川村雅則「自治体議員になったつもりで非正規公務員問題を市長に質問してみました(思考実験)」

NPO法人官製ワーキングプア研究会が発行する『レポート』第44号(2023年12月号)に掲載予定の原稿です。なお、これからの校正で加筆修正を行うかもしれません。ご了承ください。

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【お詫び】札幌市会計年度任用職員の2022年度末の離職者数は、570人ではなく561人でした。お詫びして訂正します。詳細は下記をご覧ください。(2024年1月10日記)

■川村雅則「(お詫び)札幌市の会計年度任用職員の離職者数の訂正」『NAVI』2024年1月10日配信
https://roudou-navi.org/2024/01/10/20240110_kawamuramasanori/

 

自治体議員になったつもりで非正規公務員問題を市長に質問してみました(思考実験)

 

川村雅則(北海学園大学)

 

はじめに

公務非正規問題に取り組んでいると、地方議会のあり方に疑問を持つことが少なくありません。しかし、だからといって、議会不信をあおり、議員リストラを進めようとすることには賛成しかねます。むしろ、問題意識をもって奮闘されている議員と交流しながら、議会の問題を共有し、議会のあり方を一緒に考えていきたいと思います[1]

そこで本稿では、私がもしも議員になったとしたら、という仮定で、自らの調査結果[2]に基づき、市長への質問を作成してみました。

何を一体?と怪訝に思われるかもしれません。しかしながら、地域課題の調査や政策の立案など、議員に求められている仕事と研究者に求められている仕事は割と似ているのではないか、と感じています。また、議員の質問に置き換えることで、このテーマの論点や調査結果の活用方法などが、議員の皆さんによりイメージしてもらいやすくなるのでは、と期待して試行してみました。

もちろん、この間の私自身の取り組みや把握してきた事実などは、全く不十分です。そこはご海容ください。また、議会の仕組みや作法などへの理解に誤りがありましたら、この点もご容赦ください。思考実験ですが、議員活動に何か役立てば幸いです。

 

[1]そう考え、反貧困ネット北海道主催、官製ワーキングプア研究会共催で「地方議会のあり方とあわせて考える公務非正規問題」という学習会を11月27日(月)に開催しました。講師は、ともに非正規公務員としての就労経験をもつ2人の議員。学習会の成果はニュース次号で報告します。なお、反貧困ネット北海道では、2022年度にも公務非正規問題を考える連続学習会を開催し記録を配信しています。ぜひご参照を。

[2] 参考文献にあげた拙稿などをご参照ください。いずれも『北海道労働情報NAVI』(NAVI)に掲載しています。

 

 

 

○○年△△月××日 ◇◇会派 札幌市長への代表質問

 

〔議長:それでは、次の質問に移ります。○番、かわむらまさのりくーん〕

はい!

〔テクテクと登壇席へ。緊張を解くため深呼吸。一呼吸置いて、質問を開始〕

 

市長!

私たちの暮らしを支える、公共サービスの担い手の労働条件を整備する。そのことで、サービスの質の向上も図る。結果として、受益者である市民の幸福度を増進させ、さらには、札幌市を、働きがいのある人間らしい仕事でみちあふれたマチ(ディーセントワークシティ)としたい──ちょっと盛り込みすぎですが、以上のような立場から、市長に質問をさせていただきます。

 

 

1.会計年度任用職員に準備された制度は、施政方針と乖離していないか

市長が発表された施政方針を拝見しました。

「誰もが、住み慣れた地域で自立した生活を送り、社会との関わりの中で、生きがいを感じながら充実した毎日を過ごすことができる、そのような街をつくり上げていくことが求められている。」との問題意識や、「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」が「私が描く未来のさっぽろ」として披瀝されていました。

私、諸手を挙げて賛成です!〔議場ザワつく〕

明示はされていませんが、この方針の実現のためには、安定した雇用はもちろんのこと、働けば生活していけるだけの十分な賃金を得られることが不可欠かと思います。民間企業に対する支援でそれを実現することも大事ですが、自治体として、貢献できる部分は非常に大きい。市長もそう考え、上記のような施政方針を掲げたのではないかと行間から読み解きました。〔「おいおい」「深読みしすぎだろー」というヤジ〕

