道労連に加盟する札幌地区労連・札幌地域自治体ユニオン・建交労札幌合同支部では、公契約の適正化・公契約条例の制定運動の一環で、札幌市が発注する施設清掃業務や警備業務等に従事している労働者の賃金や働き方に関する実態アンケート調査を行っています。2020年度の調査結果を掲載します(2021年4月30日発表)。どうぞお読みください。
集約状況について
全体の集約数は昨年度(2019年度)と同数だった。
施設清掃4人減、警備業務は同数、設備管理は男女ともに1人ずつ増、そのほかに施設清掃と思われる回答者が2人あった。
表1-1 職種×男女別にみた各年度の回収状況(2018~2020年度)
施設清掃 | 警備業務 | 設備管理 | 無回答(不明) | 合計 | |
2018年度 | 男3人・女29人 | 男 6人・女0人 | 男2人・女0人 | 男0人・女0人 | 40人 |
2019年度 | 男5人・女33人 | 男10人・女0人 | 男1人・女0人 | 男0人・女0人 | 49人 |
2020年度 | 男5人・女29人 | 男10人・女0人 | 男2人・女1人 | 男1人・女1人 | 49人 |
表1-2 職種×男女別にみた回答者数(2020年度)
男 | 女 | |
施設清掃 | 5人 | 29人 |
警備業務 | 10人 | 0人 |
設備管理 | 2人 | 1人 |
NA | 1人 | 1人 |
計 | 18人 | 31人 |
49人 |
年齢構成など
2019年度調査では、仕事別・男女別ともに回答者全員が50代以上だったのに対し、2020年度調査では、施設清掃の20代1人・40代2人の女性、設備管理で50代1人の女性から回答を得た。
50代未満の回答者が男女ともに増え(2018年度調査は30~40代が全体で4人)、全体で60代以上が、男性で11人・68.8%(2019年は93.7%)、女性で25人75.8%(同・93.9%)となった。
表2 男女×年齢別にみた回答者の職種
男 | 女 | ||||||||||||||
30未満 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代以上 | NA | 30未満 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代以上 | NA | ||
施設清掃 | 2人 | 1人 | 1人 | 2人 | 4人 | 13人 | |||||||||
警備業務 | 1人 | 5人 | 2人 | 2人 | |||||||||||
設備管理 | 1人 | 1人 | 1人 | ||||||||||||
NA | 1人 | 1人 | |||||||||||||
計 | 0人 | 0人 | 0人 | 3人 | 7人 | 4人 | 2人 | 1人 | 0人 | 2人 | 5人 | 13人 | 0人 | ||
割合 | 18.8% | 68.8% | 12.5% | 24.2% | 75.8% | 0.0% |
時給について
『全体(清掃・警備・設備)』では、900円以下が32人(64.6%)、900円超が月給者と不明者を含めて17人(35.4%)となった。
『施設清掃』では、昨年(2020年度)据え置かれた北海道最賃861円が11人(32.4%)を占め、900円以下は861円も含め19人(55.9%)となった。特徴点として、「体育施設」「札幌市施設」「保健センター」で861円が目立つ一方、「区役所」「学校」「図書館」では900円台が多い結果となった。
また、“総合評価一般競争入札方式”が採用されている「地下鉄」では、唯一回答があった男性が時給1,070円(2019年度調査でも1,070円)であった。
『警備業務・設備管理』では全回答者が900円以下であった。区役所や図書館など深夜帯を含む就業時間が記載されており深夜割増が支払われていない可能性があることがわかった(2018年度・2019年度調査も同様)。また、「図書館」については、施設清掃が950円なのに対し警備(駐車場含む)については900円の回答が見受けられた。
※総合評価一般競争入札方式:地下鉄・市役所など
※一般競争入札方式:区役所、大通バスC・健康づくりC、区民C・中央図書館の警備など
表3 職種別にみた回答者の時給の分布状況
時給 | 施設清掃 | 警備業務 | 設備管理 | NA | 備考 | |||||
861円 | 11人 | 32.4% | 3人 | 30.0% | 1人 | 64.6% | 区民C・バスC・体育施設・保健C・区役所 | |||
863円 | 1人 | 33.3% | 設:体育施設 | |||||||
874円 | 1人 | 10.0% | 警:区役所 | |||||||
