山下弘之「会計年度任用職員制度新設と自治体における課題」

越谷市で長く労働組合運動をけん引してきた山下弘之さん(NPO法人官製ワーキングプア研究会理事)による、非正規公務員(会計年度任用職員)制度に関する現状分析と問題提起です。『埼玉自治研』第50号(2018年3月27日号)からの転載です。会計年度任用職員制度がスタートした今こそ広く読まれるべき論文です。お読みください。

 

 

 

0.要旨

2017年5月17日、新たな一般職非常勤職員制度である「会計年度任用職員制度」創設を柱とする地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律(以下、改定法という)が公布され、2020年4月1日の施行に向けた準備が各自治体で行われている。

総務省は、自治体に対し「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第1版)」(以下、マニュアルという)を発出、臨時非常勤職員の実態の把握、任用根拠の明確化・適正化と「職の再設定」、会計年度任用職員制度の整備(任用、勤務条件等の設計)、条例、規則等の制定・改正などのスケジュールを示しながら、制度移行に向けて技術的助言を行うとともに、職員団体との協議等を促している。会計年度任用職員制度に関する条例・規則制定は2019年2月〜3月議会と予想されることから、2018年度は極めて重要な年となるだろう。

そのような情勢をうけ、本稿の目的は、自治体で働く臨時非常勤職員の実態と現行制度との矛盾を明らかにしながら、改定の積極面を踏まえつつも、改定内容が職場実態との乖離をますます広げてしまう危険性を指摘、その対応について問題提起することにある。

 

 

1.自治体現場では

地方自治体では、増える行政需要や役割と責任が強く求められるなか、政府・総務省が進めた集中改革プラン終了後も常勤職員抑制の「行革」が続いている。

2017年の常勤職員総数は274万2,596人。一般行政部門が2015年以降3年連続で増加したこともあり、23年ぶりに職員数が対前年比で若干増えたが、依然として1994年のピーク時に比べると約54万人も減少しており、その勢いは止まっていない。中でも、1994年を100とした場合、清掃51.6、給食センター30.5と極端に現業部門の職員数が減少している。

これらは、保育所等福祉施設の民間委譲や清掃事業・収集業務、学校給食や学校用務業務、水道・交通事業等、市民サービスに直結する部門の民間委託の加速化を裏付ける。一方では、治安部門の警察が113.5と増加を続けているところは注目したい。

職員が抑制されている部門のほとんどが現業部門、保育所などの福祉、医療・教育・市民活動支援など、市民サービス関連に集中しており、そこの担い手は非正規化された職員や民間委託労働者に移っている。

常勤職員の減少にあわせ、行政需要に対応するため、非正規公務員である臨時非常勤等職員(直接雇用)や公共サービスを担う民間労働者(間接雇用)が飛躍的に増大、問題が「見える化」してきた。

 

2.臨時非常勤職員の実態

すでに、自治体における公務公共サービスの第一線は多くの臨時非常勤職員で担われている。にもかかわらず、その労働実態は極めて劣悪といえよう。

NPO官製ワーキングプア研究会理事の山本志都弁護士は、「①『雇用の不安定』(繰り返し任用はあるが、雇止めに歯止めなし、争う方法も限定されている)、②劣悪な処遇(賃金は最低賃金に+α程度、③不公平な労働条件、(通勤手当なし2割、一時金なし6割、夏季休暇なし5割、私傷病休暇なし3~4割そして休暇の多くが無給)④労働安全対策からも排除されている」と簡潔の〔に〕指摘している。

一連の総務省調査によると、地方公務員の臨時非常勤職員は、2005年が45万5,840人、2008年が49万7,796人、2012年が59万8,977人、2016年が643,131人と増加の一途をたどっている。

2016年4月時点で、職種別で、事務補助職員が10万892人、教員・講師が9万2,494人、人材確保が極めて厳しい保育所保育士が6万3,267人、給食調理員が3万7,985人、図書館職員1万6,484人、看護師1万6,167人、清掃作業員7,541人、消費生活相談員2,203人と続く。この調査では「2016年4月1日在職で1週間当たりの勤務時間が19時間25分以上の職員で任用期間が6か月以上又は6か月以上がとなることが明らかな職員が対象」と限定されている。「2ヶ月間の繰り返し任用(雇用)」や「4月にいわゆる空白期間設けて任用(雇用)を繰り返す」などの脱法的運用が一部の自治体に見られることから、実数はより多いものと思われる。

