神代知花子「石狩市の非正規公務員問題と問題解決に向けた議員活動(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」

本稿は、2022年7月7日(木)に開催された、反貧困ネット北海道主催第1回目の学習会で講師を務められた、石狩市議会議員の神代知花子(以下、くましろちかこ)さんのご報告です[1]。当日の報告を事務局の責任でまとめました。講師による加筆なども行っています。どうぞお読みください。

なお、企画の趣旨は、同日に報告された川村雅則「自治体の新たな非正規公務員制度(会計年度任用職員制度)問題」の記録を参照ください。

 

 

 

目次

■自己紹介──非正規職員として働いてきて

本日は、この問題に取り組んでいる専門家の方々のほか、学生さん、そして当事者の方々も参加されていると伺っています。非正規雇用問題は民間を含む日本社会の大きな問題です。本日はその中でも、非正規公務員の部分に焦点をあてて私の取り組みなどを報告させていただきたいと思います。拙い話となりますが、どうぞよろしくお願い致します。

まず自己紹介となります。私が議員になったのは38歳のときで、現在2期7年目で、年齢は44歳です。独身です。

釧路公立大学の経済学部経営学科を卒業した後、食品メーカーに正職員で就職をしたのですが、体調を壊しまして、一年半で退職し、その後、自分は何をしたらいいんだろうと悩みながら、教育福祉畑を非正規職で転々とした時代を過ごしました。小樽市役所(27~29歳)、石狩市役所(31~33歳)で、計5年間の非正規職員の経験があります。

小樽市で勤めていたときには、事務の窓口業務だったので、使い捨てとは言わないまでも、代わりはいくらでもいるような仕事でした。まわりの正職員は若い人が多く、初めのうちは彼らとも楽しくやっていたのですが、そのうち、直属の上司が一切口をきいてくれなくなりまして、それが2年間続く中で最後は理由も分からないまま逃げるように辞めていったというつらい記憶があります。

その後は、石狩市での家庭児童相談員としての勤務歴となりますが、子ども虐待など深刻なケースを児童相談所とともに対応する仕事でした。まず最初に本当に驚いたのは、こんなにも深刻な悩みを抱えている家庭の中に、私たち非正規職員がどんどんと入っていくことです。それこそ私は教員免許こそ取得していたとはいえ、相談経験など何もない相談員だったものですから、一体私に何ができるんだろうと悩みながら、同時に、こんなことを非正規職員に行わせていいのか、と思いながら、日々、仕事にのぞんでいました。

それでも、相談者の方が少しずつ心を開いてくださり、親や子どもにとって自分が重要な役割となって関係性を築いていくわけです。ところが同時に、いつか、この子どもたちと関係を解消しなければならない。いつかは辞めて行かざるを得ない、私はそういう存在なのだということも常に考えながら働く日々でした。

当時も5年の年限だったのですが、実際、私の先輩で、明らかに心を病んで壊れていく先輩もおられました。6年目の延長が決まって、その1年が始まってすぐに『次の更新はないかもしれない』と憂いていたのを思い出します。あなたが必要だよ、と表面的には言われながらも、決して大事にされることはない、いつ、他に乗り捨てられるか分からない、そういう存在であることを痛感しました。

川村先生に勧められて「手記」[2]にも書きましたが、非正規職員というのは、自治体に飼い慣らされたバタードウーマン、自分を大切にされない場所から逃げたいのに徐々に力を奪われる状態なのではないかと私は思います。

石狩市を退職してからは、安保法制改正を経て政治志向が強まっていき、現在は離党していますが、市民ネットワーク北海道から立候補して議員になりました。そして、川村先生のような研究者や、困窮者支援に関わる方々と交流を深めていくことになりました。

あの頃、社会に出たばかりの若い自分が5年間嫌というほど感じていた格差、あるいは、差別というのは、「結局は、何者にもなれない私」「結局はここにはいらない私」という苦い記憶になりまして、それこそ、私の心にオリのように積み重なり、今も低い自己評価のベースとなっていると感じています。

 

 

■非正規(公務員)問題総論

1)非正規公務員問題への周囲からの反応

当事者にとっては、非正規公務員の経験は、働いて生きていく上でトラウマになるような出来事であるのに、その扱いが社会で問題視されないのはなぜなのか、と日々考えてきました。非正規問題に取り組む中でいつも言われることを一つ一つ取り上げ、その問題性を書いてみました。

第一に、「そもそも、その処遇に納得したから、応募してきているはずじゃない?」と言われます。たしかに、その募集要件に納得して求人に応募したとしても、処遇改善を望んでいないわけではない、というのが実態です。

第二に、「扶養の範囲内で働きたいのだから、条件が合致しているはずじゃないか」と言われます。しかしながら石狩市の非正規公務員の実態は、ほとんど全ての方が週29時間で働いていますから、全て本人が協会けんぽ、厚生年金、雇用保険に加入している状態です。

第三に、「子育て中で、夕食準備ができる時間に帰れるのは好都合でしょ」と言われます。そういう方がおられることを否定するわけではありませんが、しかし全ての方が早く帰りたいわけではなく、終業まで仕事したいと希望する方もおられます。

第四に、「処遇に不満があるなら民間で働けば」という言い方に対しては、自治体の仕事には、民間には多く存在しない専門職種、住民の支援に関わる仕事が多数存在します、と言いたいです。

第五に、「正規職員は公務員採用試験に合格しているので、非正規公務員は、フルタイム正規職と待遇が違って当然」と言われます。しかし、非正規の平均年収は正規職の約三分の一です。その格差は果たして合理的と言えるのか、格差の根拠は何かを考えています。

