東北大学では、不当な無期転換逃れ・雇い止め問題の撤回を求める労働組合のたたかいが継続中です。片山知史さん(東北大学職員組合執行委員長)からの投稿です。
5年無期転換逃れ問題・大量雇止め訴訟
2022年7月に、東北大学職員組合組合員による地位確認請求を求める訴訟に対する仙台地裁の棄却判決を紹介しました。
片山知史「東北大学雇止め裁判 判決を受けて」『NAVI』2022年7月4日配信
「通算契約期間を5年以内と定め、無期転換申込権の発生直前に雇止めをするという意味で、無期転換申込権の発生を回避することを目的とした雇止めをしたことをもって、直ちに同法(労働契約法)に抵触するものではない」という、信じられない判断でした。到底納得できるものではなく、私達は控訴しました。
そして、2023年1月25日に控訴審判決があり、「契約更新を期待する合理的理由はない」として棄却されてしまいました。この仙台高裁の判決は、仙台地裁の原判決よりも、不合理な内容でした。以下、簡単ですが紹介します。
控訴審でも不合理な判決
主たる論点は、労働契約法19条に定められた「雇止め法理」に関しての「契約更新への合理的期待権」でした。同じ職場で同様の業務を担い12年も更新を重ねてきた原告には、当然合理的期待権利が生じていました。
しかし、判決文では雇用の臨時性・常用性について、「控訴人が従事した業務が大学における基幹的業務ではない」「業務が時期的に変化している」として、常用性が認められないとしました。
また契約更新について、「労働契約等に契約条件や契約締結手続等において一定の差異が認められる」「契約関係の客観的性質を確定することそれ自体よりも、契約関係をどのように認識して取り扱ったかが重要」として、継続性を認めませんでした。
大学では非正規職員も基幹的業務を担っているのは、周知の事実です。逆に、基幹的業務ではない業務だから非正規職員に任せるならば、非正規職員は理由なく雇止めできるし、いつまでたっても無期転換権が与えられないことになります。
継続性については、業務の内容に関わらず、使用者に続けて雇用されていること自体が、客観的な雇用の継続性でしょう。業務が変われば無期転換が得られないなら、使用者にとっては簡単に無期転換逃れができることになります。加えて、客観性より認識が重視されるとは、労働契約根本に関わる奇異な判断だと思います。
日本の約4割が非正規雇用であり、非正規問題は、近年の少子化問題、物価問題、賃金問題など、あらゆる社会問題に関わる課題です。地裁、高裁の判決は、非正規問題を更に深刻化させるものであり、到底看過できません。最高裁において真っ当な判断を得て、使用者による脱法雇止め、労働者の権利はく奪が許されないことを社会に示すべく、私達は最高裁に上告することを決めました。
10年雇止め問題
大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間を5年から10年とする特例が法的に設けられました。東北大学で、2023年3月末に10年上限で雇止めされる対象人数が、2022年4月の段階では239名でしたが、12月には167名となりました。早々に退職された方もいらっしゃいますが、組合からの提案によって、一定数の方が他の職種に異動して雇用が継続されることになり、対象人数が減少しました。
しかしながら、無期転換権が生じる前の雇止め方針はそのままですし、沢山の方が雇止めになることには変わりありませんし。引き続き、希望者全員の無期転換を求めつつ、各部局に対して一人でも多くの雇用継続を働きかけているところです。
ご支援をどうぞよろしくお願いします。
(参考資料)
東北大学職員組合「仙台高等裁判所判決に対する声明」2023年1月25日
原告・東北大学雇止め訴訟弁護団「仙台高裁判決に対する原告・弁護団声明」2023年1月25日
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