すべての臨時・非常勤職員を調査対象にした自治労調査では、2008年が約60万人、2012年が約70万人(有効回答率62%から推計)であった。また、2016年度「自治体臨時・非常勤等職員の賃金・労働条件制度調査」によると、臨時・非常勤等職員の全職員に対する比率は32.7%で、一般市・町村では4割に及び、週勤務時間も任期を定めない常勤職員(以下、常勤職員という。)の4分の3以上働く臨時・非常勤等職員が6割を超えているという。

埼玉県内には総務省調査によると22,224人の臨時・非常勤職員が在職している。その内訳は、さいたま市を除く市町村に16,098人、さいたま市に2,666人、埼玉県に3,460人だが、前述した事情により、実数はさらに多いだろう。〈別表1.埼玉県内地方公務員の内訳〉

 

別表1 埼玉県内地方公務員の内訳

注:一部事務組合を除く。
出所:2016年4月総務省調査より作成。

 

 

このように「臨時非常勤職員の存在なくして仕事が回らない」のが職場の実態であり、身近な行政サービスを提供するうえで必要不可欠な存在であることが浮き彫りになっている。

しかし、その処遇は労働実態に見合っていない。平均賃金は、2012年調査時に比べて、日給・時給型で40円、月給型で9千円程度増額したものの、日給・時給型988円、月給型16万9千円であり、年収換算では常勤職員水準の3分の1から4分の1程度に置かれている(2016年度自治労調査)。

埼玉県内市町村の事務補助職員の賃金水準(時給)は、総務省調査によると、850円を境に市部では若干高く、町村では若干低く設定されており、1市のみが960円であった。中でも飯能市は2016年4月当時の埼玉県最低賃金と同額の820円であった。

ワーキングプアとは働いているのに年収200万円に届かない貧困層をいうが、前述した時給では、フルタイムで休みも取らず働いても、年収は200万円に届かない。自治体(官)が生み出すことから、「官製ワーキングプア」と指摘されるゆえんでもある。

しかも、公務員独特の任用制度と多くの自治体で「1年以内」とされている任期(民間の有期雇用)の厚い壁に阻まれ、雇用が不安定化してしまう。多くの自治体では雇用が継続しているのに、「毎年、新規に採用したもので継続雇用でない」と「再度の任用」論で昇給(勤続加算)の道までふさいでいるのだ。

ところで、株式会社帝国データバンクが最近行った「人手不足に対する企業の動向調査」(2018年1月)によると、「正社員不足は1年前(2017年1月)から7.2ポイント増加。回答企業の半数超51.1%の企業で正社員が不足している」「非正社員でも1年前比4.6ポイント増で企業の34.1%が不足している」と回答している。こうしたなか「企業の人手不足は深刻度を増し、一段と広がりを見せている」と報告。「県内企業の41.8%が人員不足」と埼玉県に回答したことを2018年2月17日付け埼玉新聞が伝えている。

このような状況を裏付けるように、一部の自治体では「雇用期間に任期をつけると応募者がいない」「臨時職員で働きませんかというと見向きもされない」などの声が出始めている。

これらを放置していくと、労使や自治体内でとどまらない重大な社会問題に発展するだろう。住民に対する行政サービスをより安心かつ安定的に提供していくためにも、臨時非常勤職員の「任用(雇用)の安定と処遇改善」が避けられない課題となっている。

 

 

3.雇用(任用)不安の背景──「実情に即した法整備が必要」と司法は迫っていたが

 

ここで民間労働者と公務労働者の違いに目を向けたい。

民間労働者にとって、雇用とは「労働契約=労務と報酬の交換を約束する契約」であり、民法上は対等前提で契約自由の原則もある。しかし、実際は労使が対等でないことから労働法制によってサポートする仕組みになっている。

