安田真幸「非正規公務員に無期転換を!均等待遇を!労働基本権を!」

旬報社から発行されている『労働法律旬報』第1986号(2021年6月25日号、特集:会計年度任用職員制度による非常勤職員の適法化問題(下))に掲載された、安田真幸氏(連帯労働者組合・杉並執行委員)による「非正規公務員に無期転換を!均等待遇を!労働基本権を!」です。非正規公務員の現状をとらえ、今後を考える上で必読です。お読みください。

 

 

目次

はじめに

 

私の所属する連帯労働者組合・杉並は、一九八九年に杉並区で働く常勤・非常勤労働者と地域で働く仲間とともに結成した合同労組である。私たちは主要な課題として、①自治体臨時・非常勤労働者の「雇用安定」と「均等待遇実現」、②公務員国籍条項の撤廃、③争議団をはじめとした民間労働者の闘いに連帯する、を掲げ、労働基本権を行使して闘いを進めてきた。臨時・非常勤課題を第一に掲げたのは、品川区臨時職員:佐久間さん解雇撤回闘争[1]、関西三臨職(兵庫県:北田さん[2]、国鉄:和田さん[3]、大阪大学:矢崎さん[4])闘争から学び、杉並区での「六年雇用年限[5]」による非常勤使い捨てに対抗する闘いを創りだそうと考えたからである。

二〇〇〇年代に入り、自治労の有志が「自主セミナー」を東京・大阪・京都・福岡・高松など、全国の回り持ちで開催。私たち独立系労組も積極的に参加し、自治体臨時・非常勤の全国的な交流が進んだ。二〇〇八年には、リーマンショックにより顕在化した非正規労働者問題への取組みが大きく前進。この流れのなか、二〇〇九年に東京で「なくそう!官製ワーキングプア集会」(以下「なくそう!集会」)が自治労と自治労連の有志組合、公務公共一般労組、独立系労組が一堂に会して開催された。ナショナルセンターの枠組みを超えた集まりとして、以降も年一回の集会を積み重ねてきている。

二〇一一年には「NPO法人官製ワーキングプア研究会」(以下、「研究会」)が発足。

二〇一三年に大阪、二〇一六年には札幌で、それぞれ「なくそう!官製ワーキングプア集会」が開催され、臨時・非常勤労働者の運動が大きく広がった。

この寄稿は、「なくそう!集会」(東京)や「研究会」の一員としての活動も含め、私個人の見解にもとづくものであることを初めにお断りさせていただきたい。

 

二〇一七年地公法改定をめぐる評価と取組み

1 法改定をめぐる評価と取組み

総務省は法改定の趣旨を「任用の適正化と期末手当支給などの処遇改善」と説明するが、私たちは期末手当支給は大きな前進としつつも、①「雇用のブツ切り」によるいっそうの不安定化、②賃金の抑え込みと休暇水準の国並みへの引き下げ、③労働基本権剥奪、と捉えた。

二〇一七年一月の「研究会」講座開催から始まり、東京の「なくそう!集会」実行委が三月に総務省申し入れ、四月には院内集会→衆・参総務委員会の議員要請→傍聴、七月には厚労省との意見交換会、と取組みを進めた。改定地公法成立後の五月には独立系四労組(連帯・杉並、ユニオンらくだ、連帯・板橋区パート、あぱけん神戸)のILO申し立て[6]が続く。

以下、法改定後の闘いについて、雇用の問題を中心に述べていきたい。

 

2 法改定の最大の問題点―「再度の任用論」と「公募原則」、「職の概念の変更」

⑴「再度の任用論」=「新たな職に改めて任用」⇒「更新」を認めない!

総務省は非常勤の職務内容を「毎年度ごとの予算により、新たに設置される職」であるとして「任期一年以内」を法定した。雇用が一年を超えて継続している場合も、「更新」ではなく「新たな職に改めて任用」、と説明する。この解釈は二〇〇九年の総務省「地方公務員の短時間勤務の在り方に関する研究会報告書」を後ろ盾に、二〇〇九年と二〇一四年の二次にわたる総務省通知で打ち出した「新解釈」である。

「任期一年」の法定化により、東京都港区では三年、埼玉県越谷市では二年と、組合の先進的な取組みにより獲得してきた雇用期間が切り縮められた。「恒常的な業務に期限を付して雇用することはおかしい!」として、労基法一四条のもと、より長期の雇用を確保してきた港区職労、越谷市職労の貴重な成果が法改定によって押しつぶされたのだ。これだけではなく、「再度の任用論」により、「毎年の公募原則」と「条件付採用期間」が付いて回り、「毎年の雇止め」を解釈原理とする法改定となっている。