第六に、「少子高齢化時代の自治体財政を考えた時、正規職員は増やせない。しかし、一方でサービスのニーズは多様化している。多様化するニーズの前線に、非正規職員が配置されるのは仕方がない」という言い方がされます。しかし、正規職員の定数削減を非正規職員で補う行政運営をこのまま続けてよいのでしょうか。

非正規公務員問題への理解がこのようになかなか得られない状況ですが、実態をつかみ処遇改善につながるよう取り組んでいます。

 

2)非正規公務員問題をチェックするポイント

皆さんの周りに非正規公務員で働く方はおられるでしょうか。話を進めていく前に申し上げておきたいのは、問題を難しく考える必要はない、ということです。

私が感じていたような苦しい経験を、全ての非正規公務員が経験しているとは限りません。非正規で働く方の実態をつかみ処遇改善につなげていきたいと思っています。どのような観点から実態を知りたいかざっとあげてみました。

 

  • どんな仕事に何年従事しているか
  • 仕事に相応の待遇は得られているか
  • 男性か、女性か(生物学的性差)
  • どんな世帯状況の方か
  • 年齢構成はどうか
  • 資格の有無、代わりのきく職種なのか
  • 経験を活かして、このまま働き続けられるか
  • 休暇など処遇は適正か
  • 正職員との格差は合理的か、差別的か
  • 家庭事情を正職員同様配慮されているか
  • 能力を育てたり、発揮できる環境か
  • 荷重過ぎる労働や責任を負わされていないか
  • どんな悩みを持っているか、相談できる環境か
  • 退職後その職は、民間にも存在するか
  • 退職金はあるか、組合員か
  • 処遇改善が計画に基づいて行われているか
  • 経験と実績が待遇に反映される仕組みがあるか
  • 労働安全衛生の扱いは適切か

 

現在非正規職員として働いている方々が、どんな世帯状況で、どのような思いをもって働いているかを統計的に知ることは、思い込みで取り組みを進めたり、また進める必要がないとされる状況を打開していけると考えます。また、非正規職員制度が生み出す公務労働者の仕事が、幸せな働き方と言えるか、市民サービスにどのような影響をもたらすかという研究につながっていくと思います。

 

 

■会計年度任用職員制度と、現状を知るための各種資料

1)会計年度任用職員制度の特徴

2020年度から新たな非正規公務員制度である会計年度任用職員制度が導入されました。この新制度については多くの方々が問題点を指摘していますので、ここでは省略をして、新制度の意義と一般的に言われているものを2つあげました。

 

①非正規職員の任用根拠「適正化」と会計年度任用職員の新設

・特別職非常勤は「学識・経験の必要」な職に厳格化し、臨時的任用職員は「常勤の欠員」への対応に厳格化するとしています。それ以外の臨時・非常勤職員は、原則として会計年度任用職員に移行

・任用根拠が曖昧な「常勤的非常勤職員」が、一般職として「一会計年度を超えない範囲で置かれる非常勤の職」として、「会計年度任用職員のフルタイム勤務」として明確に位置付けられた。

②期末手当支給など処遇改善関係

 

一つは、位置づけをすっきりさせたことです。特別職非常勤職員とか臨時的任用職員と呼ばれてこれまで働いてきましたが、自治体によってそれはバラバラでしたし、そもそも根拠は不明確でした。この点が整理されました。特別職非常勤職員も臨時的任用職員も厳格化されて、それ以外の一般職非常勤職員の方々が会計年度任用職員に移行することになりました。

もう一つは、期末手当の支給などの処遇の改善です。

ところで、本日の本題からはそれますが、新制度の導入によって正規職員はますます「本格的業務」に固定化されることになりました。

本格的業務とは、管理業務、運営的な業務そして権力的業務──例えば、債権の回収などがそれにあたるかと思いますが、こうした本格的な業務に固定化されることになりました。一方で、「住民の暮らしやいのちに関わる現場の業務」、言い換えれば、実際に市民の方々と関わる現場の業務の大半が、会計年度任用職員に置き換えることが可能になった──このことを、新制度導入をめぐる影響として理解しておく必要があるかと思います。

正職員の仕事にも関わる今回の新制度をどう評価すべきでしょうか。

 

 

2)関連文書・資料で現状を知る

現状を知るにあたり、関連する文書・資料(関係法令・条例・規則・マニュアル)をまずは準備しましょう。

【地方公務員法】

○第18条の2 (採用試験の公開平等)

  「採用試験は、人事委員会等の定める受験の資格を有する全ての国民に対して平等の条件で公開されなければならない。」

 平等取り扱いの原則

○第22条2(会計年度任用職員の採用の方法等)

 会計年度任用職員を正式採用の有期雇用の地方公務員として明示

 

【総務省「会計年度任用職員制度の導入に向けた事務処理マニュアル 第二版(Q&A)」】

Q. 会計年度任用職員について、再度の任用が想定される場合であっても、必ず公募を実施する必要があるか。

A.選考においては公募を行うことが法律上必須ではないが、できる限り広く募集を行うことが望ましい例えば、国の期間業務職員については、(中略)再度の任用を行うことができるのは原則2回までとしている。(中略)再度の任用については、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、任期ごとに客観的な能力実証を行うよう、適切に対応されたい。

 