公務員の場合、雇用でなく任用・任命という「行政行為」とされる。職務に任じて採用する、官職に任ずる行為であり、雇用とは違った概念の公務員独特の制度といわれる。この「任用制度」が非正規公務員を悩ます曲者なのだ。

任用制度は公務員制度の根幹であり、公務員には労働契約法やパート労働法等の労働者保護法が適用されない。結果、労働者としての権利が大きく制約されている。

自治体職員には特別法である地方公務員法が適用(特別職の非常勤職員を除く)される。1950年12月13日公布、1951年2月13日施行された、現行の地方公務員法は地方公務員の職、任免、服務、労働関係等、地方公務員の身分取扱に関する基本的な事項を定めた法律であり、主に「任期の定めのない常勤職員」を対象にしたものである。しかし、地方公務員法や地方自治法制定時には、「恒常的な業務を短時間やフルタイムに関わらず非正規公務員が担う」ことは想定されず、臨時非常勤職員の保護規定も十分ではない。

故に、現行の法令と総務省的解釈によって、常勤職員(いわゆる正規職員)よりも労働者としての権利がより一層制約されているのである。

例えば、民間労働者の場合、数回の雇用更新は「期間の定めのない契約」に転嫁する。初回であっても、期待権が相当に類推させるものは解雇権濫用法理の類推適用されるケースもある。労働契約法第19条で雇止め法理も明文化され、整理解雇には会社の維持・存続が困難、解雇回避努力、基準や人選の合理・公平性、事前協議納得性の確保などの4要件等が必要とされる。

一方、公務員の任用行為は雇用でないとされ、臨時非常勤職員が何十回(年)も雇用(任用)の更新を繰り返したとしても、一旦「雇止め」が発生した場合、司法は「任用行為がなければ雇用の継続は認めない」と判断してしまう。これが、民間と決定的に違う点である。

中野区非常勤保育士地位確認等請求控訴事件では、東京高裁は東京地裁判決と同様に地位確認は認めなかったものの、再任用拒否に関し、区の対応は「実質的に見ると、雇い止めに対する解雇権濫用法理を類推適用すべき程度にまで違法性が強い」「当初は長期勤務を求めながら、解雇回避の努力を怠り『任期切れで縁が切れるから放置すればよい』との認識だったとさえ言える」と指摘、勤務継続への期待権を侵害したとして損害賠償額を1年分の報酬に相当する額に増額したうえで、「実質は変わらないのに(安易な解雇はできない)民間の雇用契約より非常勤公務員が不利になるのは不合理。実情に即した法整備が必要」と立法府に制度の見直しを迫った。

この事件は2004年4月より区立保育園32園のうち2園に指定管理者制度を導入することを主な理由にして、長期間勤務してきた非常勤保育士(特別職非常勤職員)28名全員を任期切れを理由に解雇。そのうちの9~12年間勤務していた4名が提訴したもの。

民間では、解雇や雇止めが撤回される労働事案でも、公務員独特の任用制度のカベでこのような理不尽なことがまかり通る。

臨時非常勤職員の野放図的な増大と雇用不安を引き起こす原因に、行政改革等による常勤職員の削減、行政需要の拡大・質的変化に見合わない職員体制、明確な法的ルールなし・無秩序な雇用と杜撰な雇用管理、処遇(賃金・労働条件等に対する「恣意的基準」、半世紀前 の法制定の考えに固執する総務省、自治体人事担当者の無理解と放任する自治体任命権者などがあげられるが、最大の原因は、政府・総務省が非正規公務員に関する法改正を現実や実情に即した「任期の定めのない短時間公務員制度」創設ないし民間労働法制並みの法改正を怠っているなどがあげられる。

前述した控訴審判決日は2007年11月28日であった。

10年間が過ぎて出された今回の地方公務員法改定はこれら司法の要請に応えたものであろうか、雇用不安解消に寄与するであろうか。答えは、否である。

 

 

4.現行の制度は

法改定の概要を理解する前に、改定前の臨時非常勤職員制度を見ておこう。

現行の非正規公務員制度を大きくわけると、

Ⅰ.特別職:地方公務員法第3条適用。任用制度は適用されるが地方公務員法は適用除外される。民間と同じように労働関係法は適用。(パート労働法・労働契約法は適用除外)

