川村雅則「北海道及び道内市町村で働く624人の会計年度任用職員の声(2022年度 北海道・非正規公務員調査 中間報告)」『NAVI』2023年1月5日配信
北海道及び道内市町村で働く
624人の会計年度任用職員の声
(2022年度 北海道・非正規公務員調査 中間報告)
下記に転載されました。
川村雅則(2023)「北海道及び道内市町村で働く624人の会計年度任用職員の声(2022年度 北海道・非正規公務員調査 中間報告)」『働くもののいのちと健康』第94号(2023年冬号)pp.36-48
はじめに
昨年(2022年)の11月下旬から、地方自治体で働く非正規公務員を対象とした調査を実施しています。調査の名称は「北海道・道内市町村で働く非正規公務員の雇用・労働、生活等に関する調査」(以下、本調査)です。
2022年12月28日23:59時点で、インターネットを介しての回収と紙による調査票での回収で、合計670件の回答を得ました。無回答が多いなどの16件を除く654件が有効回答です。
654件のうち624件が「北海道及び道内市町村」で働く「会計年度任用職員」からの回答でした。この624人の回答を、本稿では整理します。
なお、本調査は、2023年1月15日(日)2月12日(日)まで回収を続けます。
(1)ご協力をいただける非正規公務員の皆さんにおかれましては、ぜひご回答をよろしくお願いします。
(2)すでにご回答をいただいた皆さんには、深く御礼を申し上げます。あわせて、もし可能でしたら、周囲の非正規公務員の方々にこの調査を広めていただけますと幸いです。
(3)労働組合/自治体議員/報道機関など、関係者の皆さんにも、本稿とあわせて、こうした調査が行われていることを非正規公務員の皆さんにお伝えいただけますよう、あらためてお願い申し上げます。
川村雅則「地方自治体で働く非正規公務員の皆さんへ ウェブアンケート調査へのご協力のお願い」『北海道労働情報NAVI(以下、NAVI)』2022年11月24日配信
なお、誤字脱字や内容上の誤りなどをみつけましたらその都度訂正をしていきます。大きな訂正を行いましたら注記します。(2023年1月5日記)
川村雅則(北海学園大学)
調査の概要
本調査の概要を述べます。
第一に、調査の目的は、2020年度から地方自治体に導入された会計年度任用職員制度(以下、新制度とも呼びます)の下で働く非正規公務員の任用(雇用)実態や意識、新制度への評価などを明らかにすることです。
先行する調査を紹介すると、(1)加盟組織を対象に会計年度任用職員の任用・労働条件を明らかにした大規模な調査が「自治労」によって実施されています[1]。(2)当事者を対象とした大規模な調査では、「自治労連」による調査[2]や当事者団体である通称「はむねっと」[3]による調査があげられます。(3)その他に、総務省による調査データ・個票を整理した上林陽治氏(自治総研)による「会計年度任用職員白書 2020」[4]も必読です。
ちなみに筆者も、非正規公務員当事者や自治体労働組合、自治体当局を対象に調査を行ってきたほか、総務省調査のうち北海道分データを整理するなどの仕事をしてきました[5]が、新制度下での、非正規公務員当事者を対象としたアンケート調査は今回が初めてです。
総務省の助言通りであれば、多くの自治体で、今年度(2022年度)末に、会計年度任用職員の仕事で公募が行われることになります[6]。公共サービスの基幹的な労働力となった非正規公務員の仕事で粛々と公募が行われるのです[7]。働き続けることを希望する現職は、公募に応募して、何らかの選考・試験を経て、再び採用される必要があります。混乱は生じないのでしょうか[8]。
いや、そもそも、そこまでの労力をかけてなぜ公募を行わなければならないのか、合理的な説明はされているでしょうか。公務員という労働力資源を使って今求められているのは、このようなことなのでしょうか[9]。
コロナ禍で「発見」されたエッセンシャルワーカーへの関心が薄らいでいるかのように思われる現下で、こうした調査を行い、そして、結果を急いで配信するのには、以上のような問題意識があります。
さて、第二に、本調査の対象は、地方自治体で働く非正規公務員です。今後の我々の取り組み・活動範囲を考えて、「北海道及び道内市町村で働く非正規公務員」と調査タイトルには銘打っていますが、道外からの回答も受け付けています(回答数が現時点では少なかったので、本稿では集計の対象から外しました)。
第三に、調査方法は、ウェブアンケート調査と紙の調査票によるアンケート調査を併用しました。
前者を関係者に対してメールで配信したほか、自治体職員で構成された労働組合や、筆者が連携する自治体議員[10]に調査へのご協力の依頼を行いました。労働組合は、自治労北海道本部、北海道自治労連のほか、帯広市嘱託職員労働組合、ねむろ・くしろ地域自治体関連ユニオンから協力を得ました。とくに後二者には、ウェブアンケートの案内のほか、紙での調査票を配付・回収までしていただいた結果、後でみるとおり、帯広と根室からは多くの回答が得られました。あらためて感謝申し上げます。
第四に、調査の内容は、以下のとおり、雇用(任用)・労働、生活等に関することです。
Ⅰ.あなたの属性など
Ⅱ.雇用(任用)・労働、生活等に関すること
Ⅱ-1:雇用に関すること
Ⅱ-2:働き方や仕事に関すること
Ⅱ-3:賃金・収入、生活に関すること
Ⅲ.新制度に対する評価や労働組合への加入希望など
但し、紙の調査票では、スペースの都合で幾つかの質問項目を除外しました。本稿では、共通する質問への回答をみていきます[11]。
[1] 自治労「2020年度自治体会計年度任用職員の賃金・労働条件制度調査結果(最終報告)」。ダイジェスト版が下記のページ(「自治労には非正規雇用で働く仲間がいます」)からダウンロードできます。
[2] 自治労連「2022会計年度任用職員の実態アンケート(最終報告)」。以下のページ(「会計年度任用職員制度 ~課題と今後の取り組み~」)からダウンロードできます。また、『NAVI』に掲載された佐賀達也「会計年度任用職員制度の改善は急務●全国実態調査から」も参照。
[3] 公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)のウェブサイトを参照。2022年の調査結果は、「はむねっと2022年調査結果報告」より。また『NAVI』には、同団体副代表である瀬山紀子氏の論文が多数掲載されています。あわせてご参照ください。
[4] 上林陽治「会計年度任用職員白書 2020」『自治総研』通巻514号(2021年8月号)。また、日本評論社から出版されている氏の非正規公務員シリーズのうち、『非正規公務員のリアル──欺瞞の会計年度任用職員制度』2021年発行を参照。
[5] 『NAVI』の「非正規公務員」カテゴリー所収の拙稿をご参照ください。
[6] 北海道及び道内35市の状況については、『NAVI』の拙稿「会計年度任用職員制度の公募制問題と、総務省調査にみる北海道及び道内35市の公募制導入状況(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」を参照。
[7] 例えば、旭川市議会2022年第4回定例会での江川あや議員による質問(一般質問)と市の答弁によれば、3年公募を原則とする旭川市では、42の職種において、2022年度当初の全職員(正規・非正規)数である4778人の約26%に相当する約1250人について公募が予定されている、とのことです。答弁中で紹介された数値によれば、2020年4月1日時点の会計年度任用職員は1801人とのことですから、上記の1250人とは、その7割に相当します。なお、質問と答弁の動画がインターネット上で閲覧できます。
[8] 混乱は生じないのかもしれません。公募を行っても、仕事に精通した現職があらためて任用されることが多い、と考えられるからです。この点からも、何のための公募なのかと言わざるを得ません。