非正規職員の問題についていったい何から始めようかと考えた際に、まず私は、制度のを知り、関係する文書を集めなければと考えました。

関係法令などは、一部にとどめますが、まず「平等取り扱いの原則」が公募をかける理由として引用されます。

総務省の「事務処理マニュアル」[3]をぜひお読みいただきたいのですが、その中に、再度の任用は、公募が法律上必須ではないものの、広く募集することが望ましいと助言されています。国の非正規公務員が例にあげられていて、2回・3年の公募が推奨されています。しかし、繰り返しになりますが、その通りに運用をしなければならない、というわけではないのです。皆さんも自分の自治体でどうなっているかをチェックしてください。

 

○石狩市職員の給与に関する条例(会計年度の基本報酬は、正規職員の行政職給料表を使っている)

○石狩市会計年度任用職員の給与等に関する条例(フルタイムの給与とパートタイムの報酬を規定)

○石狩市会計年度任用職員の給与の決定及び支給などに関する規則(市長部局の会計年度の各職の学歴免許等、職務の級(格付け)と基礎号俸(スタート時の給与)と上限級・号俸などが規定)

○石狩市教育委員会会計年度任用職員の任用、給与、勤務時間、休暇等に関する規則(教育委員会の会計年度の各職の学歴免許等、職務の級(格付)と基礎号俸(スタート時の給与)と上限級・号俸などが規定)

○石狩市会計年度任用職員の勤務時間、休暇等に関する規則(フルタイムとパートタイムの勤務時間、有給、無給の休暇等を規定)

○石狩市会計年度任用職員の任用等に関する規則(任用について、公募によらない再度任用は4回までなどを規定)

○石狩市職員の育児休業等に関する条例(会計年度の育児休業について規定)

 

石狩市の関連条例を取り上げ、括弧内にコメントをつけました。

会計年度任用職員の基本報酬は、正規職員の行政職給料表を使っていますから、関連条例をみる必要があります。

また大事になるのは、会計年度任用職員の給与の決定に関する規則や任用などに関する規則などです。石狩市の場合には、公募によらない再度の任用は5年間までとなっています。このようなことが規則の中に書かれています。詳しくは後でご紹介します。

まずは皆さんも、ご自身の自治体の条例を集めてください。

 

  • 会計年度任用職員制度概要→令和2年4月スタート時のもの
  • 会計年度任用職員の事務の手引き(内部資料)→所管課長だけでなく、当事者にも渡っているか
  • 事務手続きの改定内容一覧表(内部資料)→処遇改善された内容が、手引きに反映
  • 会計年度任用職員職種別人数内訳(R4.4.1現在)→各部署の人数、男女別を把握
  • 令和2年度 地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査に対する市の回答

 

 

ここにまとめたものは、職員課から独自に入手した資料になります。

写真は、令和2年度の会計年度任用職員制度がスタートしたときの制度の概要を示したものと、事務手続きをまとめた『会計年度任用職員事務の手引き』(以下、『手引き』)です。この『会計年度任用職員事務の手引き』は、どこの自治体も内部資料として職員課が持っているものだと思います。毎年度、会計年度任用職員の処遇改善が反映されたものが更新されています。石狩市では、各所管課長に一斉メールされているとのことですが、手引きは当事者にとっても自分の処遇を知る重要なものですので、しっかり活用されているかも含めて点検していただければと思います。

先ほど、条例の紹介をしましたが、所管部署がまとめたこれらの『手引き』のほうが分かりやすいと思いますので、まずはこちらから目を通すことをおすすめします。

 

表 事務手続きの改定内容一覧表

こちらの表は、担当所管から提供いただきました「事務手続きの改定内容一覧表(内部資料)」で、年度が変わって何が改善されたのかが整理されています。

例えば「出生サポート休暇」。これは不妊治療に対する休暇です。また出産休暇は、これまで無給でしたが、有給化されました。それから、6か月以上勤務していなければ育児休業がこれまでは取れなかったのですが、今回、任用された段階で育児休業が取得できるように、取得要件が緩和されています。

制度の問題を把握すると同時に、こうした資料で何がどこまで改善されたかが確認できます。また、この処遇改善が当事者に行き渡っているかが一番大事なチェックポイントだと思います。

 

 

■石狩市の会計年度職員制度の現状

 

1)石狩市の会計年度任用職員数

図表 石狩市の職員の内訳

全職員数 711人

正職員457人(64.3%)、非正規職員254人(35.7%)

うち短期間・短時間勤務者を除く207人(31.2%)

非正規職員内訳

会計年度任用職員(パートタイム)251人、特別職非常勤3名、臨時的任用職員0名

会計年度任用職員男女比  男性70人(27.9%)、女性181(72.1%)

出所:石狩市作成資料より。

 

次は、基本情報として、職員の人数をおさえることが大事になります。男女別、年齢別の人数情報です。表のとおり、3割が会計年度任用職員、そのうち7割が女性です。会計年度任用職員の全員がパートタイム扱いです。

ほかに、どこの部署で新規の採用があったのかの情報も重要です。

 

2)種別・任用

【種別について】

○フルタイム会計年度任用職員(以下フルタイム職員):週38時間45分勤務(期末手当・退職手当などの対象)

○パートタイム会計年度任用職員(以下パートタイム職員):週29時間勤務(期末手当などの対象)

*各課での任用はパートタイム職員を基本とする

【任用期間について】

(1)採用の日から会計年度の末日(3/31)までの期間内で設定

*一会計年度を越えてはならない

*再度任用・任期の更新の際、不適切な空白期間は設けない

*平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、公募によらず従前の勤務実績に基づき再度任用を行うことができるのは、4回までとする