そのような認識に立った上で、札幌市には「鬼門」とされている「公契約条例」については今回の質問では割愛し、非正規公務員、とりわけ、2020年度から始まった会計年度任用職員制度のことを取り上げたいと思います。

 

○3年公募制、同一部3年ルールという仕組み[3]・仕打ち

およそ4千人もの会計年度任用職員が札幌市で働き、私たちの暮らしを支えてくださっています。

しかし、そのような彼らに容易されているのは、3年公募制、しかも、(例外こそいろいろ設けられているとはいえ)他の自治体ではみない、同じ部署で働くことができるのは原則3年までという同一部3年ルールという制度です。これらは、マンネリ化、モラルや士気の低下を防ぐことが目的で設けている、と説明されています。

市長! ずばり伺います。これ、先ほどの施政方針の内容とはずいぶんかけ離れていないでしょうか。これで「安心して暮らし」ていくことはできるでしょうか。答弁を求めたいと思います(質問①)。

参考までに申しますと、(1)民間では、有期雇用の濫用に対して無期転換制度が作られたことはご存じのことかと思います。(2)札幌市の職員に限定したものではありませんが、北海道内で働く会計年度任用職員624人の有効回答が得られたウェブアンケート調査でも、雇用不安を感じ、無期転換を求める回答が多かったです。(3)公募制は義務づけられているわけではありませんし、総務省も、地域の実情等に応じて適切に対応するように、と通知で示しています。以前に労働組合の方から講演をいただきましたが、根室市では公募制を採用していないそうですよ。

なお、(3)に関しては、「平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ」とも書いているではないか、公募制が禁止されているわけではないぞ、と答弁されることが予想されますが、ただ、これらの仕組み──仕組みというより、「仕打ち」と私は申し上げたい──が、施政方針とあまりに乖離していないかと思ったものですから、まずはこの点を質問させていただきます。

 

[3] 札幌市の会計年度任用職員制度については、川村(2022a)をご参照ください。

 

 

2.非正規職員の大量離職は放置したままか

続きまして、市長!

先日私は、「(市職員8000人調査)「働きがい」数値化へ 職場環境など施策検討」という『北海道新聞』の記事(朝刊2023年11月9日付)を読みました。

 

表1 市職員対象のアンケート項目と質問例

項目 質問例
理念・戦略の浸透 市役所の戦略や目標に納得しているか
仕事内容の充実 責任とやりがいを感じるか
組織風土の活性化 他部署と協力して仕事ができているか
施設環境の充実 快適に働くことができる環境か
制度待遇の充実 多様な働き方を選択できるか
上司の支援行動 上司は部下の意見に耳を傾けているか
職場の変革活動 新しい試みがなされているか

出所:タイトルを含め、『北海道新聞』朝刊2023年11月9日付より。

 

記事によれば、札幌市は、教職員や医療従事者らを除く約8千人の職員を対象にして、組織の風土や職場環境、業務への意欲など労働に関する全般的な事項について5段階で評価とあります。質問は、「上司からの支援の充実度」「職場環境」など、その数なんと約130問! 各部署や各年代が抱える問題点を洗い出し、職員が働きやすい職場環境の構築や管理職の新たな研修など各種施策を検討する、とあります。

市長! 私も、11月末までにまとめられるという調査の結果を大変楽しみにしているものであります。設定された質問の内容や分析の手法など、そもそもの調査の設計から非常に関心があります。担当職員の方には、ぜひ詳しくレクチャーをいただきたいと思います。できれば、その日程調整もしたいのですが、

 

〔議長:議員、議員、落ち着いてください。調査に対する議員の関心は分かりますが、そうした作業は後で行ってください。〕

 