Ⅱ.一般職:特別職以外で自治体から賃金・報酬を得ている職員が対象に。地方公務員法適用(地方公営企業勤務職員と現業職員は地方公営企業法、地方公営企業労働関係法等が適用・準用)となる。

さらに、臨時非常勤職員は4(①~④)+2(⑤・⑥)に分類される。

①.特別職の非常勤職員:法第3条第3項第3号に基づく職員

②.一般職の非常勤職員:法第17条でいわゆる「正式任用」職員

③.一般職の臨時的任用職員:法第22条に基づく職員。「緊急の場合、臨時の職など」に6月をこえない期間。任期の更新は6月以内を1回のみ可。

④.「一般職の任期付職員の採用に関する法律」に基づく任期付職員。地方公務員独自の制度で、「3年から5年」と任期が法律で規定されている。フルタイムは職員定数にカウントされる。

⑤⑥は地方公務員の育児休業等に関する法律に基づく「短時間勤務職員」〈別表2.参照〉

注目したいのは、①と②の非常勤職員の任期である。最高裁では合理性ある場合に限り期限の合法性を認めたが、法律上は任期や更新に関する明文規定がない。任期や更新回数については、「通常1年以内」「原則1年」とされているだけである。

この点は重要なところなので理解を深めるため、長文だが自治労が発行した「自治体 臨時・非常勤等職員の手引き2012年版」にある「Q24非常勤職員の任期は1年でならなければならないのですか?」に対する回答を引用したい。

 

「非常勤職員の任期は、多くの自治体で4月1日(あるいは年度途中)から翌年3月末日までの1年間(以内)に設定されています。もともと非常勤職員の任期に関する法の定めはありません。多くの自治体で非常勤職員の任期が1年とされているのは、1999年まで労基法14条が有期雇用契約を1年以内に制限していたからと考えられます。その他の理由として、自治体予算の単年度主義との整合性や定数条例に含まれないこともあげられていますが、任期付短時間勤務職員が3年任期であり、定数に含まれていないことを考えれば、1年でなければならないということはありません。『有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準』は、1回以上(かつ1年以上)更新している労働者の契約期間を『できる限り長くする』よう求めています。現在では労基法14条の有期雇用契約は3年までとなっており、非常勤職員の任期を3年としている自治体もあります。任期を長くとることも雇用安定化の方策として検討すべきです。臨時職員の任期は、6ヵ月以内とされ、6ヵ月以内で1回だけ更新できるとされます。臨時職員も、継続的な業務では実質1年任期の非常勤職員とほとんど変わらない運用がされています。任期付職員、任期付短時間勤務職員は3年または5年以内(育児代替職員は育児休業期間)です」

 

この回答で注目したいのは「任期付短時間勤務職員が3年任期」なのに「定数に含まれていない」ことや臨時職員と同じフルタイムの任期付職員の任用期間が「3年または5年以内」などをあげて、非常勤職員の任期を「1年に限定する法的根拠や合理性がない」としている点である。実際、任期を2年や3年と決めたり、常勤職員と同じように定年まで任用を更新する旨の運用を行っている自治体はいくらでもある。

 

別表2 現行(法改定前)の臨時非常勤職員の法的位置づけと勤務形態

 

その運用実態は総務省が行った「同一任命権者において10年以上同一人を繰り返し任用する事例のある団体」調査でも裏付けられている。保育所保育士を任用(雇用)している団体の41.1%の団体が同じ臨時非常勤職員を10年以上繰り返し任用(雇用)している。消費生活相談員では31.8%の団体、事務補助職員では31.6%の団体、給食調理員では31.2%の団体、看護師では25.3%の団体、図書館職員では22.1%の団体・・・と続く。〈別表3.参照〉

 

 

別表3 同一任命権者において10年以上同一人を繰り返し任用する事例のある団体

出所:総務省2016年4月調査。

 

 

