千葉伸次「会計年度任用職員、取り組む処遇改善」

千葉伸次さん(自治労越谷市職員組合書記長)がまとめた、越谷市職における会計年度任用職員の雇用確保と処遇改善の取り組み報告が、労働者学習センター発行の「ひろばユニオン」2021年5月号に掲載されました。転載します。山下弘之さんからのご紹介です。お読みください。

 

 

底上げも雇用継続も

 

越谷市は埼玉県の南東部にある人口約34万人の中核市です。市の職員は常勤3038人に対して会計年度任用職員は1055人、約3人に1人の割合となっています。

20年4月施行の改正地方公務員法は、非正規公務員に関する70年ぶりの改定であり、地方自治法改正とともに、自治体における臨時非常勤職員の任用(雇用)や処遇に大きな影響を与えました。改定の柱は、任用(雇用)面では、法的に任用期間の定めがなかった非常勤職員を、任用期間が「最長1年間」と法定化された会計年度任用職員に移行させ、服務を厳格化する等です。一方、処遇面では、期末手当支給を可能とする地方自治法改正や常勤職員との均衡原則の方向性を再確認するものでした。

先輩たちの取り組みで、臨時職員への期末手当相当額を支給していた越谷市においても、法改定は全庁的、あえて言えば地域の労働環境にも影響を与える重要な課題となりました。

越谷市では、03年に非常勤職員の雇用安定を確保した独自の制度を確立させていましたが、1年任用が法定化された会計年度任用職員に移行した場合の任用(雇用)継続をどのように確保するのかが課題でした。そこで、任用(雇用)安定面の後退は許さず、さらに雇用安定を強める労使確認を書面で行うこと、処遇面では、現行水準を下げないで改善させることを基本に取り組むことにしました。

19年12月市議会に職員組合や現業評議会との事前協議抜きに「会計年度任用職員制度の導入に伴う関係条例の整備に関する条例改正について(案)」が提案され、現業評議会が労働委員会へのあっせん申請と不当労働行為提訴を準備しながら労働二権を活用した交渉を行って、3月市議会に条例を再提案させるなど、労使間で緊張した場面もありました。

最終的には、制度スタート直前の20年3月31日、会計年度任用職員の任用(雇用)制度に関する書面(労働協約・協定書等)を締結できました。

曖昧であった非現業職域と現業職域の適用法令を明確にしたうえで、継続任用(雇用)が確認されている非常勤職員と1年間の任用(雇用)が原則の臨時職員が同じ会計年度任用職員に移行することから、会計年度を超える職に就く非常勤職員は会計年超非常勤職員(業務職員)、会計年度内に終了する職に就く臨時職員は会計年内非常勤職員(期間職員)に区分して書面化しました(表)。03年に確立した労働協約をベースにして、より一層、雇用を安定させる条項を加えたものになっています。

 

つむぐ運動

 

また、処遇に関しては、非常勤職員は現行より上回る賃金水準への移行、臨時職員は職種ごとに常勤職員の4号下位(選考採用)を基本に現行水準と調整する、休暇制度等はすでに整備されている制度に国にある休暇等を追加して「会計年度任用職員の労働条件に関する労働協約や協定書」を締結、さらに現業職評議会は、均衡の原則や格差の段階的改善の「基本的確認」も書面化しています。しかし、勤務継続に伴う賃金加算や休暇制度等は常勤職員とは均等になっておらず、課題も残ります。

その後、20年秋期における処遇改善の取り組みでは、職場アンケートや任用(雇用)や労働条件に関する労働協約・協定書の説明会を実施、非常勤職員職域別交渉で勤続加算の改善や職種別に統一した給料表の導入に向けた検討委員会設置などの回答を得ています。

越谷市職は、臨時非常勤職員の雇用安定と処遇改善について40余年にわたり取り組みを重ねてきました。今後も歩みを着実に進めていきます。

 

任用についての主な確認事項

①会計年超非常勤職員とは、勤務時間が正規職員よりも短いものとして、一定の経験や専門性を要し、また、継続的かつ恒常的な職務を担うものとして位置付けられた職員。

②労使の目標を「任期の定めのない短時間公務員制度」と確認。引き続き、任用制度の検討を行う。

③曖昧だった労働条件を当事者に明示。

④労働条件通知書にある契約の更新の有無について「再度任用を行う」(会計年超非常勤職員)ないし「再度任用される場合があり得る」(会計年内非常勤職員)と明示。

⑤雇用安定措置のための定数化は継続協議。労働協約や協定書で当面対応する。

⑥会計年超非常勤職員の再度の任用(更新)は、今まで同様の運用。変更は辞令交付事務のみ。事前通知、労使協議等で雇用安定を補強。

⑦会計年内非常勤職員の職が次年度も継続された場合、公募によらず、次年度も引き続き任用しない場合の条件の明確化。

⑧法改定で新設された条件付採用期間(民間でいう「試用期間」)の身分保障について、条例制定までは労働協約や協定書で対応する。事前通知、労使協議等でこの期間の悪用をさせない。

 

 

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