2024 年9 月11 日(水)午前11 時~正午、厚生労働省記者会見室にて、「なくそう!官製ワーキングプア東京集会実行委員会」主催で以下の記者会見を行いました。当日に配布した資料等です。お読みください。
首都圏106自治体情報公開請求の報告
~大量離職通知を使って会計年度任用職員の離職状況を調べてみました
東京集会実行委員会事務局:渡辺百合子(はむねっと共同代表)
なくそう!官製ワーキングプア集会実行委員会では、2022年7月から有志で総務省や厚生労働省と懇談を重ねる中で、「大量離職通知書」が使えるのではないかと考えました。もちろん、通知そのもので状況が変わるわけではありませんが、自治体が何の痛みも感じず、会計年度任用職員を使い捨てにしている現実に対して、雇用主としての責任を自覚してもらう手立てとして活用しよう、と考えたためです。
2023年8月の埼玉県18自治体への情報公開請求の経験を踏まえ、首都圏人口10万人以上の自治体(東京都は全ての区と市)106に請求するため、実行委員会として取り組むこととしました。2024年1月には、106自治体に情報公開請求を行う旨の通知に、公募について見直してほしいとの要望を添えて送付し、6月から情報公開請求を開始しました。8月15日に一次集計を行い、回答自治体に確認を求めたうえで9月6日までの回答結果をまとめ、9月11日に記者会見で公表した資料です。
会計年度任用職員を一般職の公務員と位置づけたにもかかわらず、公募、選考、採用などが各課任せで、人事担当部署が集約を行っていないため、多くの自治体で、その人数すら「不存在」と回答されました。常勤職員と比べて会計年度任用職員はあまりにも杜撰な取扱いをされており、同時期に集計を行っていた2024はむねっと調査の当事者の声「人として扱ってもらえてない、ただの駒」「いくらこの仕事が必要とされていても好きだとしてもやりがい搾取の対象であり続けるのは悔しすぎる」と重なりました。
なお、10月6日開催の「第16回なくそう!官製ワーキングプア集会」で、改めて精査した内容を報告する予定です。
添付は、要旨、資料①(経過と要旨の補足説明、8月15日に首長に出した要請書)、資料②(6月の総務省通知を受けて、106自治体の回数制限見直し検討状況)。
資料③(首都圏106自治体の情報公開請求の回答集計表)は、はむねっとHPに掲載しています。
【参考】
安田真幸「全国の「大量離職通知書」の厚労省情報公開の取組報告」『NAVI』2024年8月17日配信
9/11記者会見要旨メモ:首都圏106自治体情報公開請求の報告 ~労使双方の負担軽減のために
集計結果から読み取れること
106自治体に情報公開請求を行い、104自治体について集計(未着自治体2)【資料③】
1.会計年度任用職員を一般職の公務員と位置づけたにもかかわらず、基本的な人事関係情報の殆どが「不存在」である。【資料①2p】
①常勤職員と比べて会計年度任用職員は杜撰な取扱い。
②公募、選考、採用などが各課任せで、人事当局が集約を行っていないため、本来なら作成保持すべき情報を「作成していないため不存在」と回答する自治体が多い。
③一方で、情報公開請求の趣旨から、積極的に情報提供を行ってくれた自治体も多い。
→昨年、情報公開請求を行った埼玉県では上尾市を除く自治体で「公開」もしくは「情報提供」であり、「作成保持すべき」との認識を人事当局に与えたと思われる。
④『都職員の構成』、『特別区職員の構成』、『人事行政の運営等の状況』など住民に公表される職員構成資料にも、会計年度任用職員の掲載がない。そこに掲載されるべき公務員として、会計年度任用職員はカウントされていない。情報提供資料では、男女別の記載がないものも多い。
2.公募に応募した在籍者(再度任用)の不合格者は多くの自治体ではわずかであり、自治体にとって経験者の継続的就労の必要性が切実であると思わせる。
→例:「越谷市:再度の任用を希望しない旨の申し出があった場合等を除き、基本的に再度の任用を希望するものとして取り扱っている」