[9] この問題への取り組みを長く続けてきたNPO法人官製ワーキングプア研究会(理事長・白石孝氏)では、この公募制を問題視して、「会計年度任用職員に対する「3年目公募」の中止を通知してください」という要請文を2022年10月24日に総務大臣等に送付しています。ご参照ください。
[10] 2022年11月21日時点、あいうえお順(敬称略)で、稲葉典昭(帯広市議会議員)、江川あや(旭川市議会議員)、柏野大介(恵庭市議会議員)、くましろちかこ(石狩市議会議員、NPO法人官製ワーキングプア研究会会員)、佐々木百合香(北広島市議会議員)、鈴木かなみ(東川町議会議員)、鶴谷聡美(北広島市議会議員)、新岡智恵(恵庭市議会議員)、干場芳子(江別市議会議員)の9名です。
[11] 紙の調査票では、自治体名を尋ねる質問を残したものと削ったものがあります(後者は、単組に調査を依頼したので、削っても自治体名が把握できることによります)。結果として、ウェブ、紙①、紙②と調査票は3種類になりました。本稿には直接関係はありませんが、その旨を述べておきます。
調査の結果
1.注意事項など
前述のとおり、654件の有効回答のうち、北海道及び道内市町村で働く会計年度任用職員からの回答624件の集計結果をみていきます。
但し本稿は、12月28日に締め切った回答を急いで整理した、中間報告という性格のものであることをはじめにお断りしておきます。調査結果の全てを紹介するものではなく、かつい、作業課題などがまだ残されています(本文や注釈にその旨を記しました)。
本調査では、回答者が雇われた自治体が位置する「地域(総合振興局・振興局)」を尋ねたほか、自治体名そのものの回答も求めました。多い順に、帯広市から242件、根室市から129件、旭川市から108件、札幌市から44件の回答が寄せられました[12][13]。
本稿では、調査に寄せられた自由記述を掲載しています。最小限の加筆修正など(句読点を加筆、誤字を修正、個人特定の回避)のほかは、原則としてそのまま掲載します。
624件のうち、ウェブアンケートによる回答が352件(56.4%)、紙の調査票による回答が272件(43.6%)です。
なお、あらかじめ述べると、本調査は、労働組合の協力を得て行ったこともあって、全体の3分の1強(35.4%)が労働組合に「加入している」点が特徴です。言い換えると、労働組合に組織されていない、任用条件がより悪いことが想定される多くの非正規公務員の状況を把握することが課題です[14]。
[12] 時期は様々ですが、筆者は、この四市のうち帯広市、旭川市、札幌市の非正規公務員制度を対象とした調査活動を行っています。帯広市、旭川市については旧制度下の調査ですが、札幌市については新制度下での調査も行っています。また、根室市の制度については、2022年11月に、反貧困ネット北海道主催の学習会で、労働組合から報告をしてもらいました。それぞれ、以下をご参照ください(古い順に並べます)。
(1)旭川市で行った調査が最も古く、拙稿「官製ワーキングプア問題(Ⅰ)地方自治体で働く非正規公務員の雇用、労働」『北海学園大学開発論集』第92号(2013年9月号)。
(2)帯広市は、拙稿「帯広市における臨時・非常勤職員の実態──2016年度非正規公務労働問題研究会調査より」『北海道自治研究』第574号(2016年11月号)。
(3)札幌市は、拙稿「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」『NPO法人官製ワーキングプア研究会 Report』第37号(2022年2月号)。
(4)根室市は、坂本勇治「根室市の会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」を参照。
[13] 非正規公務員当事者への配慮はもちろん必要ですが、自治体名の把握も行い、当該自治体に改善を求めていくことも今後重要になるのではないでしょうか。法改正を意識した中央政府との協議・交渉だけでなく、地方政府(個別自治体)との協議・交渉を念頭においた取り組みです。
[14] 総務省の調査データ(2020年4月1日基準)によれば、短期間・短時間勤務者を除く北海道及び道内市町村の非正規公務員数は約3万人、短期間・短時間勤務者を含むと約4.7万人もの数になります(拙稿「道内の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員の任用実態──総務省2020年調査の集計結果に基づき」『北海道自治研究』第626号(2021年3月号)参照)。本調査の回答者数は、文字通りごくわずかです。今回を端緒として、調査プロジェクトをさらに発展させる必要があります。
2.回答者の属性など
表 回答者の年齢/単位:人、%
624 | 100.0 | |
男性 | 110 | 17.6 |
女性 | 509 | 81.6 |
無回答 | 5 | 0.8 |
第一に、本調査回答者の性別は、「女性」が509件(81.6%)、「男性」が110件(17.6%)、無回答が5件(0.8%)です。
表 年齢/単位:人、%
624 | 100.0 | |
20歳未満 | 3 | 0.5 |
20歳代 | 39 | 6.3 |
30歳代 | 83 | 13.3 |
40歳代 | 163 | 26.1 |
50歳代 | 204 | 32.7 |
60歳以上 | 130 | 20.8 |
無回答 | 2 | 0.3 |
第二に、年齢は、「50歳代」が約3分の1を占め、「40歳代」、「60歳以上」をあわせると、全体の8割を占めます。
表 一緒に暮らしている人・世帯の構造/単位:人、%
624 | 100.0 | |
単身世帯 | 108 | 17.3 |
配偶者と二人暮らし | 171 | 27.4 |
配偶者と子ども | 155 | 24.8 |
親のみ | 46 | 7.4 |
親と兄弟姉妹 | 48 | 7.7 |
子どものみ | 57 | 9.1 |
その他 | 31 | 5.0 |
無回答 | 8 | 1.3 |
第三に、一緒に暮らしている人・世帯の構造は、最多が「配偶者と二人暮らし」で、「配偶者と子ども」、「単身世帯」が続きます。
3.職種・仕事、雇用形態、勤続年数
第一に、職種・仕事を尋ねました。「その他」の分類がまだ出来ていないのと、調査票の誤りを修正した[15]ことをまず述べておきます。
表 職種・仕事/単位:人、%
624 | 100.0 | |
一般事務職員 | 245 | 39.3 |
学校事務職員 | 5 | 0.8 |
保育士、保育者 | 58 | 9.3 |
児童厚生員・指導員(児童館、学童保育など) | 43 | 6.9 |
栄養士 | 1 | 0.2 |
看護師(正看護師・准看護師) | 7 | 1.1 |
保健師 | 8 | 1.3 |
その他の医療職 | 31 | 5.0 |
介護職 | 19 | 3.0 |
母子・婦人相談員 | 7 | 1.1 |
消費生活相談員 | 2 | 0.3 |
学校関連の相談・支援業務 | 3 | 0.5 |
図書館職員 | 58 | 9.3 |
学校司書 | 1 | 0.2 |
学校支援員 | 6 | 1.0 |
技能労務員(用務員、清掃職員、守衛等) | 31 | 5.0 |
運転職 | 9 | 1.4 |
給食調理員 | 10 | 1.6 |
教員・講師 | 3 | 0.5 |
その他 | 73 | 11.7 |
無回答 | 4 | 0.6 |
注:注釈15に記載のとおり、「清掃員」に回答した2名を「技能労務員(用務員、清掃職員、守衛等)」に統合しました。
結果は、「一般事務員」が39.3%で多数を占めます。「その他」を除くと次に多いのは、「保育士、保育者」9.3%、「図書館職員」9.3%、「児童厚生員・指導員(児童館、学童保育など)」7.0%です。以上が5.0%を超える職種としてあげられます[16]。
