佐々木基記「地方圏の中学生の将来の居住地選択に関する一考察」

佐々木基記「地方圏の中学生の将来の居住地選択に関する一考察

―進学を契機とした地元志向とキャリア志向の分岐に着目して」

 

地域に暮らす若者は、将来を考える際に、地元で生活したくても仕事がみつからないのではという問題に直面することが少なくない。すなわち先行研究が指摘するように、地方圏の若者は「地域か職業か」のトレードオフを迫られやすく、それが若者の都市部への集中と地域の人口減少をもたらしているのである。本稿は、地方圏の若者のうち、誰がいつ、どのような理由で地元に残り、出て行くのかを考察した論考である。著者の佐々木基記氏は、地方圏の若者のキャリアの最初の分岐点は高校進学時であると着眼した。そこで地方圏に位置するA町とB町の中学3年生を対象にアンケート調査を実施し、職業観や地元への意識の分析結果をもとに、若者を5つのタイプに分類した。そこから見えてくるのは、トレードオフという単純な言葉では片づけられない現実である。地方圏の中学3年生の声に耳を傾けていただきたい。きっとここに、地域社会を持続可能にするヒントがあるはずである。本稿は北海道大学教育学部卒業論文(令和5年度)の一部である。全文を読まれたい方は、北海道大学教育学部図書室に問い合わせていただきたい。

(指導教員:駒川智子)

 

 

令和5年度 卒業論文

 

 

論文題目

地方圏の中学生の将来の居住地選択に関する一考察

-進学を契機とした地元志向とキャリア志向の分岐に着目して

 

 

論文情報 

研究室  職業能力形成論研究室
氏名   佐々木 基記
指導教員 駒川 智子 准教授

 

 

はじめに

地方圏のとある中学校に実習に行った時の体験である。

「地元の将来が不安」

「将来どこに住むか迷う」

「地元に残りたいけど難しいかも」

地元の中学生と話していると、こうした声が彼ら彼女から聞こえてきた。東京出身の私にとっては大きな衝撃であり、地方圏では都市部では起こりえないような、中学生の段階で将来の居住地を意識している事実があることを知った。

さて、皆さんはいつ頃から自分の将来の居住地を意識するようになっただろうか。私は大学進学を機に北海道に来たことで居住地を少し意識するようになったが、もしかすると本稿を読んでいる学生の皆さんは当たり前に、これまでもこれからも地元に住むと考えているかもしれない。私が出会った中学生はなぜ早期に居住地について意識するようになったのか。その背景には、地方圏ならではの生活実態が影響している可能性が高い。

本稿では、著者の卒業論文である「地方圏の中学生の将来の居住地選択に関する一考察-進学を契機とした地元志向とキャリア志向の分岐に着目して」を再構成している。都市部への一極集中が進む現代日本において、地方圏の若者の生活実態を考察することは市町村や国家の持続可能性を維持する上でも重要であろう。拙い長文ではあるが、若者の居住地選択を切り口に、地方圏のおかれている現状についても考察した。どうか一読いただければ幸いである。

 

第1章 先行研究の整理と調査概要

第1節 本研究の課題と目的

既存の研究において、地方出身者が直面する地域格差問題に関する研究は多いが、若者を絡めて個々の生活や人生の価値観を捉えた研究は少ない。これまでの若者研究では地方都市や農村部の若者は特殊事例的な扱いをされてきており、首都圏・大阪圏・名古屋圏の三大都市圏、とりわけ東京へ移動する若者に焦点が当てられてきた。片山・牧野(2018)は、そもそも若者研究は都市部の青年を中心とした潮流があり、21世紀以降に地方圏での若者の不安定就労が発見されてからは地方の若者の移動を扱う研究があらわれるようになったものの、移動だけにとどまらず地方の若者の「生活」を包括的に理解する研究はまだ少ないことを指摘する。例えば、石黒・李・杉浦・山口(2012)の調査でも東北地方から東京圏への移動を経験した若者を対象としており、地方圏から移動する若者には依然として強い関心が寄せられている。

現在、地方圏の生活環境の整備によって東京のような大都市圏への移住を希望する若者は減少傾向にあり、地方で暮らし続けることを選択する若者への考察が求められる。そのためには、地方で生まれ暮らす若者の生活現実、特に就労前の学校教育段階にある地方圏の若者を取り巻く現実は明らかにする必要がある。一方で、地方圏に暮らす若者に焦点を当てた轡田(2017)や石井・宮本・阿部(2017)を始めとする先行研究のほとんどが地方出身の若者として20~30代の学卒就労者を対象にしている。

地方圏の若者が将来を構想する際に直面する問題としては、「地域か職業か」のトレードオフを迫られる現実がある。地域で暮らすにあたって、メリットとしては地縁ネットワークや人間関係の強さがあるが、デメリットとしては低賃金や職業選択肢の少なさに代表される厳しい労働環境がある。大都市圏の若者は地元かどうかを比較的意識せずに自由にキャリアを考えるのに対し、地方の若者はキャリアの分岐点において地域か職業のどちらかの選択を迫られる。轡田(2017)が2014~15年に広島県の20~30代を対象に実施した社会調査では、地元での生活満足度は高いものの、仕事や将来の自分への満足度が低いという結果が出ている。このことからも「地域か職業か」というトレードオフを迫られる若者の様相が浮かび上がってくる。

地方圏の若者を巡るキャリアの分岐点の要所としては「高校進学」がある。地元に高校が無いことも多い地方圏の若者にとって、地元か地元以外かの高校を選択するという分岐点の延長線上で初めて、将来的に自分がどこに住むかといった居住地選択の意識も生まれてくると考えられる。その上で、必然的に地元のどこに魅力や不安を感じているかを見つめなおすことになる。彼ら彼女らの意識を可視化することは、「地域か職業か」のトレードオフを超えた若者のより良いキャリア形成を後押しする上で重要である。

以上のような問題意識に基づいて、本稿では高校進学を目前にした地方圏の中学3年生を対象に、彼ら彼女らの地元に対する地域的特質及び職業的特質の捉え方に着目し、いかなる層がどのような理由で地元に定着したり、地元から移動したりすることを決めるのかを考察することで、地方圏の若者が人生設計において重視している事柄を明らかにする。具体的には、地方圏に位置づけられる北海道内の複数の町の中学校にて、地域の魅力と職業の可能性の観点からアンケート調査を実施し、地方圏での暮らしを「地域か職業か」というトレードオフと捉えているのか、及び、地元/地元外の高校、ひいては今後の生活を選択する上で地元のどこに魅力や不安を感じているかを分析する。本研究を通して、地方圏の若者が地元での暮らしへの明るい展望を持てるようにすることを主眼に置きつつ、地方圏の若者が納得のいく人生を歩むためにどういった情報や政策、取組みが必要かを提言する。

 

第2節 地方圏の若者の生活実態

(1)地方圏の雇用的特質

まず、地方圏の雇用を巡る特徴を先行研究から整理する。地方圏の雇用に関しては、人口減少や大企業の不在などに起因する雇用機会の乏しさや低い所得水準が叫ばれている。例えば、石井・宮本・阿部(2017)は実証研究によって地方圏の良好な雇用機会の不足や雇用機会の多様性の不足を明らかにしている。その他にも、阿部(2021)、高見(2018)、轡田(2017)などの多くの研究者が言及している。まとめると、地方圏の雇用を巡っては①所得格差、②産業構造の偏り、③不安定な雇用形態、④長時間労働という4つの課題が見いだせる。以下、順に内容を見ていく。

「所得格差」とは、地方圏と三大都市圏を比較した際の所得格差、並びに地方圏内を比較した際の所得格差の両方を指す。前者に関して、橘木・浦川(2012)は、1人あたり課税所得を都市と地方で比較した際に、都市の所得は地方に比べて1.60~1.90倍高く、2000年代に入ってから格差が拡大傾向にあることを示している[橘木・浦川,2012:pp.101-108]。最新の『毎月勤労統計』で都道府県別賃金を見ても、全国計(307.4 千円)よりも賃金が高いのは6都府県(東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)となっており、やはり三大都市圏とそれ以外の賃金格差が存在していることを示している[1]。後者に関しては、地方圏の中でも高給な者と低給な者の分断が生じている。例えば、公務、医療・介護、郵政、共同組合といった公共セクターが関与している職業は相対的に高い時給で、充実した福利厚生や社会保険を獲得できる。また、自営業も経営状態や市場優位性に左右されるものの、一定数は高い給与水準を維持している。しかし、それ以外の地方労働者は仕事の給与水準に対して不安や不満を覚える声が多く、所得水準に関する課題を抱えていると言えるだろう。

「産業構造の偏り」とは、地方圏と都市圏の就業構造の差異、特に都市圏にのみ特定の都市型産業が存在することを指す。具体的には、地方圏では農林・漁業や鉱業のような第一次産業や建設業の就業者割合が大きい。一方で、都市型産業である情報通信業、運輸・郵便業、不動産業、学術研究・専門技術業などの中枢管理機能が都市部に置かれる産業、あるいは知識集約型産業は都市圏に集中している。職種で見ると、地方圏は農林業従事者・建設採掘従事者・生産工程従事者、加えて近年は保険・医療・社会福祉の専門職従事者や介護サービス職従事者の比率が高いのに対して、大都市では専門的技術的職業従事者や事務従事者が多い[2]。その他にも分類不能な業種・職種の仕事が都市圏には多く存在し、就業機会の幅が広がっている。地方圏では研究や技術開発、文化活動、中枢管理機能を担う職業が乏しく、専門職としてのキャリアを展望する若者は、地域移動を余儀なくされる現状がある。また、都市型産業は従業員1人あたりの労働生産性が高く、結果として賃金水準が高まる[3]。つまり、地方圏の産業の偏りは、若者のキャリアの幅を狭めているだけでなく、上述した都市圏との所得格差の原因にもなっていると言える。

「不安定な雇用形態」とは、地方圏における非正規雇用者の増加を示す。石井(2011)は、若者が初職で正社員になることが都市部に比べて困難になっていることを指摘している。具体的には、2001~2006年における正社員・正職員数の変化は、東京都では-1.6%であるのに対して、岩手県は-10.8%、山形県では-9.0%と明らかな差異がある[石井,2011]。背景には日本全体の景気低迷による非正規労働者の増加だけでなく、1990年代以降に製造業を中心に日本の大企業が生産拠点を海外へ移転したことが地方圏では大きく影響している。大企業の生産工場が雇用を創出していた地方経済において、工場の海外移転は地域主幹産業の空洞化を招いた。多くの労働者が解雇され、残った雇用者に関しても人件費削減のために非正規での雇用契約が結ばれることとなった。非正規雇用は、雇用契約の打ち切り、いわゆるリストラが就業先企業の経営状態や景気動向によって安易に行われるため、長期的なキャリアやライフコースの展望が描きにくい。さらに、非正規雇用者は正規雇用者に比べて賃金水準が低く設定され、昇給率も低い。非正規雇用契約で入社した場合に、正規雇用契約に転換することは容易ではなく、技能の形成も困難である。非正規雇用しか就業先のない地方圏の若者は、早い年齢で連続したキャリア形成の困難やキャリア停滞の危機にさらされている現状があると言える。ただし、ここで注意したいのが正規雇用者になることが必ずしも安定した生活を意味しない点である。広島県の若者を対象に実施された調査では、「『製造作業・機械操作』従事者は正規雇用の比率が高いにも関わらず、『仕事に希望が持てない』と回答した者が多かった」という [轡田、2017]。理由としては、夜勤シフト等の無理な働き方や単純作業の繰り返しで仕事にやりがいが無いことなどが分析されており、この点は地方圏の雇用的特質の4つ目である長時間労働にも起因すると考えられる。また、阿部(2021)は地方圏では正規雇用者と非正規雇用者の流動が比較的盛んな傾向にあり、背景に都市圏よりも両者の賃金・労働条件が近いことを指摘している。欠点が強調されやすい非正規雇用であるが、地方圏においては一定の生活基盤を支える手法としての役割がある点には留意する必要があるだろう。つまり、非正規雇用はキャリアやライフコースの面で多くの課題を含むにも関わらず、地方圏の若者にとっては貴重な雇用機会として存在しているとも言える。