あっ、大変申しわけありません。つい夢中になってしまいまして、、、

では話を戻しまして、ところで、こうした調査を実施した問題意識の一つには、離職者対策もあげられるようですね。

記事にも書かれているとおり、昨年度当初の全職員の1.57%に当たる226人が自己都合で退職。このうち30代以下が180人と8割を占め、過去20年で最多だったとあります。公共サービスの担い手が離職でころころ入れ替わればサービスの質にも影響を及ぼすと思いますから、ぜひ有効な離職者対策を講じていただきたい。

 

○「大量離職通知書」にみる、会計年度任用職員の大量離職

さて、こうした取り組みを評価しつつも、じつは私には強烈な違和感があるのです!〔議場ザワつく〕

今回の調査では、会計年度任用職員は調査の対象にはなっていませんね。

しかし、「責任とやりがいを感じるか」「快適に働くことができる環境か」「上司は部下の意見に耳を傾けているか」など、先の表にみられる質問は、会計年度任用職員にも問われて然るべき質問ではないでしょうか。むしろ、雇用安定や処遇の面で不利な状況にあるほか、非正規という立場からハラスメント被害を受けやすいとも指摘されている、会計年度任用職員にこそぜひ聞いて欲しい質問です。なぜ今回の調査の対象から外したのでしょうか。

ここに、札幌市の職員数をまとめたパネルを用意しました。

 

表2 札幌市の職員数

A B
一般行政 教育 警察 消防 普通会計 公営企業等会計 合計 会計年度任用職員
一般管理 福祉関係
職員数 3,531 3,898 7,429 10,168 0 1,838 19,435 3,473 22,908 4,172

注1:Aは、総務省「地方公共団体定員管理調査(基準日は2022年4月1日)」より。
注2:Bは、札幌市から提供された資料より。札幌市で任用した全ての会計年度任用職員のうち、2022年度末に在職予定の会計年度任用職員数(2023年1月時点の見込み数)。同一の会計年度任用職員が複数の職を兼務した場合には、1つの任用につき1人として計上。川村(2023d)より転載。
注3:ほかに特別職非常勤職員や臨時職員が存在するが割愛。

 

札幌市の会計年度任用職員の離職状況は、例えば、2022年度末に561人2023年3月1日から31日までの1か月間で570人と報告されています。これは、札幌市からの提供による労働施策総合推進法第27条に基づき、札幌市からハローワークに届けられた大量離職通知書に記された数値です。全員が「3年公募」で発生した離職というわけではなく、短期で離職している職員が予想外に多いことが市への聞き取り調査でも明らかになっています[4]

概算ですが、4千人に対して561人570人ですから、ずいぶんな割合です。川村(2023d)の表4には、市からの提供資料で、他の年度の離職者数も整理していますのでご覧ください。

市長に伺います!

彼ら会計年度任用職員のこうした離職状況は放置しておくのでしょうか。「地方公務員法第13条の平等取扱いの原則を考慮し、任用を希望する方々に均等な機会を与える」という立場からは、何も問題なし、ということでしょうか。

就業継続を希望された方が離職を余儀なくされているのはもちろんのこと、公募を待たずに短期で辞めていった方の離職も、単に「自らの意思で辞めたのだから」と片付けるのではなく、何らかのメッセージとして、しっかり受け止めるべきではないでしょうか。会計年度任用職員の離職に対する答弁を求めたいと思います(質問②)。

なお、(1)大量離職通知書に設けられた、離職者に対する「⑦再就職援助のための措置」の欄や「⑧再就職先の確保状況」の欄には、何も記載はありませんでした。

再就職支援は、「安心して暮らし」ていくためには必要不可欠だと考えますが、何も講じる意思はないのでしょうか。とくに、任用が継続されていた職員に対して自治体が再度の任用を行わないことに対しては、いわゆる総務省マニュアルにおいても、「事前に十分な説明を行う、他に応募可能な求人を紹介する等配慮をすることが望ましい」と書かれていますがいかがでしょうか[5]

(2)これほどの人数がなぜ離職をしているかは別途調査が必要ですが──と言っても、離職時の簡易な調査で把握は容易に行えると思いますし、何でしたら私がその仕事を請け負いたいぐらいですが──少なくとも、離職者の年齢や経験年数、あるいは、どのような職種で数多く離職が発生しているかは、市の情報を整理すれば、明らかにすることができます。そのようにして離職者対策に有効活用していくことが最低限必要ではないでしょうか!

