田中綾と学生たち「学生アルバイト短歌2022(2学期編)」

1学期に引き続き、北海学園大学人文学部2部「人文学演習B(田中綾担当)」で、アルバイト体験や労働についての短歌創作を試みました。2年生14名による作品です。授業の最後には、合同歌集『千歌万緜(せんかばんべつ)』も刊行しました(愛らしい表紙イラストは、S・Kさんの作品です)。

2部(夜間部)には社会人学生もおり、〈8・歓迎のあいさつ笑顔満開ででももう家に魂帰宅 (カフェ/現在)〉のように、感情労働の現場も歌われています。

また、〈5・バイト先3つあるから私の体朝どこ向かうか一瞬バグる (派遣と飲食店のバイトを2つ(トリプルワーク)/現在)〉と、トリプルワークの現場も歌われていますが、スケジュール管理や学業との兼ね合いが少々心配でしょうか。

他方、〈24・初バイト出会った主婦の哲学は今に至っても消えない報酬 (ファストフード/過去)〉と、アルバイトを通して成長につながっている短歌には、ほっとさせられます。

コンビニ、居酒屋、スーパーなど定番のアルバイト先のほか、短期のアルバイト体験も臨場感あふれる言葉で歌われています。会話体の作品など、工夫をこらしたものもどうぞお楽しみください。

※短歌中の【 】はルビです。

 

【アルバイトの現場】

1・時間合うバイトは軒並み落ちたから一年分は短期で稼ぐ  K・H (教科書販売/短期)

2・あの人はお局のつもりないだろうな~キツい言葉は指導じゃないよ   M・Y

(ファストフード/現在)

3・「あ、あと……スマイルください」「すいませんドライブスルーは対応してません」 同上

4・休む時間削って入れてしまうバイト気づけば勉強の時間までも   I・K

(派遣と飲食店のバイトを2つ(トリプルワーク)/現在)

5・バイト先3つあるから私の体朝どこ向かうか一瞬バグる     同上

6・トラックを運転してるの?と言われがちいやいや私は内勤ですって T・H(運輸・内勤/現在)

7・悪くない職場環境も同僚もむしろ良いから今後が心配       同上

8・歓迎のあいさつ笑顔満開ででももう家に魂帰宅     T・M (カフェ/現在)

9・週末は休みとみせて本番で本気を出してフル体力【死亡寸前】   同上

10・「辞めたいな」でも次の日に持ち直しやりがい感じもう何度目か   同上

11・バイトと社員のその違い僕が思うにお金と責任の重さ  M・H(ドラッグストア/過去)

12・優等生の私が破った校則「バイト禁止」ごめん先生、生きるためです  M・H(スーパー/過去)

13・プルルルル……「お疲れ様です」「急だけど明日出れる?」またこの電話重い声で「はい」

M・K (コンビニ/現在)

14・5連勤来月なんて3回も少しバラしてシフト入れてよ      同上

15・寒い日の朝6時半出勤でまばらな客で仕事少ない    M・Y (コンビニ/現在)

16・天井に透明シートぶらさげて聞き取りづらい客の注文     同上

17・何だっけ頭ぐるぐる身振り手振り伝わらぬ英語伝わる心  O・M(国際会議受付誘導/過去)

18・初めての学校以外の英会話伝わった言葉I wont money.    同上

19・居酒屋ね求人誌見て思い出すアットホームな職場です!!   Y・S(居酒屋/過去と現在)

20・まじでさぁまじでなぐるぞ怒鳴るヤツ業務の中に含まれますか   同上

21・またでたよいやみばっかりこの社員考えかえてこのツンデレめ  S・T(飲食/現在)

22・これお願いずーっと言われた下っパが最後に言われるしこみこれしかやってない?  同上

23・まかないあり作るのは俺? 文句言うなら自分で作れよバカバカバーカ  同上

24・初バイト出会った主婦の哲学は今に至っても消えない報酬  S・K(ファストフード/過去)

25・休憩中スマホの私傍らにピクニックしてるなにそれなにそれ!  同上

26・出戻りて剥ぎ捨てられる優しい上司【化けの皮】何故「言わない【優しい】」か?=「言えない【無能だ】」からだ    N・Y (スーパー/過去と現在が同じ店)

 

 

 

田中綾と学生たち「学生アルバイト短歌2022(1学期編)」

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