「長時間労働」は、地方労働者が所定勤務時間を超える長時間の労働を強いられている現状を指す。地方圏においては若年人口の減少に伴う人手不足が深刻であり、長時間労働によって労働力不足を補っている。高見(2018)は、都市部と比較してオフィスワークの仕事が相対的に乏しく、夜勤を含む医療・福祉や土日休みでない販売業務、交替制勤務をともなう工場勤務が就業の選択肢として一定のウェイトを占めるため、土日休みでない仕事や夜間勤務を含む仕事が若者に敬遠されがちな条件の仕事が多いことを指摘している。特に上述した非正規雇用者は、職場内の地位が低いことやそもそも勤務先自体が都市に本社を持つ大企業の下請けであることが多いため、長時間労働やノルマの強制、不規則な勤務スケジュールを課されることが多い。轡田(2017)の調査では、仕事満足度においては「就労時間」の説明力が最も大きく、就労時間が長いほど仕事満足度が下がる傾向にあったことが分析されている。地方での暮らしはスローライフと結びつけられることが多いが、実態としては都市部と変わらない時間に追われた生活を強いられている現状がある。特に課題なのは、同調査において、「やりがいがある仕事であれば長時間働いてもかまわないと思う」と回答した者が約半数おり、長時間労働が労働者のやりがいによって支えられている側面が強い点である[轡田、2017:p.264]。賃金水準の低さを考慮すると、地方圏の労働者は都市部と大差ないレベルで長時間働いているにも関わらず、賃金は時間に見合った水準ではなく、やりがい搾取になってしまっている現状があると言える。

以上のように、地方圏の雇用に関しては①所得格差、②産業構造の偏り、③不安定な雇用形態、④長時間労働という4つの課題がある。いずれも就業者のキャリアやライフコースにネガティブな影響を与える要素であり、厳しい現実があることがわかる。これらの課題と向き合い、地方労働者の雇用情勢をいかに改善していくべきかを考える必要があるだろう。しかし、先行研究では20~30代の学卒就労者が対象となっており、地方圏の未来を担う学生を対象にしていない。地方圏の学生がこうした厳しい側面がある労働的特質をどのように捉えているのかを確認し、いかに将来の地元での就労に希望を持ってもらうかを考えることもまた必要であろう。さらに、地方圏にて高い給与水準を維持する業種として自営業が挙げられたように、地域に密着した就業機会も存在する。家族や地域のツテを利用した就業機会は、競争や自立が謳われる現代においてはむしろ安定した就業を担保しているとも言える。こうした地域固有の働き方がいかに学生や若者のキャリアに影響を与えるかに関しても考察の余地がある。

 

(2)地方圏の社会関係資本的特質

次に、地方圏の社会関係資本[4]を巡る特徴を整理する。地方圏の暮らしに際しては、上述したように雇用を巡る厳しい現実がある。しかし、地方暮らしの魅力としてアットホームな点や人の温もりが謳われるように、地方圏には代替不能な社会関係資本が存在する。社会関係資本は地方圏で暮らす若者の生活を支える重要な要素であり、数多くの研究がなされてきた。阿部(2021)、轡田(2017)、石井・宮本・阿部(2017)、阿部(2013)などの先行研究が言及しているものをまとめると、①家族、②友人、③地域コミュニティという3つが挙げられる。以下、順に内容を見ていく。

まず、「家族」に関しては地方圏の方が親の家を出る時期が遅く、昔ながらの拡大家族のあり方が残っている傾向にある。宮本(2017)によると、調査を実施した東北地方では三世代同居の慣行が三大都市圏に比べ、今日まで残っているという統計結果が示されている。また、轡田(2017)によると「三大都市圏に暮らす若者は『遠居』の比率が高く、この点では『近居』や『準近居』の多い地方中枢拠点都市とは事情を異にする」という[轡田、2017:p.85]。若者と家族が同居する、あるいは近居することは経済的メリットと非経済的メリットの双方がある。経済的メリットとしては、親子の同居が子どもの経済力不足を補い、経済的自立を成り立たせていることを示す。年功序列型雇用の慣習が強い日本では若者の賃金は低水準であり、所得に対して高い住居費を払うことは容易ではない。特に、地方圏では上述のように低賃金や非正規雇用といった不安定就業状態に若者は追いやられやすく、金銭的余裕はさらに乏しい。そうした際に、親と同居して家賃を折半することで、食費や医療費のような家賃以外の生活費に所得を割り当てることが可能になる。非経済的メリットは、家族が近くにいることが精神的安心感や家事・育児を親に手伝ってもらえるといった物理的効果を生むことを示す。親から子どもに与えられる非経済的要素として挙げられる助言や情緒的援助は、若者にとって大きな効果をもたらす。地元から都会に出た若者がUターンする理由として、家族のぬくもりや親孝行を理由に挙げる者がいるように、若者にとって家族の存在は心理面で大きなメリットがある。また、親が近くに住んでいれば日常的に親のサポートを受けることができる。特に、子育て面で親の手を借りられることは大きな利点である。橘木・浦川(2012)は、共働き率に関して都市で専業主婦が多く、地方で夫婦共働きの割合が高くなることを示した。理由としては、三世代同居が多い地方圏では親のサポートが受けやすく就業しやすい点と、夫の収入が低い点を指摘している。つまり、地方の厳しい雇用情勢は夫婦の共働きを強制しているが、同時に家族という社会関係資本が存在することで労働と生活の均衡を保っていると言える。但し、ここで留意したいのは地方圏における親との同居は必ずしも本人たちが望む生活のあり方とは限らないということだ。阿部(2013)は、地方圏の若者は家族と暮らすことで経済的メリットを享受できるが、逆に言えば同居しなれば生きていけない状態にあることを指摘する。裕福に暮らしたいから親元に残るパラサイトシングルではなく、自立したいけれどできない若者の苦悩があることを意識する必要があるだろう。さらに、少子高齢化によって社会保険料や医療費などが高騰する中で親世代も単独で生活を維持するのが困難であることも多く、親子が共依存に陥るケースも存在する。つまり、地方圏における家族ネットワークは若者の生活を支えるある種のセーフティネットとして機能する一方で、そうしないと生きられない側面も同時に存在すると言える。

次に、「友人」に関しては義務教育や高校の在学中の人間関係が社会人になっても影響を持ち続けやすい傾向にあることを指す。理由としては、地方圏の若者は地元以外の他地域での生活を経験したことのない層が多く、長期に渡って同じ人間関係が継続されやすいことがある。上野(2017)が九州・東北の青年・若年たちに行ったヒアリング調査によると、「現在の進路選択のコースとしては、小・中学校の義務教育を地元の学校で過ごし、近くの高校へと進学する。調査対象となった青年・若者の多くは、地元で高校時代までを過ごし、県内外での勤務や大学生活を経験し、地元に就職している」という[上野、2017:p.266]。地方で暮らす若者にとって、交友関係を作る機会は必ずしも多くないが、同級生を中心としたネットワークを構築することで地域内の人間関係の満足度を高めている。轡田(2017)は地元を離れたことがない若者に関して、「経済的には、それぞれの収入はかならずしも高くはなく、現在の生活水準を維持していくだけで精一杯という人たちがほとんどであるが、地元にいるメリットを享受することによって、失業の期間があっても、貧困に追い込まれずにいる。何らかのかたちで実家に依存し、安価に暮らすことができるからだ。その一方、存在論的には、居心地のいい地元の友人関係によって支えられている。地元の友人関係は広がりを欠くけれども、毎日でも顔を合わせることのできる仲の良い友人関係は、毎日の生活を楽しく過ごすうえで欠かせない存在だ。そうした友達がいる日常を捨ててまで、見知らぬ土地に出て苦労することの意味がまったくわからないというわけだ」と述べている[轡田、2017:p.146-147]。阿部(2013)が岡山県倉敷市の若者を対象に実施した調査においても、全体の8割の若者が家族関係、友人関係ともに満足しているという結果が示された。友人ネットワークは家族ネットワークと同等、あるいはそれ以上に地方圏の若者の生活を存在論的に支える重要な要素であると言えるだろう。さらに、地方圏は三大都市圏よりも早婚傾向があり、平均初婚年齢が低い。その理由を轡田(2017)は、人口規模の少ない地方圏では同級生ネットワーク以外で出会いの機会を広げることがなかなか難しく、結果的に小・中・高やそのつながりで結婚を早めに決断するケースが多いことを指摘する。生活満足度との相関関係が最も強いのは、世帯年収や雇用形態などの経済的変数ではなく配偶者の有無であり、「20~30代の若者にとって、『幸せ』や『楽しさ』という概念が、『配偶者』あるいは『恋人』の存在と結び付けて考えられる傾向が圧倒的に強い」とも述べている[轡田、2017:p.123-124]。地方圏の若者にとって、友人関係は結婚というライフコースの分岐点や生活満足度にも大きな影響を与える要素であり、かけがえの無い社会関係資本だと言える。特に近年は、SNSの普及に伴って大学進学や就労を機に地元外に出た場合も、空間的距離を超えて交友関係を維持することが可能になっている。結果として、地元の友人つながりの魅力を理由にUターンするケースも報告されており、友人ネットワークの重要性はますます高まっている。

「地域コミュニティ」は、地域活動・社会活動への参加を通した家族・友人・職場以外のソーシャルネットワークを指す。上述したように、地方圏では人間関係が閉じたものになりやすいが、逆に言えば狭い地域の人間関係だからこそ都市部と比べて濃い密度の地域コミュニティが形成される。ただし、そのあり方が現在過渡期にある点には留意する必要がある。1980年代までの地域社会では就職に伴って青年団に入ることは当然のこととされてきた。青年団は祭りのような地域行事の担い手であり、公民館や青年教育施設を拠点に青年学級やスポーツ活動に取り組んだ。青年団の卒業後も、消防団やPTA、自治会などの地域コミュニティで役割を果たしていくのが典型的なパターンであった。しかし、近年では若者の多忙化や勤務の多様化、及び平成の自治体合併という政策的な影響によって、青年団を始めとする地域活動は消失しつつあり、地域活動に限らず地域社会と若者の関わりは薄れる傾向にある。その理由は、若者の価値観の変化にも起因する。阿部(2013)は、岡山県倉敷市においては、商店街に代わってイオンが出来たことで、地域住民に会うことなく目的地に着くことができ、若者は余暇において地域社会における人間関係から解放されたと指摘する。一方で轡田(2017)は、「子どもがいて、低収入の場合に、地域の相互扶助を必要としている人が増える」と述べる[轡田、2017:p.298]。低賃金や長時間労働に苦しむ若者にとって、地域コミュニティによる支えは大きな助けとなる。地域コミュニティを巡っては、必要と感じる層と不必要と感じる層の乖離が進んでいると言えるだろう。轡田(2017)の調査では、広島県三次市では日本青年会議所の会員減少や運営費不足と同時に、既存の組織とは異なる青年団体が増加していることが明らかになっている。既存組織の衰退は、逆に言えば創造的な動きを求める若者にとってはチャンスでもあり、まさに地域コミュニティは現在過渡期にある。ともあれ、地方圏の地域コミュニティは依然として都市部より強固であり、若者の自立に向けて重要なメリットをもたらす。社会関係資本の中でも家族、友人とは異なり、そのあり方や存在価値が変化しつつあることは考慮しておく必要があるだろう。

以上のように、地方圏においては①家族、②友人、③地域コミュニティという社会関係資本が厳しい雇用情勢に置かれる若者を経済面でも非経済面でも支えている。ただし、先行研究では20~30代の学卒者を対象に社会関係資本の重要性を検証していた。そうしたネットワークの存在が当たり前に存在する学生はそのメリットをどのように捉えているかに関してはまだ検証されていないと言える。

 