 

⑵「公募原則」と「公募ナシの再度任用の上限設定」

採用時の「公募原則」は一般的には説得力を持つかもしれない。しかし、継続して働いてきた場合でも、毎年「新たな採用」だからと「公募」により競わされ、ふるい落とされる。きわめて非人道的な制度設計となっている。先行する国の「期間業務職員」の「三年公募制」に対して、国公労連が「パワハラ公募」として、当事者の手記を漫画も使ったパンフレットにしている。

現実的には、「会計年度任用職員」(以下「会計年度職員」)を多く抱える自治体が、毎年公募にかけて選考することは膨大な事務量となることを意味する。募集をかけ、書類選考を経て面接を行ない、合否を判定する。会計年度職員のモデルとなった国の「期間業務職員」制度では、この膨大な事務量を考慮してか「三年公募制」を採用している。つまり一年雇用を勤務評価にもとづき二回更新し、三年目から四年目になる時に公募でふるいにかけるやり方をとっている。

総務省は、国のこの「三年公募制」を自治体が採用するよう陰に陽に働きかけた。この「三年公募制」導入阻止が私たちの最大の獲得目標となった。それまで私たちが「雇用年限」として廃止を求めてきたものとほぼ同一のものだからである。「三年雇用年限」は、一九八〇年代の「大阪大学矢崎闘争」のなかで共有され、公務の臨時・非常勤闘争での大きな課題となっていた。東京二三区では、先駆けて導入された杉並区の「(六年)雇用年限」が、私たち連帯・杉並の闘いも力及ばず、二三区の過半に導入された。東京都でも、二〇〇九年に「五年雇用年限」が導入され、このことがきっかけで公共一般消費生活ユニオンが結成される。以降も、この「雇用年限の廃止!」が私たちの最大の課題としてあり続けたのである。

⑶職の概念の変更

私の考える戦後公務員法制の意義は、以下の三つの転換にあると考えている。①「天皇大権による任免と忠実無定量の勤務」から「労組法・労基法適用の労働基本権を有する労働者」へ、②「吏員・雇員・傭人の差別的身分制度」から「平等取扱原則」へ[7]、③「人に職をつける」から「職に人をつける」へ、である。ここでは③に絞って述べたい。

 


(出典)総務省「会計年度任用職員制度の導入等にむけた事務処理マニュアル(第2 版)」9頁

 

公務員法では「恒常的/臨時的」と「常勤(フルタイム)/非常勤(パートタイム)」を座標軸として「職の性格」を区分してきた。「恒常的」職には無期の雇用、「臨時的」職には一年以内の雇用が原則である。この意味において、公務員法制は有期雇用について「入口規制」を採用しているのだ。しかし、今回の法改定では「恒常的/臨時的」の軸を意図的に「本格的/補助的」に置き換えた[8](図表参照)。この置き換えによって、臨時的ではない恒常的職に、「補助的」であることを理由に一年任期を導入し、入口規制の地公法を変質させたのである。その論理は、①「非正規職員は条例定数に含まれない」から、②「毎年度ごとの予算がなければ職の設置はできない」、③「予算は単年度主義だから、任期は一年で終了」、④「次年度に予算が付けば改めて採用する」、というものである。これは無理やり「一年以内の職」として位置付けるための屁理屈というほかない。恒常的職を「一年以内の臨時的職」に置き換えるための詐術とさえ言える。

 

改定地公法施行をめぐる闘い

1 「三年公募制」をめぐる攻防

⑴「なくそう!集会」(東京)での取組み

①二〇一七年:第九回集会「「会計年度任用職員」ってなんだ?」

この年、実行委員会初めての共同行動として、五月一日のメーデーに「労働基本権を奪う地公法改定を許さない!」とのビラ撒きに取り組んだ。

七月の集会は、会計年度員制度の理解と解明に集中して開催された。三月の総務省・七月の厚労省とのやり取りと法改定の内容理解〜共有化から始まり、総務省マニュアル案の検討、先行する国の「期間業務職員」制度の調査、首都圏を中心とした各自治体の雇用・労働条件の現状調査など、膨大な資料を作成して集会に臨んだ。

会場を交えた意見交換では、さまざまな角度からの意見が出され、認識を深めることができた。その一方で、膨大な内容のため、多くの参加者にとっては消化しきれなかったのでは?という反省が残っている。

