川村雅則「学校で労働法・労働組合を学ぶ(アルバイトを始める前の心構え)」

大学生の生活で大きな比重を占めるようになったアルバイトの実態を調べて、『北海学園大学 学生アルバイト白書』に2011年からまとめてきました。

学生時代に働くことは何も悪いことではありません。仕事・働くことを通じた社会参加が皆さんを成長させてくれるでしょう。交友関係も広がるでしょうし、意識すれば、ちょっとした企業研究・業界研究にもなります。就活対策を兼ねて働いてみるのもよいのではないでしょうか。

とはいえ、気になることがあります。アルバイトでトラブルを経験するケースが少なくないのです。学生アルバイトが基幹労働力化する中で、そういう機会が増えているといってもよいでしょう。学生アルバイトの実態調査を私たちが始めた主たる理由の一つがそれです(学費や生活費を稼ぐために働かなければならないという大学生の経済状況をめぐる問題については割愛)。

というわけで、これからアルバイトを始める学生にも、もうすでにアルバイトをしている学生にも、こんなことを知って欲しいなと思ったことを教材としてまとめてみました。キーワードは、働く皆さんの主体性です。

労働法が随所に出てきますが、私たちは労働法の専門家ではありません。ですから、これは労働法の解説教材とはちょっと異なります(その手のお役立ち情報は、最近はわりと入手しやすく、下記の厚生労働省作成の教材も参考になります)。学生のアルバイト体験や彼らからのアルバイト相談等に基づき、アルバイトをする際の「心構え」のようなものや、「研究課題」などをこの教材にはまとめてみました。働くことについての知識や「力」が増すと思いますので、「研究課題」にはぜひ挑戦してみてください。学校の先生方にも、この教材を「労働教育」の一環として活用してもらえると嬉しく思います。

※この教材は、2015年に発行した『学生アルバイト白書〔心構え編〕』を更新したものです。新型コロナウイルスによる職場でのトラブルが発生する2020年より前のことを念頭においています。

 

厚生労働省「これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~」より。

 

 

労働条件は労使で決めるもの。アルバイトで働く皆さんにも日本国憲法や労働法はそのことを要請している。

 

働いたのにその分の給料が支払われない、勤務シフトに勝手に入れられる、高い時給(賃金)が支払われているわけでもないのに責任だけはやたらと重い、ミスに対するペナルティや新商品の販売ノルマを課される、などなど。

アルバイトで働き始めた後にこうしたトラブルに遭遇する学生が増えています。しかも、辞めるなら代わりのアルバイトを見つけてきなさい、辞めるなら違約金を払いなさい、と言われて、辞めるに辞められないといった相談を受けることもあります。

こうした相談事例の多くは、明らかに法律に違反しています。

さて、ここで問題です。こうした問題状況は誰が解決するのでしょうか。

そりゃー法律に違反しているのだから世間が許しておかないでしょ? そんな経営をしている会社は自然に淘汰されていくのでは? 専門の機関、それこそテレビでも放送されていた「ダンダリン」のような人たちが助けてくれるんじゃないの? などなど。

もちろん、これらの考えは間違いではありませんが、そうは問屋が卸しません。厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、これらの問題はあなたが──もう少し正確に言うと、あなたを雇った会社とあなた(働く人)たちで、つまり「労使」で解決していかなければならないのです。

もちろん、直ちに付け加えなければならないことは第一に、問題の解決主体があなたである、というのは、働く人の「自己責任」であるといった類の主張とは異なります。そして、今は意味がよく分からないと思いますが、ポイントは、あなたではなく、あなた「たち」(=職場で働くみんな)です。

第二に、あなたは無力ではありません。働く人は法律で守られており、様々な権利が保障されているのです。近年よく聞かれるワークルールがそれに該当します。これらは、皆さんの先輩たちが頑張って獲得してきた成果でもあります。

もっとも、法律は働く人たちを自動的に守ってくれるわけではありません。あなたの主体性が欠かせません。

一つ一つ勉強していきましょう。そうすれば、問題はきっと解決ができます。

 