(3)若者の地元に対する意識

これまで地方圏の雇用的特質と地域的特質を巡る先行研究を整理してきた。雇用を巡っては、①所得格差、②産業構造の偏り、③不安定な雇用形態、④長時間労働という4つの課題が指摘されており、その現実は厳しい状態にある。一方で社会関係資本を巡っては、①家族、②友人、③地域コミュニティという3つが都市部よりも強固に構築されており、代替不能な要素として地方圏の若者の生活を支えている。つまり、地方圏での暮らしは徒に社会的包摂を唱えた幸福論に寄っているわけでもなく、はたまた社会的排除を唱えた不幸論に寄っているわけでもない。その狭間に揺れているのが地方に暮らす若者の現実である。そこで、本節では若者の地元に対する意識を改めて整理しつつ、上述したもの以外も含めて若者が地元/地元外での居住を選択する上で影響を及ぼす要素について追記していく。

まず、若者が地元に惹きつけられる要素を整理する。要素としては、①社会関係資本、②住環境、③若者の人生観の変化が挙げられる。

「社会関係資本」に関しては先述した通りである。まず、家族と同居することによる家賃の節約、隣近所の手を借りた子育てによる保育園費や交通費の節約といった経済的メリットが存在する。同時に、家族が近くにいるという安心感や、気の置けない友人たちとの閉鎖的なコミュニティの居心地の良さといった非経済的なメリットも存在する。石黒・李・杉浦・山口(2012)は、社会学領域では若者が地域間移動せずに経済的利益を失う要因について、人間関係を説明変数とする議論が強いことを指摘している。未知の大都市に出ることへの不安感を強く抱える若者が、心理的安心感や充足感を求めて地元に惹きつけるのはさして珍しいことではないだろう。

「住環境」に関しては、地方圏の生活基盤が整備されて都市部との差異が目立たなくなっていることがある。1980~90年代に半導体や電子部品、自動車工場が全国各地に建設される中で、地方圏での土地の造成や道路建設が進められた。その後も、第四次全国総合開発計画や21世紀の国土のグランドデザインといった政策的な多軸型国土構造形成が進められる中で、基幹交通や情報・通信体系が整備され、地方圏は居住地としての利便性を高めていった。一方で、自然と調和のとれた居住環境が目指されたため、地方圏には自然が多く残っている。轡田(2017)の調査では、「周辺農山地域の出身者は、子どもの育つ環境として、『自然の多い環境」のメリットを熱く語る人が多い』ことを指摘している[轡田、2017:p.246]。ウェブ社会化によってオンラインショッピングなどができるようになったことで、地方圏の住環境におけるデメリットはますます感じられにくくなっており、過ごしやすい住環境は地元に惹きつける要素となる。

「若者の人生観の変化」とは、大量消費型の生活からほどほどの生活を求める若者が増加していることを示す。1990年代のバブル崩壊以降、長期に渡って日本の景気低迷が続く中で、親世代の給与を超えることが難しくなり、必要以上に将来に夢や希望を抱かない若者が増加している。阿部(2013)は、「大型ショッピングモールに象徴される地方都市の充実した消費・生活環境が供給する幸福感を発見し、『ほどほどパラダイス』」と述べている[阿部、2013:p.31-32]。わざわざ都市に出なくても、地方圏でほどほどに満足した暮らしができれば満足な若者が増えていることは、結果として地元に若者を惹きつける一因となっているだろう。実際に、轡田(2017)の調査では、大都市暮らしを理想と考える者の比率は極めて低く、地方都市のみを希望する者、及び、地方都市か田舎を希望する者が大半だったことが示されている。

一方で、若者を地元から引き離す要素を整理する。要素としては、①雇用環境、②人口減少、③高等教育機関の不在がある。

第一に、「雇用環境」については先述した通りである。1980~90年代に地方圏の雇用を支えた大企業の工場は、日本国内の人件費高騰や景気低迷を受けて海外に移転した。結果として、地方圏の産業の空洞化を引き起こし、若者の就業機会は乏しく、就業できたとしても非正規雇用による不安定なキャリアパスや、長時間労働や低賃金を強いられており、やりがい搾取の側面が強い。また、産業の偏りが激しく都市部にしか存在しない業種・職種も多いことは、若者の地域移動を引き起こす重要なファクターとなっている。

第二に、地方圏における「人口減少」が挙げられる。総務省『住民基本台帳人口移動報告』によると、2000~2016年の人口動向では、三大都市圏が約200万人増加しているのに対して、地方圏では約200万人減少している。都市と地方の人口差は拡大傾向にあり、この乖離は今後も進んでいくと考えられる。若者の長時間労働の一因が生産年齢人口の人手不足に起因するように、人口の減少はほどほどに充実している居住環境の崩壊をまねく。交通インフラの廃止や商業施設の廃業、社会保障や医療の縮小といった問題が可視化されるようになった時に、若者の地元離れを引き起こすだろう。あるいは、現在問題が表面化していなくても地元での生活への展望が描けなくなることは地元からの移動を意味する。

「高等教育機関の不在」は、小・中学校の義務教育終了後の高校、大学、専門学校が地元に無いことを理由に若者が地域移動をせざるをえないことを示す。周辺農山地域には、そもそも小・中学校しか設置されていないケースも多く、義務教育終了と同時に地域移動を余儀なくされる。そうでない場合にも、高学歴を求める者は偏差値の高い高校を求めて、地域外に移動する。田垣内(2023)は、「市町村の人口規模が小さくなるほど進学校が形成されにくくなり,高校ランクの低い高校に偏ったトラッキング構造になるという傾向性が明瞭にみられる」と述べており[田垣内、2023:p.226]、地域移動を迫られる中学生の姿が浮き彫りになってくる。大学進学に関しても、佐々木(2016)は男女それぞれについて、収容力と進学率の差を比較した際に、進学機能に実質的な余裕がある地域は三大都市圏と宮城県、福岡県に限られていることを指摘している。つまり、地方圏の大半の高校生は都市に移動しなければ大学進学できないのであり、両地域には厳然な教育機会の地域格差がある。さらに、文部科学省『高等教育の将来構想に関する基礎データ』によると、東京圏に本部を置く大学の割合は高まっており、格差は今後さらに広がっていくと想定される。高偏差値の高校や大学への進学を希望する学生は必然的に高学歴を獲得し、良好な賃金水準や就業条件を求める。そうした際に、雇用環境が厳しい地方圏にUターンやIターンする人数は多くなく、高等教育機関の不在は若者を地元から引き離す要素の1つだと言える。

以上のように、地方圏の若者は地元に惹きつけられる要素と地元から引き離される要素を勘案した上で、地元か地元外かの居住地を選択している。若者を引き離す要素である厳しい労働環境や高等教育機関の不在は、地方圏特有の課題だ。都市部の若者は当たり前に地元での進学や就業を考えるが、地方圏の若者はある種「地域か職業か」というトレードオフを迫られると言えるだろう。先行研究はこのトレードオフの現状を明らかにしている点で地方圏の若者の生活実態に迫っている。一方で、①対象者が学卒者を中心としている点、②最初の分岐路である高校進学に焦点が当てられていない点が挙げられる。そこで、本論では以下にて高校進学を目前にした地方圏の中学3年生を対象に、彼ら彼女らの地元に対する地域的特質及び職業的特質の捉え方に着目しつつ、地方での暮らしを「地域か職業か」というトレードオフと捉えているのか、及び、地元/地元外の高校、ひいては今後の生活を選択する上でどこに魅力や不安を感じているかを分析する。

 

第3節 調査方法と対象

 本論の執筆にあたって、2023年7月に中学3年生を対象に「将来の居住地選択に関する調査」という題目にて、質問紙によるアンケート調査を行った。調査は共に地方圏に位置するA町とB町を対象に、C校とD校の2校にて実施した[5]。両地域の選定理由としては、産業構成の面での類似点が多く、比較や統合がしやすいと考えたからだ。特にA町の特徴としては、第一に漁業が盛んで地方圏でありながら経済的に豊かな層が含まれ、両親が漁業従事者の場合に特異な事例を検証できると考えた点、第二に高校生になると大半が近隣町の高校に通うため、高校進学を機に居住地選択の意識が向きやすいと考えたことがある。B町の特徴としては、北海道大学との連携協定が結ばれていることから、高等教育機関の不在という地方圏特有の課題の影響が緩和されていると考えたことがある。

調査は質問紙の郵送によって実施した。質問紙への回答は氏名無記入の匿名式で行われ、質問紙は性別や家族構成、続柄や両親の職業などの基本属性に関する質問5問と、意識調査に関する質問9問33項目から成る。意識調査項目は、過去・将来の居住地、人生観・職業観、地域に関するテーマから構成され、2問を除く全てが選択式である。2問については、自由記述式で現在と将来の地元に対する満足な部分と不満な部分を訪ねている。詳細な質問紙の内容は、末尾に備考資料①として記載している。質問紙は、C校にて23票、D校にて21票、計44票を回収した。

分析方法としては、各質問項目それぞれの度数分布表と各質問項目を掛け合わせたクロス集計表による分析を基調としている。有意差の判定にあたっては、母数が少ないことからカイ二乗分析ではなく、フィッシャーの正確確率検定で行い、信頼区間は95%(p<0.05)とした。なお、分析にあたってはA町とB町のそれぞれの分析だけでなく、母数が少なく1人の回答が説明変数に大きな影響を及ぼすことを避けるため、適宜両町のデータを合算して分析を行った。また、第2章2節では居住地域の最終決定時期を分析するが、質問紙内で最終決定時期を問う設問は存在しない。そこで、中学卒業(問3)、高校卒業(問4)、社会人(問5)の3段階において、地元に残る/残らないを選択してもらった際に、連続して同じ回答がされた起点を居住地の最終決定時期と仮定して分析を実施した。

 

第2章 居住地選択に影響する要因

 本章では、質問紙の回答内容の分析結果を基に、A町とB町で暮らす中学3年生が将来の居住地を選択する上での説明変数となる要素を考察する。なお、本章で使用するデータは母数の少なさによる偏りを少しでも軽減するため、第1節(4)親の職業を除き、第1節(1)年齢、(2)続柄、(3)性別と第2節では、両町の回答結果を合算した上で分析している。また、詳しくは末尾に備考資料①として提示している質問紙を参照いただきたいが、実家に通いながら町外の学校に通う場合は地元在住と定義している。

 

第1節 属性による差異

(1)年齢

本節では、将来の居住地選択における年齢、続柄、性別、居住地域などの回答者の基本属性による傾向の差異を整理する。

 

 

まず、年齢の差異について。概要として、地元での居住を選択する割合は、中学卒業後は65.9%、高校卒業後は18.2%、社会人になった段階では29.5%となっている。中学卒業時点では半数以上が地元で居住するが、高校進学を機に地元に居住する層でも多数が地元外に移動、社会人になるとさらに地元外への流出が進むことがわかる(図1)。

中学卒業時点では、6割強の生徒が地元に居住する一方で、4割弱の生徒が中学卒業時点で地元外に移動予定である。本調査は7月時点の中学3年生を対象に実施しており、進路はある程度固まっていると考えられるため、中学校卒業後の地元外居住比率は高い。「令和2年国勢調査 人口等基本集計」によると、全国計5570万5000世帯のうち18歳未満の単身世帯数は7995世帯となっており、高校生の1人暮らし率は約0.038%である。つまり、全国平均の約10倍の比率で学生が中学時点で地元外への移動を決める現状があると言える。

 

 

表1は中学卒業後に地元に残る理由を示したものである。中学卒業後に地元に残る者のうち74.2%は「地元から通学予定の学校がある」ことを挙げている。実家から徒歩、あるいは公共交通機関を利用して近隣の高校に通うのは都市部では一般的な進学ケースであり、地方圏に残る大部分の者は地元に残って同様のライフコースを辿っていると言える。一方で表2に見るように、地元を出る者の理由としては46.2%が「地元に通いたい学校が無い」こと、38.5%が「親元からの自立」を挙げている。近隣高校は、隣接する町に存在しており、公共交通機関で60分以内の通学圏である。しかし、学校数が限られることによる偏差値や特色のバリエーションの乏しさが一部の高学力層の移動をもたらしていると考えられる。そもそも親元からの自立を求める層にとっては、学校の少なさが地元からの移動のきっかけにもつながっていると考えられる。