※毎年度公募する職種もあります。

出所:石狩市『手引き』より。レイアウトは変更されている。下線は報告者。以下の表においても同様。

さきほど紹介した『手引き』に基づいて、会計年度任用職員の任用条件をご紹介します。

まず、フルタイム型は週38時間45分の勤務で、パートタイム型は週29時間です。どちらも期末手当の支給対象ですが、フルタイム型は退職手当も支給対象となります。但し石狩市では、フルタイム型の会計年度任用職員はおりません。

任用期間も先ほど申し上げたとおり、公募によらぬ再度任用は4回までとなっています。つまり石狩市では5年公募制ということになります。

 

3)待遇等について

図表 フルタイム型とパートタイム型の処遇体系

出所:『手引き』より。

 

次に待遇等ですが、フルタイムは給料という呼び名で様々な手当も支給対象となりますが、パートタイム型は、報酬という名目と費用弁償による処理です。

表にそれぞれに支給されるものが整理されています。説明は、『手引き』から引用します。すなわち、「会計年度任用職員に対する給与等については、フルタイムとパートタイムの場合において、違いがあります。

フルタイム職員は、給料及び一定の手当、旅費が支給対象。手当の内容は、期末手当、地域手当、通勤手当、特殊勤務手当、時間外勤務手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、災害派遣手当、退職手当等です。

パートタイム職員は、報酬、通勤に係る費用弁償、期末手当及び一定の手当に相当する報酬が支給対象となります。手当に相当する報酬とは、算出の仕方はフルタイム職員に支給される内容とほぼ同等ですが、法令上「手当」と言えないため、『手当に相当する報酬』などとするものです。」

なお、社会保険についてふれておくと、フルタイム職員が北海道市町村職員共済組合と退職手当組合に加入するのに対して、石狩市の標準である週29時間パートタイム職員は、協会けんぽ(健康保険、厚生年金)、雇用保険に加入します。

 

4)任用の方法

図表 任用の方法

出所:『手引き』より。

 

次に任用の方法ですが、公募によらない任用のできる条件が定められています。

具体的には、次のとおりです。

 

「(1)公募によらない選考ができる条件とは次のいずれかに該当する場合です。

①前年度に設置されていた職種又は当年度に設置されている職種に任用されていた者を当該職種と同一と認められる職種に従事する者として任用の選考の対象とする場合において、面接、当該職種におけるその者の勤務実績等に基づき、能力の実証を行うことができると任命権者が認める場合

②おおむね3カ月未満で完了する業務に係る職種の者を任用する場合」

 

下線を引きましたとおり、能力が認められれば──それこそ、勤務実績等に基づき、担当課長とご本人との間で、ご本人の意思や能力が確認されれば、公募によらない任用が可能です。但し、繰り返しますとおり、石狩市では、総務省の助言は上回る水準であるとはいえ、公募によらない再度任用は4回まで(計5年)です。公募によらない選考を実施するには、次のことを行うよう『手引き』に記載されています。ご紹介をしておきます。

 

(2)公募によらない選考を実施するには、次のことを行ってください。

①公募によらない選考の実施をすることを明らかにした決定書を作成

任用しようとする会計年度任用職員の事務を主管する部長(以下「主管部長」という。)が決定した内容のものが必要となります。

②(1)の①の条件(以下「公募によらない再度任用」という。)による場合は、前①の決定書の作成に加え、公募によらない再度任用の要件に該当することを任意の様式(職員課に参考例あり)により記録してください。要件とは次のいずれにも該当していることです。

ア 公募によらない再度任用の回数が上限の4回を超していないか

イ 能力の実証の結果が良好であるか

ウ 前年度及び当年度において傷病(公務によるものを除く)のため勤務をしない日が、引き続き3カ月を超えていないか

※ただし、任期満了の日においておおむね3カ月以内に回復する見込みがあり、かつ、職務に復帰した後、通常の勤務をすることが可能であると主管部長が認めた場合は、この限りではありません。

エ 前年度及び当年度において、石狩市会計年度任用職員の任用等に関する規則で定める懲戒処分を受けていないか

 

 

5)給与について

最後に給与について、です。

先ほど、正規職員の給与表を使うと紹介しました。正規職員の場合には、昇格という格が上がっていくことになります。主任から主査、課長、部長、と格が上がるのですが、非正規職員の場合には、わずか4つの職で2級、つまり主任クラスの給与表までは上がりますが、それ以上は上がらないということになっています。

該当箇所を『手引き』から引いておきます。すなわち、「フルタイム職員の給料、パートタイム職員の基本報酬については、一般職員(定数内職員)と同様の給料表を基礎として用います。石狩市会計年度任用職員の給与の決定及び支給等に関する規則に規定する職種に応じた基礎号俸から上限号俸までの間で、任用までの間の職務経験等を加味して級号俸の決定がされます。

会計年度が替わり再度任用がされる場合も、級号俸の決定を行います(上限に達している場合は変更なし)。」

 

そして、4つの職を除くすべての方は、何年勤めても1級(主事クラス)の給与表の中で働き、正規職員同様1年に4号俸昇給しますが、昇給上限が定められています。週29時間であれば、四分の三を乗じた額が月額報酬額となります。

スタート時の格付けは、職種や経験等により、それぞれ異なります。

なお、期末手当の支給要件についても掲載しておきます。以下の要件を満たす場合に支給対象となります。すなわち、「(ア)基準日時点で在職し、任期の定めが6か月以上ある者、(イ)1週間の勤務時間が15時間30分を超えて任用される者、(ウ)基準日時点において、無休休職者、刑事休職者、停職者、専従休職者、育児休業者(例外有)に該当しない職員」です。在職期間が6か月に満たない場合には、その分だけ減額がされた金額が支給されます。

 

■議会活動を通し見えてきた課題

1)これまでの主な議会活動(一般質問)