◆こんなルールがあるよ

労働基準法
(労働条件の決定)
第二条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

労働契約法
(労働契約の原則)

第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 

◆調べてみよう

仕事の世界では、最近、どんなトラブルが発生しているでしょうか。また、問題解決に向けたどんな取り組みが関係者によって行われているでしょうか。新聞記事を中心に情報を集めてみましょう。

 

アルバイトの現状を知る上で、お互いに聞き取りをしてみましょう。どんなことを聞き取ればよいかは自由です。以下も参考にしてみてください。

  • あなたの仕事の内容を教えて!
    まずは、仕事の内容をざっくりと把握した上で、次に、勤務時間の流れにそって具体的な仕事(作業)の内容を聞いていきましょう。話を聞く側は、相手の仕事っぷりがアタマの中で十分にイメージできるまで質問をしてみましょう。
  • 働き方・勤務のことを教えて!
    例えば、勤務シフト=1週間の勤務日数や勤務時間はどうなっているか(何時から何時まで働いているのか)。残業はあるのかないのか(不払い残業を含む)。毎月/毎週の勤務シフトはいつ、どう決まるのか、などなどを聞いていきましょう。
  • 給料(賃金)のことを教えて!
    皆さんの関心事である給料。多くは時給による支払いだと思いますが、賃金の支給形態や具体的な金額を聞いてみましょう。売上げに応じて賃金が決まる仕事・職種もあります。それから、交通費の支給はどうなっているでしょうか。
    ところで、支給されるのではなく、逆に、「ひかれる(例えば、仕事上のミスで賃金がひかれる、遅刻に罰金が課されている、などの)」ことはないかどうかも、念のため確認してみましょう。
  • この仕事をみつけてから働き始めるまでのことを教えて!
    仕事をみつける活動(求職活動)から、働き始めるまでのことまでを聞いてみましょう。いつから仕事を始めたのかを尋ねながら、そもそも、どうやってこの仕事をみつけたのか(求人誌、友達ルートなど)を聞いてみましょう。そして、面接時/採用時には、どんな「契約」を結んだか、契約書はもらったかどうか、契約書に書かれた契約内容はちゃんと把握しているかどうか、などなどを聞いてみましょう。
  • 職場のことを教えて!
    職場のことを聞いてみましょう。例えば、コロナ以前で学生たちからよく聞かれたのは「店が忙しい」とか「人が足りない」ということだったけれども、職場の人員体制・配置状況などは今どうなっているでしょうか。職場の雰囲気はどうでしょうか。最大の労働条件とも言われる人間関係は? 働きやすさ/にくさとその背景などを聞いてみましょう。
  • 仕事の楽しさや仕事で得たもの、あるいは、不満や困っていることなど教えて!
    ここまできたらだいぶ聞き取っているでしょうけれども、さらに話をあれこれと展開していきましょう。
    仕事、働くことを通じて得られるものは少なくないでしょう。何を得ましたか。その逆に、働いていて、つらいことや困っていること、不満もあるかもしれません。それらも聞いていきましょう。

 

 

(参考資料)厚生労働省「知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~」

 

 

働き始めるときは、「これから私は契約を結んで働くのだ」という認識が必要です。

 

 

ケータイ・スマホの契約を電話会社と結ぶ際には、月々の通話時間や料金をどうするか、ちゃんと自分で考えると思います。電話会社任せにして内容を確認しない人はいませんよね。

それと同じように、自分はどこ(どこの店舗・事業所)で働くのか、どんな条件(例えば、勤務日数や時間、賃金)で働くのか、いつからいつまでの期間を働くのか、などなどについて、アルバイト先に任せっぱなしで(ちゃんと確認もせずに)働き始めるのは、本来ありえないことです。

皆さんもおそらくは、求人情報誌や面接などで、概略は把握した上で働き始めているとは思いますが、実際には次のようなトラブルが少なくありません。

  • 週2、3回の勤務のつもりだったのに5回も6回もシフトに入れられる!
  • 昇給があると聞いたのに1年以上勤めているのに昇給がない!
  • 時給900円と求人誌に書かれていたのに研修中だからと861円!
  • 自宅に近い場所だからこの仕事を選んだのに人手が足りないからと遠い店舗に派遣されている!