これらの実態からも、自治労は「任期の定めのない短時間公務員制度」の創設を求めてきた。また、労働関係法適用の違いでは、特別職には団体行動権(スト権)を含む労働三権、地方公営企業職や技能労務職(現業職)の臨時非常勤職員には労働委員会活用・労働協約締結権があることも注目すべきである。

しかも、給与に関しては、非現業職の非常勤職員には、地方自治法第203条の2、204条によって、給料と手当でなく「報酬と費用弁償のみ支給」と解釈されている※が、地方公営企業職や技能労務職(現業職)の臨時非常勤職員には、地方公営企業法第38条が適用され、ほとんどの自治体に制定されている「給与の種類及び基準に関する条例」によって『給料と手当が支給される』ことになっている。

このことは、今回の地方公務員法・地方自治法改定後でも変更がないので、注意を要する。※職務内容や勤務時間等を総合的に評価、地方自治法上の常勤職員とみなして手当支給を認めた判例がある。〈別表4.参照〉

 

 

別表4 労働関係法適用の違い──民間労働者と地方公務員の比較

 

5.法改定の背景

 

地方公務員法・地方自治法改定にあたって、総務省による概要説明では、

 

○地方公共団体における行政需要の多様化等に対応し、公務の能率的かつ適正な運営を推進するため、地方公務員の臨時非常勤職員(一般職・特別職・臨時的任用の3類型)ついて、特別職の任用及び臨時的任用の適正を確保し、並びに一般職の会計年度任用職員の任用等に関する制度の明確化を図るとともに、会計年度任用職員に対する給付について規定を整備する。

○地方公務員法関連では、地方の厳しい財政状況が続く中、多様化する行政需要に対応するため、臨時非常勤職員が増加しているが、任用制度の趣旨に沿わない運用が見られ、適正な任用が確保されていないことから改正を行う。

○地方自治法関連では、地方の非常勤職員については、国と異なり、労働者性が高い者であっても期末手当が支給できないため、適正な任用等の確保に伴い、会計年度任用職員について、期末手当の支給が可能となるよう改正を行う。

 

としている。

とくに、任用面の「問題意識と見直しの方向性」では、地公法第3条3項3号任用の特別職は「本来、専門性が高い職が想定されているが、自治体によっては単なる事務補助員も特別職で任用されている」、地公法第17条任用の現行一般非常勤職は「採用方法が明確に定められていないため、自治体において一般職非常勤職員として任用していないケースがある。結果として、一般職非常勤職員としての任用が進まない」との問題意識から、①特別職非常勤職員を「専門性の高い者等(委員、顧問等)」に限定する。②一般職非常勤職員の「採用方法・服務規律等の新たな仕組み」を明確化し、労働者性の高い非常勤職員は一般職非常勤職員として任用する「会計年度任用職員」の創設する。③成績主義の特例である臨時的任用職員を国と同様に「常勤職員の代替(フルタイム)」に限定すると地方公務員法改定の理由を説明している。

これらを額面どおりに受け止めていいものだろうか。

現在進められている「働き方改革」や「同一労働同一賃金」の動きに沿った改定ならば、地方公営企業職や技能労務職(現業職)の臨時非常勤職員と同じように、「労働者性が高い非常勤職員には給料と手当を支給する」と地方自治法第203条2と204条を改定するだけでいいはずである。

そもそも、地方自治体に職員定数の抑制を求め、「臨時非常勤職員の積極的活用」を促してきたのは、総務省であった。その総務省が進めた法改定に対し「ボーナスが出るようになる。処遇が改善される」と手放しに喜ぶほどお人好しではない。〈別表5.参照〉

 

 

別表5 現行(法改定前)の臨時非常勤職員の任期、勤務時間、給与等

 

地方公務員法改定に潜む総務省の焦りや危機感を見過ごしてならない。

第一に、前述したとおり、総務省調査では全国に64万人超の臨時非常勤職員が、行政サービスを担い増加の一途である。この数の重さに耐えられなくなったのは事実だろう。

第二に、それ以上に衝撃を与えているのが、団体行動権(スト権)をはじめとする労働基本権(三権)を有する21万6千人の特別職非常勤職員の存在である。しかも、特別職非常勤職員が職員総数の過半数以上を占める自治体や職種の9割以上を特別職非常勤職員が占めるなどの実態が全国に散見されるのだ。