 

【平成27(2015)年度】

  • 非正規公務員問題
  • 生活困窮者自立支援制度
  • マイナンバー
  • 東日本大震災自主避難者支援
  • 子どもの貧困・子どもの権利条例
  • ひとり親支援
  • 子宮頸がんワクチン問題
  • 不登校
  • 福祉避難所の充実
  • エネルギー政策
  • 子育て・障害・高齢者共生型支援

【平成28(2016)年度】

  • 障害者への合理的配慮
  • 発達障害のある子どもの不登校
  • 一次避難所の福祉的対応
  • 風力発電の影響
  • 地域共生社会に向けた取り組み
  • 核ゴミ最終処分について
  • 官製ワーキングプア
  • 公務の外部委託
  • 再エネエネルギービジョン
【平成29(2017)年度】

  • 風力発電ゾーニング計画
  • 個人情報の目的外利用
  • 洋上風力発電の漁業影響
  • ひきこもり者の実態調査
  • 働き方改革
  • 公共施設でのニオイの害

【平成30(2018)年度】

  • 小型風力発電の規制条例
  • 非正規職員の待遇改善
  • エネルギーの自給自足
  • 洋上風力発電の問題

【平成31年/令和元(2019)年】

  • 今後の職員体制の考え方と臨時・非常勤の処遇
  • 80-50問題、発達障害の不登校
  • 再エネ海域利用法と港湾法に関わる洋上風力
  • 公共施設への除草のための農薬散布
  • 再エネ地産地活
  • 会計年度任用職員制度
  • ひきこもりサポートセンター
  • 幼保無償化の影響
【令和2(2020)年度】 会計年度任用職員制度スタート、コロナ蔓延

  • 浜益区の高齢者支援、漁業振興
  • フッ化物洗口の実施、公立夜間中学
  • 新型コロナの情報発信
  • 打撃を受けた小規模事業者支援
  • ケアワーカー慰労金、環境基本計画策定
  • GIGAスクール構想新型コロナ地方創生臨時交付金
  • 浜益区川下・柏木集会場高レベル
  • 放射性廃棄物の最終処分場選定
  • 電磁波過敏症の配慮

【令和3(2021)年度】

  • 新型コロナ事業者支援関係、コロナワクチンの接種
  • 自治基本条例改正、ゼロカーボンの取り組み
  • 八の沢風力発電計画について
  • 新幹線残土受け入れ、花川通延伸
  • 石狩浜海浜保護センターの運営
  • 教員の働き方改革
  • 就学援助と家計改善支援金制度

 

 

 

議員活動をしてきた7年の間に行ってきた一般質問をまとめてみました。非正規問題に関わる質問には赤で着色しています。

初めて議会の質問に立った平成27(2015)年度が、まさに非正規公務員問題を取り上げた最初の年でもあります。

川村先生から繰り返し助言をいただいて、非常に高い水準の質問をすることができました。とてもパンチがあった質問だったなと思い出します。

その後も、何か一つでも改善はできないかと思って、活動をずっと継続しています。ただ、会計年度任用職員制度が始まる前年にあたる令和元(2019)年度の末、そして制度が始まった令和2(2020)年度から、ご承知のとおり、コロナ感染が拡大し始めました。そのため制度一年目にあたる令和2(2020)年度には、一般質問ではなく総務の常任委員会で制度や運用の確認をするのにとどまってしまいました。そのあたりは、しっかりと対応すべきだったなと思っています。

 

2)担当課との認識の齟齬、ギャップ

7年間活動に取り組んできましたが、市の担当課には私の思いはなかなか伝わっていないのが実態です。

担当課の職員との会話の中で言われていることの概略をまとめてみました。

一つ目。「お金が必要だから、長く働きたい人もいれば、子どものために早く帰りたい人もいる。ダブルワークのために、月~木を終日働いて、金曜日を他のバイトに充てる人もいる。その人その人の暮らしの状況によって、望みが違うから、会計年度任用職員は全てこういう要望がある、改善しなきゃというのは、一概に言えないのではないですか

二つ目。「任用の取り扱いは、各担当所管に任せている。職員課では、公募が必要か否かをチェックするシートをつくっており、所管ごとに、公募するか、公募に寄らない任用とするかは管理されている。なので、全体としてのとりまとめはしていない。」という理由で、「○課のAさんが何年目かというのは、担当所管しか知らない」というのですから驚きです。

でも一方で、「毎年度スタートに、給与システムに全員を登録するので、その経年のシートを並べて、同じ方が何枚あるかで現在何年目かはわかる。」と。

私としては、担当所管である職員課が、会計年度任用職員の適正な制度運用がなされているかチェックし、処遇改善につなげるためにも、個々の再度任用に関する情報は一元的にデータ管理されるべきだと思っています。任用の責任を所管任せにしていては、現場でどんなことが問題となるか洗い出すことができません。

三つ目。総務省による「会計年度任用職員制度の適正な運用」という通知があります[4]。そこには、例えば、正規職より15分働く時間を短く設定してパートタイムにすることで、諸手当や退職金の支払いを回避するような事例が出ています。

石狩市では、そのようなことは行われていません。また、会計年度移行後に、労働時間は短くなっても、時間給換算が下がった方はおらず、年収にプラスして夏冬ボーナス分増えています。そのことは私も評価しています。しかし、国の制度改正の趣旨である非正規職員の待遇改善を手厚く整えたということと、今すぐ取り組むべき課題、または課題の洗い出しのための調査が必要ないかというと、それは違う問題だと思います。年収ベースで30万円上がれば、正規職員との待遇格差を生み出す制度的な問題が解決できるわけではありません。