 高校卒業時になると、半数以上の学生が地元外での居住を予定しており、若年層の移動が進む。

 

 

地元を出る理由としては、「行きたい学校が無い」ことを47.8%が挙げており、やはり高等教育機関の不在は要因として大きい(表4)。約半数の若者が大卒・専門学校卒という高学歴を獲得するために、やむを得ず地元から移動していると言える。しかし、21.7%が「親元からの自立」、17.4%が「違う町を体験してみたい」ことを挙げており、半数は能動的/半能動的に移動している。高等教育機関の不在は若年層移動の一因ではあるが、周囲の友人が地域移動を決める中で、本来移動の必要性が薄い層まで地元外へ移動していると考えられる。一方で、地元に残る層は「親の仕事を継ぐ」ことや「地元で就職する」ことを理由にしている(表3)。つまり、高校卒業時には、高学歴のためにやむを得ず移動する層、周囲に合わせて何となく移動する層、明確な目的意識と共に地元に残る層に分かれると言える。

また、高校卒業時点の居住地選択に関してもう1点着目したいのは「高校非進学層」である。高校非進学予定者は高校卒業にて「無回答」として分類されるが[6]、無回答者は27.3%となっている。2023年度の全国の高校進学率が98.9%であることを考慮すると[7]、高い割合である。全9名の高校非進学者のうち、6名は社会人になって「地元に残らない」と回答し、地元に残らない理由としては、「親元からの自立(4名)」「町の将来が不安(1名)」「無回答(1名)」としている。高卒が「当たり前」になっている日本の雇用経済では中卒者が就業機会を得ることは非常に困難であり、予めの周囲からのツテやある程度のキャリアプランの策定が必要となる。キャリア面での大きなリスクや不透明性をとっても、親元や地元からの「とりあえず」の移動を求める学生が一定数存在することには留意する必要があるだろう。

社会人になると、地元から移動する者はさらに増加する(図1)[8]

 

 

表6を見ると、地元外に居住する理由を見ると、43.3%が「就きたい職業がない」ことを挙げており、雇用面での不安が大きいことを示している。社会人になると地元外居住率が高まることから、高校卒業時に地元外の高等教育機関に進学した層のUターンは多くないことがわかる。両町の主幹産業である第一次産業では高学歴が必要なく、ホワイトカラー職と比較すると低賃金傾向にあるため、学歴を活かした高賃金の雇用機会が無いという点が最大の要因として考えられる。また、高校進学同様に「親元からの自立(20.0%)」、「違う町を体験してみたい(26.7%)」も存在している。地元に残る理由としても、「就きたい職業がある(20.0%)」「親の職業を継ぐ(20.0%)」という同じ理由が強い。一方で、社会人では「地元が好き(26.7%)」「家族友人と離れたくない(13.3%)」という社会関係資本の理由が増えている。

 

<年齢が居住地選択に与える影響のまとめ>

居住地選択に関する年齢による変化をまとめると、中学校卒業時点では大多数は近隣高校に通うために地元での居住を選択しており、「地域か職業か」というトレードオフは必ずしも感じていない。ただし、近隣高校の少なさを主要因に中学卒業時に移動する層も一定数おり、都市部に比べると地元外居住比率は非常に高い。高校卒業時になると、高等教育機関の不在がトリガーとなって地元外への移動が顕著となる。高学歴・就業機会のためにやむを得ず移動する層、周囲に合わせて何となく移動する層、明確な目的意識と共に地元に残る層に分かれ、その傾向は社会人でも継続される。

 

(2)性別

 

次に性別による居住地選択における差異を説明する。概要として、中学卒業時には男性の61.9%、女性の72.2%が地元に居住予定であり、男女差は見られない(表7)。高校卒業後は、フィッシャーの正確確率検定ではp=0.05であり、わずかに統計的に有意な男女差は見られなかったものの、男性の47.6%が地元外で居住予定であるのに対して、女性はそれよりも高い61.1%が地元外での居住を予定していた(表8)。男女ともに地元からの移動率は高いものの、特に女性の強い地元外への移動傾向が見られる。社会人になると、p=0.013(<0.05)で有意な男女差が見られ、男性の57.1%が地元外で居住するのに対して、女性は88.9%が地元外での居住を予定している(表9)。つまり、中学卒業時点では男女共に地元に残る傾向が強いものの、高校卒業を機に女性の移動傾向が強まり、社会人になると地元居住者には明らかな男女差が見られると言える。では、なぜ彼女らは地元を出るのだろうか。

 

 

表10,11は、それぞれ高校卒業時、社会人時点で地元外に住む理由の男女別回答結果である。女性が挙げた理由として多いのは、高校卒業時点では「行きたい学校が無い(63.6%)」、社会人時点では「就きたい職業がない(40.0%)」「親元からの自立(30.0%)」である。本人の主観的意識としては、大半の女性が地元の高等教育機関の不在をきっかけに地元外へ移動しており、社会人になっても満足な雇用先が無いこと、さらには親元から自立したいという意識も高まって地元に帰ってこないと考えることができる。

では、中学生という若さにも関わらず大半の女性が男性よりも、雇用先の不足や親元からの自立を意識しているのはなぜだろうか。次に各人が潜在的に持つ人生観・職業観や地域満足度[9]から分析する。フィッシャーの正確確率検定にてp<0.05であり、男女差が強く見られた要素としては、女性の方が「資格・知識を必要とする仕事がしたい(p=0.047)」「有名になりたいわけではない(p=0.025)」「地元に貢献したいわけではない(p=0.009)」「体をつかう仕事をしたくない(p<0.001)」「親や祖母の面倒を見るのが当たり前ではない(p=0.008)」という人生・職業観と、「仕事をする場所が十分にない(p=0.027)」「教育環境が充実していない(p=0.046)」「医療環境が充実していない(p=0.003)」「余暇を楽しめる場所が十分にない(p=0.025)」「男女の役割分担が強い(p=0.088)」「男女平等な町ではない(p=0.011)」「自分が活躍できる場所がない(p<0.001)」「地域の将来が明るくない(p=0.007)」という地元への満足度を抱いていた。

 

<性差が居住地選択に与える影響のまとめ>

調査結果の男女の差異を比較すると、中学卒業時点では男女共に地元に残る傾向が強いものの、高校卒業を機に女性の移動傾向が強まり、社会人になると地元居住者には明らかな男女差が見られる。女性が地元外へ移動する原因は、大別すると①希望のキャリアの描きにくさ、②町への不満、③女性の生活のしづらさがある。

具体的に、①希望のキャリアの描きにくさに関しては、地元には女性が就けるブルーカラー職が少ない。そのため、男性よりも専門知識や高学歴を求めて、高校卒業時に地元外の高等教育機関への進学を志向する。しかし、大学・専門学校の卒業をしても、地元では業種・職種の選択肢が限られており、獲得したスキルを活かす就職先が乏しい。さらに、男女の役割分担が強く男女平等な町ではないという意識があることも地元へのUターンを阻害している。結果として、女性はキャリアプランを思い描いた際に、「自分が活躍できる場所がない」と強く感じてしまうと考えられる。②町への不満に関しては、教育、医療、余暇の物足りなさが指摘される。こうした具体的な不満と雇用・生活面での男女格差が重なり、女性の方が「地域の将来が明るくない」と回答しているのだろう。③女性の生活のしづらさに関しては、男性よりも地元への貢献意識や親・祖母の面倒を見るべきだとする意識が明らかに弱い。この原因としては、家系の主たる男子が地域や親族の面倒を見るべきだという観念、あるいは、逆に女性が家庭を守って地域交流や親族の世話をするべきだとする観念に反発したものだと想定される。どちらの要因であるかは聞き取り調査によって明らかになる部分ではあるが、こうした観念が男女分業の意識につながり、地元外への移動につながっていると考えられる。

 

(3)家庭環境

続いて、続柄や親の職業などの家庭環境が居住地選択に及ぼす影響を考察する。

 

 

まず、続柄に関してはいずれの段階でも、統計的な有意差は見られなかった(表12,13,14)。第一子の地元居住率は、社会人では多少強い傾向にあるものの、全体としては第二子や第三子と変わらなかった。第一子を家の跡取りとして残す文化はなく、第何子であってもフラットに将来の居住地を選択できると言える。また、第三子が第一子や第二子と同じくらいの人数いる点も特徴的であり、子どもを持つ家庭では複数人の子どもを養育できる環境が整っていると考えられる。

 次に親の職業が居住地選択に及ぼす影響について。中学卒業、高校卒業、社会人の全ての段階において、父親・母親のいずれの場合も両親の職業との相関は見られなかった[10]

一方で、先述したように先行研究では地方圏における雇用環境が若者を流出させることが明らかになっている。A町は地方圏にも関わらず比較的高い世帯年収を持つが、背景の一因として漁業従事者の高年収がある。本調査にて、A町で親が高所得者の漁業従事者でも、地元に残る傾向が無いのはなぜだろうか。そこで、以下では両親のいずれかが漁業従事者のA町の生徒のみを抽出した分析結果を説明する。

 

 

 

 

 表15,16,17と図1より、A町で親が漁業関係者の生徒と、両地域全部の生徒の地元居住率を比較すると、中学卒業時はA町漁業関係者:全体=60.0%:65.9%、高校卒業時はA町漁業関係者:全体=37.5%:18:2%、社会人ではA町漁業関係者:全体=40.0%:29.5%となる。統計的な有意差は見られないものの、A町で親が漁業従事者の生徒は、高校卒業時と社会人段階で地元に残る者の割合が高い傾向にある。では、彼ら彼女らはどのような理由で地元に残る/残らない、を決めるのだろうか。

 

 

表18~21は高校卒業時と社会人時点で、地元に残る/残らない理由を尋ねた結果である。特徴としては、地元を出る層も出ない層も雇用以外の理由を挙げているケースが多い。まず、地元に残る理由としては「家族や友人と離れたくないから」「地元が好きだから」が「親の仕事を継ぐから」という雇用上の理由と並んで挙げられている。地元を離れる理由としても、「行きたい学校が無い」「就きたい職業がない」と同等かそれ以上に「違う町を経験したい」や「親元からの自立」といった理由が挙げられている。つまり、彼ら彼女らにとって地元での就業不安は比較的低く、学校や就業機会の不足といったやむを得ない理由よりも、家族・友人との関係性という社会関係資本の要因や親からの自立や地元以外の町を知りたいという発達上の要因が強く意識されている。総体として、地元居住率は両親が漁業従事者以外の生徒と差異は無いものの、内実としては雇用の不安に悩まされることなく本人の自由意思で居住地を選択できる傾向にあると考えられる。

 

<家庭環境が居住地選択に与える影響のまとめ>

以上の家庭環境が居住地選択に及ぼす影響をまとめる。まず、続柄と居住地選択の間には統計的な相関は見られなかった。昔ながらの長男を家の跡取りとして地元に残すという風潮は無く、続柄に関わらず自由に居住地を選択することができている。次に、両親の職業も統計的に居住地選択に影響を与えないことがわかった。その点で、例えば高所得者であるA町の漁業従事者の親がいる若者は地元に残る、といった単純な関係性はない。一方で、その内実を見てみると親が漁業従事者のA町生徒は地元を出る理由として、「就きたい職業がない」と同数ずつ、「違う町を経験したい」「親からの自立」が挙がった。他の生徒に比べると、地元での就業に関する不安が少なく、社会関係資本や外部への好奇心を意識している傾向にあることがわかる。データ数が少ないため偏りが大きい点には留意する必要があるが、彼ら彼女らは地元の人間関係が好きだから残る、親から自立したい/違う町を経験したいから出るといった能動的な選択をできる条件にあると言えるだろう。

 