第三に、労働者性が高いにもかかわらず、特別職非常勤職員には、守秘義務等の服務規程が非適用であり、政治的行為の制限がない地方公務員である。これらは、総務省が描く公務員制度の根幹を揺るがすものといえる。

第四に、臨時非常勤職員の63.2%(40万7千人)が常勤勤務時間の4分の3以上を勤務していることだ。しかも、その半数はフルタイム勤務である。司法が現行の地方自治法上、「常勤職員に該当」するとして手当支給を認めた大きな判断要素に「常勤職員の勤務時間の4分の3に相当する時間の就労実績」があった。

以上に点を踏まえて、法改定については総合的・多面的に検討すべきだろう。

 

 

6.法改定の主な内容

総務省のマニュアルも出され、公布されてから9ヶ月が経過しているので、自治体内部の検討や職員組合での学習会等も進んでいると思われる。

ここでは、ポイントを確認にすることにとどめたい。

〈法改定の骨子〉

① 特別職非常勤職員(新地公法第3条第3項第3号)の任用要件の厳格化

→専門性の高い者に限定(職を列記)

② 臨時的任用職員(新地公法第22条の3)の任用要件の厳格化

→常勤の職に欠員を生じた場合に限定

勤務時間はフルタイムのみ

③ 会計年度任用職員(新地公法第22条の2)に係る規定の新設

→一般職の非常勤の職として、新たに「会計年度任用職員」を規定

→任期は「一会計年度内(最長1年)」と法定化

一会計年度内とは4月から翌年3月までの期間

勤務時間で分ける:フルタイム職員・パート職員

名称は各自治体で設定が可

※職の職務内容・責任の程度は常勤職員と異なる設定

○給付体系の変更

非現業職員:地方自治法第203条の2、第204条適用職員

新地公法第24条(職務給の原則、均衡の原則等)が適用される

→フルタイム会計年度任用職員:給料・旅費・手当(法上は全ての手当)支給対象

ただし、マニュアルでは支給する手当として「地域手当、時間外勤務手当、宿日直手当、休日勤務手当、夜間勤務手当、通勤手当、期末手当、特殊勤務手当等職務給的手当、特地勤務手当、へき地手当、退職手当等」を列記

勤勉手当、住居手当、扶養手当等は支給対象外としている

※期末手当の対象は6ヶ月以上勤務、基礎額や支給割合、在職期間別割合の取扱い等、具体的な支給方法は常勤職員の取扱いとの均衡等で定める

※退職手当は条件が該当した場合

→短時間勤務会計年度任用職員:報酬・費用弁償、期末手当のみ支給可能

報酬・期末手当はフルタイム会計年度任用職員との均衡等で定める

地方公営企業職員と技能労務職員(現業職員):今までどおり、給料と手当支給可〈別表6.参照〉

 

別表6 地自法改定後の非常勤職員給与体系他(作成:上林陽治氏)

 

④ 条件付採用期間の新設(新地公法第22条および第22条の2第7項)

非現業職員(勤務医も含む)、地方公営企業職員・技能労務職員(現業職員)すべて対象

・会計年度任用職員:1ヶ月間(再度の任用毎に必ず設定。)

例:4月採用〈条件付採用1ヶ月〉~正式任用期間11ヶ月→→

翌年4月(再度の任用)〈条件付採用1ヶ月〉~正式任用期間11ヶ月→→

翌々年4月(再度の任用)〈条件付採用1ヶ月〉~正式任用期間11ヶ月→→

翌々々年4月(再度の任用)〈条件付採用1ヶ月〉~正式任用期間11ヶ月→→

翌々々々年4月(再度の任用)〈条件付採用1ヶ月〉~正式任用期間11ヶ月……

⑤ 空白期間について

再度の任用(任期の更新)時に設ける必要はない(新地公法第22条の2第6項)