確かに石狩市は、非正規職員の制度について着実な仕事をしていただいているとは思っています。自治体によっては露骨にひどい扱いをしているところもありますから。ただ7年間、少しでも当事者を代弁できるよう議会での取り組みをしてきたけれども、その生活苦や展望のない働き方の切実な想いまでは、担当職員にはまだまだ伝わっていないのだなと、議員としての力不足を感じています。

 

 

■今後、確認・追求したいポイント

改めて、確認・追究したいポイントを整理してみました。これは石狩市での私の仕事であると同時に、議員の皆さんにもご自身の自治体で実施していただきたいことでもあります。

 

1)雇い止め・公募問題

最終的には公募制の廃止を念頭においていますが、まずは、現在の仕組みである、公募によらない再度任用4回は実現しているかなど、雇止め・公募問題をチェックしたいと思います。

 

(1)部局の考え方を確認する

手順で言いますと、まず、①部局の考え方を確認してください。

石狩市では、これまではあくまで「原則毎年度公募」でした。しかし、職務の特殊性から公募がなじまない職は、各所管で個別の取り扱いをしていました。実際に公募にかけずに10年など長期で働いていた方もおられました。現在石狩市には、5年以上勤務者は55名存在することが分かっています。

制度移行後、すべての職で、能力の実証の結果が良好であれば、公募に寄らない再度の任用は4回まで可能とする、となっています。ここでの公募とはホームページ、ハローワークなどで広く募集することです。この基本の考えをまずは確認してください。

 

(2)新制度導入時に雇い止めはなかったか

二つ目。令和2年度に会計年度任用職員制度に移行したときに、働いていた方を一斉に雇止めして公募をかけたのかどうかを確認していただければと思います。石狩市ではそのような対応しました。

その時に、公募を諦めたり雇止めで退職になった人はいなかったかどうか。また、いた場合には何年勤務の方だったのかなどをあらためて調べたいと思います。

普段にそのようなことを頼むと業務多忙に追い打ちをかけるので、そのようなことを確認したいと伝えておいて、9月の決算委員会で、決算委員会資料などで調査を申し込みたいと思います。

 

(3)勤続年数を正確に把握する

三つ目。令和2年4月からの分ではなく、新制度導入前から現在までの勤続年数を、全職・全員分確認する必要があると思います。とりあえず、自分で聞き取り調査をしたいと考えています。

会計年度任用職員制度は始まってまだ3年ですが、それを大きく超える年数を働いている職員の方が皆さんの自治体にもおられるのではないでしょうか。そのような方たちを、当該年度の公募の時期がきたらいっせいに雇い止めをして公募にかける必要があるのか、ということを議論していかなければならないと思うのです。勤続年数を把握することはその際に役立つ資料になります。

もちろん、公募制は規則に書かれていることですから、どうすればそれを覆せるのかは検討していかなければなりません。

 

(4)毎年度公募に合理的な理由はあるか

四つ目。今回各所管に独自で聞き取り調査をしたところ、毎年度公募を行っている部署は、今回調査の範囲では3部署でした。毎年度公募するか否かは所管部署がその必要性に鑑み判断していますが、この3部署の職種は、経験や資格に要件がある採用が困難な職であり、現在任用されている職員の経験年数を見ても、本当に毎年度公募する必要があるのかはさらに調査する必要があります。

 

図表 毎年度公募が行われている3職種とその賃金等

 

毎年度公募を行っている「専任⼿話通訳者・要約筆記者」を例にあげますと、石狩市は全国で初めて手話基本条例を制定したまちですが、市民に手話を推進する取り組みの中心は、専任手話通訳者が行っています。

3名ともが5年以上の経験があるベテランで、手話通訳者の資格取得は非常に難しく求人を出してもなかなか応募がこない職種です。そのような職種で、毎年度公募のために現職員にも履歴書を出させ選考にかける必要はあるでしょうか。また、報酬を⾒てみると、経験のない⽅は1級25号俸からスタートしますが、上限は2級64号俸、39年で上限に達します。しかし、39年かけても、達する報酬は、21万750円という低⽔準です。

 

2)勤務時間と任用形態

次に、勤務時間と任用形態をめぐる問題にも取り組みたいと考えています。

 

(1)フルタイム型会計年度任用職員は不要か

一つ目。①フルタイムの設定がありながら、なぜ該当する職がないのか、ということです。

例えば石狩市には、妊娠した母の心身の状況を聞き取り、母子手帳交付をする窓口業務がありまして、「母子保健コーディネーター(非・保健師)」1名で対応しているわけです。この方の働き方は、10時~16時で月曜から金曜までいるとのこと。しかし、16時以降の受付は、正規職の保健師が受付をするそうです。担当者不在にせずフルタイムでいいのでは、と思いますよね。

同じように、担当ケースを受け持つ相談職「スクールソーシャルワーカー」「家庭児童相談員」「母子・父子自立支援員」なども、当該職員の「休み」を伝えて、来庁された相談者にはお帰りいただくことも多いです。

今年度から採用になった「集落支援員」も、集落を歩いて、関係者からの聞き取りをしたり、色々なことをなさるわけですが、この仕事は、ダブルワークを想定しておらず、フルタイム、9時-17時を想定した働き方です。再度任用の回数制限も、この職に関してはないんです。ところがこの職種もパートタイム型に設定されています。

このような職種で、フルタイム移行が適当ではないかということを議会で求めています。フルタイムとなれば、月額報酬も上がりますし、退職金も支給されます。

実際この仕事に従事している方々は、月~木は8:45~17:15で働いて、金曜日は、他でアルバイトをするダブルワークしているというのです。フルタイムにすれば、報酬が5万円増えるわけですから、他のところでダブルワークをする必要性もなくなるわけです。