いずれも、どういう契約を結んだのか、契約書には一体どう書かれているかのあらためてのチェックが必要です。

働く際には、「労使」で「契約」を結んで働き始めるという意識をもって、契約の内容をちゃんと確認しましょう。

 

◆こんなルールがあるよ

労働基準法
(労働条件の明示)

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働契約法
(労働契約の内容の理解の促進)
第四条 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。

2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

◆調べてみよう

雇用(労働)契約をめぐるトラブルでありがちなのはどんなことでしょうか。契約内容を自分の「雇用(労働)契約書」で確認しながら調べてみましょう。ちなみに、契約書が手元にないというのは本来はありえないことなのだけれども、万が一、ない(!)という場合には、会社からあらためて提供してもらいましょう。

なお、厚生労働省のウェブサイト(「主要様式ダウンロードコーナー」)には、雇用契約書*のひな形が掲載されています。確認してみましょう。

*正確には、労働条件通知書。雇用契約書との違いはここでは省略。

 

契約は大事。但し、その契約内容は労働法で定められた以上の水準でなければなりません。働く(ときの)ルールは大事です。

 

労使間で結ぶ契約はとても大事です。

但し、その契約内容は労働法で定められた以上の水準でなければなりません。労働法に反した内容の契約は無効です。どんな契約でも有効になるわけではありません。

ということは、労働法を知らなければならない、という理屈になりますね。知らなければ、今、自分がじつは違法な契約・状況下で働いているのかどうかの判断がつかないことになるわけですから。過去にも、労働法で定められた割増が基礎賃金の25%以上であることを知らずに働いていた学生(大学1年生)が、深夜時間帯に100円が時給にプラスで支給されていただけで喜んでいました。

基本的な労働法はちゃんと知っておく必要があります。

大学生になって自動車学校に通い始めた人も多いのではないでしょうか。

クルマを運転するには、道路交通法など関係諸法を学んで、試験に合格して、免許を取得する必要がありますよね。必要最低限のことを学んだり身につけずに公道を走るのは危険です(というか犯罪です)。

公道を走るのとは次元が違うと思われるかもしれませんが、ルールを知る、守るという必要性は一緒です。本来は、労使の双方(とくに使用者の側)が、ルールをきちんと学んだ上で、働かせる/働く必要があります。

考えてみたら、アルバイト時代を含めると40年、50年もの長きにわたって働く可能性が高いのに、そのルールを知らないなんておかしなことだと思いませんか。

しかも、雇われて働く場合には、会社に対して、働く側は圧倒的に不利な状況にあります。そのために皆さんたちを守るルール(労働法)がせっかく設けられているのに、知らなければ宝の持ち腐れです。

とはいえ、各種の労働法の条文の一字一句を暗記しておく必要はありません。仕事の世界にも当然のことながらルールがあるのだ(社長・店長がルールではないのだ)という認識をしっかり持って、よくあるトラブルのQ&Aをある程度アタマに入れておけばまずは十分だと思います。あとは、必要に応じて、調べる癖を身につけましょう。

働く側の立場の圧倒的な不利を是正するために、働く人たちの努力でルールが築かれてきたことを忘れずに。

なお、余談ですが、「ミスをしたら弁償します」、「遅刻をしたら罰金を払います」、「○○年間は辞めません(辞めるときは違約金を払います)」などといった、あやしげな「念書」、「誓約書」を契約時に書かされたというケースもありました。

多くは無効にはなるものの、書けば面倒なことになるのも事実。おかしな書類にはサインをしないこと。

 

◆調べてみよう

働く人が直面する主なトラブルをすでに調べ済みかと思いますが、そうしたトラブルに対応する労働法・条文を調べてみましょう(後述の「こんな場合はどうしましょう?」も参照)。