② 二〇一八年:第一〇回集会「会計年度任用職員制度で未来が拓けるのか?」

この年も、「改定・地方公務員法にNO!」のメーデービラ撒きを行なった。

七月の集会は「会計年度任用職員制度で未来が拓けるのか?」と題された。「ボーナスが出るようになる」との改善点のみに焦点を当てた評価を覆すためである。午前の部で新制度への理解を深める学習会、午後の部は「闘いの現場から」として、東京都職業訓練校を解雇された公共一般労組委員長からのアピール、東大教職組委員長の無期転換の取組報告、ILO提訴四労組からの報告、で始まった。非正規公務災害問題の提起、ハローワークでの「三年公募制」によるパワハラ解雇をめぐるミニシンポ、関西と北海道の「なくそう!集会」メンバーからの報告、と続く。メインは、今後の闘いの進め方についての提起と会場を交えた意見交換に置いた。この意見交換のなかで、北海道のメンバーから「非正規公務員にも無期転換を!」との重要な提起があった。

九月には職業訓練校CAD争議が、委員長が職場に戻るという自治体ではきわめて稀な勝利を勝ち取った。一一月には新制度への首都圏各組合の取組みの交流や意見交換を軸とした学習会を開催した。

翌二〇一九年二月には全労働委員長を招いて「先行する国で何が起きているのか?」学習交流会を開催。国での「三年公募制」が非正規当事者にもたらす精神的な圧迫と分断、「ハローワークで相談に応じている非正規が、翌年には職を求めてハローワークに相談に来る」というブラックな現状を共有した。とくに全労働の「三年公募制」に反対する緻密な見解、「無期転換」を要求に掲げていること、に大きな勇気をもらうことができた。

③ 二〇一九年:第一一回集会「公共サービスの最前線で何が起きているのか?」

二〇一九年は新制度をめぐる交渉が本格化。総務省や各自治体の動きの情報収集と分析、各組合交渉の争点と到達点などを調査・共有しながら、各地で闘いが取り組まれた。一一月開催の第一一回集会のテーマは「公共サービスの最前線で何が起きているのか?」。午前の取組交流、午後は「闘いの現場から」、座談会「公務公共サービスで働く女性非正規労働者」、討論/交流「言いたい聞きたい会計年度任用職員」で会場発言を交えて意見交換を行なった。

各地で本格化する組合交渉の一番の課題は「三年(東京都など一部では五年)公募制」の阻止にあった。すでに「三年雇用年限」を強いられているところも少なくなく、多くの自治体で導入を食い止めることはできなかった。しかし、東京二三区では、世田谷区・文京区・板橋区など、公共一般労組や連帯・板橋区パートの団交・集会・ストライキなど労働基本権を行使した闘いによって阻止する、という大きな成果を勝ち取ることができた。越谷市、習志野市、八王子市でも組合の力で導入を許さなかったことは特筆されるべきである。

また、障害者雇用の水増し問題を受けて、雇用の安定を求める立場から私たちも学習・調査を進めた。調査の中で、国の期間業務職員以外の非常勤職員(常勤の四分の三以下の労働時間)には「三年公募制」がないことを発見した。この点も足がかりにしていきたい。

一方、一時金支給に伴い月例賃金を引き下げる動きや休暇水準を国並みに引き下げることが、広く行なわれていることも知らされた。しかし幸いなことに、「なくそう!集会」(東京)に集まる首都圏の組合では、引き下げを許すことはほとんどなかった。全統一千葉市非常勤嘱託職員分会は、会計年度職員へ移行時の公募をやめさせ、ユニオン習志野は、フルタイム勤務をパートタイム勤務にして退職手当支給や共済組合加入を避ける提案を押し返し、約半数のフルタイムを守り抜いた。残された半数のフルタイム復元を求め、現在も闘いを継続している。

⑵ 「研究会」の取組み[9]―二〇二〇年二月「雇止めホットライン」

二〇一九年に続き、二日間の電話での「雇止めホットライン(公務・公共非正規労働相談)」を開設した。四月からの「会計年度職員」への移行を目前に控えて、全国から九一件もの切実な声が寄せられた。多岐にわたる相談も全労働の全面的な協力を得て、なんとか対応することができた。内容的には雇用と賃金関係とに集中しており、「人員削減や委託化による雇止め」、「三年(五年)公募制導入」、「月例給引下げ」、「労働時間削減(フルタイムからパートへ)による賃金削減」などに相談の特徴があった。私たちが警鐘を鳴らしてきたとおり、「雇用の不安定化」と「賃金・労働条件の低位固定化」が、多くの自治体で現実のものとなっていることが明らかになった。