こういう洗い出し、つまり、フルタイムで働いてもらったほうが、市にとってはサービス向上・住民福祉の向上になり、職員にとっては給与が改善される──こういう事例の洗い出しをしていきたいと思っています。

 

(2)勤務時間が短くされる理由の不合理さ

二つ目。フルタイム勤務の必要性をなぜ行政側は認めたくないか。

それは「退職金逃れ」だけでは決してないように思います。かつて正規職が配置されていたようなケア職に会計年度が配置されている経緯が原因ではないでしょうか。正規職員の代替えであれば、それは補完的業務でないので、正規職待遇を求められてしまいます。ですから、正規職員よりも労働時間を短く設定することでしか、非正規を配置する根拠が示せないのではないでしょうか。

他にも、保健師や保育士、管理栄養士などの職種には、会計年度任用職員にも正規職にも同じ資格で働く人がいます。職務内容では大差がない中で、その待遇差が合理的だと示すためには、労働時間を短く設定する必要があるのでしょう。職務内容は大きく変わらないのに労働時間を短く設定することで、処遇格差が大きい職について洗い出しが必要です。

 

(3)フルタイム任期付き職員の活用

三つ目。一つ希望があるのは、「フルタイム任期付き職員」の活用です。この「フルタイム任期付き職員」は正規職員の代替の働き方ですから、任用条件は全く異なるものになります。賃金は正規職員に準ずる内容になります。先に言及したように、どの職において「会計年度パート」から「会計年度フルタイム」に移行できるかに加えて、「会計年度フルタイム」相当の職から、「フルタイム任期付き職員」に移行できるかということも求めていきたいと思います。

このようなことを実際に取り組んでいる事例が、福島県会津若松市や兵庫県三田市など、全国にあることをインターネットで調べていて知りました。詳しい方には逆に情報をいただきたいと思います。

先に指摘しました「専任手話通訳者」を正規職員にしていくという要望は、市の手話の審議会でも課題としてあげられています。手話推進事業を前線で担うベテラン職員の正規職員待遇化に注目し、取り組みたいと思います。

もちろん、それ以外の会計年度任用職員の処遇は現状でよいというわけではありません。まずは課題が見出される職種からはじめていき、最終的には、会計年度任用職員の処遇全体の引き上げを図っていきたいと考えています。

 

3)賃金格差、給料制度

図表 会計年度任用職員及び正職員の賃金に関する総括表(2021年度予算ベース)/単位:万円

職員数(人) 給与費 共済費 合計
報酬 給料 職員手当等
会計年度任用職員 合計 223 40,059 0 6,722 46,780 7,165 53,946
1人当たり 180 0 30 210 32 242
(参考)正職員 合計 428 0 160,266 97,934 285,200 57,256 315,456
1人当たり 0 374 229 666 134 737

注1:単位は、千円から万円に変更。
注2:正職員428人のうち28人は再任用短時間勤務職員。
資料:石狩市作成資料(「令和4(2022)年度 予算委員会予算説明書」。くましろさん提供)より筆者作成。
出所:川村雅則「(シリーズ)自治体議員に聞く、なくそう!官製ワーキングプア(1)」より転載。

 

この表には、会計年度任用職員と正職員の賃金格差が示されています。市の予算委員会で出された資料になります。

1人当たりの箇所をご覧いただきたいのですが、会計年度任用職員は、報酬180万円に期末手当を足して210万円になります。210万円は頭打ちであるというところが本当に苦しい。ジェンダーの視点から考えてもおかしいと思います。

それに対して正職員は666万円で会計年度任用職員の3倍です。

先ほど来、処遇改善の必要性は「その個人の状況によって求めるものも異なる」と逃げられがちだとお伝えしましたが、重要なのはそこに勤める「個人」がどんな働き方を希望しているかよりも、その恒常的に存在する「職」に対し、住民サービス上、どのような労働時間と報酬が見合っているのか、という観点で現状を洗い出して、見直していかなければならないと考えています。

1年で4号俸昇給しても、「昇格」がないかぎり、1級の行政職給料表で上に移動していくだけで、20年勤めても、「180,225円」なんです。

正職員同様に昇格ができないのであれば、専門資格や特殊な経験を要する職に対しては「採用困難職」として独自の昇給制度を検討すべきではないでしょうか。

 

図表 図書館司書の任用状況

 

実例として、図書館司書をあげます。石狩市には、21名の図書館司書がおり、給与額がすでに上限に達している職員は8人います。9年で上限に達します。そして、その上限金額とは15万900円です。手取りで考えたらとても単身では生活していくことができません。

司書の求人をかけても募集がないのもうなずけます。司書という専門性と、これだけ長期に勤めている方の処遇の在り方をしっかり考えていかなければならないと思います。

 

4)その他の課題

先ほど川村先生は、SDGsや男女共同参画の観点から、この会計年度任用職員制度を見直すことを提起されていました。まさに持続可能な公共サービスの担い手の中心である職員の処遇は重要です。私も課題として、5点あげてみました。

 

(1)定員適正化計画の中に位置づける

一点目。正規職員の適正配置は、定員適正化計画を作らなければなりません。正規職員をどのように減らしてきたか、ということが、地方交付税の算定項目の中にあったりするのです。