表 資格の必要性/単位:人、%
624 | 100.0 | |
必要である | 199 | 31.9 |
とくに必要ない | 421 | 67.5 |
無回答 | 4 | 0.6 |
第二に、「あなたの仕事には資格が必要ですか」と、資格の必要性を本調査では尋ねました。
結果は、「必要である」が31.9%です。
なお、記載してもらった資格の分類作業は、今後行います。
表 雇用形態(任用形態)/単位:人、%
624 | 100.0 | |
フルタイムの会計年度任用職員 | 199 | 31.9 |
パートタイムの会計年度任用職員 | 425 | 68.1 |
注:調査票では、「臨時的任用職員」、「特別職非常勤職員」「任期付き職員」、「その他」の選択肢を設けたが、冒頭に述べたとおり、本稿では、会計年度任用職員を分析の対象とするので割愛。
第三に、回答者の雇用形態(任用形態)は、「パートタイムの会計年度任用職員」がおよそ7割を占め、「フルタイムの会計年度任用職員」がおよそ3割です。「根室市」ではフルタイム型の多いことが調査結果全体に反映しています(前掲・坂本報告を参照)。
なお、フルタイムとは正職員と同じ勤務時間数、パートタイムとはフルタイムより少しでも短い勤務時間数、とことわりを入れています。
表 今の自治体での今の仕事の勤続年数/単位:人、%
624 | 100.0 | |
1年未満 | 71 | 11.4 |
1年~3年未満 | 113 | 18.1 |
3年~5年未満 | 99 | 15.9 |
5年~8年未満 | 112 | 17.9 |
8年~10年未満 | 43 | 6.9 |
10年~15年未満 | 86 | 13.8 |
15年以上 | 99 | 15.9 |
無回答 | 1 | 0.2 |
第四に、勤続年数を尋ねました。具体的には、「今の自治体で、今の仕事に従事してから、通算でどの位の年数を働いていますか」という質問です。
結果は、5年以上(「5年~8年未満」、「8年~10年未満」、「10年~15年未満」、「15年以上」)を足しあわせると、半数を超えます(54.5%)。短期間勤務者が中心ではありません。勤続年数の面からも、基幹的な労働力になっていることが裏付けられます。
こうした勤続・経験にこたえる賃金・昇給制度が新制度で整備されたでしょうか。
[15] 「技能労務員(用務員、清掃職員、守衛等)」を設けておきながら、「清掃員」も設けていました。後者に回答した2人を前者に統合しました。
[16] 「その他の医療職」が5.0%ですが、医療事務の方もここに回答しているため、分類をし直す予定です。
4.雇用(任用)に関すること
図 民間非正規と公務非正規の制度設計の違い
注:公務におけるaの墨塗箇所は、条件付採用期間(試用期間)。bの点線は勤務実績に基づく能力実証が認められた箇所。cの実線は、公募制による能力実証が必要とされる箇所。
出所:筆者作成。
本調査の結果の紹介に入る前に、ここで、民間の非正規制度との比較を意識した、会計年度任用職員の任用制度に関する図を示しておきます。
簡単におさらいすると、民間でいう雇用更新とは異なり、会計年度ごとに「新たな職」に就くと解された制度であること、ゆえに、条件付採用期間の設定が毎回必ず設けられていること(図中の「a」)、勤務実績に基づく能力実証(同「b」)だけでなく、公募制による能力実証(同「c」)を一定期間ごとに行うことが総務省により助言されていること(総務省が助言しているのは、公募によらず勤務実績に基づく能力実証で再度の任用を行うことができるのは原則2回・3年)、などです。
さて、本調査結果に入ります。
表 1回の任用期間/単位:人、%
624 | 100.0 | |
1年間 | 566 | 90.7 |
6か月間 | 15 | 2.4 |
6か月未満 | 16 | 2.6 |
学期ごと | 3 | 0.5 |
その他 | 16 | 2.6 |
無回答 | 8 | 1.3 |
第一に、1回の任用期間をみると、「1年間」が9割を占めています[17]。
第二に、公募制の適用状況をみます。
先に、総務省による調査データから、回答の多かった帯広市、根室市、旭川市、札幌市の公募状況を紹介しておくと[18]、順に、5年公募制、公募制を導入せず、3年公募制、3年公募制です。但し、札幌市については同じ部で連続して働けるのは3年を原則とする(例外あり)など、複雑なルールが設けられています[19]。
表 公募制の適用状況/単位:人、%
624 | 100.0 | |
1年ごとに公募が行われる | 114 | 18.3 |
3年ごとに公募が行われる | 147 | 23.6 |
5年ごとに公募が行われる | 157 | 25.2 |
公募制は導入されていない | 34 | 5.4 |
わからない | 141 | 22.6 |
その他 | 13 | 2.1 |
無回答 | 18 | 2.9 |
さて、本調査回答者全体の結果は、「1年ごとに公募が行われる」が18.3%、「3年ごとに公募が行われる」が23.6%、「5年ごとに公募が行われる」が25.2%です。「公募制は導入されていない」は5.4%で、「わからない」が22.6%を占めます。
なお、(1)この公募制に関する本調査の結果は、制度の実態を必ずしも正確にとらえていない(「わからない」を含む)可能性もあり、精査する必要があります[20]。(2)同じ市からの回答でも、異なる結果がみられます。部署や年度によって異なる運用がなされている可能性もあります[21]。
どのような運用が行われているのか──当初示された年数を待たずに公募が行われている実態がないかどうか、実態を詳細に明らかにする必要があります。
表 雇い止めに対する不安/単位:人、%
624 | 100.0 | |
非常に不安がある | 195 | 31.3 |
不安がある | 247 | 39.6 |
あまり不安はない | 153 | 24.5 |
まったく不安はない | 24 | 3.8 |
無回答 | 5 | 0.8 |
さて、第四に、雇い止めに対する回答者の不安はどうでしょうか。四段階で尋ねてみました。
結果は、「非常に不安がある」だけで31.3%を占めます。「不安がある」も39.6%です。これらの強い不安に分類される結果だけで、7割を占めます。
表 無期雇用への転換希望/単位:人、%
624 | 100.0 | |
希望する | 406 | 65.1 |
とくに希望しない | 106 | 17.0 |
わからない | 107 | 17.1 |
無回答 | 5 | 0.8 |
最後に、無期の雇用への転換希望を尋ねたところ、「希望する」が全体の3分の2弱を占めます。残りは、「とくに希望しない」と「わからない」です[22]。
但し、関係者には周知のとおり、労働契約法の適用が除外されている公務員には無期転換制度がありません。
■制度が変わっても書面を渡されるだけで常に不安がつきまとう。こんな所に10年以上も勤務した事を後悔しています。職員は護られても非正規は今後更新もないと突然言い渡されました。自立も困難な状況で他にバイトを掛け持ちし精神的にも一杯一杯。市役所はこんな人の使い方しか出来ないのだと残念な気持ちです。
■経験による専門性〔が〕必要な職であるにも関わらず、会計年度任用職員制度になってから雇用期間が3年上限となり、公募により継続できる可能性もあるが、確定ではないため、本人も周囲も不安定さを感じている。
■給与が安いため今年中に辞めて来年から転職することになりました。会計年度任用職員はバイト感覚で、短期間で穴埋め程度に働く分にはいいですが、長期的に働くものではありません。自分の先輩に当たる人は、もう一度公募に応募して履歴書を提出面接を行い再任用となるとのことです。それをこの先何十年と続けた時に、一体毎回採用されるという保証はどこにあるんでしょうか?