第2節 居住地の最終決定時期による差異

これまで居住地の選択を各学校段階終了時に分けて個々で分析してきたが、結局のところ個人としてはいつの段階で居住地を最終決定するのだろうか。そこで本節では、中学卒業(問3)、高校卒業(問4)、社会人(問5)の3段階において、地元に残る/残らないの回答が以降連続する起点を「居住地の最終決定時期」と定義した上での分析結果を説明していく。例えば、回答者Aが中学卒業時点で「地元に残る」と回答し、高校卒業時と社会人でも「地元に残る」と回答した場合はAの「居住地の最終決定時期」は中学卒業時、回答者Bが中学卒業時点で「地元に残る」と回答し、高校卒業時と社会人では「地元に残らない」と回答した場合はBの「居住地の最終決定時期」は高校卒業時、という具合である。

 

 

表22から見てわかるように、半数の生徒が中学卒業時点で自分が居住地を地元にするか地元外にするかを決定していることがわかった。都市圏の大学生は、ほとんどが実家から通学圏内の中で自分に合った特色や偏差値を持つ高校に通い、大学も一部の地方大学進学者らを除くと、大半が実家から通学する。都市部の学生が居住地選択を迫られるのは、多くの場合で社会人になった時、早くても高校卒業時である。地方圏においてなぜこれほど多くの生徒が中学卒業時点で居住地を最終決定するのだろうか。さらに言えば、そもそもどのような層が超早期に居住地を最終決定するのだろうか。以下では、中学卒業時点で居住地を最終決定する者を抽出してその原因を考察する。

 

 

総数として、中学卒業時点で居住地を最終決定する者は24名。居住地を地元に決める者と地元外に決める者の比率は半々だった(表23)。早期の居住地選択者は、地元定着に寄っているわけでも、地元からの移動に寄っているわけでもない。また、性別・続柄・両親の職業・居住地のような回答者の属性との統計的な関連性も見られなかった。男性だから早く決める、長男だから早く決める、親が公務員だから早く決めるということではないと言える。

一方で、統計的な関連性が認められた要素として、地元に居住する者は「家族・親戚の近くで暮らしたい(p=0.037)」、地元外に居住する者は「都会の生活に憧れる(p=0.023)」ことがわかった。いずれの理由も雇用環境や地域の具体的な課題を踏まえているというよりは、心理的要素と言える。つまり、中学卒業時点で居住地を最終決定する場合、不可抗力で地元外に押し出されているというよりは、能動的に定着・移動する傾向にある。第2章1節(1)年齢で確認したように、高校卒業時の高等教育機関の不在や社会人で就業機会の不足によって、押し出されるように地元外に移動するケースとは様相が少し異なると言えるだろう。また、統計的な有意差は見られなかったものの、中学卒業時点で地元居住を決める者は「のんびりと働きたい」「周囲の大人と同じような職業に就きたい」と回答する傾向にあり、地元外での居住を決める者は「有名になりたい」「余暇を楽しめる場所が十分にない」「自分が活躍できる場所が十分にない」と回答する傾向にあった。

 

<居住地の最終決定時期による差異のまとめ>

地方圏の学生は、中学校卒業時という早いタイミングで今後地元/地元外のどちらで生活するかを決める傾向が強いと言える。ただし、超早期に居住地選択を行う層は、外部環境によって決めなければならないというネガティブな選択というよりも、地元愛や都会への憧れを理由にポジティブな選択をしていると言える。都市部の学生がモラトリアム的に社会人になるまで地元に残り続けるのに対して、地方圏の若者は地元の魅力や特質を早期から実感し、早期に意思決定を行えていると捉えることができるのではないだろうか。

 

第3節 地方圏の中学生が考える地元の魅力と課題

 これまで地方圏の中学生がどのような要素を基に将来の居住地を選択し、選択するにあたってどのような実情に置かれているかを見てきた。能動的に地元に残る者もいれば、受動的に地元から移動せざるをえない者もおり、地元に対して長所も短所も感じている様相が伺えた。では、地方圏で暮らしている彼ら彼女らは具体的に地元の魅力や課題をどのように考えているのだろうか。本節では、彼ら彼女らが地元に対して感じている魅力と課題を整理する[11]。なお、本章で用いるデータに関して、抽出作業などは行わずに全回答票44票を基にしている。

地域満足度に関して、全体の中で肯定的回答が60%を超えた[12]項目としては、「教育環境が整っている(81.8%)」「医療・福祉環境が整っている(61.8%)」「交通インフラが整備されている(61.4%)」「子育て環境が整っている(77.3%)」「男女平等な町である(81.8%)」「コミュニティが心地よい(75.0%)」「他の地域にはない魅力がある(84.1%)」が挙げられた。地元の中学生の大半が多くの面で地元に満足している様子が伺える。まとめると、①充実した生活基盤、②地域コミュニティ、③他の地域にはない町の個性、これらの3点が彼ら彼女らが感じる地元の魅力だと言える。

まず、①充実した生活基盤に関して、教育環境、医療・福祉環境、交通インフラ、子育て環境にポジティブな印象を抱く生徒が多い。これら以外の生活基盤に関わる要素としては、雇用環境、余暇の充実度を質問項目としている。つまり、雇用面と娯楽面を除けば、多くの中学生が日常生活を過ごす中では高い満足感を抱いていると言える。特に、教育環境の満足度は80%を超えており、地元での教育に多くの生徒が満足している。その事実にも関わらず、先に見たように高校進学を機に約半数の生徒が地元外に居住する実態を踏まえると、地元での教育水準に不満があるわけではないが、高等教育機関が無いから仕方なく地元外に移動している様相が伺える。

次に②地域コミュニティに関しても、高い満足度を感じていることがわかった。地元の魅力についての自由記述でも「温かくて良い町だと思う」「みんな優しい」「コミュニティが温かい」「地域の方はみんなとても親切で優しい方ばかり」といった、地域コミュニティに関するポジティブな意見が多くあった。地域コミュニティのような社会関係資本は地方圏のメリットとして先行研究でも指摘されている部分ではあるが、実際に地方で生まれて地方で暮らす中学生も地域コミュニティの強さを体感すると共に、居心地の良さを感じていると言える。

最後に、③他の地域にはない町の個性は、地元に関する満足度で最も肯定的意見が多かった要素であり、84.1%の生徒が肯定的回答をしている。自由記述では「独自の産業がある」といった産業面での特色や「自然が豊か」「夏が涼しい」といった自然環境に関する特色も挙げられた。

地方圏の中学生が今現在地元で暮らす中では特段不自由を感じておらず、むしろほとんどの面で高い満足感を抱いていると言える。雇用や余暇の面では少し不満があるものの、医療・福祉、交通インフラ、子育て環境などの生活する上で必要不可欠な要素は充実しており、特に生活の大半を占める学校の質や水準にも満足している。また、温かみのある地域コミュニティにも居心地の良さを感じており、唯一無二の個性がある地元である程度快適に暮らしていると言えるだろう。

一方で、否定的意見[13]が50%以上の項目としては、「親や祖父母の面倒を見るのが当たり前ではない(52.3%)」「地域の将来は明るくない(52.3%)」が挙がった。また、先述したように50%は越えなかったものの、「仕事をする場所が十分にない(47.7%)」「余暇を楽しめる場所が十分にない(47.7%)」も不満を抱える者が多かった。地元の課題としては、①家族・親族関係のつながりの希薄化、②就業機会の乏しさ、③余暇を楽しめる場所の乏しさ、④地元の将来性の不透明さを中学生は感じていると言える。

まず、①家族・親族関係のつながりの希薄化は、若者の漠然とした不安感につながる。思春期の真っただ中で進路・プライベート・キャリア・友人関係・恋愛などの様々な面で悩みを抱える若者にとって、自分を最もよく知る家族・親族は最も頼れる相談相手となる。また、家族・親族のつながりが強いことは、若者を地域に留まらせる要因ともなり、地域社会の持続という意味でも重要である。

②就業機会の乏しさは、これまで見てきたように就業機会の絶対数と業種・職種の選択肢の不足を意味する。中学生段階では雇用の現実を意識する場面は少ないと考えられるが、その中でも半数近くの中学生が地元での就業に関して不安を感じている現実は無視できるものではない。

③余暇を楽しめる場所の乏しさについては、自由記述でも「楽しむ場所が少ない」「店が少ない」「イオンとかカラオケが無い」「飲食店が少ない」「もっと遊べる場が欲しい」といった不満が多く述べられていた。飲食店や娯楽施設の乏しさは目に見える要素であり、流行に敏感になり始める中学生にとっては、最も意識しやすい地元への不満点であり、スピードを持って解決してほしい課題である様子が伺えた。

最後に、④地元の将来性の不透明さに関しては、自由記述での「地元で有名なものは残しておいて町の発展に使えば良いと思う」「人口が減少しているから何か対策を立てないといけないと思う」「将来にどんな仕事が地元にあるのかをあまり知らないけれど人が足りなくなりそう」といった意見からも窺い知ることができた。中学生である彼ら彼女らにとっては、町の「人口減少」が町への将来性を不透明に感じさせる要因として強く影響しているようだ。

 

<地方圏の中学生が考える地元の魅力と課題のまとめ>

地方圏の若者は地元に対して不満を多く抱えているわけではない。むしろ「今現在」生活している分には、不便のない生活基盤の下で、地方ならではの濃厚な地域コミュニティや町独自の魅力を感じながら充実した日々を送れている。余暇の面では不満もあるものの、地元外への移動を決めるほどの要素ではない。ただし、「将来」の地元での暮らしを考えると課題が意識され、就業機会や人口減少の進む町の将来性の面で多くの中学生が不安を抱えている。ゆえに、将来の居住地を問われると、喫緊の中学卒業時点では多くの学生が不自由のない地元での暮らしを選択するが、年齢が上がって地元の現状を現実的かつ具体的に考えると、地元外に移動することを選択してしまうのではないだろうか。

 

第3章 地方圏の中学生のタイプ分類と特徴

第1節 居住地選択に関わる地方圏の中学生の類型

第2章で確認したように、地方圏の中学生の居住地選択に関しては、大前提として地元に残るか、地元外に移動するかという2つの選択肢がある。ただし、単に「地元に残る/地元外に出る」といっても、その選択が自らの意思でポジティブに選択したものなのか、経済面や家庭面などの外部環境によってネガティブに選択せざるえないものだったのかによって、本人の居住地での生活や人生の満足度には雲泥の差がある。つまり、居住地選択を考える上では、地元に残る/地元を出る、能動的選択/受動的選択の4つのパターンを分けて考える必要があるだろう。実際に、座標平面上に4の類型化を行ったのが図2である。

 

 

地元での居住を選択する地元志向型の中でも、能動的に選択する者(地元志向Ⅰ型)と受動的に選択する(地元志向Ⅱ型)、地元外での居住を選択する移動志向型の中でも、受動的に選択する者(移動志向Ⅰ型)、能動的に選択する者(移動志向Ⅱ型)に分けられる。また、地元に残るか移動するかがはっきりと定まらず、定着/移動する理由も明確には持たない層も一定数存在しており、モラトリアム型として分類した。以下では、各類型の具体的な対象者について説明する。

 

第2節 各タイプの特徴

(1)地元志向Ⅰ型(定着/能動型)

地元志向Ⅰ型は「自分の意思で地元での居住を選択する者」である。地元で明確に就きたい職業がある場合や、地元の雰囲気や人間関係が好きだから残ることを能動的に決めるタイプが当てはまる。具体的には、①周囲の大人と同じような職業を目指す層、②地元の人間関係に魅力を感じる層が該当する。人数としては、移動志向Ⅰ型に次いで多い。

①周囲の大人と同じような職業を目指す層の例としては、A町で親が漁業従事者かつ地元での居住を選択した者が当てはまる。A町の漁師は都市部のホワイトカラー職と比べても、遜色ない所得を得られる可能性が高い。彼ら彼女らは、地元から中学校・高校に通って、親と同じ職業に就いてのんびりと安定した生活を過ごす、という将来のライフイメージを志向している。周囲の大人と同じような職業に就いて生活することを具体的にイメージできるのは、地方圏ならではの特徴であり、能動的に地元での居住を選択する一因になると考えられる。親と同じような生活を希望することが、能動的に地元での生活を選択することにつながると言えるだろう。