 

 

各種の労働法はどのような理由(立法根拠)で作られてきたでしょうか。最近では、働き方改革と称した法制度の整備が行われました。皆さんもインターネットニュースなどで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。もっとも、その内容──そもそもどういう理由で、どの法制度が、どう変わろうとしているのか/新しく制定されたのか、までは理解をされていないのではないでしょうか。働き方改革には少なからぬ論点があり、実際、審議過程でも論争がありました。調べてみましょう。

 

 

就業規則、それは職場のルールブックです。アルバイト先の就業規則を確認してみましょう。

大きめの課題──と言っても、実現できなければおかしな課題──に挑戦してみましょう。

「雇用契約書」とあわせて、職場には、「職場のルールブック」といえる「就業規則」というものがあります。一定の条件を満たす職場では、その作成と労働基準監督署への届け出が使用者に義務づけられています。

労働基準法
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

 

実際の就業規則については、厚生労働省が作成しているモデルを参考にしてみましょう。

いかがでしょうか。

初めて目にする言葉もあるのではないでしょうか。

さて、ここでの課題は、これらの内容を暗記することではありません。

就業規則をアルバイト先で実際に見てみる(読んでみる)ことが課題です。

誤解しないで欲しいのは、就業規則は、労働者に周知させる義務が使用者にはあります。ですから、就業規則は見ることができて当たり前なのです。「実現できなければおかしな課題」というのはそういう意味です。

 

労働基準法
(法令等の周知義務)
第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、〔略〕を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

 

アレ? このことはウチの職場ではどうなっているんだっけ? といった具合に、働いていて疑問に思うこと、職場のルールを確認したくなる場面は、社会人として長く働いていたら往々にしてあると思います(アルバイトで働いている今現在でもすでにあるのではないでしょうか)。

その練習として、就業規則を見る(読む)ことをアルバイト時代に経験しておきましょう。

 

さらにもう一つ課題をあげるならば、皆さんたち学生アルバイトの年次有給休暇の規定は、就業規則ではどうなっているかを調べてみましょう。

ちなみに年次有給休暇とは、6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に与えられる有給の休暇です(労働基準法第39条)。付与日数こそ少なくなりますが、勤務日数・時間の少ないアルバイトにもそれは与えられます。

有給休暇制度そのものを知らないという場合には、まずこの制度を調べることから始めてみましょう。

その上で、自分の職場ではどのような規定になっているかを調べてみましょう。

 

(参考資料・再掲)厚生労働省「これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~」より。

 

 

こんな場合はどうしましょう?

 

冒頭に書いたとおり、この教材は労働法の詳細を説明するものではありません。

以下に、よくある相談事例を示しておきますので、対応する法(条文)も調べながら、問題をどう解決したらよいか考えてみましょう(コロナ禍のアルバイト経験はこちらを参照)。

但し、状況設定はあまり細かく行っていませんので、自分の体験や友達の体験などをまず「発掘」して、そこから解決の道筋を具体的に考えてみてください。

(1)働いたのに給料が支払われない!

食堂でご飯を食べてお金を払わずに店を出る人はいないでしょう。お金を払わずに書店で本を持ち帰る人もいないでしょう。それと同じように、働いたのに(残業や深夜労働に対する割増賃金もここには含みます)給料が支払われないのは本来あり得ないはずなのですが、この相談は結構多いです。さて、どうしましょう。

(2)希望も聞かれずに勤務を増やされたり、逆に、減らされたり

人手が少ないからと当初の契約以上に勤務シフトに入れられたり、逆に、客がいない暇なときには、休憩をいつも以上にとらされたり早くにあがらされるといった相談があります。どちらも人件費削減を追求した結果といえるでしょうが、さてこの問題にはどう対応しましょうか。