■毎年来年度の雇用の心配をしなければいけないのが辛いです。シングルマザーで大変なので、せめてその不安だけでもなくしてほしいです。
■来年も雇ってもらえるかが心配です。何年も一生懸命働いていても、非正規職員というだけで、自分の意志とは関係なく退職させられるかもしれない不安はいつもあります。
■雇用期間が切れる前に教えてもらえないのが困る。一度更新があったが、1ヶ月前に告知とあるが、到底そうはならず、更新日に初めて知らされた。先の見通しがつかなくて困っている。
■病気になった時が不安。病休を使って治らなければ、やめるしかなくなる。正職員なら病休も長期間とれるのに。非正規の割合の方が多いので、使い捨ての雇用だと感じている。
■年金だけでは生活していけない。有期雇用でいつ仕事がなくなるか分からない。公募で、継続は可能と言われていても絶対ではない。一年ずつ年をとっていく自分がいる。そんな不安は感じざるを得ない。待遇改善はほとんど無い中で仕事だけは任されることが年々重く感じてきていると思うのは自分だけなのかと「変わらない」〔後述の質問項目〕にチェックを入れたが、思うところではある。
■人の入れ替りがあり、1人は3年目が終わり、次が公募となり、もう1人が〔職の廃止により、それとは異なる公募がされた〕部署がある。会計年度任用職員の間では、経験年数が上がり、賞与など支払う金額が増えた人から削減されていくのであれば、この先雇用されるのかという不安しか残らないとの声が上がっている。
[17] 「その他」には、1年を超えた複数の年数を回答しているケースもみられました。公募が行われる年数(期間)と勘違いしたのではないかと思われますが、そのまま取り扱います。
[18] 前掲・拙稿「会計年度任用職員制度の公募制問題と、総務省調査にみる北海道及び道内35市の公募制導入状況」を参照。
[19] 前掲・拙稿「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」のほか、拙稿「札幌市会計年度任用職員制度における「同一部3年ルール」の例外について」を参照。
[20] 例えば、前掲・坂本報告によれば、「根室市」では公募制は導入されていませんが、本調査では、根室市からの回答者では「わからない」が半数近くを占めているほか、「1年ごとに公募」が選択もされています。
[21] 石狩市の現状についての神代報告でも、5年公募が原則である一方で、毎回公募が行われている部署もあることが報告されています。神代知花子「石狩市の非正規公務員問題と問題解決に向けた議員活動(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」を参照。
[22] 多くが「希望する」と回答していることをふまえた上で、無期転換を「とくに希望しない」のはなぜなのか、つめた分析を最終報告ではしたいと思います。「とくに希望しない」理由として、無期雇用はやめづらくなる、という労働法上の扱いとは異なる理解が自由記述に散見されているからです(メンバーシップ型雇用社会では、あながち誤解とも言えないのがややこしいのですが)。また、年齢を理由に「とくに希望しない」という回答も散見されます。参考までに、60歳未満に限定して集計をすると、「希望する」割合は69.9%にまで増加します。
5.勤務時間数、ハラスメントの経験
表 1日の所定内労働時間/単位:人、%
624 | 100.0 | |
4時間未満 | 7 | 1.1 |
4時間台 | 18 | 2.9 |
5時間台 | 39 | 6.3 |
6時間台 | 150 | 24.0 |
7時間台 | 383 | 61.4 |
8時間台 | 9 | 1.4 |
ばらばら | 7 | 1.1 |
無回答 | 11 | 1.8 |
第一に、1日の所定内労働時間は、「7時間台」が61.4%と最多です。
表 1週間の所定内労働時間/単位:人、%
624 | 100.0 | |
週20時間未満 | 33 | 5.3 |
週20~25時間未満 | 39 | 6.3 |
週25~30時間未満 | 234 | 37.5 |
週30~35時間未満 | 118 | 18.9 |
週35時間以上 | 180 | 28.8 |
その他 | 2 | 0.3 |
無回答 | 18 | 2.9 |
第二に、1週間の所定内労働時間は、「週25~30時間未満」が37.5%と最多で、「週35時間以上」が28.8%です。週30時間以上働く者が合計で5割弱(47.8%)を占めます。
日本の非正規雇用者(「パートタイマー」)に共通する特徴ですが、非正規公務員もまた、短時間勤務者が中心ではありません。
第三に、この1,2年での職場におけるハラスメントの経験を尋ねました。この間の筆者調査でも、雇用形態の違いなどを背景としたハラスメントの存在が気になっていたことによります。
ハラスメントの経験を尋ねた調査は幾つかありますが、ちょうど杉並区で職員を対象としたハラスメント経験調査(以下、杉並区調査)が行われていた[23]ので、調査の内容・文言などは、一部を除き、同調査にそろえました[24]。
表 ここ1,2年での職場におけるハラスメントの経験【複数回答可】/単位:人、%
本調査 | (参考)杉並区調査 | |||
624 | 100.0 | 2701 | 100.0 | |
自分自身が受けたことがある | 67 | 10.7 | 411 | 15.2 |
見たことがある | 86 | 13.8 | 470 | 17.4 |
相談を受けたことがある | 41 | 6.6 | 315 | 11.7 |
以上のことは、ない | 461 | 73.9 | 1870 | 69.2 |
無回答 | 13 | 2.1 |
注1:杉並区調査の結果は注釈23より。
注2:杉並区調査と本調査の違いは注釈24を参照。
結果は、まず「以上のことは、ない」が全体の4分の3弱を占めます。一方で、「自分自身が受けたことがある」が10.7%、「見たことがある」が13.8%、「相談を受けたことがある」が6.6%です。杉並区調査に比べると低い値ですが、ハラスメント行為の存在が確認されました[25]。
表 経験したハラスメント行為の種類【複数回答可】/単位:人、%
150 | 100.0 | |
セクシャル・ハラスメント | 12 | 8.0 |
パワー・ハラスメント | 115 | 76.7 |
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント | 9 | 6.0 |
その他のハラスメント | 24 | 16.0 |
第四に、その内容(種類)は、「パワー・ハラスメント」が圧倒的に多く、76.7%です。
なお、(1)本調査では、ハラスメントの内容と、ハラスメントを受けたり見たときの周囲・職場や関係機関の対応などを自由記述で回答してもらいましたが、アンケート調査という制約もあり、詳細の把握はできませんでした。(2)「見たことがある」「相談を受けたことがある」という回答は、会計年度任用職員が被害者となったケースとは限りません。
職場のいじめ・ハラスメントは深刻です。問題が生じる構造を含め、実態の把握と対策が公務職場でも急がれます。ここでは、自由記述に書かれていたうち、会計年度任用職員が被害者のケースと思われる幾つかを掲載します。
■本来職員がすべき業務をヤル気のない職員は平気で押し付けて来る。お前らがやればいいだろ!的な態度が不快。
■悪阻時に、心ない発言と対応。
■公立保育園。新人への無視や、仕事内容の指導をしない、指導を意図的にせず、失敗すると異常に叱責するなど。
