伊藤誠一「10年目を迎える『求める会』の取り組み」

「公契約条例」の制定を目指して札幌市で活動を続ける団体(「札幌市公契約条例の制定を求める会」)の代表である伊藤誠一氏・弁護士に寄稿いただきました。お読みください。

(参考)日弁連「公契約法・公契約条例の制定を!」2017年2月発行

 

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札幌市公契約条例の制定を求める会(以下「求める会」、また特に断らない限り「条例」は公契約条例を指す)は、2012年2月札幌市議会での条例制定を求めて発足した、市民の活動組織(構成は別掲のとおり)である。

「公契約」とは耳慣れない言葉である。

札幌市をはじめとする地方自治体などの行政組織が、その存立目的を実現するためには、自らの建物、機器、人的資源をもってすると共に、行政組織の外の法主体との契約によって、物品を購入したり、サービスの提供を受け、また、建築・製造などの業務を委託し、請け負わせることを通じて公務を遂行することが求められている。

この行政組織が結ぶ契約を指して「公」「契約」という。

学童保育などの委託業務、道路建設工事などの請負業務をすぐ思い浮かべることができる 。

ところで、地方自治体がする契約についてみると、公正性を保ち効率性を得る観点から、競争入札などによることが法定されているところ(地方自治法234条)、一方、公契約の締結-履行が生み出し、創出する一つの経済関係(市場ともいえる)の下で、行政組織の外の多くの人が生活を営んでいる事実がある。

公契約は、一方、行政側からは税収入による財政負担を適正にしつつ、行政目的を達成させるに十分な結果を出さなければならないという効率性が求められ、他方、契約の他方当事者の側からは契約の履行の結果が負の結果をもたらしたり、「市場」で働く者を疲弊させる事態を招くことは避けねばならぬ、という一種のディレンマを内蔵していることが分かる。

公契約によって札幌市民に対し、行政の内容、公共サービスを提供するについて、そのプロセスなり到達結果において、安価であるから市の財政負担は大きくないが、低質であったり、契約の相手方側が無理を強いられているとしたら、市民自治の観点から公契約のあり方が問われて然るべきであるし、契約の担い手-受託業務一線での従事者、請負業務の具体的な従事者に契約による経済効果が十分伝わらず、契約履行過程に参加したために喘ぐ結果しかもたらされないとすれば、市政執行それ自体に問題がある、ということになろう。後者については入札制度の、歪んだといってよいであろう低落札競争が激化して、公契約の領域で専属的に働いているのに食べていけない、という或る種のワーキングプアが、社会的に問題になったことは周知のことである。

公契約条例は、札幌市が一方当事者になる公契約において、その内容が市民による市政執行の名にふさわしいものになるよう民主的に担保すべく契約の要素をしっかりと条例で定めることを目的とする。

「求める会」は、上田文雄前札幌市長が、公約を実現すべき任期終盤で市議会に提案した条例案について、これが成立するよう市民の側からサポートしようと立ち上がった活動体である(市議会で条例案は一票差で否決された)。

「求める会」は、発足以降およそ10年間にわたって活動を続けているが、上田市政を基本的なところで承継した、と自他ともに認める現秋元市長のもとで、どうしてもこの条例を成立させたい、と広く各地の取り組みに学び、公契約条例制定の意義についての学習を重ね、年に1~2度の市民集会を開いて今日まで活動してきた。市議会各会派との懇談協議、関係業者との懇談、札幌市契約部局との学習も深めてきている。

秋元市長の2期目の折り返し時点に入るこの時期に、多くの市民の共感を得られるような活動広げたい、と月1回の定例会議を重ねて取り組んでいる。

(2021.10 文責 伊藤)

 

 

「求める会」の構成団体

反貧困ネット北海道/特定非営利活動法人建設政策研究所/日本労働弁護団北海道ブロック/非正規労働者の権利実現全国会議・札幌集会実行委員会/連合北海道札幌地区連合会/全建総連北海道建設労働組合連合会/全建総連札幌建設労働組合/札幌地区労働組合総連合

 

 

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