あわせて、議場におられる報道機関の方々にお願いをしたいことがあります!〔報道機関にお願い? なんだなんだ? 議場ザワつく〕

今回のような大規模調査に対して、あたかも「全職員」を対象にした取り組みであるかのような表現は使わないでいただきたい。むしろ、とことん正規と非正規を分けた人事・労務がとられている[6]ことに対して疑問をもつ──今回の場合で言えば、非正規職員はなぜ調査の対象としないのかを問う視点を、しっかりともっていただきたいのであります!

 

[4] 大量離職通知書制度は安田(2023)を参照。札幌市の大量離職状況などは川村(2023d)や川村(2023e)などを参照。

[5] 該当部分を紹介しておきます。「なお、結果として複数回にわたって同一の者の任用が繰り返された後に、能力実証の結果や業務の見直しによる業務自体の廃止その他の合理的な理由により再度の任用を行わないこととする場合においては、事前に十分な説明を行う、他に応募可能な求人を紹介する等配慮をすることが望ましいです。この点については、公務員は適用除外とされているものの、労働基準法第14条第2項に基づく「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(厚生労働省)」において、契約を更新しない場合の予告や理由の明示等が定められていることにも留意ください。」

総務省「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について(平成30年10月18日総行公第135号・総行給第49号・総行女第17号・総行福第211号・総行安第48号)」https://www.soumu.go.jp/main_content/000579717.pdf

[6] この件では既視感がありました。総務省によるメンタルヘルス調査で非正規職員は対象外とされた問題です。詳しくは、公務非正規女性全国ネットワーク「要望書「メンタルヘルス調査対象に非正規公務員を加えてください」に対する総務省からのご回答が来ました。」2021年9月3日を参照。https://nrwwu.com/news/1006/

 

 

3.ジェンダーという視点が欠如してはいないか

次に、ジェンダーという視点から質問をしたいと思います[7]

なお、あらかじめ言えば、男性として生きてきた私自身、このテーマの理解や受け止めが十分にできているとは必ずしも言えないと思います。そのことを自覚しながら質問します。

日本は、とりわけ雇用の面で男女格差の大きな国です。ILO(国際労働機関)は、ディーセントワークの実現にあたり、ジェンダーの視点を組み込むことの重要性を強調しています。

 

表3 職種別にみた札幌市の会計年度任用職員の人数と、そのうちの女性の職員数・割合/単位:人、%

合計 一般事務職員 技術職員 医師 医療技術員 看護師等 保育士等 給食調理員 技能労務職員 教員・講師 図書館職員 その他
うち事務補助職員 うち看護師 うち保健師 うち保育所保育士 うち清掃作業員 うち義務教育 うち義務教育以外 うち生活相談員 うち放課後児童支援員
合計 3,842 731 730 5 27 538 266 132 64 139 95 61 581 5 673 537 135 87 734 0 0
うち女性 2,803 656 655 3 13 421 266 132 64 135 95 61 327 1 334 222 112 82 505 0 0
女性割合 73.0 89.7 89.7 60.0 48.1 78.3 100.0 100.0 100.0 97.1 100.0 100.0 56.3 20.0 49.6 41.3 83.0 94.3 68.8 0.0 0.0

出所:総務省「地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査(基準日は2020年4月1日)」より作成。

 

表は、総務省に対して札幌市が回答したそのデータから作成したものです。会計年度任用職員の4分の3を女性が占めます。職種別にみると、「看護師等」は100.0%が、「保育士等」は97.1%が女性で、人数が最も多い「事務補助職員」も89.7%が女性です。

市長に伺います。

このような女性への偏りをどう考えますか。偶然によるものでしょうか。女性は扶養されているのだから、処遇が低く不安定な雇用に就けても問題ない、という発想がベースにあるのではないでしょうか。