2 コロナ状況下での取組み

二〇二〇年早々からコロナ感染が拡大し、安倍首相による「一斉休校要請」の混乱と緊急事態宣言のなか、四月からの改定地公法施行を迎えた。保健所はコロナ感染対応、学童クラブは全日保育、窓口はマスクとシールドなど、対応に追われた。保育園や図書館はほぼ全員が自宅勤務、事務系職場でも交代制での自宅勤務を余儀なくされた。当初混乱があったものの、会計年度職員の自宅勤務の取り扱いも、おおむね常勤同様に有給の事故欠勤扱いとなった。

多くの組合と人事当局とが、このように混乱した状況への対応に精一杯で、会計年度職員問題の組合交渉もままならない状況が続いた。これらの状況のなかでも以下の取組みが進められた。

⑴ 二〇二〇年五月「新型コロナウィルスによる公共サービスを担う労働者への影響調査[10]

「研究会」はコロナ状況下で公共サービスに従事する労働者への、インターネットを活用したアンケート調査に取り組んだ。一八三名からの回答が寄せられ、感染リスクへの不安とともに、「休めない」、「休めても保障がない」、などの現状が訴えられた。医療をはじめ、学童クラブや相談支援員、コロナ支援窓口などでは、仕事の質・量が大幅に増えていることが訴えらえた。一番の問題は、非正規労働者への差別的取り扱いである。「マスクが配られない」、「自宅勤務が認められない」、「年休を取ることを求められている」、などの声が寄せられた。

⑵ 二〇二〇年:第一二回集会「コロナのあぶりだしたもの―公共サービスの脆弱性と非正規労働者―」[11]

仕事と暮らしが広範囲にわたって甚大な影響を受けたコロナ状況下で、私たちの運動を改めて組みなおそう、と第一二回「なくそう!集会」(東京)が開催された。自治労調査の分析から、会計年度職員について、①フルタイム職員が二八%から八%に圧縮されている、②約七割の自治体で「雇用年限」が設けられている、などが報告された。

「闘いの現場から」の報告に続き、特別報告「女性非正規公務員問題が問いかけるもの」では会計年度職員制度が雇用安定に逆行し、長期的展望を持って働くことができない仕組みとなっていることが、切迫感を持って指摘された。失業やDVなどで困窮する女性とそれを支える女性相談員とが共倒れになりかねない現状が、ジェンダーの視点をふまえて報告された。

集会テーマに掲げた「コロナのあぶりだしたもの」では、日本の公務員数の少なさなど、国際的なデータも駆使した基調報告を受け、①医療現場からの保健所削減と職員不足、専門性の否定、②介護現場からは、貧弱な感染対策と駆け足でのケア、移動時間・待機時間・キャンセルなどが無給で労基法が守られず国賠訴訟を提起したこと、③保育現場からは、保育士欠員が常態化し、密が避けられないなかで感染対策にも追われる毎日、保育士配置・保育室面積などの基準見直しの必要性、④婦人相談の現場からは、DVや困窮する若年女性からの相談の増加、社会的評価の低さと脆弱な処遇など、が訴えられた。これら公共サービスの脆弱性の克服と非正規労働者の処遇改善とを結びつけて運動化していくことの重要性が指摘された。

⑶ 二〇二一年二月:メールによる「労働相談窓口」開設

コロナ禍のもと、「研究会」は「雇止めホットライン」を電話からメールに切り替えて実施し、通年の労働相談窓口設置をめざすこととした。この相談のなかで、「産休雇止め」を撤回させる、という嬉しい成果も勝ち取ることができた[12]。年度末(三月三一日)締めの集約のあらましは以下のとおりである。

◆ 相談件数は一五(自治体一〇、国二、外郭団体一、委託先二)件で、その内一四件が女性から。

◆ 内容的には、雇止め一一、賃金引き下げ二、労働日数削減一、ハラスメント三。

⒜ 特徴的な雇止め相談内容

「産休を理由に雇止め」、「国立大学法人で「三年雇止め」」、「委託先変更で一人だけ雇止め」、「マンネリ化を防ぐためとのわけのわからない理由で雇止め」、など。

⒝ その他の相談内容

「コロナ休業の補償が得られない」、「ボーナスが出たのはよいが扶養から外れ、週二〇時間未満の勤務のため、そのほとんどが国保・国民年金の支払いで終わってしまう」、との相談もあった。