3.残念ながら雇止めが発生した場合に、「事前に十分な説明を行い、適切な雇用保障や再就職支援(総務省マニュアル)」を行う自治体は、ほぼ存在しない。「大量離職通知書」を提出した自治体でも、通知書裏面の⑦再就職の援助のための措置と⑧再就職先の確保の状況が空欄である。
→例:「所沢市:民間委託による離職多数。しかし、通知書の⑦・⑧に具体的記載なし」
4.人事院・総務省の通知を受け再度の任用の回数制限撤廃の動き【資料②】
→廃止決定は、既に公表している調布市に続き、西東京市。現在検討中が一番多く35%、うち、千代田区、港区、加須市が廃止の方向で検討。
資料① 首都圏106自治体情報公開請求に至る経過と「大量離職通知書」について
◆経過
2022.7.27 立憲民主党大河原まさこ衆議院議員の仲介で総務省、厚生労働省、内閣府男女共同参画局と懇談を行い、特に、会計年度任用職員制度3年目問題と、その対応について国の認識や考え方を聞いた。「2022年度末、全国で公募にかけられる会計年度任用職員数の人数推定と、大量の雇止めは大量雇用変動に該当するのでは」を問うたところ、厚生労働省は「対応を検討したい」、総務省は「会計年度の職は1年限りと制度上なっており、雇止めには当たらない」と対称的な回答であった。
2022.11.8 厚生労働省のホームページ「大量離職届・大量離職通知書」の刷新
2023.2~3月 「大量離職通知」の実務的な取扱等を確認するために、厚生労働省と懇談
2023.3月 埼玉県狭山市で22年間勤務の図書館司書雇い止め
2023.6.28 総務省「大量雇用変動が生じる場合の対応について」発出
2023.8月 埼玉県18自治体に情報公開請求、年限があり公募を強いているにもかかわらず、対象人数を把握していない自治体が10,離職者を把握していない自治体は9など
2024.1.20 首都圏106自治体に大量離職通知書提出について要請文を送付、情報公開請求の予告と、関係資料の提供
2024.3月 東京都でスクールカウンセラー261人の大量雇い止め
2024.6.1~ 首都圏106自治体に情報公開請求
2024.6.28 総務省「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」の改正について 発出
2024.8.15 106自治体の回答一覧の確認と上記通知を受けて要請(3p)と検討状況を追加質問
【参考】会計年度任用職員”3年目公募問題”(2022年度末問題)特集
◆なぜ、「大量離職通知書」なのか
労働施策総合推進法27条と関連省令では、「30人以上の離職者が発生する場合」は、「一ヶ月以上前に」、「知事は都道府県労働局に、市町村長はハローワークに」、「通知する」義務を負っている。
残念ながら通知提出それ自体は、雇止めの再考を促すものではない。しかし、自治体の人事担当部署が各課任せでその人数すら把握せず、何の痛みも感じず、会計年度任用職員を使い捨てにする現実がある。この現実に対して、雇用主としての責任(=再就職先の斡旋など)を自覚してもらう手立てとして活用したい、と考えたためである。
・提出単位:任命権者ごと
・会計年度任用職員の離職対象者:再度任用されなかった人数及び年度末に任期満了で退職した人数(よって、自己都合退職者も含まれる)
【参考】安田真幸「全国の「大量離職通知書」の厚労省情報公開の取組報告」『NAVI』2024年8月17日配信
◆要旨の説明
1.① 会計年度任用職員の杜撰な扱い
→大量離職通知を提出している50自治体ですら、離職者の内訳は「不存在」と答え、「不存在」と「一部公開(非正規および男女別内訳不明)」を足すと、6割の自治体が会計年度任用職員の離職者内訳について把握していない。
1.③情報公開請求を行った効果
→今回の請求において、「労務管理上の課題についてもご指摘いただきありがとうございます。適正な管理のため、参考にさせていただきます。」「他自治体の実態や方針についても大変参考になります。」との返信をいただいた自治体がある。
→実行委員会の情報公開請求が契機で、大量離職通知の提出が必要だったと分かったと回答があったのは、品川区、北区、荒川区
