問題です。その被害の実態と、一方でそれを跳ね返すことができる労働組合の力をご紹介したいと思います。

 

退職勧奨・マタハラをはねのける

 

介護用品の卸販売を行っている株式会社K社の事務員をしているAさんは、2017年5月に、会社から執拗な退職勧奨を受けたことで「結」に相談・加入をしました。

退職勧奨がされた理由は、2016年12月ごろにさかのぼります。多忙な業務に適切な管理が行われていないことでAさんが会社に是正を求め、「このままの状態が続くなら会社を辞めたい」とぼやいたことが原因でした。Aさんのこうした態度を許せないと考えた取締役部長が社長に進言をして、Aさんへの執拗な攻撃が始まったのです。

今年5月に入ると、6月末で退職するという内容の書類を出すよう取締役部長がAさんに迫りました。そして、5月末には社員全員が参加する朝礼で社長が、「Aさんは、6月末で退職します」と報告し、それまでAさんが専属で使っていた事務机とパソコンを取り上げて、退職までのあいだは、社員全員の共有机とパソコンを使うよう命じたのです。

「結」は、即日会社に対して「退職強要は許されない」として団体交渉を申入れ、6月9日の団体交渉で退職勧奨を撤回させました。

ところが、その後Aさんが妊娠をすると会社は、今度は、12月(年内)には退職するようにと迫ってきたのです。妊娠を理由にした退職勧奨はマタハラです。

しかし、団体交渉で労働組合の力を実感して自信がついていたAさんは、退職しません!と会社を撃破しました。さらにAさんは、同僚にも組合加入を勧めて職場で組合員が2人になりました。働きやすい職場にしたいと他の従業員にも組合加入を呼びかけています。

 

セクハラ・パワハラと闘う女性ドライバー

皆さんもよくご存じの大手スーパーの生鮮食品物流を担う女性トラックドライバーBさん(38歳)が職場のセクハラ・パワハラと闘っています。

Bさんは2015年5月に運送会社M社に入社しました。仕事の内容は、物流センターで4トントラックに荷物を積み込んで、深夜1時から14時までの間、道内各店舗に生鮮食品を運ぶというものです。

ところが仕事を始めるとBさんは、業務日報記載中に他のドライバーから身体を触られるなどのセクハラ行為の被害に遭いました。加害者に抗議し、上司に助けを求めたのですが、改善が一向にはかられないため、本社に告発をしました。すると今度は、上司や加害者を含むドライバーから、無視や嫌がらせのパワハラを受けるようになりました。

どうにもならずにBさんは、弁護士に相談。そして、2018年4月に「結」に加入して、団体交渉で会社の安全配慮義務違反を追及しました。すると今度は、今度はBさんの自宅郵便ポストに、「早く会社やめろ、殺すぞ」、「死ね」と脅迫状が2回も投函される始末です。

組合は団体交渉で、会社に対して問題の悪質性を厳しく指摘して、安全配慮義務を果たすよう求めると同時に事実の調査をするよう要求しました。

しかし会社は、「証拠はあるのか」、「警察に届けたらどうだ」と全く無責任な態度に終始し、しかも、「セクハラの加害者に事情を聞いたが、「やっていない」とのことだから、それ以上の追及は出来ない」と開き直りました。企業のモラルハザードもここまで来ているのかと驚かされました。

Bさんはいま、セクハラ・パワハラを放置する会社も加害者も許せないと損害賠償請求訴訟の準備を進めています。Bさんの頑張る姿は、3人のドライバーを「結」に加入させることにもなりました。

組合は、Bさんのセクハラ・パワハラ問題の解決だけでなく、団体交渉で明らかになった、時間外労働や深夜労働に対する未払い賃金の請求にも全力をあげています。

 

 

いかがでしょうか。

労働組合の力を知ってもらうために、ハラスメントに負けずに闘う組合員のケースを紹介しましたが、日本の職場のハラスメント被害は深刻です。

いじめ・パワハラは、上司からの暴言、退職勧奨、職場八分など様々なかたちをとりますが、労働相談や団体交渉を通して垣間見えるのは、能力主義が強化されて、ゆとりのない、非常にぎすぎすした職場環境です。そうした企業では、正規も非正規も、即戦力にならない労働者は容赦なく切り捨てられていきます。

次回は、そのような職場の実態をみていきます。

 

皆さんも職場でトラブルにあったときには、労働組合にご相談を。

札幌ローカルユニオン「結」 は皆さんの力になります。

 

以上、札幌ローカルユニオン「結」機関紙「よしね室長の労働相談!最前線」no.17、no.29より。

 

(参考資料)

厚生労働省「「妊娠したから解雇」は違法です」

 

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