866円 | 1人 | 33.3% | ||||||||
880円 | 3人 | 8.8% | 清:体育施設 | |||||||
900円 | 5人 | 14.7% | 5人 | 50.0% | 1人 | 33.3% | 交通局・養護学校・区役所・学校 | |||
915円 | 1人 | 2.9% | 25.0% | 清掃:学校 | ||||||
920円 | 2人 | 5.9% | 清掃:区役所 | |||||||
930円 | 1人 | 2.9% | 清掃:学校 | |||||||
950円 | 7人 | 20.6% | 清掃:図書館 | |||||||
1,070円 | 1人 | 2.9% | ※日額記載 地下鉄駅 | |||||||
月給制 | 1人 | 2.9% | 2.1% | 学校 | ||||||
NA・不明 | 2人 | 5.9% | 1人 | 10.0% | 1人 | 8.3% |
勤続年数と時給について
企業での勤続年数(以下、企業勤続年数)よりも、いまの施設での勤続年数(以下、施設勤続年数)が上回っているケースが清掃労働者に特に多い。
これは、総合評価落札方式や「履行品質の確保、企業経営および労働者雇用の安定化が狙いである長期継続契約」による「複数年契約」で、3年で落札企業が変わることなどに起因していると考えられる。「施設勤続年数20年だけど企業勤続年数3年」といったように、働き場所は変えずに落札企業への“再就職“を繰り返していると考えられる。
施設勤続年数が6~20年ある「清掃労働者」でも、企業勤続年数が長くて6年という結果となり、同一の落札企業に委託継続されれば、そのまま雇用が継続されていると考えられる。“期間の定め”があるのかなど契約内容について今後調査対象とするかは課題である。当然、無期転換を果たしている労働者はいないものと考えられる。また、ほとんどが3年目という回答が多く、いずれも時給861円という結果となった。
一方、施設勤続年数より企業勤続年数を上回る回答者は2名だったが、どちらも学校清掃で時給915円または月給制(正社員・一時金あり)になっているなど、企業勤続年数が長い方が高い賃金・処遇であるという傾向が読み取れる。
警備業務、設備管理にいたっては、企業勤続年数を施設勤続年数が上回るケースは回答者にはなかった。
表4-1 いまの施設での勤続年数といまの会社での勤続年数(施設清掃)
施設清掃 | 1年目 | 2~3年目 | 4~5年目 | 6~7年目 | 8~9年目 | 10年超 | NA |
いまの施設の勤続年数 | 9人 | 6人 | 5人 | 3人 | 1人 | 5人 | 5人 |
いまの会社の勤続年数 | 12人 | 4人 | 3人 | 1人 | 1人 | 2人 | 11人 |
注:施設清掃34名の施設または会社での勤続年数の分布。勤続年数相互に人の関連性なし。
表4-2 勤続年数と時給の具体例(施設清掃)
いまの施設の勤続年数 | 20年 | 16年 | 15年 | 11年 | 6年 | 1年 | 1年8か月 |
いまの会社の勤続年数 | 3年 | 3年 | 3年 | 6年 | 1年 | 34年 | 12年 |
時給・給与形態 | 861円 | 861円 | 861円 | 861円 | 861円 | 月給 | 915円 |
労働時間と時給
『全体』で、賃金が「あがった」と答えたのは、13人(26.5%)(2019年36人73.5%)となったのに対し、「あがっていない」と答えたのは25人(51.0%)(2019年9人18.3%)にのぼった。
『清掃』では、3.5時間未満は合計14人(41.2%)(2019年52.6%)を占め、861~920円とバラつきはあるが、5人(35.7%)が最低賃金の861円に張り付いているという結果となった。
また、3.5時間超~4時間未満では合計9人(26.5%)(2019年28.9%)で、そのうち、体育施設1人が861円、学校清掃1人が915円、図書館清掃7人が950円となった。
労働時間では、2019年度調査と比較して、区民センター・体育施設・学校などで5時間以上~7時間未満の回答者が増えたが、4時間を超える労働時間でも861円(体育施設・バスセンター・保健センター)が目立つ。
『警備業務・設備管理』では、区役所、図書館、学校巡回など、深夜帯で働く警備労働者が複数名いることと、前述のように861・874円・900円との回答から深夜割増などが支払われていない可能性がある。また、深夜帯を含む就労時間が長いのが特徴。
表5-1 就業時間と時給(施設清掃)
時間 | 3時間 2.5h*3人 含む |
3時間30分 | 4時間 | 4~6時間 | 7時間 | 8時間 8.45/8.5h 含む |