2014年7月総務省通知等を踏襲

「必要かつ十分な任期を定める」

「必要以上に短い任期を定めることがないようとする」と規定

⑥ 臨時的任用に係る経過措置

法律施行時に臨時的任用の任期中の職員:施行後も改正前の臨時的任用に係る規定を適用、フルタイム以外の臨時的任用も満期まで同様(附則第3条)

⑦ 施行:2020年4月1日

 

その他

・雇用年数や採用回数による雇用・採用制限は×
・年齢による募集制限ない(実質的に定年制なし)
・フルタイムには営利企業等の従事制限があるがパートタイム職員は対象外
・人事評価の実施
・職員定数条例外の扱い(フルタイム・パートタイムにかかわらず)
・常勤職員と同じような服務上の制約

主な服務
①服務の宣誓
②法令及び上司の命令に従う義務
③信用失墜行為の禁止
④職務上知り得た秘密を守る義務(守秘義務)
⑤職務に専念する義務
⑥政治的行為の制限
⑦争議行為等の禁止等

・懲戒処分の対象

 

 

7.法改定の問題点

今回の法律改定に対して、任用(雇用)面と処遇面に分けて問題点を考えてみたい。

〈任用(雇用)について〉

任期、再度の更新(雇用の更新)、条件付き採用期間(試用期間)の問題に絞られるだろう。

1)建前としての入り口規制の撤廃

法施行にあたっての衆・参議院総務委員会附帯決議でも明らかなように「公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心としている」わけで、現行の地方公務員法では、任期をつけた職員の存在は限定的に規定されている。一応、法律的には入り口規制されていた。

ところが、今回の法改定では、任期をついたフルタイムの非常勤職員を出口規制なしに追認してしまった。「職の職務内容・責任の程度は常勤職員と異なる設定」というが、自治体現場では、常勤職員(任期の定めのない職員)との垣根は、今以上に曖昧になっていくだろう。常勤職員の削減に拍車がかかる危険性は否定できない。

とくに、総務省は「フルタイムでも非常勤」と言い出し、常時勤務を要する職の概念を変更したのだ。

今までは占める職から職員類型化にあたっての三要素(フルタイム勤務か短時間勤務か、本格的か補助的か恒常的業務か臨時的業務か、任期の有無)で説明してきた。

法改定にあたって、常時勤務を要する職は、①従事する性質に関する要件 ②勤務時間に関する要件で判断すると変えてしまった。②の要件は「フルタイム勤務とすべき標準的な業務の量がある」ということで、今までと同じ考え方。問題は、①従事する性質に関する要件を「相当の期間(会計年度を超える・1年以上)任用される職員を就けるべき業務に従事する職」と説明していることだ。

「任用される職員」を前提に「業務」や「職」を評価することは、人に職を合わせてしまうので、職に応じて職員を任用する地方公務員法の原則に反する。常勤職員が就く業務が「常時勤務を要する職」と言っているにすぎず、禅問答に等しい。必要とする勤務時間の長・短でもなく、「職」(=業務や仕事)の性格(=本格的、恒常的、常用的)でもない。

任期の定めのない常勤職員が配置されていない職が、総称して「非常勤の職」となってしまう。故に、「常勤の職員が配置されていた職に、会計年度任用職員が変わって、その職についたとたん、その職は「非常勤の職」と変身する危険性が出てくる。※

このような変更は、現実離れした「いわば、霞ヶ関周辺でしか通じない」(霞ヶ関文学?)説明で矛盾に満ちたものといえよう。

いずれにしても、総務省に代わって自治体当局者は「相当の期間任用される職員を就けるべき業務に従事する職」や「フルタイムの会計年度任用職員が就く職は非常勤の職」をどのように説明するのであろうか。

※詳しくは、自治総研通巻465号2017年7月号「欺瞞の地方公務員法・地方自治法改正(下)」~官製ワーキングプアの法定化~上林陽治研究員の論文参照

 

 

