三谷裕「山口県内の会計年度任用職員の現状と課題」

山口県地方自治研究所が発行している『やまぐちの自治』第132号(2021年6月号)に掲載された三谷 裕(みたに ゆたか)氏(山口県労連非正規部会事務局次長、山口自治労連書記長)による論文の転載です(元の論文タイトルは「会計年度任用職員の現状と課題」)。調査結果に基づく、山口県内における新たな非正規公務員制度(会計年度任用職員制度)の現状が取りまとめられた氏の論文は、同様の取り組みを各地で進める上で勉強になります。どうぞお読みください。

 

 

 

1 会計年度任用職員とは

2020年4月1日より、自治体の非正規職員に関して「会計年度任用職員(地方公務員法(以下、地公法とする)第22条の2)」制度が施行された。2017年5月に地公法および地方自治法(以下、自治法とする)が「改正」されて導入されたこの制度について、現在の山口県内の自治体の状況を俯瞰することにより、自治体ではたらく職員の労働条件改善の糧としたい、というのが本稿の趣旨である(以下、「改正」前の地公法、自治法の条文に言及する際は、旧地公法、旧自治法とする)。

 

本制度の導入は「任用の厳格化」や手当支給などによる「労働条件改善」を目的として行われた(制度の概要などについては、中野敏彦「会計年度任用職員制度で自治体非正規職員はどうなる?」『やまぐちの自治』vol.124所収を参照)。「法改正」により、どれほど各自治体の非正規職員の労働条件が改善しているのであろうか。

 

2 「厳格化」による構成の変化

会計年度任用職員制度の導入と合わせて、「任用の厳格化」として、特別職非常勤職員(地公法第3条第3項第3号、同項第3号の2。なお旧地公法第3条第3項第3号参考)と臨時的任用職員(地公法第22条の3。なお旧地公法第22条参考)の任用が厳格となり、ある意味、本来の趣旨通りの運用になるよう改められた。

会計年度任用職員制度の導入と合わせて、「任用の厳格化」として、特別職非常勤職員(地公法第3条第3項第3号、同項第3号の2。なお旧地公法第3条第3項第3号参考)と臨時的任用職員(地公法第22条の3。なお旧地公法第22条参考)の任用が厳格となり、ある意味、本来の趣旨通りの運用になるよう改められた。また、一般職非常勤職員(地公法第17条、第17条の2。なお旧地公法第17条参照)の任用にいたっては「会計年度任用職員以外の独自の一般職非常勤職員の任用を避けるべき」(総務省:会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル、以下、総務省マニュアルとする)とされ、すべてが会計年度任用職員へ移行することが想定されていた(図1参照)。

 

図1:構成の変化(東京新聞HP)

 

 

では、実際の県内の状況はどのようになっているのか。その実態を明らかにしていく。

山口県労働組合総連合(以下、山口県労連とする)と山口県国家公務関連労働組合共闘会議(以下、山口県公務共闘とする)は、毎年秋に県内各自治体を回り、公務職場ではたらく非正規職員の労働条件改善と正規職員の長時間過密労働解消のための自治体キャラバンを実施している(事務局は山口県自治体労働組合連合、以下、山口自治労連とする)。キャラバン前には、懇談の基礎資料として職員数や労働条件に関するアンケートを行っている(以下、単に「アンケート」とする。指定がない限り2020年の結果とする)。

下記表1、表2に2019年と2020年のアンケート結果における職員数を示した。なお、山口県のアンケート結果では、非正規職員数が急増しているように見えるが、2020年の回答は2019年には含めていなかった教育委員会分も含めて回答されていることが主な原因である。

 

表1:非正規職員の人数構成(2019年アンケートより)

2019年 13市 6町

合計

会計年度
任用職員
パートタイム
フルタイム
臨時的任用職員 165 3,040 350 3,555
特別職非常勤職員 315 3,177 67 3,559
一般職非常勤職員 0 1,616 110 1,726
その他非正規職員 366 140 166 672
合計 846 7,973 693 9,512

 

表2:非正規職員の人数構成(2020年アンケートより)

2020年 13市 6町 合計
会計年度
任用職員
パートタイム 2,125 7,721 741 10,587
フルタイム 252 653 73 978
臨時的任用職員 1,094 24 33 1,151
特別職非常勤職員 672 1,280 9 1,961
一般職非常勤職員 0 0 0 0
その他非正規職員 360 0 0 360
合計 4,503 9,678 856 15,037