しかし、正規職員をどれだけ減らしていけるかという問題は、つまるところ、熟練した会計年度任用職員がどの位いるのか、というバランスで成り立っている問題です。であるにもかかわらず、「定員適正化計画」には会計年度任用職員のことは一切書かれていないのが現状です。会計年度任用職員の処遇改善は、こうした市の定員適正化計画の中に含め取り組むべきだと思います。会計年度任用職員だけ、現状や課題、目標がどこにも示されていないのは問題です。

 

(2)アウトソーシングの実態把握と検証

二つ目。行政改革計画に沿って各自治体では、アウトソーシングを推進してきました。ちょっと余談となりますが、まちづくりの計画策定などを行う際に、市は市民ワークショップなどを行っています。ひと昔前では考えられなかったことですが、そのファシリテーターすら、民間のコンサルに委託するのです。職員は何をしているかというと横に椅子を並べてただ話を聴いている。市の現状課題を熱量をもって伝えられるのは職員です。なんのために公務員となってのかと思います。

話を戻して、アウトソーシングは、一定程度頭打ちになっているような印象をもっています。現在は自治体DXによる職員一人当たり業務負担の減にベクトルが向いています。

しかし、そもそもアウトソーシングによる費用対効果などの効果検証は一切されたことがありません。また外部委託費の総額についても、把握がされていません。今後は、会計年度と共に外部の公務民間の契約、指定管理者等にも踏み込んでいきたいと考えています。

 

(3)非正規公務員も含めた女性活躍の推進

三つ目。女性活躍推進法にもとづく事業主行動計画策定指針では、自治体任命権者に対し、女性非正規公務員を含む全女性労働者の計画となるよう、国からは考え方が示されています[5]。ですから、女性の非正規労働者の処遇改善推進策や正職員への転換支援などを盛り込むようにとも、示されています。

しかし、市の特定事業主行動計画には、全女性職員約55パーセントが非正規職員であるにもかかわらず、対策は計画に反映されていません。

 

(4)実効性ある制度改定

四つ目。令和4(2022)年4月より、人事院勧告を受けて、非正規職員もボーナスがカットされた自治体もあります。一方でカットさせなかった自治体もあります。石狩市では、夏のボーナス分だけカットとならず。冬はカットとなってしまいました。

あわせて、会計年度の育休取得要件の半年以上勤務がなくなり(条例改正)、また無給が有給(規則改正)になった、という進展もありました。

しかし一方で、制度は改善されたものの、正規職員の育休のように、任期付き職員の代替があるわけではなく、自分が休んでもその間に誰も代わりを雇ってはもらえない、つまり、育休を取得しづらい環境であることになんの対策もなされていないのが実態です。結果、産休・育休を取った非正規職員の穴埋めをするのが正職員になってしまい、休みの取得を言い出せない職場環境となっています。条例や規則の改正だけではなく、実行性が伴う制度改定までつなげていくことが必要です。

 

(5)賃金の支払い、人件費の確保

五つ目。全国的に、新型コロナ感染下で仕事が休みとされ、給与が支給されなかったという事態が相次いで報告されています。石狩市では果たしてそのようなことはなかったのか。職務義務免除で休暇の取得が必要ないことなど、正規職員との差別的な取り扱いはないかなどを定期的にチェックしていきたいと思います。

あわせて、外部委託先の休業にともない、人件費の補填はされているかどうかも定期的にチェックしていきたいと思います。

 

5)全国の皆さんと取り組んでいきたいこと

最後に、個々の自治体をこえて皆さんで取り組みたい今後の課題を、メモ程度ですが、5点ほどあげてみました。全道、全国の皆さんと一緒に考えながら取り組んで行けたらと思います。

 

①当事者を中心に据えた、仲間づくり。その窓口として匿名で相談できるLINE相談などをつくりたい。目前に迫る「3年公募」問題、石狩市は「5年公募」問題にどのように対応していくか。職員組合の動向と呼応しながら、議会からの問題提起をしていきたい。その問題提起で自治体間で議員が連携しながら行っていけないか。

②処遇改善していくべきエビデンスが必要。当事者の意向調査を、当局ではない専門家(研究者ら)に行っていただきたい。そこから、具体的な相談や交渉などに寄り添いながらサポートしていきたい。

③メンタルヘルスやサポート、救済制度などが正規職並みに進められるよう、事例研究したい。

④3年公募・5年公募させない運動や、会計年度の採用困難職の独自の昇給制度、正規職待遇の任期付き職員への移行などは、全国的に連帯することが必要。運動展開のための勉強の機会や、ネットワークを進めたい。

⑤行政サービスの在り方は、自治体DXも含めて研究課題。「人」を中心に据えた組立をしなければ、人が変われば追いつかなくなってしまいそう。働き方の多様化も見据えて、会計年度任用職員の今後を考えたい。

 

拙い話でしたが、ご静聴をありがとうございました。

 

 

[1] くましろさんの取り組みは、川村雅則「(シリーズ)自治体議員に聞く、なくそう!官製ワーキングプア(1)」にもまとめている。

[2] くましろちかこ「手記 非正規公務員として働いていたときのこと」『なくそう!官製ワーキングプア/あなたのマチの非正規公務員問題の解決 手引き 其の壱』(2018年4月発行)より。

[3] 「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」やQ&Aが総務省「会計年度任用職員制度等」ページに掲載されている。

[4]注釈3の 総務省「会計年度任用職員制度等」の「会計年度任用職員制度の適正な運用等について(通知)(2022年1月20日)を参照。

[5] 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」を参照。

 

 

 

 

Print Friendly, PDF & Email
>北海道労働情報NAVI

北海道労働情報NAVI

労働情報発信・交流を進めるプラットフォームづくりを始めました。

CTR IMG