■同僚が妊娠したが、それに伴う発表や育児休業を取得するにあたり、本人の意に添わない対応を感じた。表面的には波風が立たなかったが、本人は気に病んでいた。非常に昭和的な対応で、女性であったが理解がなされていないと感じた。
■仕事の間違えなどによるハラスメント。見せしめのように大声で威圧するも、聞いている周りは止めなどもしない。
■正職員には厳しい対応は取らないが、なぜか、私達には、やたらと仕事上、これでもかと言うほど、問いざさす〔ただす〕。
■児童対応の補助をしていて評価されていたのに、ある時に同じことをしたら「あなたは電話取ったりインターホン取ったりしていたら良いから。」と言われたこと。ショックでした。
■八当たり、仕事を教えてくれない、精神的に追い詰められる仕事内容、身体的にもつかれる、差別。
■誰々さんは忙しいから、あなたに頼むと言われた。その人は一日に何度もタバコを吸いに席を外したり、無駄話をしてても忙しくしてると思われているが、黙々と一日一生懸命仕事してる自分は暇だと思われている等。
■有給休暇を取ろうとしたが、補職者に、「休むの?こっちの職員たちは出てくるんだけど。別にいいけどさー。」と言われた。上に立つ者にそう言われたら、怖く感じた。
■主幹から、俺が気に入らない奴はいつでもやめさせられるんだぞ!と言われたという話を聞きました。
[23] 「令和4(2022)年11月9日 杉並区長記者会見」によれば、対象は常勤職員・再任用職員・会計年度任用職員で、全職員約6000人のうち2701人(男性805人、女性1811人、無回答85人)が回答。調査の結果は、本稿を参照。
[24] 杉並区調査では、「過去3年間」での経験を尋ねているのに対して本調査では「この1,2年」での経験を尋ねていることと、杉並区調査で使われていた「目撃したことがある」、「ない」という表現をそれぞれ「見たことがある」、「以上のことは、ない」としたことです。
[25] 回答がしやすいよう調査方法にも留意が必要です。より詳しい検証が必要ですが、例えば本調査でも、ウェブ調査と紙の調査とで結果を比較すると、「以上のことは、ない」の割合は、前者で71.3%であるのに対して後者では77.2%でした(ある自治体からの回答者同士で比較しても、ウェブと紙とでは9ポイントの差がありました)。
6.賃金・収入、生活
表 基本賃金の示され方/単位:人、%
624 | 100.0 | |
時間額(時給) | 53 | 8.5 |
日額 | 24 | 3.8 |
月額 | 529 | 84.8 |
無回答 | 18 | 2.9 |
第一に、基本賃金の示され方は、「月額」が多数(84.8%)を占めます。
表 毎月の平均的な手取りの額/単位:人、%
624 | 100.0 | |
10万円未満 | 58 | 9.3 |
10万円以上12万円未満 | 107 | 17.1 |
12万円以上14万円未満 | 174 | 27.9 |
14万円以上16万円未満 | 67 | 10.7 |
16万円以上18万円未満 | 93 | 14.9 |
18万円以上20万円未満 | 43 | 6.9 |
20万円以上 | 17 | 2.7 |
無回答 | 65 | 10.4 |
第二に、毎月の平均的な手取りを尋ねました。具体的には、「社会保険料や税金を差し引かれた、毎月の平均的な手取り額はおいくらですか。期末手当など臨時的な手当の支給がある月は除きます」と尋ね、単位は「円」で回答してもらいました。
その結果を2万円刻みで集約したところ、「12万円以上14万円未満」が最も多く27.9%でした。平均値は13万4533円です。
表 今年(2022年)の年収の見込み額/単位:人、%
553 | 100.0 | |
50万円未満 | 4 | 0.7 |
50~100万円未満 | 21 | 3.8 |
100~150万円未満 | 59 | 10.7 |
150~200万円未満 | 141 | 25.5 |
200~250万円未満 | 190 | 34.4 |
250~300万円未満 | 52 | 9.4 |
300~350万円未満 | 46 | 8.3 |
350~400万円未満 | 12 | 2.2 |
400万円以上 | 9 | 1.6 |
無回答 | 19 | 3.4 |
注:勤続「1年未満」群は分析対象から除いています。
第三に、年収を尋ねました。本調査は2022年11月下旬から開始したものなので、「12月まで働いたと仮定した場合、今年の年収の見込みはおいくらでしょうか」と尋ね、「税込みで、期末手当や諸手当のすべてを含みます。但し、交通費(通勤手当)は除きます。」という注釈をつけて回答してもらいました。
勤続年数が「1年未満」の回答者は除いて結果をみたところ、「200~250万円未満」が34.4%と最多で、次が「150~200万円未満」の25.5%です。合計で約6割を占めます。300万円以上は、合計で1割強(12.1%)にとどまります。
表 自分の仕事と照らしての賃金に対する評価/単位:人、%
624 | 100.0 | |
とくに不満はない | 200 | 32.1 |
多少の不満がある | 241 | 38.6 |
不満がある | 104 | 16.7 |
非常に不満がある | 71 | 11.4 |
無回答 | 8 | 1.3 |
第四に、自分の仕事に照らしての賃金に対する評価(「担当している仕事の内容や仕事の責任・負担と照らして、あなたは、ご自身の今の賃金をどう評価していますか。」)を四段階で尋ねました。
結果は、「とくに不満はない」が32.1%です。弱い不満にあたる「多少の不満がある」が38.6%で、強い不満にあたる「不満がある」と「非常に不満がある」とを足すと28.0%です。
過去の調査結果をふまえても、本調査のこの結果には、職種・従事している仕事や働き方などが反映していると思われます(詳細分析は最終報告で行います)。
表 世帯収入に占める自分の就労収入の割合/単位:人、%
624 | 100.0 | |
1,2割 | 90 | 14.4 |
2,3割 | 105 | 16.8 |
3,4割 | 84 | 13.5 |
4,5割 | 58 | 9.3 |
5,6割 | 18 | 2.9 |
6,7割 | 23 | 3.7 |
7,8割 | 26 | 4.2 |
8,9割 | 16 | 2.6 |
10割(全て) | 191 | 30.6 |
無回答 | 13 | 2.1 |
第四に、本人の就労収入が世帯収入に占める割合を尋ねました。
結果には、ばらつきがみられます。「1,2割」と「2,3割」という低い値をあわせると、全体のおよそ3割(14.4%、16.8%)を占めるのに対して、「10割(全て)」という回答にも3割が回答しています。「4,5割」以下が54.0%、言い換えれば、「5,6割」以上が43.9%を占めます(残りは、無回答)。
表 暮らしの状況/単位:人、%
624 | 100.0 | |
大変ゆとりがある | 8 | 1.3 |
ややゆとりがある | 41 | 6.6 |
普通 | 223 | 35.7 |
やや苦しい | 222 | 35.6 |
大変苦しい | 125 | 20.0 |
無回答 | 5 | 0.8 |
最後に、暮らしの状況は、「普通」が35.7%で最多です。「やや苦しい」もほぼ同数です(35.6%)。「大変苦しい」が全体の5分の1(20.0%)を占めています。
■専門職に対する地位、扱いの低さを感じています。元々正職員がしていた仕事内容を、非正規が行う事で、労働に見合う賃金を支払われていないと思います。