注:表1と比べ、県分には教育委員会を含む
*13市(下関、宇部、山口、萩、防府、下松、岩国、光、長門、柳井、美祢、周南、山陽小野田)、6町(周防大島、和木、上関、田布施、平生、阿武)

 

2-1 臨時的任用職員の構成変化

まず、臨時的任用職員についてであるが、2019年には県内全体で3,555人いた当該職員は2020年には1,151人となっている(2,404人、約67.6%減)。先ほど述べたように2020年の山口県庁の回答では、教育委員会分が含まれているのであるが、この影響を排除するため、県内市町分だけで比べると、3,390人から57人へと大幅な減少となっており(3,333人、98.3%減)、市町ではかなり限定的な任用となっていることがわかる。

それに対して、2020年の山口県庁の回答では1,094人もの臨時的任用職員が存在するが、このほとんどは公立小、中学校、高校、特別支援学校の教職員である。主に児童・生徒の人数によって教職員定数は決まるが、総務省マニュアルにおいては、「児童生徒数の減少傾向に不確定要素があったり、当該年度の児童生徒数が年度の開始時点に確定しなかったりするなどして、これに対応した時限的に確保が必要となる教員数を一定の確度で見込めない時」には、臨時的任用が可能であるとされており、いわゆる「定数内臨時」の教職員として、来年度の任用が保障されているわけではない不安定な身分のなかで、これだけ多くの教職員が、正規職員と同等の働かされ方をしているのである。

 

2-2 特別職非常勤職員の構成変化

続いて、特別職非常勤職員であるが、3,559人から1,961人に減少している(1,598人、44.9%減)。市町においては、臨時的任用職員ほどの減少は見られないが、自治体キャラバンの懇談のなかでは、主に有害鳥獣駆除のために不定期に仕事がある職員が多数との説明があった。

 

2-3 一般職非常勤職員の構成変化

一般職非常勤職員については、1,726人が0人となっている。かつて総務省は、(本来的には正規職員の任用根拠と言われる)旧地公法第17条を用いて、「任用」といういわば何でもありの方法によって自治体で働く非正規職員の法的な位置づけを整理しようと試みた。もっとも、あまりに無限定である「任用」の一言で実際上の問題が解決するわけではなく、全国的に広がりは見せず、山口県内においても2019年の段階で任用しているのは5自治体に留まっていた。今回の「法改正」により、総務省自身が前言を翻して「任用を避けるべき」と言っているのであるが、それに従い0人となったことからすれば、いかに総務省が進めようとしていたことに無理があったか、という証左となろう。

 

2-4 会計年度任用職員の構成

では、新設された会計年度任用職員の状況はどうか。

2020年の自治体キャラバンアンケートでは、パートタイムとフルタイムに分けて当該職員数を質問しているが、これは退職手当の支給の可不可など労働条件の差異が設けられているからである。なお、パートタイム会計年度任用職員とは、正規職員より勤務時間が短いものとされ、法律上は1日1分短いだけという設定も可能となっている。「法改正」前の非正規職員への手当支給などが争われた裁判では、勤務時間が大きなメルクマールとして、正規職員の4分の3程度の勤務時間であれば、手当支給について規定する自治法第204条の「常勤」性をみたして(いわゆる「常勤的非常勤職員」として)、手当支給を認める判例法理がほぼ確立していたことからすれば、(これらの判例の積み重ねも「法改正」の契機となっているにもかかわらず)大きな後退を強いられたと言わざるをえない。

さて、本題に戻って当該職員数を見てみるとパートタイム会計年度任用職員が10,587人、フルタイム会計年度任用職員が978人とほとんどがパートタイムとなっていることがわかる。この点については、2019年のアンケートでは勤務時間別の人数を調査していないので比較できないが、手当支給削減のための方策ではないか疑念がある。フルタイム会計年度任用職員を任用していないのは県内で8自治体という調査結果であったが、懇談では、「フルタイムであれば正規職員を当てる」と、労働組合からしてももっともな回答をする自治体もあれば(もっとも、フルタイム会計年度任用職員を任用しないために正規職員を増員したという話は聞かれない)、「フルタイム会計年度任用職員は任用しない」という前提で職場の実態やこれまでの状況を無視して制度設計をしている自治体も見受けられた。