②地元の人間関係に魅力を感じる層としては、中学卒業時点で居住地を地元に最終決定する者が挙げられる。彼らは、地元に残る理由として「家族・親戚の近くで暮らしたい」が有意に高かった。地方圏ならではの濃密で温かみのある家族コミュニティに幼少期から接する中で、強い魅力を感じて能動的に地元での暮らしを選択していると言えるだろう。また、B町で社会人になっても地元に居住する層も「地元が好きだから」という理由が最大の理由となっている。先行研究で指摘されていた人間関係の強さという地方圏の魅力は、実際に学生の能動的な地元居住に影響を与えていると言える。

都市部では地方圏に比べると就業機会が多いが、逆に言えば選択肢が多すぎるあまり自分のやりたいことが大人になっても定まらないことも多い。例えば、都市部の大学生が就職活動をするタイミングになっても自分のやりたいことが決まらず、アイデンティティを喪失することは近年問題になっている。対して、彼ら彼女らは中学生時点で、地元で周囲の大人と同じような職業に就き、近くにいる家族や親族から精神的な安定感や、時には人生や仕事に関するアドバイスを貰いながら暮らす、というライフコースをある程度描けている。

 

2)地元志向Ⅱ型(定着/受動型)

地元志向Ⅱ型は「仕方なく地元での居住を選択する者」である。地元外に移動することを志向するが、経済的事情や家庭の事情で残留することを余儀なくされるタイプが該当する。本調査では、このタイプに分類できる層は本調査では見られなかった。

先行研究では、地方圏の方が実家を出るタイミングが遅く、その背景には低賃金や非正規雇用といった不安定就業状態に追いやられやすい若者が食費や医療費を親と折半することで、何とか生活を成り立たせている状況が指摘されていた。しかし、本調査では中学生時点では地元での暮らしに関して雇用面や生活面で不安がある場合、我慢して地元に残ることよりも、とりあえずでも地元外に出ることを志向する傾向にあることが明らかになった。また、家庭的事情に関しても、調査結果では続柄と居住地選択に相関関係は無かった。地元外での暮らしに憧れがあるけれど、長男で家を継がなければならないから地元に残るような傾向は見られない。

ただし、地元志向Ⅱ型として分類されうる層の存在には留意したい。地元志向Ⅰ型として分類した中学卒業時点で居住地を地元に最終決定する者である。彼ら彼女らは、「家族・親戚の近くで暮らしたい」「周囲の大人と同じような職業に就きたい」「のんびりと働きたい」ことを主な理由に地元での居住を選択している。周囲の大人をモデルケースとして能動的に地元に居住していると見るだけでなく、自分の知らない生き方に恐怖感や違和感を必要以上に覚えて、外の世界の広がりを志向しないままに地元での生活を選択してしまっている可能性がある。本調査のみでは彼ら彼女らの真意を図ることはできないが、地元外の可能性も経験した上で、周囲の大人と同じようなモデルケースを能動的に選択できるようにすることが、人生の満足度を高める上でも重要である。

 

3移動志向型(移動/受動型)

移動志向Ⅰ型は「仕方なく地元外での居住を選択する者」である。地元での居住を志向・希望するが、学校の有無や雇用環境、町の生活環境によって、地元外への移動を余儀なくされるタイプが該当する。具体的には、①進学を機に地元外へ移動する層、②就職を機に地元外へ移動する層、③男女役割に違和感を抱いている女性が該当する。最も人数が多い型である。

まず、①進学を機に地元外へ移動する層の例としては、高校卒業を機に地元外へ移動する者が当てはまる。高校卒業時点で、約半数は希望の大学・専門学校が地元に無いことを理由に地元外での居住を選択する。反対に、高校卒業後に地元に残る層は、親の仕事を継ぐことや地元での就職を決めており、地元に残る明確な理由が存在する場合が多い。都市部の学生の大半がそうであるように、明確なキャリアプランが描けていない学生は、社会で有利とされる高学歴や専門知識を求めて、高偏差値や専門性の高い高等教育機関への進学を希望する。地元に高等教育機関が無いことを理由に、学生の多くが必然的に押し出されるように地元外に移動していくこととなる。

次に②就職を機に地元外へ移動する層に関しては、就業機会や業種・職種の少なさといった雇用環境の厳しさを理由に移動する。社会人になって地元外へ移動する者のうち、4割強が「就きたい職業が無い」ことを挙げている(表6)。高校まで地元にいるけれど、いざ地元で働くイメージを膨らませると働きたい業種・職種がない、都市圏にしかない業種・職種だから慣れない地元外に移動せざるをえない、そうした実情が浮かび上がる。また、高校卒業を機に既に地元に出ていた者は、獲得した専門知識や学歴を活かせないため、地元外に押し出されるように居住し続けるケースが多い。

最後に③男女役割に違和感を抱いている女性が当てはまる。女性は男性に比べると有意に地元から押し出される傾向が強い。女性は、雇用面と生活面の双方で不利な状況に置かれる傾向がある。特に強いのが雇用面での不利益であり、ホワイトカラー職を望む女性が多いのに対して、ブルーカラー職が多い雇用環境や男女分業が残っている環境は、女性の地元離れを進めている。必ずしも全員がそのように感じているわけではないが、学生段階で男性よりも女性の方が、不利な状況を感じやすい現状は留意する必要がある。共働きが進む現代において、周囲に親や親戚・地域コミュニティがあることは、時間、体力、金銭、精神面など、子育ての負担を軽減する上で大きなメリットとなる。そのメリットを十分に感じられず、地元外に押し出されがちな地方圏の女性の様相が伺える。

以上のように、地域から移動する若者の多くは決して能動的に出ていくわけではない。第2章3節でも述べたように、彼ら彼女らは決して地元に不満を多く抱えているわけではない。地元には他の地域にはない魅力があることも理解しているのに、学校や雇用面といったやむを得ない理由で仕方なく地元外に移動する層が一定数存在する現状がある。また、全体の職業・人生観の特徴として「のんびりと働きたい」「個性・感性を活かした働き方がしたい」「安定した仕事に就きたい」「男女平等な職場で働きたい」と感じる者は全体の80%を超えている[14]。都会で有名になったり、他の人より高い収入を得たりしたいわけではないのに、安定や男女平等のために地元外への移動を余儀なくされている。つまり、彼ら彼女らは「安定のための挑戦」を強いられていると言えるだろう。

 

4移動志向型(移動/能動型)

地元志向Ⅱ型は「自分の意思で地元外への移動を選択する者」である。いわゆる都会でのバリキャリや地元外での生活を希望し、能動的に地元外への移動を選択する者がこのタイプである。具体的には、①経済的な後押しを受けてチャレンジできる層、②都会への憧れを強く持つ層が該当する。基本的には、地元志向型Ⅰ型と属性は同じものの、地元での居住ではなく地元外への移動を選択した対の存在だと言える。

まず、①経済的な後押しを受けてチャレンジできる層の例としては、A町で親が漁業従事者、かつ地元外での居住を選択する者が挙げられる。彼ら彼女らは地元外への進学や移住において経済的援助を受けやすい。あるいは、地元に残ることでのんびりと安定した生活を選ぶことも可能である。そのため「就きたい職業がない」という消極的な理由ではなく、「親からの自立」「違う町を経験したい」といった前向きな理由で移動していく。周囲の大人が働く様子を見たり、地元で生活したりする中で、地元にいたら自分が辿るライフコースをイメージし、違うライフコースへと飛び込んでいく。雇用面や経済面での不安が少ないからこそ、能動的な選択をすることができると言えるだろう。

次に②都会への憧れを強く持つ層だ。例えば、中学卒業時点で居住地を地元外に最終決定した者である。第2章2節で述べたように、彼ら彼女らが地元から移動する理由は、有意に「都会の生活に憧れるから」となっている。決して都会での具体的なキャリアプランや就業のツテがあるわけではなく、地元に大きな不安があるわけでもない。それでも、都会の生活への憧れや地元にずっといることへの閉塞感から、地元を飛び出して都会に飛び出していくことを希望する。夢見がちとも言えるが、若者ならではのエネルギーやチャレンジ精神と共に能動的に地元から移動することを選択していると言えるだろう。

能動的に地元から移動する移動志向Ⅱ型は、必ずしも地元外での生活のキャリアイメージを描けているわけではない。しかし、若者が自分自身で能動的に選択したという事実は、馴染みのない土地でも頑張ろうとする活力となる。地域経済から見ると若年層の流出は痛手ではあるが、移動志向Ⅱ型に対しては若者の挑戦を応援しつつ、地元外に出てから途方に暮れることが無いように大人が現実的な地元外でのライフプランやキャリアイメージを持たせてあげることが必要ではないだろうか。

 

(5)モラトリアム型

 モラトリアム型は、地元内外での居住を選択しているものの、自分の能動的な意思や雇用環境・生活環境といったやむを得ない事情があるというより、「とりあえず」何らかの選択している層である。4つの型のいずれにも属さず、狭間で揺れ動いている状態にある。具体的には、①単純に決まっていない層、②目的は無いが地元外に移動する層が該当する。

まず、①単純に決まっていない層は、居住地を選択する理由として「何となく」「フツーに」「まだわからない」といった回答をした層を指す。高校卒業後や社会人時点といった数年後の話ではなく、調査日から数か月後の中学卒業時に関しても同様の回答が存在した。特に理由は無いが、周囲に合わせて同じようなルートを辿っている層だと言える。そもそも都市部では中学卒業時点では地元に残るのが当たり前であり、地元外に移動する選択肢すら浮かばない。都市部の学生こそ、周囲に合わせて何となく地元にとどまることを選択しており、モラトリアム型は都市部に多いタイプと言えるかもしれない。地方圏では少数派のタイプではあるが、居住選択に関して正直まだわからないと答える彼ら彼女らの現状はいたって普通だとも言えるだろう。

②目的は無いが地元外に移動する層の例としては、高校非進学かつ地元外に移動する層が当てはまる。彼ら彼女らは、移動する理由として「親元からの自立」「町の将来が不安」を挙げている。高卒がほとんどとなっている現代の日本社会において高校に進学しないまま、地元外へ移動する選択肢はリスクが大きい。それでもその選択肢を選ぶ背景には、高校に進学できない経済的事情や、中卒のまま地元を出ていくリスクを説明する頼れる大人が周囲にいない可能性も想定される。詳細な背景を知るためには聞き取り調査が必要ではあるが、地方圏の強みとして濃密な人的ネットワークがあるため、地域社会全体でモラトリアム状態にある学生を支えていく必要があるだろう。

 

第3節 両町の地域振興策の有効性

以上のように、地方圏の若者は大きくわけて5つのタイプに分類できる。人数としては最も多いのが「仕方なく地元外での居住を選択する者(移動志向Ⅰ型)」、次いで「自分の意思で地元での居住を選択する者(地元志向Ⅰ型)」である。この2タイプに類する若者にいかに地元での居住を選択してもらうかは、地方圏における人口流出を食い止める鍵となる。そこで、以下では両町の地域振興策の有用性について、A町・B町の総合戦略[15][16]を基にさらに掘り下げながら確認していく。

まず、移動志向Ⅰ型に対して有効であると考えられる施策を確認する。移動志向Ⅰ型に分類される層としては、①進学を機に地元外へ移動する層、②就職を機に地元外へ移動する層、③男女役割に違和感を抱いている女性の3つがあることを確認した。換言すると、①高等教育機関、②雇用環境、③男女役割に関する課題を要因として地元外へ移動していると考えられる。

