地域労組は飛んでいく
私たち労働組合のオルガナイザーにとって、結成準備段階から育て上げた組合は、我が子のようにいとおしものだ。いざ、弾圧が始まると、体を張って組織を守る。その点でまさに「組」なのだ。
14年前、道央圏の介護施設で、組合結成を手掛けた。組合結成直後は職場が混乱するものの、やがて労使関係が安定、職場に組合が定着し、ここ数年は私の出番もなかった。
この社会福祉法人で今春、全国規模で介護事業を展開する、業界きっての実力者が新理事長に就いた。
最近この理事長が、なんと組合に向かって「解散せよ」と迫った。
その際、理事長は父親が元国会議員であったこと、さらには自分が厚生労働省の審議会委員であることを披露した。
御用組合は別として、普通、労働組合を快く思う経営者はあまりいない。しかし、経営トップが組合に対し堂々と「解散しろ」などと言ったりはしない。
この理事長の言動はあまりにも非常識だが、恐らく実力者である自分の前には、労働者がひれ伏すのが当然と思っているのだろう。世の中を舐めきった態度だ。
しかも「この話が漏れたら、地域労組の鈴木が飛んできて大変なことになる」とまで言っているのだから、発言の違法性を十分自覚しているのだ。
職場からのSOSで、私は現場へ飛んで行った。彼が最も恐れた展開だ。理事長の横暴さを目の当たりにしたことで、職場では一気に組合員が倍増した。
理事長には近々、落し前をつけてもらおう。※この後、T理事長は辞任に追い込まれた。
2014年10月3日 毎日新聞(北海道版)掲載 Re:北メールより
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