また、市町分だけで見れば8,666人の非正規職員(臨時的任用職員、特別職非常勤職員、一般職非常勤職員、その他の非正規職員)が10,534人と大幅に増えている。この点から見ても、フルタイムの仕事を無くすためにパートタイムに分割したのではないかと疑念が生じるところである。

 

まとめ

  • 臨時的任用職員(教職員分は除く)や特別職非常勤職員については、ある程度「厳格化」が進み、本来的な任用が行われ、減少している。
  • 一般職非常勤職員は0人となった。
  • 減少分の多くは、会計年度任用職員として整理された。
  • フルタイム会計年度任用職員については、任用していない自治体が8自治体ある。
  • 非正規職員の増大傾向は止まっていない。

 

 

3 給料面での改善は進んだか

では、続いて労働条件的な側面で会計年度任用職員がどのように扱われているかを見ていく。はじめに、給料面についてである。

 

3-1 給料表の基礎は何か

これまで、多くの非正規職員は最低賃金や地域の民間労働者の賃金を参考に、職種ごとに給料が決まっていた。会計年度任用職員になって、変化はあるのだろうか。

アンケートでは、一般事務職(事務補助含む)について初任給の決定にあたり正規職員の給料表を基礎としているか、基礎としている場合はその級号を質問した。

この点、すべての自治体が正規職員の給料表を基礎としていると回答している。もっとも各自治体の条例を詳しく見ていくと、正規職員の給料表がそのまま準用されている自治体と、中身は正規職員の給料表と同じであるが1級ないしは1から2級のみの給料表を別途作成、適用している自治体とがある。正規職員の給料表に変動があった場合に、会計年度任用職員の給料にも変動があるのか、対応が異なってくるであろう。

 

3-2 給料表の運用はどうなっているか

給料表が決まっても、どのように運用されているかを知らなければ実態がわからない。

まず、初任給については、表3に示す通り、1級1号を基礎としているのが18自治体とほとんどを占めている。自治体における高卒初任給は1級5号ないしは9号であるが、ほとんどの自治体で給料表上にはありながら従来活用してこなかった級号に格付けているのである。

現在、1級1号の号給は146,100円である。2021年でもっとも平日が多いのは3月の23日間であるが、1日7.75時間働けば最低賃金の829円であっても月額賃金は147,769円(178.25時間)である。一般職公務員には最低賃金法が適用されず、違法ではないとしても、従前からの最低賃金に張り付いたかのような給料からの改善は見られなかった。

 

表3:会計年度任用職員(一般事務職・事務補助含む)の初任給(アンケートより)

初任給級号 適用自治体数
1級1号 18
1級5号 1
1級9号 1

 

初任給決定にあたっては正規職員であれば前歴換算(前歴について一定の基準で職員としての経験年数に換算し,調整すること)が行われる。この点については、10自治体で「前歴換算による加算を行わない」という回答が得られている。また、加算を行うとしている自治体であっても、会計年度任用職員としての経験しか考慮せず、従前の任用形態での経験は考慮しない、という自治体があることも懇談を通じて明らかになっている。

正規職員であれば、他の自治体や民間企業での経験、学生や無職の期間まで、換算率の違いはあれど考慮されるにもかかわらず、非正規職員の前歴換算はより厳しい条件とされているのである。

パートタイム会計年度任用職員については、時給制や日給制、月給制と様々である。そうすると前述のように給料表に位置付けられたとして、その換算方法が問題となってくる。

この点について、各自治体の条例を調べたところ、1か月を21日として換算している自治体が多数であるものの、20日としている自治体もあることがわかった(日数が少ない方が労働者にとっては有利)。正規職員については、祝日日数の取り扱いについて自治体間で若干の違いあるものの、およそ年間労働時間は1,850時間程度となっており、月平均にすると約154時間(約19.9日)であり、ここでも非正規職員の方が厳しい条件で運用されているのである。

また、端数処理に関しても1円未満切り捨てが主流ではあるが、100円未満、10円未満での四捨五入ばかりか切り捨ても行われており、自治体間で同じ給料格付けでありながら時給が大きく異なる原因となっていることも判明している。

 

