細川誉至雄「対策が急がれるコロナ感染症第6波(オミクロン株)」

認定NPO法人働く人びとのいのちと健康をまもる北海道センターが発行する『ニュース』第446号(2022年2月1日号)に掲載された、細川誉至雄氏(同センター理事長)による原稿の転載です。どうぞお読みください。

 

 

コロナ感染症の現状と医療状況

正月明けからオミクロン株によるコロナ感染症が急速に広まり、北海道も1月27日から2月20日までまん延防止等重点措置が発令されました。感染者は道内全域に広がり連日感染者数は1600人を超え1月29日には3002人と3千人を超えました。全国では8万4千人と、1日の感染者数としては最大です。対策が追いついていないため、制御できない状況となってきています。2月初旬~中旬にかけピークに達し、その後ピークアウトと予想されています本当でしょうか。

私が勤務する病院でも発熱外来は連日あふれています。PCR検査も増え、陽性率も30%を超える状況です。子供や若い方が多い印象です。 学校、幼稚園、保育所、家庭内での感染が主となり札幌市内の感染者のうち30代以下が7割、高齢者にも感染が拡大してきています。

病院職員の中にも子供の感染で濃厚接触者・自宅待機等となり、病院業務に影響が出始めました。

また検査器具も底をつきそうで、在庫がなくなれば検査できない状況になりつつあります。検査キットの納品制限の通知も来ました。

 

オミクロン株の特徴

潜伏期間は約3日と従来に比べると短く、発熱と鼻水や喉の痛みなど風邪症状(無症状者も1~2%くらい)で発症するのも特徴です。発症前1~2日と発症後2~3日間感染力が強く感染力はインフルエンザの約15~28倍です(米国CDC)。

「感染力が強く重症化しにくい」と言われますが、根拠としては、肺炎を起こしにくいからと説明されています。動物実験でも肺に到達する量は従来株に比べ一〇分の一だったとの事です。

しかし、致死率はインフルエンザの12倍と言われており、免疫力が低下した場合、基礎疾患のある方が重症化して亡くなることが報告されています。

 

 

濃厚接触者の定義と待機期間の混乱

濃厚接触者の定義が混乱しています。従来は保健所が濃厚接触者を決めていましたが、保健所がひっ迫して、それが出来なくなっています。

濃厚接触者の待機期間は今まで14日間だったのを10日に短縮しました。さらに7日に短縮する方向です。医療従事者は毎日検査で陰性であれば働いてよい、エッセンシャルワーカーも6日間の待機後陰性であれば勤務してよい、など目まぐるしく変更されています。

現在、数十分で感度の高いPCR検査もできる時代、体制さえ整えば、検査を組合わせて科学的に社会活動も可能なはずです。

 

対策について

1)感染予防の基本に立ち返る

マスク、手洗いは最も効果的です。布マスクはほぼ役に立ちません。不織布マスクを使いましょう。三密を避ける、換気に気を遣う、二酸化炭素モニターも有効です。

今回のまん延防止等重点措置はクラスター発生の分析で「マスクを外して飲酒し大声で会話する」事例が多かった事を根拠にしていますが、オミクロンにはあてはまらない、との批判もあります。「人流を減らす」効果は期待できるかもしれませんが。

 

2)ワクチン追加接種

急がれるのはワクチン追加接種です。3回目の追加接種は現時点で2.5%に過ぎません。ワクチン追加接種は1か月前倒しになりました。接種券が来たら早めに打つことをお勧めします。病院関係者はほぼ終了しつつあります。 2月1日から高齢者や持病のある方の優先接種、3月からは一般の方の接種が予定されています。ただ札幌市もファイザー製は供給が2月中旬でストップしモデルナに変更、との連絡が入りました。

 

3)12歳未満のワクチン接種の開始

5~11歳(12歳未満)の子供のワクチン接種は「無料で受けられる公的予防接種」に決定され、3月以降開始予定です。

一方、副反応への親の不安も強く、親にも子供にも十分な情報提供が必要です。50%は不安で希望しないとのアンケート調査もあります。

 

4)検査体制の強化

検査キットが不足してきています。現状では検査制限が懸念されます。感染を広げないためにも検査は欠かせません。

 

5)非正規雇用者の救済

こういう状況で非正規雇用者が仕事を失い生活困窮に追い込まれています。国や自治体は同時に救済のための支援を行うべきです。

 

国の責任はどこに?

最後に「若年者の場合、検査を行わずに診断する」提言が厚労省から自治体に通達として出されましたが、「検査をして感染者を隔離する」感染症対策から逸脱しています。 国民の命を最大限守るべき国の責任放棄といわざるを得ません。

 

 

 

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