■正職員の方はいいなと日々思っています。試験を乗り越え高い倍率の中受かった方々だから、仕方ないと思いつつ待遇の良さが羨ましいです。会計年度4年目でも給料は一円も上がりません。諦めています。一度ついた仕事なので、辞めると言う選択肢はありませんが、やはり不満はあります。会計年度に対しての態度も疎外感はあります。仕方ない世界なんだなと思っています。
■ひとり親としては、物価高に収入のかわりなしは厳しい。息子を大学に行かせることはできず、今後学歴によって息子の収入も少ないままでは、貧困も連鎖すると思う。学歴社会のない社会にして欲しい。
■物価高につき生活費がかかるようになり、光熱費が生活費に占める割合も増えて苦しくなってきた。賃金の激変緩和措置が取られているが、月給がどんどん減っていくことに不安を覚える。将来が不安である。もう少し賃上げを検討していただかないと、生活が立ち行かなくなり、好きな仕事を諦めることにもつながる。賃金を改善していただきたい。
■保育や介護、教員や司書、学芸員、研究者の位置〔地位〕と賃金が安い。もっと評価をするべきです。
■私は主たる収入が夫なので生活に不安はそこまでないが、単身だとしたら、この給料で、しかも今後上がることもあまり見込めない形で雇用も不安定で、専門職として安心して働き続けられる環境とはいえないと思う。また、会計年度の制度になった際、期末手当が出るようになる、と、基本給を下げ、その下げた分を手当に回し、実際の年収はほとんど上がらない形をとり、表向き、聞こえのいい処遇改善としたことに、非常に姑息なやり方だと憤りを感じました。官製ワーキングプアをずっと作り続けるのでしょうか。今回の研究をとてもありがたく感じています。
■この制度に移行してから、年に二度の賞与が支給されるようになり、大変感謝しています。これにより、給与月額が(期末手当抑制分として)若干減額されました。月額が減ると、将来の失業手当受給の計算に損が出るのでは?と懸念しています。賞与は、大変ありがたい事ですが、今後増額も昇給も望まないので、3年ごとに延長の不安を抱えない様、制限のない、安定した雇用の持続を、制度面で改善して下さるよう希望します。
■毎日サービス残業しないと仕事が終わらない。そうしないと他の会計年度任用職員に迷惑がかかってしまう。他には、正職員は忙しいから迷惑にならないようにしろ、と先輩の会計年度任用職員によく言われる。正職員の方が給与や賞与が高いはずだし、正職員は役職なしでも上司のような存在と認識しているため、色々と納得いかない。
■今の基本給では、アルバイトより悪すぎます。お風呂入れをしておむつ交換をしてベッドに患者さんを乗せて検査に行ったりベッドで体重測定にベッドメーキングに一番つらいのは、入浴介助です!
■年収が変わらないからと月の給与から賞与分を差し引いたような給与金額にされると月々が困る。前の制度のときと同様の月給でそれプラス賞与が出るならまだ困らずにいられる。本当に転職を考えなければいけない状態になっている。
■夫婦共稼ぎ。中学生1人。手取り14万4千円。私も妻も50代。この生活水準はとても苦しいです。何とかしてほしい。
■会計年度任用職員になってから、確かにお給料は上がりましたが、責任や仕事内容も多くなり、お給料に見合わない仕事内容になっている。それでも生活がかかっているので仕事を辞めることが出来ないが、正職員と同じような責任を任されても、待遇に差があり、不満に思う。
■仕事の量が多すぎる。病気の人と関わっているのにNSの人数も少ないのもあるが、資格もない助手たちになんでもやらせすぎる。休憩の1時間以外立ちぱなしですごくつかれる。仕事量の割に給料が安い。働く人数も増〔や〕してくれない。
■初回の公募があった際に今までの経歴がリセットされ、新たにカウントが始まった。3年は更新や継続と言う言い方ではないが、勤務状況に問題がなければ続けて勤務できた。経験を加味して給料に反映されると説明を受けていたが、賞与を段階的に上げる変わりに毎月の手取りが下がっていくため、経験が加味されているのかも全くわからず、不透明。毎月の手取りは年度ごとに下がっている状況。
7.新制度導入による状況の変化(回答者による評価)
新制度になって状況はよくなったでしょうか、それとも、悪くなったでしょうか。本調査では、この点を、①雇用の安定、②賃金(給与)・収入、③仕事内容、④働き方・勤務時間、⑤休暇制度、⑥人事評価、⑦上司や正職員との人間関係、⑧非正規職員同士の人間関係のそれぞれについて尋ねました。
人間関係、とくに⑦を尋ねたのは、新制度導入で法律上の位置づけが明確になり、会計年度任用職員に対する上司や正職員からの対応が改善されたのではないか、という評価を聞いていたことによります。
さて、結果をみる前に留意すべき第一は、本調査で尋ねたのは変化であって、水準ではない、ということです。つまり、もともと高い(よい)水準であったのが「変わらない」、つまり、変わることなくよいままである、ということも、(あまり考えられませんが)理屈上はあり得るということです。水準と変化を尋ねるのは煩雑になるので避け、あくまでも、制度の導入による変化を尋ねました。
第二は、その変化は、制度(法改定)の趣旨からすれば、「悪くなった」というのは、原則として、ないと思われる(期待される)ことです[26]。
第三は、制度導入にあたっては、労働組合による交渉が行われている自治体も少なくないと思われることです。つまり、結果には、労使交渉の成果も反映していると思われます。
第四に、ここで示された結果は、回答者本人の評価によるものであることから、詳細な事実と照らし合わせたとき、食い違いがみられる可能性もあります。例えばよくあるのは、実際に団交を担当している労働組合役員と、一般組合員あるいは非組合員との情報量との差による認識のズレです。しかも本調査では、「よくなった」、「悪くなった」、「変わらない」の大雑把な把握にとどまるものであることにご留意ください。
以上をふまえて、回答をみていきましょう。分析の対象は、旧制度と新制度を経験している者に限定する必要があるため、勤続年数が「3年~5年未満」以上の回答者に限定しました。また、①~⑧の全てに回答されている者に対象を限定しました(8つの項目のいずれか1つにでも無回答であれば、分析の対象外としました)。
表 新制度導入による状況の変化(回答者の評価)/単位:人、%
①雇用の安定 | ②賃金(給与)・収入 | ③仕事内容 | ④働き方・勤務時間 | ⑤休暇制度 | ⑥人事評価 | ⑦上司や正職員との人間関係 | ⑧非正規職員同士の人間関係 | |||||||||
440 | 100.0 | 440 | 100.0 | 440 | 100.0 | 440 | 100.0 | 440 | 100.0 | 440 | 100.0 | 440 | 100.0 | 440 | 100.0 | |
よくなった | 70 | 15.9 | 108 | 24.5 | 14 | 3.2 | 31 | 7.0 | 76 | 17.3 | 15 | 3.4 | 19 | 4.3 | 28 | 6.4 |
悪くなった | 75 | 17.0 | 119 | 27.0 | 65 | 14.8 | 50 | 11.4 | 27 | 6.1 | 21 | 4.8 | 39 | 8.9 | 34 | 7.7 |
変わらない | 267 | 60.7 | 194 | 44.1 | 348 | 79.1 | 343 | 78.0 | 324 | 73.6 | 286 | 65.0 | 359 | 81.6 | 349 | 79.3 |