3-3 昇給、給料の上限

これまで自治体非正規職員は、何年働いても昇給はなく、1年目の新人と10年以上働いてきたベテランが同じ給料という状態であった。

会計年度任用職員制度では、継続して複数年任用された場合は、経験年数の考慮として、いわば昇給が行われる(単年度任用の建前を押し通し、「昇給」自体は認めていない)。正規職員は標準で4号昇給するが、会計年度任用職員については表4で示す結果となった。フルタイムでもパートタイムでも1年間働けば4号昇給としている自治体もあれば、フルタイムでも2号ないしは昇給なしという自治体もあった。パートタイムについては、勤務時間により差異を設けている自治体もあれば、パートタイム会計年度任用職員については一律としている自治体もあるようだ。

 

表4:会計年度任用職員(一般事務職・事務補助含む)の昇給(アンケートより)

標準昇給幅 適用自治体数
フルタイム パートタイム
4号 5 7
3号 0 2
2号 3 3
1号 0 1
昇給なし 2 4
該当者なし 8 0
調整中、未定等 2 3

 

アンケートでは、その上限も質問しているが表5のように1級5号や9号といった当該自治体の高卒初任給までしか上がらないとする自治体が多くなっている。

 

表5:会計年度任用職員(一般事務職・事務補助含む)の上限級号(アンケートより)

上限級号 適用自治体数
1級1号 2
1級5号 5
1級7号 1
1級9号 6
1級15号 1
1級25号 1
1級29号 1
調整中 等 3

 

まとめ

  • すべての自治体が正規職員の給料表を基礎としているが、そのまま準用している自治体と、号給の範囲を狭くした給料表を別途用意している自治体がある。
  • 初任給は1級1号、昇給しても高卒初任給程度と、通常利用されない号給に格付けされており、最低賃金に張り付いた状況は改善されていない。
  • 前歴換算や時給等の換算において、正規職員よりも厳しい条件で運用されている。
  • 昇給の基準については、自治体間の格差が大きい。

 

 

4 一時金の支給について

4-1 支給要件について

会計年度任用職員制度の導入にあたっては、「パートにもボーナス支給」と喧伝され、当事者にも大きな期待を抱かせた。総務省マニュアルでは、「週15.5時間未満」の者には支給しないとすることも想定されるが、他の会計年度任用職員との権衡に十分留意すること、とされていた。すなわち、「週15.5時間以上」の者については、当然支給されるのが「法改正」の趣旨である、ともいえたのである。

ところが、県内の状況は「15.5時間以上」としたのが5自治体に留まり、多くが「29時間以上」(アンケートに寄せられた回答では、「29時間」、「29時間3分」、「正規の4分の3」、「30時間」とさまざまであるが、ここでは「29時間以上」で集計した)と回答している。

本来支給すべきであった「常勤的非常勤」職員に、一時金が支給されるようになったというだけで、「法改正」の趣旨が全くいかされていない自治体がある、というのが山口県の状況である。なお、一時金支給に伴い、多くの自治体で年収ベースで総額が同じになるように月額給料を減額していることも判明している。ここまでくれば、果たして何のための「法改正」であったのか、と思わざるを得ない。

 

表6:一時金の支給要件(週あたりの勤務時間数、アンケートより)

週あたりの勤務時間 適用自治体数
15.5時間以上 5
23.5時間以上 1
25時間以上 1
29時間以上 12
パート支給無し 1

 

2020年11月12日に行った山口自治労連の県交渉において、管内自治体の多くが支給要件を厳しく設定していることに関して質したところ、県市町課より「会計年度職員への一時金支給者割合が3、4割では法改正の趣旨に反する」との回答が得られた。そこで、山口自治労連加入の単組を通じて各市役所について調査した結果が表7である。

 

表7:一時金の支給者割合(山口自治労連調査)

支給基準 区分 2020年6月 2020年12月
人数 支給数 割合 人数 支給数 割合
宇部 15.5h以上 フル 0 0 0 0
パート 488 464 95.1% 503 471 93.6%
合計 488 464 95.1% 503 471 93.6%
防府 25h超 フル 127 125 98.4% 139 126 90.6%
パート 448 206 46.0% 427 208 48.7%
合計 575 331 57.6% 566 334 59.0%
周南 3/4以上 フル 0 0 0 0
パート 1012 212 20.9% 1037 213 20.5%
合計 1012 212 20.9% 1037 213 20.5%
下松 29h以上 フル 34 34 100.0% 33 33 100.0%
パート 236 75 31.8% 263 80 30.4%
合計 270 109 40.4% 296 113 38.2%
※人数は、それぞれ一時金支給基準日の人数。