1.④東京都から、雇用形態別職員数のわかる資料として書名を情報提供された『都職員の構成』(東京都人事委員会 2023.4.1)について、集計表備考欄に以下のコメントをしたところ、東京都から⇒の反論があった。【資料③1p】
→『都職員の構成』(東京都人事委員会 2023.4.1)には会計年度任用職員と臨時職員と特別職非常勤がカウントされていない(つまり、都は構成メンバーとする職員からこの3つの雇用形態職員を除外している)。
⇒『都職員の構成』は、東京都職員を定義するものではなく、任用制度の研究・検討に資するために作成した資料です。このため、東京都職員から特定の職員を除外しているといったことではございません。
2. 【資料③】3.③在職者(再度任用)の応募者数と不合格者数を回答した、上限回数が3回までの自治体
→藤沢市:3回(応募者293/不合格者0)、茅ヶ崎市:3回(応募者479/不合格者2)、熊谷市:2回(応募者87/不合格者2)、川口市:2回(応募者1,288/不合格者77)、狭山市:2回(応募者294/不合格者13)、ふじみ野市:2回(応募者412/不合格者4)
→大量離職通知の雇用形態別・男女別の内訳がわかるさいたま市では、会計年度の離職者数が3,083人(うち女性は2,735人89%)で、年度末離職者全体4,968人の62%になり、非常勤離職者(再任用、任期付き、会計年度)3,562人の87%を占める。
◆教育委員会は「不存在」回答が目立つ、回答があったところでは離職者数の多さが突出。
東京都:外国人英語等教育補助員155、スクールカウンセラー261 、部活動指導員185、杉並区:565、千葉県教育事務所:924、川崎市:182,相模原市:216,さいたま市教職員:1,050
要請書
要請書
各自治体 首長各位 2024年8月15日 「なくそう!官製ワーキングプア」集会実行委員会
私たちは、リーマンショック後の2009年、「なくそう! 官製ワーキングプア」を合言葉に東京で集会を開催し、今年10月6日には第16回目となる集会を準備しています。 この間、安定的に良質な公務公共サービスを提供していくためにも、非常勤職員(会計年度任用職員等)の「公募を経ない再度の任用の上限回数(例えば2回・4回)」の廃止を求め続けてきました。 そのような中、本年6月28日、大変大きな動きがありました。 人事院が人材確保の必要性などを踏まえ、国の非常勤職員である期間業務職員の「公募を経ない再度の任用の上限回数(2回)」の努力義務を廃止しました。これに合わせて、総務省も会計年度任用職員に関するマニュアルQ&Aを改正し、「公募を経ない再度の任用の上限回数」を削除しました。 「公募を経ない再度の任用の上限回数」の廃止は、会計年度任用職員はもとより、関連の労働組合や女性団体、市民団体などが強く要望していました。特に、マスコミが大きく取り上げ、国会や自治体議会でも弊害が指摘されていました。 総務省も「各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、適切に対応されたい」としており、基礎的自治体が住民の福祉をふまえて、主体的に考えるべき問題となりました。 公募を行うことが法律上必須ではないこと、常勤・非常勤職員問わず、自治体における人材確保の厳しさが増していること、行政サービスを支える有為な人材を安定的に確保することができる環境整備が重要であることなども考慮していただきたいと思っています。 前述の人事院人材局企画課長通知の「期間業務職員の適切な採用に当たっての留意点等について」でも、「公募によらない再採用を行う場合とは、例えば、『仮に公募を行った際に、一定数の応募者は見込まれるものの、職場内の職務経験を有することにより公務の能率的な運営に相当程度資することが想定され、公募への応募者よりも、むしろ職場内の職務経験を有する者を任用することが適当であると任命権者が判断する場合』」等が考えられる」としています。 貴自治体において、会計年度任用職員に「公募を経ない再度の任用回数の制限」や「1年任用で公募を実施」などの運用している場合は、ぜひとも、廃止等をご検討していただきたく要請します。