(3)仕事を辞めさせてもらえない

社会人の労働相談で多い一つは、解雇・雇い止めですが、学生からの相談で意外に多いのは、逆に、辞めさせてもらえない、というケースです。例えば、「今辞められると困る。辞めたいなら代わりを見つけてくるように」、「キミの教育・訓練にいくらお金がかかっていると思うんだ。費用を回収するまで辞めさせない。それでも辞めたいと言うなら損害賠償を請求する」などなど。さてどうしましょうか。

(4)仕事をミスしたら支払いを命じられた

これも一時よく聞かれた相談です。例えば、レジの計算があわなかったり飲料缶など商品を破損させて弁償させられる(コンビニ)、食器を割ったり注文を間違ったり料理を作り損ねたら弁償させられる(飲食店)、などなど。これらは、働く側のミスだからと弁償しなければならないのでしょうか。これは少し丁寧な回答を必要とする相談事例です。調べてみましょう。

(5)ノルマを達成できなければ自腹で買わなきゃいけないのか

これもまたよく聞く話です。コンビニを例にあげると、クリスマスケーキ、年賀状、恵方巻き、おでん、鰻重(鰻弁当?)、などなど。これらの商品販売にノルマが課され、達成しなければ自腹で購入。そんなのはおかしいと思うかもしれませんが、その場にいたら実際には「空気」を読まなきゃならぬ世知辛さ。さてどうしたらよいでしょうか。これも具体例をまず「発掘」するところから始めてみましょう。

 

以上、幾つかの相談事例を書いてみました。

ところで、こうした作業をしながら皆さんに考えていただきたいのは、時々巷で聞かれるように、働く人が権利を主張するから職場はおかしくなったのでしょうか。それとも逆に、権利を主張しないからおかしくなったのでしょうか。

皆さんの中にはもしかしたら、こうした問題へのこだわりにためらいや疑問をもつ方もおられるかもしれません。そんなのこだわったってしゃーないよ、と。

でもそれはどんな結果をもたらすことになるでしょうか。日本の職場の現状も調べながら、考えてみてください。

 

 

なんだかオカシイと思ったらそのままにしない。即断即決も即答もしない。自分で調べてみたり、誰かに相談するクセを身につけましょう。

 

素直で従順で知識もないだろうからと、どうも、学生は安価で使い勝手のよい労働力として扱われているのではないか、と思うことが少なくありません(そんな会社ばかりではもちろんないでしょうけれども)。

働いている皆さんもじつは、あれ?なんかオカシイぞ、これって法律違反では? となんとなく気づいているのではないでしょうか。

そういうときは、あいまいなままに状況を放置しないこと。インターネットでも簡単に情報収集ができる時代なのですから。

それから、労働条件の変更などに関わる大事なことは即断即決も即答もしないこと。ちょっと考えさせてください、と返事をして、帰宅後にでもちゃんと調べたり誰かに相談をしてから回答すること。

その際に大事なのは、誰に相談するか、ということ。

パッと思いつくのは、親兄弟とか学校の先生です。ただ、相談はしやすいけれども、的確な助言を受けられるかどうかは定かではありません(場合によっては、「我慢しなさい」なんて逆の助言をされちゃうおそれもあるかもしれませんね)。

ここは専門的な機関である労働基準監督署や労働局に相談をしてみましょうか。あるいは、法のプロである弁護士も最近は、無料の相談活動をされています。ちょっと敷居が高いかもしれませんが、連絡方法ぐらいは調べておきましょうか。

他にはどんな相談先があるでしょうか。

ここでご紹介したいのが(というか、じつは真っ先に紹介すべきなのが)、あなたの住むマチで、日夜労働者から数多くの労働相談を受けてその問題解決に取り組んでいる「ロードークミアイ(労働組合)」という組織です。皆さんも、中学校や高校で習いましたよね。

この労働組合という組織を、仕事・働くことに関する相談先として頭の片隅に(というか、ど真ん中に)入れておいてください。

 