※任期、勤務時間の要件以外に不支給になった理由として、宇部市が「育児休業者、ALT(Assistant Language Teacher、外国語指導助手)、求職者」と回答。周南市が「無給休職者」と回答。

 

これによれば、「15.5時間以上」であれば95%程度の人が一時金支給されているのに対して、「25時間超」であれば50%程度、「29時間以上、4分の3以上」という基準であれば20から30%にまで減少するということが判明した。なお、フルタイムでも支給されていない人がいるのは、そのほかの支給要件として「6か月以上の任用期間」などがあるためと推測されるが、あくまで不当な細切れの採用や手当削減のために任用期間を空ける「空白期間」はないものとして、調査項目には上げていない。

ちなみに、この結果を携えて県市町課を訪れ、早急に県内各市町の状況を調査するとともに、改善を促すよう要請した。しかし、市町課は「総務省から調査依頼があるなどの機会があれば、その時に改めて助言などの措置を講じたい」とするのみであったことを付言しておく。

 

4-2 支給額について

支給要件だけでなく、支給額についても県内の自治体の状況は劣悪である。

正規職員には一時金として、期末手当と勤勉手当が支給されるが、そもそも法律上、会計年度任用職員に支給されるのは期末手当部分のみとされている。それだけでも不当であるが、表8で示す通り、県内で正規職員と同様に年間2.6月分の期末手当を支給するのは9自治体に留まり、1.45月分しか支給していない自治体の方が多数となっているのである。

 

表8:パートタイム会計年度任用職員に対する一時金支給月数(年間、アンケートより)

年間支給月数 適用自治体数
2.6月分 9
1.45月分 10
なし 1

 

この「1.45月分」という数字は、再任用職員の期末手当の支給月数である。懇談では「再任用職員よりも支給月数が多いのはバランスが取れない」と臆面もなく語られたが、60歳を超え、退職手当も一定程度支給され、賃金単価としても会計年度任用職員と比べれば高く(2級で215,200円)、期末手当だけでなく勤勉手当も支給される(合計で年間支給月数は2.35月分)再任用職員とのバランスという名目で、より弱い立場に置かれている人たちにしわ寄せを行うことは許されない。再任用職員の処遇が低いという問題は全く別に取り組むべき課題である。

 

支給月数が決まっても、それが満額支給されるとは限らない。在職期間に基づく期間率(支給対象の期間〔約6か月〕の間で、その職員が勤務した日数における支給割合)が乗され、最終的な支給額が決定する。この在職期間は6か月以上であれば100分の100となるので、正規職員が実感するのは、就職して最初の一時金のみだが会計年度任用職員の場合はどうであろうか。

会計年度任用職員は、継続的に働いていようが建前上は、毎年4月1日からの任用となる。多くの自治体では、事実上継続して任用されていれば在職期間が通算されるように、条例・規則上で「みなし規定」が設けられている。もっとも、その「みなし規定」を設けていない自治体もある。例えば、ある自治体では期末手当が年間1.45月分とされながら「みなし規定」がないため、最終的には0.9425月分しか支給されないとのことである。

また、期間率については、すべて調査したわけではないが、正規職員とは異なる期間率を採用している自治体も存在する。何をもってそのような差別を行おうと思ったのか理解に苦しむというほかない。

 

まとめ

  • 法律上、勤勉手当は支給されず、期末手当のみとなっている。
  • 国の示す一時金支給要件を大幅に超える高いハードルにより、支給者割合は95%から20~30%程度にまで低下している。
  • 正規職員の期末手当ではなく、再任用職員の期末手当を基準として支給している自治体が多数ある。
  • 在職期間の「みなし規定」がなければ、大幅な切り下げが生じる。
  • 期間率の基準が正規職員と異なる自治体も存在する。

 

 

5 休暇面での改善

 

給与面に続いては、休暇面を見ていこう。

結婚や忌引きなど項目が多岐にわたるため詳細な解説は控えるが、表9のように休暇の項目については、総務省が制度設計の際に調査を掛けたことにより一定程度の整備は進んだようである。

もっとも、多くの自治体で正規職員と異なり私傷病(業務外で発生したケガや病気)や産前・産後休暇、公務上の傷病までもが無給となっており、実質的に休暇が保障されているとはいいがたい。