①高等教育機関の課題とは、大学や専門学校が地元に無いことを意味する。第2章1節(1)年齢で確認したように、多くの学生が学校の不在を理由にして高校卒業を機に地元外へ移動してしまう現状がある。対策としては、高等教育機関を誘致することで高校同様に地元から通学できるようにすることが考えられるが、若年層の絶対数が少ない地方圏への誘致は現実的には困難だ。そこで、B町では北海道大学を始めとする包括連携協定締結大学等との連携事業や、A町・B町共に卒業後に町内就職に対する者への奨学金償還免除制度を行っている。つまり、高校卒業後に一度町を出ることを許容して、町に出てから戻るまでの動機づけを進めている。不利な地理的条件を理解した上で、若者を地元に留めるのではなく、自発的にUターンしやすくする施策は現実的であり、非常に有効性の高い施策だと言えるだろう。

②雇用環境の課題とは、就業機会そのものが少ないことと、業種・職種が限定されていることを指す。A町・B町共に、既存産業の振興と新規産業の創出の両輪に取り組んでいる。既存事業に関しては、漁港や水産物加工施設の整備、農地・草地の改良といった持続的な事業運営のための環境整備だけでなく、ふるさと納税や特産品のブランド化を通じた新規販路開拓も進めている。町の経済の中核を担う第一次産業の発展は、未来の町の中心たる若者が安定した生活基盤で暮らせるようにするために不可欠であり、今後も継続する必要がある。一方、本調査では「就きたい職業がない」ことを理由に地元外へ移動する若者の多さも確認できており、既存産業だけでなく様々な産業に従事できる場の提供が必要である。そこで必要なのが新規産業の創出であるが、自然体験事業や観光誘客促進事業を通した観光業の促進や、IoT構想の推進やテレワーク拠点整備を通した企業誘致が施策として打ち出されている。地方圏ならではの観光資源や自然環境の豊かさを活かして第一次産業以外の産業することは、若者の就労機会の選択肢を増やすことにつながり、社会人になっても地元に定着すること、あるいはUターンを促進する上で非常に有用である。

③男女役割に関する課題とは、女性が生活面や仕事面で男性よりも不利な状況に置かれていると感じる傾向がある現状を指す。現在、両町では子育て環境や教育環境の整備といった女性を生活面で支えることを意識した施策が打ち出されている。具体的には、妊婦健診・乳幼児健診等の充実や学童・各種検診の費用助成制度といった経済面での支援だけでなく、子育て世代包括支援センター事業や母親学級等の保健指導事業といった精神的サポート、待機児童ゼロや放課後児童対策事業といった身体的サポートなどの様々な側面から母親への包括的支援が行われている。第2章3節でも述べたように、本調査でも教育環境や子育て環境にポジティブな印象を抱く生徒は多く、特に教育環境の満足度は80%を超えていた。子育ては母親の生活の大半を占める重労働であり、その意味では母親である女性を生活面で支えられていると言える。子育てをしていない学生が肌感覚でわかるほど、両町の母親への施策は高い効果を発揮している。しかし、女性の雇用面や一個人としての生活面のサポートは不十分である可能性があり、詳しくは終章で言及する。

次に、地元志向Ⅰ型に対して有効であると考えられる施策を確認する。地元志向Ⅰ型に分類される層としては、①周囲の大人と同じような職業を目指す層、②地元の人間関係に魅力を感じる層の2つがあることを確認した。言い換えると、①周囲の大人に憧れを持ってもらう必要性、②地域の人間関係のつながりの強化が必要である。

①周囲の大人に憧れを持ってもらうことに関しては、両町で農業後継者支援事業や酪農業の担い手への支援・サポート事業が行われており、若者へ第一次産業の魅力を描いてもらうための取組みが行われている。実際に働き始めてからのギャップを埋める上でも、学生のうちから職務内容を知っておくことは重要であり、有用な施策だと言える。一方で、学生は仕事面だけでなく生活面でも自分が大人になったときにどのように過ごしていくのかを不安に感じている。より多様な側面から若者が地元での生活イメージを明確に描けるようにしていく必要があるだろう。

②地域の人間関係のつながりの強化については、まちづくり人材育成事業助成や地域集会施設の管理、中学生・高校生リーダークラブの支援や青年団体協議会への支援といった施策が行われている。人間関係は制度面からアプローチすることは難しい側面があるが、両町とも地元ならではの人的ネットワークの重要性を意識していると言える。特にユニークな施策としては、他市町村との婚活推進イベント推進や出会いの場づくりといった結婚支援がある。第1章2節(2)地方圏の社会関係資本的特質でも述べたように、轡田(2017)は「20~30代にとって、『幸せ』や『楽しさ』という概念が、『配偶者』あるいは『恋人』の存在と結びつけて考えられる傾向が圧倒的に強い」と指摘している[轡田,2017:p123-124]。地元に恋人がいることは若者にとって、地元に定着・Uターンするのに十分な動機であり、能動的に地元に居住してもらう上で非常に有用だと言えるだろう。

地方圏の若者の減少を食い止める上では、最も人数が多い移動志向Ⅰ型(移動/受動型)と地元志向Ⅰ型(定着/能動型)へのアプローチが不可欠である。実際にA町・B町の地域振興策を見てみると、それぞれのタイプが課題に感じている点は改善し、魅力に感じている点は伸ばそうとしており、施策に一定の有効性があることが確認できた。一方で、現状の施策では解決できていない部分も同時に存在する。そこで以下では、本稿のまとめと共に、より多くの若者に地元に定着してもらうために何が必要かを考察することで終章とする。

 

終章 若者が地元で明るい未来を描くために

 本稿の目的は、高校進学を目前にした地方圏の中学3年生を対象に、彼ら彼女らの地元に対する地域的特質及び職業的特質の捉え方に着目し、いかなる層がどのような理由で地元に定着したり、地元から移動したりすることを決めるのかを考察することで、地方圏の若者が人生設計において重視している事柄を明らかにすることであった。具体的には、地方圏に位置づけられる北海道内のA町・B町の中学校にて、地域の魅力と職業の可能性の観点からアンケート調査を実施し、地方での暮らしを「地域か職業か」というトレードオフと捉えているのか、及び、地元/地元外の高校、ひいては今後の生活を選択する上でどこに魅力や不安を感じているかを分析してきた。

結論として、本調査では半数強の生徒が中学卒業後も地元に留まることを選択しており、中学生の時点では「地域か職業か」というトレードオフを行動面で迫られているとまでは言えないものの、早期から居住地を意識している層がいることが示された。高校卒業時には多くの生徒が地元外へ移動する。地方圏の若者は高卒時点で、都市部の生徒が直面することのない「地域か職業か」というトレードオフを迫られている。一方で、彼ら彼女らは決して今現在の地元での暮らしに不満ばかりがあるわけではない。むしろ、第2章3節で確認したように、大部分で地元の生活環境やコミュニティに満足しており、地元ならではの魅力も理解している。地元での暮らしに満足はしているが、高等教育機関や就業機会の不足といった現実的な問題や、男女格差や将来性を踏まえると地元で暮らす未来が描きにくいのであり、こうした理由から消極的に地元から押し出されている面がある。本来は地元から出たくない若年層まで地元外に出ていると言え、人口減少がさらなる若年層の流出を生むといった悪循環が一部で起きていると考えられる。この悪循環は地域経済を縮小させて地方圏の暮らしの持続性を危うくするだけではなく、地方で生まれ暮らす若者が抱く「地元で暮らしたい」という素朴な願いも刈り取ることとなるだろう。

では、地方圏からの若者の流出を食い止め、地元での暮らしに明るい未来を描いてもらうためにはどのような施策の方向性が考えられるのか。第3章3節で確認した現在行われている地域振興策以外のアプローチからの提言を行う。

1つ目は、地方圏の若者が地元での「ライフコースを明確に描けるように支援する」ことだ。本調査では、能動的に地元に残る層である地元志向Ⅰ型の特徴として、地元での具体的なライフコースをイメージできていることが明らかになった。一方で、地方圏のライフコースは現在揺らぎの最中にある。阿部(2017)は、地方圏では非正規雇用の拡大によって従来の標準的なライフコースが崩れてきており、安定したキャリアの展望の困難さを生むだけでなく、結婚の先送り、結婚ばなれや少子化にもつながっていることを指摘する。雇用面だけでなく、本調査では「家族・親戚関係の希薄化」という地域課題も明らかになっており、コミュニティの形も変化している様子が伺える。地元での働き方や人との関わり方が変化していく中で、若者は将来の自分が地元で暮らしている鮮明なイメージを持つことができず、地域固有のライフコースが意識されにくくなっていると言えよう。彼ら彼女らが地元でのライフコースを明確に描けるようにするためには、やはり家族・親族、教員、地域構成員といった周囲の大人による行動面・言語面での支援が必要である。それは、学校の授業の一環で地域住民の辿ってきたライフコースやキャリアを聞けば達成されるような単純なものではない。日々の生活の中で若者と大人が触れ合い、知識ではなく体感として地元で暮らし続ける自分の姿をイメージできるようになる必要がある。つまり、地域の大人と若者との日々の接点を意図的に増やし、若者が自然と大人を尊敬して同じような暮らしや職業を歩みたいと感じることで、若者が描く地元でのライフコースを鮮明にしていくことが重要であろう。

2つめは、「男女の役割分業を女性に感じさせないようにする」ことだ。日本式伝統社会では、男尊女卑と長男の家督相続という2つの特徴がある。本調査では、続柄が居住地選択に及ぼす影響は見られず、長男が地元に残って家督相続する伝統は地方圏でも消失しつつあることが明らかになった。一方で性差に関しては、女性が「自分が活躍できる場所がない」と感じる傾向が強く、男性に比べて不利な立場にあると感じやすい現状が明らかになった。学校では男女平等が原則であるため、生徒が男女格差を感じることは少ないと考えられる。多くの女性が格差を実感するのは、社会人になって働き始めてからである。それにも関わらず、中学3年生を対象にした本調査で女性が地元でのキャリアを描きにくく、地元外への移住を多くが選択する現状からは、町で暮らす中で自然と性差を感じる場面が存在することを示唆する。A町・B町が現在提示している地域振興策では、産婦人科医の確保、子育て環境の整備、養育費の経済的支援など、女性を家庭を守る「母親」として位置付けている施策が多い。確かに、母親が家庭内で果たす役割は大きく、これらの施策は次世代の子どもを地域内で育てていく上では重要である。しかし、若年層の女性は母親としての役割だけでなく、「一個人」として自分の存在意義を感じられる職業人生や、生活面で男性分業を感じないことも求めている。女性を一個人として捉え、男女雇用機会の均等化や父親による育児支援といったキャリアに関するアプローチや、ひいては地域全体で意識的に男女分業の風潮を薄めていくことが必要ではないだろうか。地元に暮らす若年女性が少なくなれば、少子化に拍車がかかることになり、男女の役割分業の見直しは地域振興における喫緊の課題である。

繰り返すが、地方圏に暮らす若者は決して地元に強い不満を抱えているわけではなく、地域特有の魅力や個性を強く実感している。もちろん若者が移動する要因には、雇用や高等教育機関といった短期スパンでは解決が困難な要素の影響も大きい。しかし、地元に残る若者の特徴として、ライフコースを明確に描けていることが示されたように、若者の地元外への移動は制度面からのアプローチだけで解決できるわけではない。将来、地元でどのように暮らしていけば良いのかの道筋を周囲の大人が少し示すだけでも地元に留まるきっかけになる。そうした草の根的な意識改革が地方圏に暮らす若者の地元定着につながっていく。そして、それを実現できるのは人と人とのつながりが強い地方圏だからこそだ。制度面と非制度面、行政と民間の両輪で若者が地元で明るい未来を描けるように町全体で支援していくことが求められている。

 

 

[1] 厚生労働省、2022、『令和3年度毎月勤労統計』

[2] 阿部誠、2021、『地方で暮らせる雇用:地方圏の若者のキャリアを考える』旬報社

[3] 厚生労働省、2015、『労働経済白書』

[4] 社会関係資本とは、米国の政治学者のロバート・パットナムによって定義された概念である。特定の社会に内在して、人々の間の社会関係を規定すると共に、社会の効率性を高めるもので、「信頼」「規範」「ネットワーク」などがある。