◆調べてみよう

働いていて何かトラブルや困ったことに直面したらどこに相談をすればよいでしょうか。相談先や相談の方法をリアルに調べておきましょう。

先にご紹介した労働組合は、授業・教科書で習ってはいるでしょうけれども、学生の皆さんにはピンとこないかもしれませんね。このサイトには、労働組合への相談事例(記事)が数多く掲載されています。それらを読んでイメージをつかんでみましょう。

よしね室長の労働相談!最前線① 量販店によるテナント労働者の雇用破壊/コロナ禍を理由とした即日解雇とたたかう

鈴木一「仕事で困ったときには団結剣がある──学生・若者たちへのメッセージ」

 

 

 

資料はきちんと保管しておくこと。とくにトラブルにあったときにそれらは役に立ちます。

労働相談をする際に大事になるのが、各種の資料。

例えば、働き始めるときに結ぶ「雇用(労働)契約書」。職場のルールブックである「就業規則」。毎月の給与や労働時間などが記載された「給与明細書」、それから、あなたが仕事を始めるきっかけになった「求人情報誌」などなど。

冒頭に述べたとおり、労働条件は労使で決定していくのですから、「働く」に関連したこれらの資料はとても大事。とりわけトラブルにあった際にはこれらが「命綱」となります。例えば、先にもあげたこんなケース。

時給900円だと求人情報誌で確認して仕事を始めたものの、いざ給料をもらう段になって、研修中だからと時給861円で計算されていた。あれ?と思って店長に聞いてみたら、そこで(はじめて)渡された契約書には、「研修期間あり。時給861円」と記載されていた──こうした場合、最初にみた求人情報誌が役立つのですが、捨てちゃった(!)ということが少なくないと思います(もちろんこのケースでは、そもそも、面接のときに契約の内容をちゃんと確認する必要があるのと、契約書を契約締結時にもらっておく必要もあるのですが)。

いずれにせよ、資料は大事です。

ですから資料は捨てずにきちんと保管しておくこと。

言うまでもなくそれは、将来就職したときも同様です。

 

働いていて困ったときやトラブルに遭遇したときには、一歩を踏み出すことが大事。学んで力を身につける、みんなで行動する。そのために労働組合があります。

 

 

色々と脱線をしながら、アルバイトを始めるにあたりこんなことを知っておいて欲しいという「心構え」や、知識・力を身につけるための「研究課題」をあれこれと提示してきました。

もちろん、困りごとやトラブルに遭遇した状況をイメージすること自体が難しいでしょうから、実際には働きながら、そしてときにはトラブルもリアルに経験しながら、学んでいくことになるのではないかと思います。しかも、労働法上の正解が分かったとしても、店長や社員さんにそれを口にするのは簡単なことではないでしょうから、紆余曲折が予想されます。

そもそも、いざ一歩を踏み出すのはなかなか難しいことです。

学んで力を身につけて、一人ではなくみんなで、問題解決に向けて行動することをおすすめします。それこそ、皆さんからよく聞かれる、コミュニケーション能力を身につける絶好の機会にもなるのではないでしょうか(真面目な話、そう思いませんか?)。

困ったときの相談先として労働組合がある、ということを先ほどご紹介しました。

職場に労働組合がなくても、皆さんの住んでいるマチには、働いている会社や雇用形態に関係なく、労働相談にのってくださる労働組合があります。

私自身も、学生や卒業生から寄せられる難しい労働相談に助言をいただくこともあるのです。

皆さんのアタマの中ではまだ、「ロードークミアイ?」かもしれませんが、じつは、そんなに遠い存在ではないのだということをまずは知っていただきたいと思います(もっと言えば、誰でも労働組合を作ることもできるのですが、それはまた別の機会に)。

 

最後に繰り返しになりますが、労働条件は労使で決めるのであって、あなたを抜きに決めることは本来ありえないのです。

あなたの主体性、あなたの参加が欠かせません。

その点をお忘れなく。

 

◆調べてみよう

最後の課題です。

労働組合のことを調べてみましょう。それから、あなたの住むマチにはどんな労働組合があるかも調べてみましょう。就職して何か困ったことがあったときの助けになると思います。

 

 

 

 

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