川村雅則「なくそう!官製ワーキングプア集会、北海道で開催される(2016年)」

東京、大阪に次いで、「なくそう!官製ワーキングプア北海道集会」の第1回目が開催されたのは、6年前(2016年2月)になります。その後、2018年2月に第2回集会を開催し、2019年8月に第3回集会を開催するも、以後、コロナで中断して現在に至ります。/関係者の取り組みによって、官製ワーキングプアという言葉が広く知られるようになってきたものの、問題の深刻さに比べたらまだまだ不十分。ましてや問題の解決には至っていません。コロナ下ではありますが、北海道でも集会をあらためて開催し、問題の可視化と解決に向けた取り組みを強化したいと思います。/以下は、当時、第1回集会の開催をうけて、NPO法人官製ワーキングプア研究会が発行する『Report(レポート)』第17号(2016年4月号)に投稿した原稿と、集会の記録です。どうぞお読みください。

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『なくそう!官製ワーキングプア北海道集会の記録』2016年3月発行

 

 

2016年2月20日、北海学園大学で、「なくそう!官製ワーキングプア北海道集会」が開催された。集会参加者数はおよそ200人である。

集会は2部構成で、第1部「現場からの報告」では、国や自治体で働く臨時・非常勤職員の実態、自治体が発注する仕事(公共工事、委託事業、指定管理者)で働く人たちの実態がそれぞれ報告され、続く第2部「ディスカッション」では、第1部の報告をうけて、この官製ワーキングプア問題の問題性を掘り下げ、かつ、問題解決に向けた運動を展望した。第2部には、当研究会の代表である白石孝さん、理事である上林陽治さんに登壇いただき、示唆に富む様々な経験や研究成果で議論をけん引していただいた。

集会開催の成果の第一は、以下のとおり、運動や政策の出発点である現場からの訴え、言い換えれば、解決が求められている現状をみなで共有できたことである。

・何十年働いても昇給はなく、働く意欲は低下。パート労働法も労働契約法も適用除外とされ、法の狭間にいる私達を守ってくれる法律はない。(自治体非常勤職員)

・医療系で、しかも公務員となると、収入が多いと思われる方が多数でしょう。でも年収は200万円に届きません。夏・冬のボーナスはありません。住居手当は数年前に廃止。雪が多く降る地域にも関わらず、寒冷地手当もありません。(自治体非常勤職員)

・求職者の方々は、いつも丁寧に相談に乗ってくれる相談員がまさか非常勤職員とは思ってもいないのでは。プライドを持って仕事を続けています。でも3年という一定の期間後には公開公募に出されます。(ハローワーク非常勤職員)

・市の現業職員と何ら変わらない仕事をしている。でも市からの委託料が年々下がるなかで、先が見えない状況が何年も続いている。いくら頑張っても超えられない壁がある。それが委託料の引き下げ問題です。(委託清掃・家庭ごみ収集労働者)

・フルタイムで働いて月の手取額が15万円に届かない。雇用や生活に不安のある職場で働く職員が、子どもや若者たちの人生に光を与え、希望をもって生きていくことを説くなど、皮肉以外の何物でもない。(指定管理制度が導入された児童館で働く職員)

・働き始めて12年になるが、ずっと最低賃金。フルタイムで作業責任者という立場だが、ボーナスや諸手当はもちろんない。当初は有給休暇ももらえなかった。 今は取得できるものの、4月に会社が変わると勤続はゼロからになるので10月までは取得できない。(施設清掃労働者)

第二は、これまでの共同にさらに輪をかけた多くの団体──具体的には、反貧困ネット北海道/特定非営利活動法人 建設政策研究所/公益社団法人 北海道地方自治研究所/日本労働弁護団北海道ブロック/非正規労働者の権利実現全国会議・札幌集会実行委員会/連合北海道札幌地区連合会/全建総連北海道建設労働組合連合会/全建総連札幌建設労働組合/札幌地区労働組合総連合/自治労北海道臨時・非常勤等職員連絡会議/自治労北海道公共サービス民間労働組合協議会/NPO法人 労働相談・労働組合づくりセンター──で実行委員会が結成され、本集会が実現されたことである。

じつは、本集会の開催を構想した際、東京や大阪のような共同を実現できるだろうかという心配がないわけではなかった。だがそれは、全くの杞憂に過ぎなかった。札幌市の公契約運動で築かれた関係者の共同は強靱であり、かつ、より多くの人びとに待ち望まれているものでもあった。

さて、公契約条例・運動はわかりづらい、市民になかなか浸透していかない、という話を聞く。あるいは、公務員の世界にも(民間以上の)「非正規」問題が存在することがまだまだ知られていない、とも。それはしかしながら、当事者の働くリアルや思いを私たちがつかみきれていないことの反映にほかならない。運動に参加する一人として、そのことを自覚したい。

「札幌市で公契約条例ができるのをすごく楽しみにしていました。制定はもうダメなんでしょうか?」当事者から集会当日に投げかけられたこの問いを受けとめ、取り組みを進めていく。

 

記録の発行にあたって

なくそう!官製ワーキングプア北海道集会の「記録」を作成した。内容は、集会第1部の「現場からの報告」が中心で、国や自治体の臨時・非常勤職員の実態と公共民間労働者の実態のそれぞれに加えて、補助金事業として行われている学童保育現場からの報告と、札幌市に隣接する自治体(石狩市)の議員が取り組んだ非常勤職員問題が掲載されている。

「記録」はウェブサイトで公開しているので、ご活用いただきたい。

 

「記録」の内容

官製ワーキングプア問題総論 / 自治体で働く臨時・非常勤職員問題の総論と現場からの報告 / 帯広市の嘱託職員の任用実態 / 労働行政・ハローワークで働く非常勤職員の任用実態と労働組合の取り組み / 委託清掃(家庭ごみ収集)事業で働く労働者の実態 / 指定管理者制度が導入された職場からの実態報告 / 施設清掃に従事する労働者の実態 / 公契約条例で「生活できる賃金」の確保を目指す建設労働組合の取り組み / 放課後児童支援員(学童保育指導員)の雇用 / 石狩市非正規職員の処遇とその改善取り組み

 

写真:なくそう!官製ワーキングプア第1回北海道集会

 

 

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NPO法人官製ワーキングプア研究会

公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)

札幌市公契約条例の制定を求める会

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