そもそも、総務省マニュアルが「国の非常勤との均衡」をうたっているが、「不合理な待遇格差」を禁止するパートタイム・有期雇用労働法が適用される民間企業において、「国」という別団体との均衡を持ち出し、社内において「不合理な格差」を放置するのは許されないであろう。

例えば、多くの自治体で正規職員の産前休暇は「8週」となっており、労働基準法上の「6週」よりも改善されている。これに対して国家公務員の非常勤職員は「6週」となっている(正規職員も「6週」)。同じ職場で机を並べていた職員が同時期に妊娠し予定日が同じなのに、正規職員は8週間前から休暇に入り、会計年度任用職員は2週間多く働かなければならないとすれば、だれか「合理的な」説明ができる者がいるだろうか。

先述したパートタイム・有期雇用労働法は、公務職場には適用されない。それは、公務職場であれば法律で強制されるまでもなく、当然対応されてしかるべきだからである。厚生労働省は「雇用差別・賃金差別をなくそう ~同じ仕事なら同じ待遇を~」として、典型的な差別として慶弔休暇の扱いが正規職員と非正規職員で異なることを広報しているが、表9の「忌引き」「結婚」休暇の格差(付与日数が異なる)を見るに、まるで治外法権かの如く振る舞う自治体の態度を改めるためには、何らかの法整備が必要であると言わざるをえない。

 

表9:会計年度任用職員の休暇、職免付与状況(数字は自治体数)

※正規職員との内容の違い、〇…正規と同等、△…正規と異なる

項目 有無給付与なし 格差 代表的な正規内容
×
公民権行使 20 19 1 必要期間
官公署出頭 20 19 1 必要期間
現住所の滅失等 20 18 2 7日
出勤困難 20 19 1 必要期間
退勤途上 16 4 15 1 必要期間
忌引き 20 9 11 1-10日
結婚 17 3 5 15 5-10日
産前 20 5 15 6-8週(多胎14週)
産後 20 17 3 8週
保育時間 20 12 8 2回/日、30分/回
子の看護 4 16 13 7 5日(2人以上10日)
短期介護 1 19 16 4 5日(2人以上10日)
介護休暇 18 2 5 13 必要期間
介護時間 19 1 9 10 2時間/日
生理日の就業困難 19 1 13 6 3日(県)
妊産疾病 1 13 6 7 7 14日以内(県)
公務上の傷病 1 19 12 8 3年まで
私傷病 1 19 2 18 90日以内
骨髄等ドナー 1 19 16 4 必要期間
ボランティア 20 5日以内
妻の出産 20 2-3日
男性の育児参加 1 19 1 5日以内
父母の追悼 1 19 1 1日
夏季 17 3 1 16 3-6日
妊産婦の健康診査等 4 12 4 12 4 必要期間(県)
妊産婦の休息・補食 7 1 12 6 3
妊娠中の通勤緩和 2 9 9 8 4 1時間以内
育児休業 14 6 5 9 3歳まで(県)
育児部分休業 2時間/日
子育て支援部分休暇 2時間/日
育児短時間勤務
病気休職 3年まで

>表の見方(各単組の状況は別添集約表で確認を)

「項目」:網掛け部分は正規職員も無給

「有無給、なし」:有…有給で付与、無…無給で付与、×…付与なし。

網掛け部分は国公・非常勤職員。太枠囲み部分は法律上付与しなければならないもの(法律は有給までの要請はしない)

 

まとめ

  • 休暇の項目については整備が進んだ。
  • 無給の休暇が多く、実質的に休暇が保障されているとは言えない。
  • 「国の非常勤との均衡」を理由に自治体内部での格差を持ち出すことは許されない。

 

6 任用の継続について

最後に、会計年度任用職員にとって一番の関心事でもある継続的な任用の話である。安心して働き続けたい、というのは賃金等の労働条件にも増して多くの労働者の要望する項目である。

従来、基本的には1年での任用とされながら毎年「更新」され、3年ないし5年で「雇止め」するということが横行してきた。あらたに職員を募集する際には「応募しても受け付けない」などと信じられないような発言をする担当者もいたのである。公務員の欠格条項には「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者」などがあるが、「当該自治体で働いた経験」は、欠格条項に該当するかのような扱いを平気で行っていた。