◆個人的には、以下のように受け止めている。

⒜ 年度末ということもあり、雇用関係が多く、雇止めが一一件

・年度替わりに賃金引き下げや労働日数削減など、不利益変更が目立った。

※この背景には「毎年度ごとの新たな任用」論の浸透があり、労働条件の不利益変更ではなく「新たに示した条件を受け入れるか否か」という迫り方をしているところがあった。

⒝ 「三年公募制」が節目でそれまではおおむね更新されていくだろう、との予測が覆された。

・相談件数が少ないので即断はできないが、「毎年度ごとのふるい落とし」を警戒していく必要がある、と思い知らされた。

⒞ とくに警戒すべきは「産休・育休取得」による雇止めである。

・「予算が切られた」、「公募でいい人が見つかった」、「勤務成績が良くない」、などを表向きの理由に挙げてくることに注意が必要である。

・このためにも、日常的な職場での交流や組合からの注視が欠かせない、と思われる。

 

現状況と今後の闘いに向けて

1 今後の闘いの基軸は?

⑴ 無期転換を!

公務員には労働契約法やパート・有期法が適用されない[13]。「公務員は労働契約ではなく、任用だから」との理由だ。しかし私は、「任用」を「労働契約ではない」とする実定法上の根拠はない、と考えている。労基法一一二条(国及び公共団体についての適用)「この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。」が、その論拠[14]である。労基法一四条一項の「労働契約の期間」については、現在も地方公務員には適用がある。つまり、総務官僚、一部の行政法学者、裁判官との「三者合作」により「任用」イデオロギーが復活させられ、判例が積み重ねられてきた、と考えている。

したがって、私たちは「非正規公務員に無期転換申し込み権を!」から「労働契約法の適用を!」を真正面から要求に掲げていく必要があるのではないだろうか? 三月二四日、厚労省は「無期転換の見直し」の検討会を設置、「今秋以降、報告書とりまとめ」としている[15]。見直しに向けた取組み方向として、私は、大雑把だが以下のように考えている。

①非正規公務員への適用、②現行「五年」を「三年」に短縮、③厚労省内に「監視委員会」的なものを作って、労働者の申し立てにもとづき「無期転換逃れ」企業への勧告や公表、などである。そしてこれらの点について、厚労省・総務省などへの要請や申し入れなどに取り組む必要があるように思う。

とくに留意すべきは、直近の事例[16]で明らかとなった「産休雇止め」との関連である。無期転換されていたならこの事例は起こりえなかったろう。そして「任用」でなければ、ここまで安易に雇止めはできなかったろうし、労使交渉で阻止できたように思われる。

⑵ 均等待遇を!

昨年一〇月、大阪医科薬科大・メトロコマース・日本郵便の労契法二〇条裁判の最高裁判決が言い渡された。判決は許しがたい内容に終わったが、それぞれの原告が訴えたことの意義は限りなく大きい。私たちの課題は、これら民間の果敢な闘いに連帯する公務関係の取組みにある。常勤との差別のみにとどまらず、会計年度職員内においてもパートとフルタイムとの露骨な差別が法定されている。公務員法の「平等取扱原則」を手がかりに、裁判にチャレンジしていくことが求められている。二〇〇〇年に、中野区を相手取って賃金差別裁判を提起した女性会館「学習コーディネーター」平川景子さんの先駆的な取組み[17]に学んでいきたい。

また、均等待遇は賃金にとどまらない。非正規公務員の産休や病休は多くの場合無給であり、共済組合加入資格[18]も持てない人がほとんどである。休職制度があっても「産休雇止め」と同様に「休職雇止め」が生じかねず、いまだ常勤との格差ははなだしい。東京都と二三区のほとんどでは、「戒告」処分でも更新拒否できる規則を制定している。休暇や福利厚生も含めた均等待遇実現に向けた取組みと合わせて、パート・有期法の適用を求めていきたい。

⑶ 労働基本権を!

独立系四労組のILOへの取組みは、今日なお継続している。今年二月一五日、昨年の内容を補強する形で専門家委員会見解が公表された。日本政府の「見解[19]」も情報開示請求で入手した。翻訳を確定させ、内部検討を経てリーフレットを作成する予定である。

法改定によって、多くの「労働組合」は「職員団体」への組織変更を余儀なくされ、同一自治体内の一般職公務員の範囲内に団結権が切り縮められた。最低限、非正規公務員に地公労法を適用[20]することができれば、状況は大きく変わる。自由な団結、労働協約締結権、労働委員会の活用、労使半数ずつの苦情処理共同調整会議、ができるからである。また、パート会計年度職員であっても、労働協約によって諸手当支給が法的に可能となることも大きい。

