「オバチャン」は強い
過労死するほど労働させられたうえ、残業手当も満足に支払われない。
新たに労働組合を立ち上げることは、そういう職場に日本国憲法や労働基準法を持ち込むことを可能とする。
使用者が組合結成を妨害することは、不当労働行為として禁じられているが、多くの場合、様々な形で妨害を受けるのが常だ。
先日ある地方都市で組合を結成し、翌朝社長に結成を通知したところ「断りもなく結成した」と怒り出した。事前に相談したらどうだったのか問うと「当然、認めない」と言う。大抵、組合結成の直後はこのような険悪な場面から始まる。
私は経営者の怒りが収まるのを待ちつつ、一方では最悪の不当労働行為を想定し事態に備える。と言っても「今の時代、殺されることは無いから」と組合員に腹を括らせる。それでも夜も寝られないほど不安になった組合員が、社長にちらっと睨まれただけで脱落することも珍しくない。
ところが、どんな脅しにも決して揺るがないのが女性である。
私は女性が主体の介護施設などで、組合結成を数多く手掛けてきたが、「オバチャン」は本当に強い。当事者が腹さえ括れば、組合結成は必ず成功する。
その一方で情けないのはオジサンだ。
経営者が餌をばら撒くと、パクパク喰いつき、脅すと蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。「俺は男だ」と肩で風を切るような人ほどそうなる。
自分を強く見せたがる者ほど、実は弱い人間なのだ。
2014年2月28日 毎日新聞(北海道版)掲載 Re:北メールより
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