[5] 個人情報保護の観点から町名と学校名は仮名で記載する。

[6] 詳しくは末尾の備考資料①の問4を参照。

[7] 文部科学省、2023、『学校基本調査』

[8] なお、「無回答」と「わからない」を除いた地元居住者比率(地元定着者/地元外移動者)としても、約34%から約43%となり、さらに地元外居住者は増えていると言える。

[9] 質問紙における問6、問7より分析。詳しくは末尾の備考資料①を参照。

[10] 度数1のデータも多く、個人情報保護の観点から記載は控える。

[11] 質問紙の問7を基に分析。詳細は末尾の備考資料①を参照。

[12] 「そう思う」「ややそう思う」を肯定的意見として分析。

[13] 「あまりそう思わない」「そう思わない」を否定的意見として分析。

[14] 末尾に記載の参考資料の問6の度数分布表より。「そう思う」「ややそう思う」を肯定的回答として分析した。

[15]A町、2020、「第2期A町まち・ひと・しごと創生総合戦略」

[16]B町、2015、「第2期B町まち・ひと・しごと創生総合戦略」

 

 

参考文献

・阿部真大、2013、『地方にこもる若者たち:都会と田舎の間に出現した新しい社会』朝日新聞出版

・阿部誠、2017、「若者が地方圏で働き暮らしてゆくために」、石井まこと・宮本みち子・阿部誠編『地方に生きる若者たち-インタビューからみえてくる仕事・結婚・暮らしの未来』旬報社

・阿部誠、2021、『地方で暮らせる雇用:地方圏の若者のキャリアを考える』旬報社

・石井まこと、2011、「地方圏における若者の非正規化と雇用・就労支援策」『労務理論学会誌』第21号、pp.85-103

・石井まこと・宮本みち子・阿部誠、2017、『地方に生きる若者たち -インタビューからみえてくる仕事・結婚・暮らしの未来』旬報社

・石黒格・李永俊・杉浦裕晃・山口恵子、2012、『「東京」に出る若者たち -仕事・社会関係・地域間格差』ミネルヴァ書房

・石簾マサ、2018、『北海道ファンマガジン』2018.7.21

・上野景三、2017、「社会教育の変容が若者たちにもたらしたもの」、石井まこと・宮本みち子・阿部誠編『地方に生きる若者たち -インタビューからみえてくる仕事・結婚・暮らしの未来』旬報社

・片山悠樹・牧野智和、2018、「教育社会学における「地方の若者」」『教育社会学研究』第102号、pp.5-31

・厚生労働省、2015、『労働経済白書』

・厚生労働省、2022、『令和3年度毎月勤労統計』

・轡田竜蔵、2017、『地方暮らしの幸福と若者』勁草書房

・境一郎、1977、『北海道大学教育学部社会教育研究室報』、pp.90-93

・佐々木洋成、2016、「教育機会の地域間格差 ―高度成長期以降の趨勢に関する基礎的検討―」『教育社会学研究』第78集、pp.303-320

・総務省、2016、『住民基本台帳人口移動報告』

・総務省、2020、『令和2年国勢調査』

・田垣内義浩、2023、「市町村規模によってトラッキング構造はいかに異なるか : 地方県の非都市部における高校教育の供給構造」『東京大学大学院教育学研究科紀要』第62号、pp.261-270

・高見具広、2018、「地方を取り巻く課題と若者の生き方」『教育社会学研究』第102号、pp.79-101

・橘木俊詔・浦川邦夫、2012、『日本の地域間格差』日本評論社

・中沢康彦、2021、『日経ビジネス』2021.9.24

・宮本みち子、2012、『若者が無縁化する:仕事・福祉・コミュニティでつなぐ』筑摩書房

・宮本みち子、2017、「若者の自立に向けて家族を問い直す」、石井まこと・宮本みち子・阿部誠編『地方に生きる若者たち』旬報社

・村本孜、2019、『第一生命経済レポート』

・文部科学省、2017、『高等教育の将来構想に関する基礎データ』

・A町、2019、『A町勢要覧 資料編 2019年版』

・A町、2020、『第2期A町まち・ひと・しごと創生総合戦略』

・A町、2021、『A町過疎地域持続的発展市町村計画 令和3年度~令和7年度版』

・A町、2023、『C中学校 学校要覧』

・B町、2015、『第2期B町まち・ひと・しごと創生総合戦略』

・B町、2015、『B町 町勢要覧 平成27年3月発行版』

・B町、2021、『B町過疎地域持続的発展市町村計画 令和3年度~令和7年度版』

・B町、2023、『D中学校学校要覧』

 

参考資料

・北海道庁、「合計特殊出生率の高い道内市町村の要因分析」、https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/2/2/7/6/1/9/2/_/4_shiryo1_3.pdf、(閲覧日2023-12-13)

・A町HP、 (閲覧日2023-12-13)

・B町HP、(閲覧日2023-12-13)

 

備考資料① 質問紙

 

「将来の居住地選択に関する調査」

 

この調査は、地方圏に在住する就労前の若者を対象に、将来の居住地選択がどのような要因で行われるかを明らかにすることを課題とした卒業論文の執筆のために用いるためのものです。本調査を通して、地方圏の若者が納得のいくキャリアを歩むためにどのような情報や政策、取組みが必要かを考察することを目的としています。

本調査でご記入いただいた内容は、個人情報保護に照らして厳格に管理、取り扱います。すべて統計的に処理され、個人が特定されたり推測されたりするような形で発表されることはありません。安心してご回答ください。

お忙しいところ恐れ入りますが、ご回答にご協力賜りますようお願い申し上げます。

 

調査企画者:北海道大学教育学部職業能力形成論ゼミ 学部4年 佐々木基記

****************************************

全員がお答えください。

Ⅰ、あなたのこれまでについてうかがいます。当てはまる番号に〇をつけて( )にご記入ください。

問1 小学校入学時の居住地

1: 現在と同じ 2: (       )都/道/府/県(       )市/町/区/村

 

問2 中学校入学時の居住地

1: 現在と同じ 2: (       )都/道/府/県(       )市/町/区/村

 

Ⅱ、あなたの将来についてうかがいます。当てはまる番号に〇をつけてください。

問3 中学校卒業後に地元に住もうと思っていますか

※実家から他の町の学校へ通う場合は地元に住んでいるものとする

1: はい→(A)へ進む    2: いいえ→(B)へ進む

 

 

(A)「1:はい」を選択した方は主な理由を教えてください(1つに〇)

a: 行くことを予定している学校が地元にある/地元から通える圏内にあるから

b: 親の仕事を継ぐから

c: 地元で就職するから

d: 家族や友人と離れたくないから

e: 親に勧められているから

f: 先輩や友人がそうするから

g: その他(                      )

 

(B)「2:いいえ」を選択した方は理由を教えてください(1つに〇)

a: 行くことを予定している学校が違う町にある/地元に無いから

b: 違う町を経験してみたいから

c: 親元を離れて自立してみたいから

d: 親に勧められているから

e: 先輩や友人がそうするから

f: その他(                      )

 

問4は高校卒業後に進学予定の方のみ回答して下さい。進学予定の無い方は問5へ進む。

問4 高校卒業後に地元に住もうと思っていますか

※実家から他の町の学校へ通う場合は地元に住んでいるものとする

1: はい→(A)へ進む  2: いいえ→(B)へ進む

 

(A)「1:はい」を選択した方は理由を教えてください(1つに〇)

a: 行きたい学校が地元にある/地元から通える圏内にあるから

b: 親の仕事を継ぐから

c: 地元で就職するから

d: 家族や友人と離れたくないから

e: 親に勧められているから

f: 先輩や友人がそうするから

g: その他(                      )

(B)「2:いいえ」を選択した方は理由を教えてください(1つに〇)

a: 行きたい学校が違う町にあるから/行きたい学校が地元に無いから

b: 違う町を経験してみたいから

c: 親元を離れて自立してみたいから

d: 親に勧められているから

e: 先輩や友人がそうするから

f: その他(                      )

 

3ページの問5へ進んでください

 

全員がお答えください。

問5 社会人になった時に地元に住もうと思っていますか

1: はい→(A)へ進む    2: いいえ→(B)へ進む

(A)「1:はい」を選択した方は理由を教えてください(1つに〇)

a: 就きたい職業が地元にあるから

b: 親の仕事を継ぐから

c: 地元が好きだから

d: 家族や友人と離れたくないから

e: 親に勧められているから

f: 先輩や友人がそうするから

g: その他(                      )

 

(B)「2:いいえ」を選択した方は理由を教えてください(1つに〇)

a: 就きたい職業が地元に無いから

b: 違う町を経験してみたいから

c: 親元を離れて自立してみたいから

d: 町の将来が不安だから

e: 親に勧められているから

f: 先輩や友人がそうするから

g: その他(                      )

 

問6 あなたの人生観や職業観についてどのように考えていますか。

それぞれについて最も当てはまるものに1つ〇をつけてください。

そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない
A 他の人よりも高い収入が得たい
B 有名になりたい
C のんびりと働きたい
D 地元に貢献したい
E 個性や感性を活かした仕事に就きたい
F 安定した仕事に就きたい
G 周囲の大人と同じような職業に就きたい
H 男女平等な職場で働きたい
I 資格や知識を必要とする仕事がしたい
J 体を使う仕事がしたい
K 人に接する仕事がしたい
L 家族・親戚の近くで生活したい
M 都会の生活に憧れる

 

Ⅲ、あなたの住む地域について伺います。

問7 あなたの考えに最も当てはまるものに1つ〇をつけてください。

そう思う ややそう思う あまりそう思わない そう思わない
A 仕事をする場所が十分にある
B 教育環境が整っている
C 医療・福祉環境が整っている
D 交通インフラが整備されている
E 子育て環境が整っている
F 余暇を楽しめる場所/方法がある
G 自分が活躍できる場所が十分にある
H 男女平等な町だと思う
I 男女の役割分担が強い
J 親や祖父母の生活の面倒を見るのが当たり前である
K 地域の将来は明るい
L コミュニティが心地よい
M 他の地域には無い魅力がある

 

問8 現在暮らしている中で、あなたの地元に対して満足していることや不満なことがあれば教えてください。

 

 

問9 将来を考えたときに、あなたの地元に対して魅力に思うことや不満なことがあれば教えてください。

 

 

Ⅳ、あなたとご家族について伺います。当てはまる番号に〇をつけてください。

問10 性別  1:男性 2:女性 3:答えたくない

 

問11 同一世帯の家族人数 ※仕送りを受けて別居中の兄弟姉妹などを含む

(    ) 人

 

問12 あなたの続柄

1:第一子 2:第二子 3:第三子 4:第四子 5:第五子 6:第六子

 

問13 父親の職業

1:農業,林業 2:漁業 3:鉱業 4:建設業 5:製造業 6:電気,ガス,水道業

7:運輸,郵便業 8:情報通信業 9:宿泊,飲食業 10:小売業 11:金融,保険業

12:不動産業 13:サービス業(理髪,娯楽など) 14:医療,福祉業 15:公務 16:無職 17:わからない 18:答えたくない

→差し支えなければ具体的に何の職業かをお答えください

(                        ) 例)町役場の職員

 

問14 母親の職業

1:農業,林業 2:漁業 3:鉱業 4:建設業 5:製造業 6:電気,ガス,水道業

7:運輸,郵便業 8:情報通信業 9:宿泊,飲食業 10:小売業 11:金融,保険業

12:不動産業 13:サービス業(理髪,娯楽など) 14:医療,福祉業 15:公務 16:無職 17:わからない 18:答えたくない

→差し支えなければ具体的に何の職業かをお答えください

(                        ) 例)服屋の店員

 

以上

ご協力ありがとうございました。

 

調査についてご不明な点等ございましたら、下記までお問い合わせください。

〒060-0811 札幌市北区北 11 条西 7 丁目  北海道大学教育学部4年 佐々木基記

 

 

Print Friendly, PDF & Email
>北海道労働情報NAVI

北海道労働情報NAVI

労働情報発信・交流を進めるプラットフォームづくりを始めました。

CTR IMG