そもそも労働基本権回復要求は、(一部の例外的取り扱いはありうるにせよ)労契法やパート・有期法など、労働法適用要求と重なっているはずである。理論的に考えれば、労働協約締結権(=労使対等の労働条件決定)と「任用(=任命権者への「隷属」)」とは両立しえない。現に労働協約締結権を有する現業公務員にさえ「任用」を押し付ける裁判所の考え方は、私にはとうてい理解できない。

一九六五年の「ドライヤー勧告」の指摘する、「統治権者としての政府と使用者としての政府」を区別することの重要性は今日ますます高まっている。

⑷ 違法・脱法行為の根絶を!

今回の法改定で総務省が①「空白期間」の解消や②「合理的理由なくフルタイムを抑制しない」ことに力を入れたことは、脱法的手法をなくそうとする点で、当然とはいえ評価できる。これとの関連で注目すべきは「地方公共団体における会計年度任用職員等臨時・非常勤職員に関する調査(二〇二〇・四・一現在)」の結果報告[21]である。以下に見られるように、新たな制度に移行しても、脱法的手法を根絶することは容易ではない。監視と是正勧告ができるような制度の構築を考えていく必要があると考えている。

① 空白期間解消について

調査結果では、空白期間を置いている団体は〇%となっている。総務省通知で厳しく指摘されてきたところから理解しつつも、「本当だろうか?」という疑念はぬぐえない。以前の空白期間は、主に臨時職員の「一年を超える任用」を避けるため[22]に使われてきた。その根拠は「雇用が中断した後、改めて任用することは更新ではない」とする解釈である。しかし、空白期間の利用はこれのみにとどまらない。退職手当支給と共済組合加入、社会保険適用を逃れるため、「空白期間」が使われてきたことは歴史的事実である。簡単になくなるとは思えない。

② フルタイム抑制について

調査結果では、「単に財政上の制約を理由として、短い勤務時間を設定している職は見られない」としている。しかし、その実態は総務省による「誘導」の結果としか思えない。総務省は「勤務時間設定の考え方」として、たとえば「業務内容に応じて勤務時間を積み上げた結果によるもの」、「施設の運営時間や窓口の開設時間を考慮したもの」、「職務内容に関するシフトや勤務体制、繁忙時間帯を考慮したもの」など、財政上の制約ではない「逃げ道」を用意して自治体に選択させる方法をとったのだ。

これらの結果、週三七時間三〇分以上(一日わずか一五分短い七時間三〇分)が六万六四二九件で、週三五時間以上(一日七時間勤務)が一五万五九九七件、と「フルタイム逃れ[23]」の疑いが濃厚な結果となっている。

2 めざすべき制度は?

二〇一七年の地公法改定を受け、私は非正規公務員のめざすべき制度を「公務労働者法(案)」として、関係団体に提起した。当事者組合が法改定への実践的な対応に追われ、残念ながら議論にすらならなかったが、改めて本誌上を借りて提起したい。粗削りではあるが、議論の糸口になれば幸いである。

※ めざすべき制度としては、「任期の定めのない短時間公務員制度」が多くの自治体労組間で共有されている。

私見では、公務員法の無期原則にのっとり「一般職非常勤条例」を制定すればこの「任期の定めのない短時間公務員制度」は実現できると考えている。

 

 

公務労働者に関する法律(臨時・非常勤公務員法)(案)

1 目的

① この法律は、これまで地方公務員法により臨時職員・非常勤職員とされてきた者を「公務労働者」として位置付け、労働基本権・任用・給与・休暇等の労働条件および定数を定めることを目的とする。

2 定義

① 公務労働者を臨時と非常勤とに区分する。
② 臨時の公務労働者とは、一時的・季節的業務に従事する者として期間を定めて採用される者をいう。
③ 非常勤の公務労働者とは、週当たりの労働時間が常勤労働者に比して短い者をいう。

3 定数

① 公務労働者の定数は条例で定める。

4 労働基本権

① 臨時・非常勤の公務労働者に労働基本権を保障する。
② 臨時・非常勤の公務労働者には、労組法、労基法、労契法、パート労働法など、労働法規を適用する。

5 雇用関係

① 採用に当たっては、下記の職群及び職務の区分により、公募による選考を行う。
a)事務系職群(市民職、人事・経理職、福祉職、衛生・環境・清掃職、教育職など)。
b)福祉系職群(福祉職、保育士、児童指導職、心理職など)。
c)技術職群(土木・造園職、建築職、機械職、電気職、衛生監視職など)。
d)医療系職群(医師、歯科医師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、診療放射線職、検査技術職、栄養士、保健師、看護師、准看護師など)。
e)技能系職群(自動車運転職、ボイラー職、介護指導職、電話交換職、警備職、作業職、調理職、用務職、設備管理職など)。