わからない | 25 | 5.7 | 16 | 3.6 | 10 | 2.3 | 13 | 3.0 | 10 | 2.3 | 115 | 26.1 | 20 | 4.5 | 26 | 5.9 |
無回答 | 3 | 0.7 | 3 | 0.7 | 3 | 0.7 | 3 | 0.7 | 3 | 0.7 | 3 | 0.7 | 3 | 0.7 | 3 | 0.7 |
注:分析の対象は、勤続年数「3年~5年未満」以上の群。
さて、結果にみられる特徴は、第一に、一瞥して、どの項目においても、「変わらない」が多数を占めることです。新しい非正規公務員制度は、状況の改善を広く回答者に意識させるようなものではなかったと言えるでしょうか。
第二に、その中にあって、「②賃金(給与)・収入」においては、「変わらない」の割合が50%を切っており(44.1%)、代わりに、「よくなった」が4分の1(24.5%)を占めることです[27]。
但し、一方で、「悪くなった」も4分の1強を占めています。
これはどういうことでしょうか。
考えられるのは、諸手当の支給を回避するために、フルタイム勤務がパートタイム勤務に置き換えられたことにともなう賃金・収入の悪化や、自由記述からも推測されるとおり、期末手当の原資の捻出のために基本給が削られているケース[28]などがあげられます。後者は、それでも年収ベースでは改善であることが期待されるのですが、どうだったのでしょうか。詳細の把握が課題です。
第三に、「③仕事内容」や「④働き方・勤務時間」では、(「変わらない」が多数でありますが)「悪くなった」への回答が「よくなった」を上回ります。自由記述から推測できるのは、仕事の負担や責任が増したことなどですが、詳細は不明です。
第四に、「⑤休暇制度」は、(「変わらない」が全体の4分の3弱を占めるとはいえ、残りは)「よくなった」が17.3%で、「悪くなった」(6.1%)の3倍弱です。国の非常勤職員制度にあわせて一定の条件整備が行われた結果でしょうか。
第五に、「⑥人事評価」では「わからない」が4分の1を占めています。この「わからない」の相対的な多さは、他の項目における調査結果と比較した際の特徴です。
第六に、「⑦上司や正職員との人間関係」、「⑧非正規職員同士の人間関係」は、「変わらない」が多数です(これらの項目は、制度に関する他の項目と異なり、変わることなくよいままである、ということはあるかと思います)。
さて、順序が逆になりますが、最後に、「①雇用の安定」をみると、「よくなった」が15.9%みられる一方で、「悪くなった」が17.0%、「変わらない」が60.7%です。
条件付採用期間が設けられ、かつ、公募制が導入されるなど(根室市は除く)、制度上は雇用安定に逆行していると筆者は評価してきましたが、従前と「変わらない」と当事者に認識されているのはどのような理由によるのでしょうか。「よくなった」も15.9%みられます(根室市を除いても13.7%)。旧制度下では、空白期間や(それ以上の勤続が認められない)上限が設けられていた自治体があることなども踏まえて、検討する必要があるでしょう。
旧制度下の任用制度と実態はどうであったのか、から遡っての詳細な把握が研究上の課題です。
[26] 但し、「特別職非常勤職員」として取り扱われてきたのが、会計年度任用職員(一般職非常勤職員)への移行で労働基本権がはく奪されたのは、権利擁護の点で「悪くなった」点です。
[27] 労働組合の取り組みで賃金の引き上げを実現した「根室市」の結果(「よくなった」が43.8%)が全体を引き上げています。もっとも、根室市を除いても、「よくなった」は19.2%を占めています。なお、根室市の詳細は、前掲・坂本報告を参照。
[28] 総務省による通知(「会計年度任用職員制度の適正な運用等について(通知)」2022年12月23日付)でも、「適切な給与決定」の箇所で「単に財政上の制約のみを理由として、期末手当の支給について抑制を図ることや、新たに期末手当を支給する一方で給料や報酬について抑制を図ることは、改正法の趣旨に沿わないものであるため、こうした取扱いを行っている団体は、適切な措置を講ずること。」が助言されています。
まとめに代えて──公共の再生のために
アンケート調査に基づき、会計年度任用職員の任用実態や意識、新制度への評価などをみてきました。個々の自治体の任用条件・制度とつきあわせながら、さらに詳細を調べる必要がありますが、それでも、会計年度任用職員の姿が一定程度浮き彫りになったとは言えるでしょう。
繰り返しになりますが、筆者の住む札幌市では、会計年度任用職員が同一部で継続して働くことができるのは、原則として3年までとする特殊なルール(例外あり)が設けられています[29]。
その札幌市の市長選に現職が3選出馬を表明されました。現職の公約(「6つの道標」)には、「女性活躍」や「雇用環境の改善」の言葉が掲げられていますが、市が雇う非正規公務員(や、市が発注する仕事で働く民間労働者)が「視野」に入っているかは定かではありません。また札幌市では、多くの自治体同様に、SDGsの推進を掲げています[30]が、ここでも、公共サービスの担い手問題が意識されているかは不明です。皆さんのマチではいかがでしょうか。
今年は統一地方選挙の年です。公共サービスの担い手に関する問題[31]が、主要なテーマの一つになるよう、各地で「掘り起こし」の作業を進めていきましょう[32]。
本稿で何度か言及した杉並区の新区長[33]のように、会計年度任用職員の改善に取り組むことを明言する首長もあらわれてきています。同区長の就任挨拶[34]にもあるとおり、人(職員)を大切にすることが、良いサービスを市民に提供する大前提ではないでしょうか。
逆に言えば、本稿でみてきたような、公共サービスの担い手である会計年度任用職員の任用がおろそかにされることは、公共サービスの質を低下させることになるのではないでしょうか[35]。本調査はそのことを直接に調べたものではありませんが、そのようなことを示唆する自由記述が数多くみられました[36]。それを最後に紹介して、本稿をしめたいと思います。
本調査は、2023年1月15日2月13日までなお継続中です。広く拡散していただき、当事者からの声がさらに数多く寄せられるよう、ご協力をあらためてよろしくお願い申し上げます。
■当市は同一部内で3年を越えて任用することを認めていないが、現在の職務は高度専門職であり、そもそも会計年度任用職員の枠組みでは技術・知識の継承ができない。現に来年度の弊施設の運用体制は大変に不安定になり機能維持そのものが難しくなることが分かっている。早急に制度の改善を望む。
■保育職に関しては、正職員、会計年度職員とで業務に差は少ないが、意図的に差を作る人、責任、給与の差など難しい点が多いと考える。現職場のように正職員で職場環境に努力しているところでは比較的上手く回っているが、前職場では正職員と会計年度職員とでの人間関係は相当劣悪な状況にあった。会計年度は微妙な立ち位置になるため園の環境設定が重要になると思う。
■会計年度職員の同僚が来年の雇用を断念することになり、職場としてもう少し関係部局に働きかけるなどできたと思う。家庭と両立して働き続ける事に対して職場がもう少し理解と行動を望む。経験が必要な職場という認識がありながら、雇用を継続させる意志が感じられない。ここ数年の離職率が高く、職場の雰囲気を作ることができない、コロナで食事休憩時にも情報交換ができず、職場内のコミュニケーションはバラバラになってしまって非常に心を痛めている。
