団結権は労働者救う「剣」
何か悪いことをした訳でもないのに、介護サービス会社のスタッフが、使用者から今後賃金を8万円減給すると通告された。
年収は現在の300万円台から、一気に200万円台まで落ちる。
この春進学した次女に、約100万円の学費がかかるという状況下で、明日からどうやって生活しろと言うのだろうか。労働者の生活を一体何だと思っているのか。
こういう事案を目の当たりにする度、反射的に怒りのスイッチがONになる。
使用者が労働者の同意なく賃金を不利益に変更することは許されず、法的にも無効だ。しかし黙っていれば、認めたと見なされる恐れがある。そうかと言って、たった一人で経営者に抵抗することは事実上不可能だ。
そこで登場するのが団結権だ。具体的には職場で仲間を集い、労働組合を結成する。今回のように緊急の場合は、地域の合同労組に個人加盟する方法がある。
私は彼女を地域労組に個人加盟させ、会社に対し団体交渉を申し入れた。
使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否することは、不当労働行為として禁止されており、たった一人の交渉課題であっても、使用者には団体交渉に応じる義務がある。
近々開催されるはずの団体交渉では、賃金カットの撤回を求めていくことは言うまでもない。団交で解決できなければ裁判に移行する可能性もあるが、その場合でも団交でのやりとりが重要な証拠となる。
団結権は、泣いている労働者を救い出す団結の「剣」だ。ブラック企業がはびこる時代にあって、その輝きは増す。
2014年4月18日 毎日新聞(北海道版)掲載 Re:北メールより
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