<参考資料として、以下の資料を添付しました(マーカーは当会が引きました)> ③2024.6.28.都政新報記事「調布市で上限撤廃」 ④2024.2.9.ILO専門家委員会報告書:結論部分の抜粋(会計年度任用職員制度の改善を求めています)
お問い合わせ・ご連絡(メール):nakuso_kanseiwp@yahoo.co.jp ご参考(ホームページ):https://nakusoukanseiwp.wixsite.com/tokyo-syukai
|
【資料②】人事院・総務省からの新たな通知を受けた対応
2024/9/6現在
検討状況 | 総数 | 自治体名(千葉県が知事部局と教育庁で対応が分かれるため総数は107) | 備考 |
⓪廃止決定(1.9%) | 2 | 調布市(4),西東京市(4) | ・調布市:2024年度から撤廃 ・西東京市:2025年度より廃止決定 |
①もともと回数制限を設けていない(19.6%) | 21 | 文京区,世田谷区,板橋区,八王子市,狛江市 千葉県・教育庁,船橋市,野田市,佐倉市,我孫子市,鎌ヶ谷市 小田原市,大和市 所沢市,春日部市,鴻巣市,越谷市,入間市,朝霞市,新座市,三郷市 |
・狛江市:もともと回数制限を設けていないが、令和7年度に上限回数(4回)を導入予定 |
②現在検討中(32.7%) | 35 | 千代田区(4),中央区(4),港区(4),台東区(4),墨田区(4~7),目黒区(5~9),中野区(0~4),杉並区(5),豊島区(4),北区(4),荒川区(4),足立区(4),葛飾区(4),江戸川区(4),府中市(4),福生市(4),稲城市(4),あきる野市(4) 千葉県・知事部局(2),松戸市(4),成田市(2),柏市(4),流山市(4),印西市(2) 横浜市(4),秦野市(2),伊勢原市(2) 川越市(2),川口市(2),加須市(2),狭山市(2),深谷市(2), 草加市(4),戸田市(2),ふじみ野市(2) |
・千代田区:引き続き公募を原則とするものの、公募によらない再度の任用の上限回数は撤廃する方針 ・港区:廃止で検討中 ・中野区:公募によらない再度任用の上限回数撤廃 現在検討中 ・荒川区:現在対応を検討しているところ ・加須市:回数制限廃止に向け検討 |
③今後検討を予定(20.6%) | 22 | 江東区(4),品川区(0),練馬区(4),昭島市(4),小平市(4),国分寺市(4),東久留米市(4),羽村市(4),清瀬市(4) 千葉市(2),市川市(2),木更津市(0),浦安市(4) 平塚市(4),藤沢市(3),茅ヶ崎市(4),厚木市(不),海老名市(2) さいたま市(4),熊谷市(2),久喜市(2),富士見市(2) |
・茅ヶ崎市:近隣自治体の動向を踏まえ検討 |
④検討を予定してない(5.6%) | 6 | 武蔵野市(4),三鷹市(4),東村山市(4),国立市(4),武蔵村山(3,5), 横須賀市(2) |
|
⑤その他(3.7%) | 4 | 東京都(4),立川市(4) 習志野市(0) 座間市(0) |
・東京都:通知について趣旨等を確認するとともに、職員団体と交渉のうえ検討 ・立川市:現時点では公募を実施する予定、今後の対応は決定していない ・習志野市:毎年公募を行うが、運用上「再度の任用」に上限は設けていない ・座間市:毎年度公募にしている、再度任用を導入するかも含めて検討中 |
⑥回答を差し控える(3.7%) | 4 | 新宿区(4),大田区(4),渋谷区(4),東大和市(4) | |
⑦回答未着(12.1%) | 13 | 青梅市,町田市,小金井市,日野市,多摩市,市原市,八千代市,神奈川県, 川崎市,相模原市,鎌倉市,埼玉県,上尾市 |
※自治体名欄 ( )は、公募を経ない再度の任用上限回数、(0)は毎年公募、(不)は不存在
(関連記事)
安田真幸「『2024 ILO専門家委員会報告書』で、大きな前進!!」『NAVI』2024年3月3日配信
安田真幸「4労組でILOに情報提供しました(2024年9月1日)」『NAVI』2024年9月2日配信
(記者会見をうけての報道)
非正規公務員の雇用は不安定、「専門性の軽視」「身分差別」の問題も… 労働団体が「会計年度任用職員」制度の問題を訴え『弁護士JPニュース』