NA |
人数 | 12人 | 2人 | 9人 | 2人 | 3人 | 5人 | 1人 |
比率 | 35.3% | 5.9% | 26.5% | 5.9% | 8.8% | 14.7% | 2.9% |
時給 | 861・880・900・920 | 861・900 | 861・915・950 | 861・950 | 861・880・1070 | 930・月給 | NA |
表5-2 就業時間と時給(警備業務)
時間 | ①8:30~17:00、17:30 | ②17:15~8:45 | ③17:15~8:45 | ④20:00~9:15 | ⑥16:30~22:00 | ⑦22:00~4:00 |
人数 | 2人 | 3人 | 1人 | 3人 | 1人 | |
場所・施設 | 図書館P | 区役所 | 区役所 | 図書館・水道局 | 学校巡回 | |
時給 | 900円/h | 861円/h | 874円/h | 900円/h | 7,500円 | 10,700円 |
注:⑥⑦は同一人物。
表5-3 就業時間と時給(設備管理)
時間 | ①7:30~21:00 | ②7:00~11:15 | ③17:15~22:00 | ④18:30~22:00 |
人数 | 1人 | 1人 | 1人 | |
場所・施設 | 区役所 | 体育施設 | 学校開放 | |
時給 | 900円/h | 863円/h | 866円/h | 866円/h |
注:③④は同一人物。
手当の支給など
2021年4月から中小企業にも適用となった有期雇用・パート有働法による「不合理な待遇差」の是正が求められるところだが、「寒冷地手当」については「出ていない」と回答したのが42人(85.7%)(2019年44人89.8%)と高水準であり、「出た」と回答したのはわずか2人(4.1%)(2019年0人0%)で、学校清掃(男性・正社員)と設備管理(男性・パート)のみであった。
「一時金」は、「出ない」が34人(69.4%)(2019年34人69.4%)で「出た・寸志程度」と答えたのは9人(11.02%)(2019年7人14.3%)で区役所清掃の3人と、学校清掃(男性・正社員)の1人のみである。
一方、有給休暇が取れたと答えたのは、全体で36人(73.5%)となった。
表6-1 寒冷地手当・交通費・一時金の支給
交通費 | 寒冷地手当 | 一時金 | ||||||
全額支給 | 31人 | 63.3% | 出た | 2人 | 4.1% | 出た | 4人 | 8.2% |
頭打ち | 3人 | 6.1% | 出ていない | 42人 | 85.7% | 出ない | 34人 | 69.4% |
自己負担 | 2人 | 4.1% | 寸志程度 | 0人 | 0.0% | 寸志程度 | 5人 | 10.2% |
かからない | 10人 | 20.4% | NA | 5人 | 10.2% | NA | 6人 | 12.2% |
不明・NA | 3人 | 6.1% |
表6-2 賃金の増減、健康保険の種類、雇用保険加入の有無
賃金 | 健康保険 | 雇用保険 | ||||||
上がった | 13人 | 26.5% | 協会健保 | 14人 | 28.6% | 加入している | 27人 | 55.1% |
上がっていない | 25人 | 51.0% | 国民健保 | 21人 | 42.9% | 加入していない | 17人 | 34.7% |
前より下がった | 1人 | 2.0% | 扶養家族 | 10人 | 20.4% | NA | 5人 | 10.2% |
不明・NA | 10人 | 20.4% | NA | 4人 | 8.2% |
表6-3 有給休暇の取得の有無、労働組合加入の意思、公契約条例制定に対する希望
有給休暇 | 労働組合 | 公契約条例 | ||||||
取れた | 36人 | 73.5% | 加入したい | 2人 | 4.1% | 制定してほしい | 27人 | 55.1% |
なかった | 10人 | 20.4% | 必要だと思う | 18人 | 36.7% | とくに必要だと思わない | 4人 | 8.2% |
不明・NA | 3人 | 6.1% | とくに必要はない | 12人 | 24.5% | わからない・NA | 18人 | 36.7% |
わからない・NA | 17人 | 34.7% |
その他~自由記述
コロナ過によって仕事にどんな影響がありましたか?
○ケガをしたた為、有給9日間使用。
○消毒作業が増えた分、少し時間オーバー気味です。時間外請求できる訳でないですし、会社が悪い分けではないので仕方ありませんが少し疲れます。手荒れも出てきて本当にコロナ嫌いです!!