■専門性の高い仕事であっても、評価されにくいです。職種上、仕事をきちんと遂行するためには正規職員に対し意見を述べたり議論したりする必要性のある業務内容なのですが、公募面接や人事評価にマイナスに響くのでは…と不安の日々です。国・自治体に対して、更新年限が撤廃されることを望みます。
■図書館はカウンター業務やレファレンス等、専門知識や経験が必要ですが、3年の更新だと、人が育たず、経験不足や説明不足から利用者とのトラブルが多発します。現在の正職員が3年〜4年で異動の為、トラブル処理に追われています。
■やらなければならない仕事に対して時間が足りない。新制度になって給与が下がっている。新制度後雇用の人は期限付きなので、人が育たない。
■3年で異動をやめてほしい。気遣いばかり増える。
■3年任用で、継続して働きたい場合は公募の試験や面接をクリアしなくてはならない、というのは、実際にはかなり精神的に負担になっています。現在の職場で働きながら、図書館をより良くしていくとために常に計画して行事を進めていくためのモチベーションを保つ努力をしつつ、試験の出来によっては来春の仕事はなくなるかもしれない不安も抱えているという状況はやはりよくないと思います。もしもなにか病気に罹ったり家族の介護などの事情が生じれば、任用期限という名の下に簡単に切られてしまうだろうと思うと不安になります。年齢が上がるにつれて再び任用される可能性も低くなるのではないかと危惧もします。また、3年で終わる仕事だと割り切っていれば楽かもしれませんが、そのような仕事の仕方をしてよい職ではないように思います。司書という専門職は経験を積んでこそ、という部分も大きいように思います。当市の司書はほぼ全員が会計年度任用職員です。〔略〕このような制度が運用されてしまうと、図書館を長期的な視点でよりよくしていこうとする司書がいなくなり、図書館サービスの質が低下していくのは明らかだと思いますし、それでは仕事による充実感も質が落ちていくに違いないと懸念しています。
■雇用の補償がない不安、同じ会計年度でもどこで雇用になるかで仕事内容にだいぶばらつきがあり、同じ給料で働く事がバカらしくなる事がある。最初は同じ給料だとしても働きによって内容を考慮して昇給を良くしてくれるとか、その後の雇用形態に希望があるとか。何か一生懸命働く未来に希望を持てる環境になると嬉しい。
■非正規という制度を無くして欲しい。正職員と同内容の業務を担当しているのに残業代が出ない。新制度に移行して、今年3月に3年間勤務していた人の雇用期間が終了した。すると新しく雇用された人の教育・未熟な人の分をカバーするため負荷が大きくなった。上司や利用者には、これまで通りの施設運営(展示、イベント、相談業務)を求められるため、残業をして補っている形である。
■自分は異動なしだが、正職員は異動してしまうので、年々、過去の経過を知る人や業務の大変さを共有できる人が居なくなってしまって、正職員への業務の相談がしづらく感じたり、業務遂行への不安が増している。古株になり、年数も長いからと、正職員が行ってきた業務が年々自分に回されてきて業務量がとても増えており、手一杯。業務の基本的な処理は、正職員と一緒に行うのではなく、自分がメインで処理を進めることがほとんどで、自分の業務の処理手順を把握してる正職員がほぼいない状態なので、仮に次年度に自分が任用されないということになると、多くの業務が引継ぎもままならないまま退職という事態が考えられるので、引き継ぎにも不安が募る(業務量が年々増えてきているので、マニュアルを作成する時間を設けるのも大変)。
■私の職種は正規職員がいません。全ては正規〔非正規?〕が担当しており、技術職のために退勤時間になっても正規職員に頼み帰宅するということができません。また、仕事内容としては〔略〕、本来は正職がすべき職種ではないかと感じています。退職手当もなく、退職後はどうしたら良いのかと不安を抱えています。さらに、行っている仕事は正規職員並みのものであるのに、勤勉手当もなく、いつも複雑な思いを持っています。
■会計年度任用職員ではありますが、正職員では出来ない専門の部署もあり、そこに携わる会計任用職員は、他の職種と任用年数等を長くしたりして、人材確保をしていく必要性を感じていますが、今のところは無理なのでしょうか、、、
■精神的な負担を考えると、学校関係の仕事と類似する点があるため、その点を含めた賃金支給にしないと人材不足の解消にはつながらないと思います。世帯生計を支えられる金額がもらえなければ他の職種に目がいくのはあたりまえと感じます。
[29] 前掲・拙稿「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」。
[30] 札幌市「国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進」。
[31] 本稿では、自治体が直接雇う非正規公務員問題を扱いましたが、自治体が発注する仕事で働く公共民間労働問題もあわせて検証していく必要があります。後者は、公契約条例の制定が課題になります。この点は、『NAVI』の「公契約条例」カテゴリー所収の論文のほか、「札幌市公契約条例の制定を求める会(代表 弁護士・伊藤誠一)」の取り組みをご参照ください。
[32] 拙稿「公務非正規運動の前進のための労働者調査活動」『住民と自治』通巻第704号(2021年12月号)。
[33] 区長に新しく就任した岸本聡子氏は、公共サービスの民営化問題や再公営化に関する調査・研究にシンクタンクで従事してこられました。岸本聡子(2020)『水道、再び公営化!欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』集英社など参照。
[34] 区長就任挨拶によれば、「次に職員の方々についてですが、〔略〕選挙活動を通じて、公共の再生を訴えて参りました。コロナパンデミックを世界が同時に経験し、医療や保健といった公共の中枢的な機能が弱体化していること、そこで働く人たち、エッセンシャルワーカーがコストとして切り捨てられたり、圧縮されてきたことが明らかになりました。私は、区立施設と区の職員はコストではなく、杉並の財産ですと訴えて参りました。例えば、会計年度再任用職員〔ママ〕の待遇の改善を含め、積極的に取り組んで参りたいと思います。人を大切にすることが、区民に良いサービスを提供する大前提だと私は考えております。」以上は、令和4(2022)年7月11日 区長記者会見(岸本聡子区長就任記者会見)より(下線は筆者)。
[35] もちろん、それを食い止めるための努力が現場で行われているでしょうけれども、それには限界があるでしょうし、そもそも、客観的な条件の整備を怠って現場に努力を強いているだけでよいのかが地域住民である私たちに問われているのではないでしょうか。この点に関連して、コロナ禍・下における公務労働の現状と労働組合の取り組みを発信し続けている小松康則氏(大阪府関係職員労働組合執行委員長)の『NAVI』掲載論文を参照。
[36] 次のような報道もちょうど目に入り、気になるところです。「帯広の公立全8保育所、定員割れが常態化 保育士不足で」『北海道新聞』2022/12/28 23:05 更新。記事では、定員縮小や民間移管が検討されている施設では、正職員を募集しても保育士が集まらない状況であることのほか、「短期採用の会計年度任用職員を募集しても賃金が民間より低い傾向にあるため、応募は低調」とのことが紹介されています。