② 採用後六ヶ月間は試用期間とする。
③ 非常勤の公務労働者の雇用期間は期限を設けない。
臨時の公務労働者については、三年以内の雇用期間を定めることができる。
④ 公務労働者は職群の範囲内で異動することができる。また、職が廃止される場合など、特に必要がある場合は職群を超えて異動することができる。
⑤ 公務労働者として三年以上勤務した者については、常勤職員への登用試験を受験することができる。
⑥ 公務労働者は、担当する職務以外の義務を負わない※

※ 国公法一〇五条(職員の職務の範囲)
職員は、職員としては、法律、命令、規則又は指令による職務を担当する以外の義務を負わない。

6 賃金

① 賃金については、以下の調整を行い支給する。
a)常勤給料表(現業職給料表?)を適用し、前歴換算を行った上で初任給を位置付け、勤務時間に応じて比例配分する。
b)手当についても、給料と同様に勤務時間に応じて比例配分する。
c)常勤職員と同様に昇給及び昇格を行う。

7 休暇及び休業

① 年次有給休暇などの休暇について、常勤職員の付与日数を比例配分する。
② 但し、病気休暇、慶弔休暇など、通算日数による休暇については常勤職員と同一とする。
③ 育児休業、介護休業については、常勤職員と同様に保障する。
④ 常勤職員と同様に、休職制度を設ける。

8 福利厚生

① 法に定める要件に従い、健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入する。
② 法に定めるところにより、公務上の災害及び通勤災害について補償する。

※賃金・休暇に関する部分は、労働基本権との関係で、本来は「賃金・休暇などの労働条件については、労働組合との労働協約に従い就業規則で定める」とすべき(?)
※共済組合加入要件と労災補償(地公災法適用か労災法適用か?)について、検討が必要

 

 

 

[1] 一九七五年、品川区学童クラブの臨時職員として働いていた佐久間登喜子さんは、継続雇用を要求して解雇撤回闘争を開始。当局が前年度までの臨時職員が正規化を余儀なくされたことを教訓に、それ以降の臨時職員は「六ヶ月以内の短期で打ち切る」と転換したことが発端。臨職闘争の再発を防止するための仕組み=「短期限定雇用制度」との闘いは、二〇一一年まで三六年間続いた。

[2] 兵庫県衛生研究所の日々雇用職員として働いてきた北田美智子さんは、臨時職員の劣悪な賃金・労働条件改善に取り組んだ。一九七八年、兵庫県臨時職員労働組合結成を間近に控えた一月に解雇通告を受け、三月に解雇された。労働委員会と裁判で争い、一九九〇年代まで闘い続けた。

[3] 国鉄臨時職員として国労婦人部で活動してきた和田弘子さんは、一九八三年、国鉄分割民営化を前に「臨時雇用員六〇〇〇人全員解雇」により解雇される。以降、現場・裁判・労働委員会と闘い続ける一方、一九八七年には「おんな労働組合(関西)」を結成し、専従として活動。二〇一三年には『もうひとつの国鉄闘争―非正規差別、女性差別を闘って』(三一書房)を出版。

[4] 大阪大学図書館で「日々雇用非常勤職員」として働いてきた矢崎邦子さんは、一九八四年、「三年雇用年限」によって雇止めされた。矢崎さんは解雇撤回を求めて現場と法廷で闘い続けたが、一九九四年七月一四日の最高裁判決を受けて闘争終結。最高裁は、任用予定期間の満了後に「再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできない」と、非正規公務員に隷属を強いる判示を行なった(その一方で、「任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる」特別な事情がある場合は、賠償を認める余地がありうる、とした。この言及を生かして、中野保育士事件では約一年分の賃金に相当する賠償金の支払いを獲得している)。

[5]当初の雇用年限は「年限によって一律に雇止め」とするものだった。しかし、二〇〇〇年代に入ると、私たちの闘いとそのあんまりな冷酷さと非効率さ(慣れた人を全員一律に辞めさせる)のため、公募に応じ「合格」すれば継続して働ける道が開かれた。つまり、一定の年数(三年や五年)でいったん雇止めとし、新たな応募者と一緒に選考するやり方に変えさせるところまではきた。この変更後の「三年雇用年限」は「三年公募制」と同じものである。ちなみに、杉並区の非常勤/常勤の職員数は、一九八九年は四六一/四四九九だったものが、会計年度施行時の二〇二〇年は二五六〇/三五三〇となっている。