○全館消毒がふえました。
○時々残業〔が〕有りますが残業代は出ます。
○①マスク代が増えた、②アルコール、石鹸による手が荒れた、③夜中にコロナによる不安電話が多い。
○おかげ様でコロナ過による仕事の減少がなくよかったですが、図書館へくるお客様一部の方は仕事がなく休業状態の方、解雇の方との会話での中で大変生活が困窮されている方が多く見うけられます。早くコロナ禍おさまれば良いですが。
○5月、3週間休みになりましたが休業補償をしてもらいました。その後は通常に仕事が出来ていて仕事に行っています。
○2月末から勤務停止になり、9月1日から仕事が始まりました。その間の給料は3万円代でした。(平均を出してたしか6割の支払いです)。支払いもあるので少しきつかったです。明細がメールで来るのでちゃんと書けませんでした!すみません!
○多少業務が増しただけ。会社よりの指示・指導は全くない。自己判断にて業務を行なっていて現在の所、問題はないと判断しています。
その他、ご自由にお書きください。
○清掃の仕事はコロナ感染リスクが高い中、最低賃金で働いています。少しでも賃金引上げを望みます。
○時給はもっと高くしてよいと思います。オーナーさんからの要望が多い割には仕様書に書いてなくてもオーナーさんからいわれたらやらなければいけないこともあり残業にしてもらってはいるが時給は安すぎると思います。
○パートでもボーナスを支給してほしい。仕事のはげみになります。
○清掃の仕事に誇りをもってしています。丁寧に掃除をすると自分の心が気持ちいいです。でも若い時は掃除の仕事がカッコ悪いと思っていました。働く者にもっとやりがいを持たせて欲しいです。そうすることで我々もがんばれると思います。
○気持ちボーナス寸志があれば嬉しいです。
○年齢制限なしにして欲しい(体力など考えて)。
○トイレのウンチ詰まりやお年より等、カベにウンチぬったくり等の清掃・・・コロナになってもコロナ前も、キケン手当等ナシ。6人に50枚(10枚 1袋×5袋)もらったが、袋やぶってさわるのもどうかと思い5人に1袋ずつあげ私はもらわなかった。
○毎年、契約会社の変更により、待遇に変化あります。2~3年は同じ会社であって欲しいものです。
○国民健康保険、個人で払っているが非常に高額であるため会社で半分負担してほしい。
○以前は最低賃金でしたが数年前に900円になりましたが、2号警備員は賃金が上がってますが施設警備(1号)は上がっていません。時給を1,000円以上に上げてほしいと思います。札幌市公契約条例を制定して警備員の賃金が上がるように応援します。
○現在、警備会社入社してから1年3か月となりました。
1.会社へTELし用事があるのでTELしてほしいと言っても折り返しのTELがこない。
2.入社時の口頭契約がまもられていない(契約時間、月内の日数)。
3.現場状況の把握がまったくされてなく自分が要点のみ図書館側と折衝している状態。
4.社内の人事がころころ変わる為、仕事がしづらい。仕事に対する問題意識が感じられない。
5.会社へ文書で現状こうなってますよ。図書館側からのご意見を送っても何ひとつも返事がない(入札してしまえば後は勝手に仕事してくれという感じ)。
6.会社の良いところ(マスク、冬の手袋、カイロ等)支給がある点。
7.図書館3年契約で残り2年8か月ありますが自分自身の現状を見ますと労働基準局へ相談考えてますが?
○時給を上げてほしい。朝早い時間6時半過ぎに出て861円です。3~4時間ですが、まだこの職場は入ったばかりです。前のところは900円でした。
○有給休暇は4時間分で861×4=3,444円で前の会社では出ていましたが、今はなぜか60%分しか出ません。パートだからとあきらめているようですがこれで良いのか?清掃スタッフの方達も話はしますが先に進まず終わってます。他にも現場はありますが皆さんパートだからと思っているようです。
○清掃業界なのか、指示、指導は全くなし。業務の流れは自己判断。欠員の時だけ一生懸命。馬鹿。作業内容も判断してない。残念だが情けない。
これが市の清掃業者への指導なのか。
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佐藤陵一「清掃労働者の賃金・労働条件──札幌市の「履行検査」に対する受託企業の「報告書」より」(2014年1月発行)
佐藤陵一「区役所の清掃業務──建交労組合員の働き方が物語ること」