そのような不当な扱いを契機に労働組合が結成され、一定の改善を果たしていたが、今回の「法改正」が悪影響を及ぼしかねない状況にある。

総務省のマニュアルによれば、会計年度任用の職は、会計年度ごとにその職の必要性が吟味される「新たに設置された職」と位置づけられるべきもの、とされ毎年公募による任用を行うことが原則とされている。たしかに、原則通りそのような単年度で終わる事業にのみ会計年度任用職員を当てていれば問題はないが、実際には継続して行われる恒常的な事業に従事していることがほぼすべてといっても過言ではない。逆に、これだけ多くの会計年度任用職員が担う職が、吟味された結果、来年度には無くなるという状況は考えられないのである。

そこで、多くの自治体では、国の非常勤職員を参考に、公募によらない再度の任用(いわゆる更新)は2回まで(最長3年)としている。これまで、3年ないし5年までの「更新」を認め、再応募についても認めさせてきた自治体でも、3年という期限が設定された。

再応募の制限はしない、としているものの、おそらく3年目を迎えようとする2022年度の末に、全国一斉に公募に伴う雇止めが起きかねない状況であり、運動を大きく発展させていく必要がある。

また、「会計年度」任用職員との名称のとおり、あくまで当該自治体の会計年度末までの任用となっている。そのため、選挙事務などの短期間の仕事であっても年度をまたいで働く際には、2年分の採用申し込みを行い、2回の任用行為が行われている。もはや、愚かだとしか言えない。

 

まとめ

  • 多くの自治体で、公募によらない再度の任用(いわゆる更新)は2回まで(最長3年)とされた。
  • 2022年度末に、大量の雇止めが行われる恐れがある。

 

7 最後に

地公法、自治法を「改正」してまで導入した会計年度任用職員制度は、見てきたようにこれまでの低賃金や雇用の不安定を解消しないばかりか、ある部分では後退させている面すらある。

これら問題を根本的に解決するためには、恒常的な任務を担いながらも会計年度限りの任用となっている問題を解消しなければならないであろう。

また、非正規職員の多くは女性であり、ジェンダーの問題でもある。図2は総務省の「令和2年労働力調査」(2020年)において「非正規の職員・従業員」に「現職の雇用形態についた主な理由」を尋ねたものである。

たしかに、「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した不本意非正規と言われる人たちへの対処は必要である。しかし、それだけでなく女性で多くなっている「自分の都合のよい時間に働きたいから」、「家計の補助・学費等を得たいから」、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」という回答に対して、本人の選択、家庭の役割分担の問題として、労働問題と切り離してよいものであろうか。回答者数自体が、男性は651件、女性は1,406件と2倍以上となっており、割合ではなく実数で見れば、もっと多くの女性が男性と比べて、上記の理由で「非正規の職員・従業員」の立場を選択しているのである。

2015年の国勢調査によると、夫婦共働きの世帯は64.6%となっており、専業主婦(主夫)世帯は減少の一途である。そのような中で、家事や育児、介護といった「生活」のための職務を担っているのが、女性である。なぜそうなのか。それは、「男性」の「正規職員・従業員」は長時間残業や広域の異動などで、およそ「生活」のための職務が担えないためではなかろうか。思えば、残業もなく8時間で仕事が終わったとしても、それから保育園に子供を迎えに行き、夕食を作り、洗濯をするといった「生活」を送るだけでも、大変な激務である。

正規職員であれば、まともな「生活」が出来ないほど働かされ、非正規職員であれば、まともな「生活」が出来るほどの収入が得られない。さらに「女性活躍」などと言って、経済活動だけを推進するために、働かされ続けるのだとすれば、どこにわたしたちの「生活」はあるのだろうか。

すなわち、非正規の働き方の問題は正規の働き方の問題でもあり、女性の働き方の問題は男性の働き方の問題でもあるわけである。

労働組合が、労働者の「生活」を基礎とした要求を掲げられたとき、その時こそがこれら問題に対する解決の第一歩となろう。

 

図2:現職の雇用形態についた主な理由(総務省「労働力調査」2020年)

 

 

 

〚参考資料〛

①中野敏彦「会計年度任用職員制度で自治体非正規職員はどうなる?」『やまぐちの自治』vol.124、山口県地方自治研究所、2019年)

「<どうなる格差 同一労働同一賃金>非正規公務員 地方で新制度 期末手当支給も月給減」(東京新聞2020年5月11日02時00分)より

③総務省自治行政局公務員部「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」

 

 

 

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