[6] くわしくは「連帯杉並・非正規公務員の労働基本権」の「申立書」、「非正規公務員にこそ労働基本権を!」季刊労働者の権利二〇二〇年一〇月秋号六七〜七五頁を参照。

[7] 東京都において吏雇傭員制度が廃止されたのは一九七〇年である。地公法制定から二〇年、それも激しい差別撤廃闘争を経てのことである。自治法一七二条から「吏員」の文言が削除される二〇〇六年まで、さらに三六年の時間を要している。

[8] 「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について」(二〇一八・一〇・一八総行公発第一三五号ほか)九頁の図表参照(本誌二八頁に掲載)。この図表では、本格的業務は「相当の期間任用される職員を就けるべき業務」と、補助的業務は「左記以外の業務」と記載されている。公務員法上「本格的/補助的」などの文言はなく、「平等原則」に反し、差別的取り扱いとなるから「公式」には使用できなかったのである。

[9] 「研究会」の取組みについてはホームページを参照。

[10] 前掲注(9)のホームページ参照。

[11] 研究会レポート三三号(二〇二一年一月)参照。

[12] 研究会レポート三四号(二〇二一年五月)参照。

[13] 政府は地方公務員のさらなる労働法適用除外に向け、裏で(?)着々と手を打ってきた。一九八〇年代までは「パート対策要綱」(一九八四年一〇月二一日)や「パート指針」(一九八九年六月二三日)は地方公務員にも適用されていた。しかし、「パート労働法」制定(一九九三年六月一七日)に当たって適用除外にされた。同様に「有期指針」(二〇〇〇年一二月二八日)も地方公務員に適用されていたが、労基法に一四条二項が新設(二〇〇三年七月四日)されるとともに適用除外とされた。

[14] 濱口圭一郎「地方公務員と労働法」地方公務員月報二〇一〇年一〇月号参照。

[15] 厚労省ホームページ

[16] 「神奈川県の非正規公務員に対する「マタハラ」雇止め問題〜法的課題を中心に〜」

[17] 平川景子ほか『女たちのオルタナティブ パートに均等待遇を―中野区非常勤職員・賃金差別裁判の記録』(明石書店、二〇〇五年)。

[18] 二〇二二年一〇月一日から、「週二〇時間以上・月収八・八万以上」は共済組合に加入し、医療保険・福祉事業の適用を受けられるようになる。ただし、年金は相変わらず別立てとなっている。

[19] 昨年の「見解」と比べると、非常勤職員の「身分を保障する」との文言が新たに追加されている。雇止めに脅かされている現状への無理解には、驚くほかない。

[20] 二〇〇六年、合同労組加入による団交要求への拒否について、中央労働委員会は、当該臨時職員に〝非現業であっても地公労法適用〞という画期的命令を出した。これは、一般職である会計年度職員への地公労法適用=労働二権保障への足掛かりともなりうる。命令概要は厚労省ホームページを参照。

[21]総務省ホームページを参照

[22]二〇一八年、私たちを唖然とさせる臨時職員の脱法手法が明らかになった。東京都世田谷区の幼稚園に於いて、二人の事務職員を年間通してパート職員として勤務させながら、形式的には一ヵ月ごとに交代して任用する形に偽装していたのだ。空白期間を置けば、「一ヶ月の任用」で年間通しても「合計六ヶ月任用」となり、「一年以内の任用」を潜り抜けられるからである。「一ヶ月ごとの交代任用」のため、賃金はその月に任用されている職員に支払われる。このため、支払いを受けた職員と相方の職員との間で、現金での受け渡しが毎月交代する形で行なわれていた。しかも約二〇年間にもわたって全九園の幼稚園で繰り返し行なわれてきたのである。思いもよらない悪知恵が横行するのが実態である。

このような雇われ方を強いられたうえに、不合理な理由で解雇された職員が、世田谷区を相手取って裁判を提訴している。二〇二一年六月二四日に判決が出される

[23] A市では、始業八時三〇分〜終業一七時一五分を変更せずに、昼休み時間を一五分伸ばして七五分としてフルタイムを逃れている、との情報が得られている。またB市では、フルタイム化要求に対して、ダブルワークが常態化している現状をとらえて「フルタイムになるとダブルワークはできませんよ」と要求を抑え込む事例もあった。

 

 

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