関連して、男女共同参画基本計画法等に基づき策定された札幌市の基本計画(「男女共同参画さっぽろプラン」)を読んでみました。

悲しいかな、予想通り、というべきでしょうか、会計年度任用職員のことについては、言及などされていません。基本目標2に掲げられた「男女の多様な働き方の推進」には、雇用等における男女共同参画を推進するための環境整備、女性の経済的自立の推進、女性の活躍に取り組む企業への支援があげられていますが、足下の問題には目をつぶったままでしょうか。

あわせて、札幌市は2018年にSDGs未来都市にも選定されています。SDGsの目標5はジェンダー平等の実現です。加えて言えば、目標8はディーセントワークの推進です。

市長に伺います。

「誰一人取り残さない」というSDGsの原則は理解されているでしょうか。SDGsバッジをつけているだけではダメ[8]で、日々の実践のなかで活かしていかなければ、実態がともなっていない「SDGsウオッシュ(見せかけのSDGs)」と指摘されても仕方がないのではないでしょうか。答弁を求めたいと思います(質問③)

 

と追求しておきながら、ここで一点、白状しなければならないことがあります。〔白状?なんだなんだ? 議場ザワつく〕

先ほど私が取り上げて川村(2022a)で言及したのは、現在のプランのひとつ前の「第4次男女共同参画さっぽろプラン」です。2023年度から2027年度までの基本計画である「第5次男女共同参画さっぽろプラン」[9]を読み込む作業は、本日の質問には間に合いませんでした。〔「そりゃだめだろー」「しっかりしろよー」とヤジ〕

ですから、もし、会計年度任用職員を含むいわゆる非正規雇用問題とジェンダーの関係が、じつは第5次プランではしっかり言及などされているとしたら、市長に全力でお詫びをしたいと思います。〔「おいおーい」「書かれていたらどうするんだよー」〕

 

〔議長:静粛に、静粛にしてください。議員も、こういうことはしっかりお調べになった上で質問にのぞむようにしてください。〕

 

大変申しわけありません。では、「札幌市の男女共同参画に議員の皆さんの関心が向かったことを確認して」〔かぎ括弧内は、心の中でのつぶやき〕最後のまとめに進みます。

 

[7] 川村(2022a)をベースに記載。

[8] SDGsウォッシュが問題なのであって、SDGs自体は学ぶべき/活用すべき考え方と理解し、勉強中です。「ビジネスと人権」も然りです。

[9] 札幌市「男女共同参画さっぽろプラン」

https://www.city.sapporo.jp/shimin/danjo/sankaku/keikaku/index.html

 

 

4.名指しで非難すること[10]

私自身、正直、自分が暮らすマチのことを名指して非難するのは気が重いことです。資料照会や聞き取りなどで対応してくださっている職員の方々に連絡をとる際にも、非常に憂鬱な気持ちになります。職員の皆さんには、真摯にご対応いただいていることに、この質問の場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございます。

一方、「非正規公務員問題」と総論的に論じているだけでは、あるいは、「A市の非正規公務員制度」と自治体名を伏せて論じることでは、市長は、改善には踏み出さないのではないか、と考え、自治体名をあげながら問題を提起しています。

いえ、何よりも、離職を余儀なくされた方々や、尊厳を傷つけられながら、あるいは、不安を感じながら日々働いている方々のこと[11]を思えば、やはり厳しく指摘せざるを得ないのであります。

私は、全く十分ではありませんが、会計年度任用職員制度が始まる以前から非正規公務員問題を調べ、情報を発信することで、問題解決に微力を尽くしてきたつもりです。札幌市で働く会計年度任用職員当事者からもお話を聞きました。

市長! 3年公募制や同一部3年ルールは本当に正当化されうるものでしょうか。労働力(働き手)の濫用と言わざるを得ないのではないでしょうか。

 

市長! ディーセントワークシティの実現に向けて舵を切りましょう。本日の質問では取り上げることができませんでしたが、公契約条例の制定にもあらためて挑戦しましょう。私は全面的に協力をしたい。先行する各自治体を訪問し、そこでの実践や経験を調べてきます[12]。政務活動費[13]はそういうためにあると考えます。

簡易なもので十分ですから、今回の大規模(8千人)調査と同様に、会計年度任用職員を対象にアンケート調査を行ってみませんか。私、喜んで作業チームに加わらせていただきます。

最後になりますが、私たち議員自身も、地域課題を調べ、行政への監視機能や政策立案機能の強化を図ること、さらには、様々な課題について議員相互間で討議を図っていくこと──すなわち、議会のあるべき姿がまとめられた「議会基本条例」を意識して精進していくことを誓い、私の質問を終えたいと思います。ご静聴をありがとうございました。〔拍手〕

 

[10] 過労死弁護団全国連絡会議編(2022)p103で、「ネーム・アンド・シェイム」という言葉を知りました。インターネットで調べてみると、不正や非違行為を行った個人や団体を名指して非難するというニュアンスで使われる言葉のようです。そのことで問題行為を是正させたり問題発生の抑止力につなげることが企図されているようです。考え方としてはとくに新奇なものではありませんが、こういう言葉があるんだと知りました。

[11] 当事者団体である、公務非正規女性全国ネットワーク(通称、はむねっと)や非正規公務員VOICESが貴重な発信をしています。ぜひご覧ください。

https://nrwwu.com/

https://f.2-d.jp/voices/

[12] 自治体の職員(会計年度任用職員を含む)を財産と位置づけ、公共サービスのあり方へも積極的な発信をする杉並区の岸本聡子氏に注目をしています。

[13] 札幌市議会「政務活動費」

https://www.city.sapporo.jp/gikai/html/seimukatsudouhi.html

〔本稿は、思考実験に基づくものです。〕

 

 

 

(参考文献)

川村雅則(2022a)「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」『官製WP研究会レポート』(以下、『レポート』)第37号(2022年2月号)

https://roudou-navi.org/2022/01/29/20220129_kawamuramasanori/

川村雅則(2022b)「公務非正規問題に関する北海道の取り組み」『レポート』第39号(2022年9月号)

https://roudou-navi.org/2022/09/08/20220908_kawamuramasanori/

川村雅則(2023a)「北海道及び道内市町村で働く624人の会計年度任用職員の声(2022年度 北海道・非正規公務員調査 中間報告)」『NAVI』2023年1月5日配信

https://roudou-navi.org/2023/01/05/20220105_kawamuramasanori/

川村雅則(2023b)「会計年度任用職員の雇用安定に向けた取り組みの強化を──北海道での調査・研究から」『レポート』第41号(2023年3月号)

https://roudou-navi.org/2023/02/24/20230301_kawamuramasanori/

川村雅則(2023c)「自治体議員との交流・連携強化を進めていきましょう」『レポート』第42号(2023年6月号)

https://roudou-navi.org/2023/06/02/20230601_kawamuramasanori/

川村雅則(2023d)「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第71巻第1号(2023年6月号)

https://roudou-navi.org/2023/08/09/20230630_kawamuramasanori/

川村雅則(2023e)「会計年度任用職員の3年公募の結果・離職の状況などを調べよう」『レポート』第43号(2023年8月号)

https://roudou-navi.org/2023/08/15/20230831_kawamuramasanori/

過労死弁護団全国連絡会議編(2022)『過労死──過重労働・ハラスメントによる人間破壊』旬報社

https://www.junposha.com/book/b616423.html

坂本勇治「根室市の会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」『NAVI』2022年11月26日配信

https://roudou-navi.org/2022/11/26/20221121_hanhinkonnethokkaido-2/

安田真幸「(緊急レポート:第5弾(最終))厚労省との7/6第3回懇談会報告 「会計年度任用職員全員が対象人数 ⇒ 公募の対象となる人数 ⇒ 「会計年度任用職員のうち、実際に職を失い再就職先が必要な人が対象」で最終確定しました!!」『NAVI』2023年8月25日配信

https://roudou-navi.org/2023/08/25/20230825_yasudamasaki/

 

 

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