2)任期の法制化は継続雇用への期待権を抑制、任用継続(雇用の更新)の取り組みへの足かせになる

参議院総務委員会は「会計年度任用職員及び臨時的任用職員の任用について、地方公共団体に対して発出する通知等により再度の任用が可能である旨を明示すること」と附帯決議(衆議院でも同趣旨)を行い、総務省通知やマニュアルでも「従来の取扱いと同様、非常勤の職と同一の職務内容の職が翌年度設置される場合、同一の者が、平等取扱いの原則や成績主義の下、客観的な能力の実証を経て再度任用されることはあり得る」とされている。

一方、「任期は一会計年度(1年)以内」と明文化・法定化されたことを捉えて、先に紹介した山本弁護士は「継続雇用への期待権を抑制」「むしろ争いを少なくさせるための法改正か」と危惧している。小川正弁護士(自治労法律相談所)も『労働者の権利』(日本労働弁護団発行2017年10月号)の中で「最大の問題である任期満了による雇い止めは放置された。というより雇い止めについては、今後一層厳格な運用が行われることとなろう」と指摘している。

この点、法改定問題を国会審議段階から取り上げていた連合通信は、2017年4月20日号で「法案が任用期間を『最長1年』と規定していることの負の影響は小さくない。この点で政府側は『再度任用の取り扱いはこれまでと変わるものではない』と答えている。つまり、従来通りに事実上の契約更新をして働き続けられますよ、ということ。とはいえ、総務省の対応はマニュアルによる自治体への助言にとどまる予定。自治体が『法律で最長1年とされたのだから雇用は1年限りだ』と強弁してきたときに、助言が歯止めになるのかどうか」と疑問を投げかけている。

これらは杞憂なことではない。「再度の任用は可能だが、任期は原則1年」との総務省通知(助言)が出されるたびに、一部の自治体では「任期は1年と限られている」と解釈、退職を強要された事例が自治労に報告されていた。

 

3)条件附採用期間中の雇用の不安である

この期間は、身分保障が適用されないので、雇用の不安定化に悪用される危険な制度といえよう。非現業職員の場合、人事・公平委員会に不利益処分に関する不服申立てができない。地方公営企業職員と技能労務職員(現業職員)の場合は、そもそも、人事・公平委員会が活用できないので地公労法等を活用した取り組みとなる。

会計年度任用職員は「一会計年度(4月から翌年3月まで)で、終了する職に任用(雇用)された職員」である。任用(雇用)が更新されるとは、いったん解職した者を、新たに任用(雇用)したとの理由で、「再度の任用(採用)」といい、総務省は「更新した」と言わない。

故に、毎年の「再度の任用」時には、新たに任用(採用)になったので、1ヶ月の条件附採用期間(民間の試用期間)を設けるという理屈。

およそ、民間では考えられない公務の世界だけで通じる理屈である。

しかも、「マニュアル」では、労基法は適用になるので、採用から14日超の免職には解雇予告手当が必要と注意を喚起している。

また、総務省が引き合いに出している国家公務員の非常勤制度にも言及したい。

国の期間業務職員は、当時の「日々雇用職員(1日毎に任用される)」に対して「人権問題ではないか」などの猛烈な社会的批判をうけ、人事院が複数年の雇用安定策として2009年に勧告したことからできたものであり、過渡的制度といえる代物である。

その経過を踏まえれば、法的に地方公務員には日々雇用職員制度がないにも関わらず、性格の違う「期間業務職員制度」をまねて制度設計すること自体に無理がある。国家公務員とは違い、地方公務員には労働基準法が適用されることに注意したい。

 

〈処遇について〉

最大の問題点は勤務時間によって格差をつけたことである。

常勤職員と同じ勤務時間であれば、法改定前でも臨時非常勤職員は給料と手当が支給される。

非現業職の会計年度任用職員は1分でも勤務時間が短いと報酬と費用弁償、期末手当のみの支給となってしまう。

これらの問題点を整理すると、

① 勤務時間にかかわりなく給料と手当が支給される国家公務員の非常勤職員制度より後退したもの

② 手当支給をめぐる判例との整合性に問題がある

③ 過去の総務省通知や判例に従う形で条例・規則を整備、期末手当以外の勤勉手当や退職手当を支給したり、人材確保等のための弾力的な任用上の運用を行うなど、処遇改善に向けた自治体での努力や実績に反する

④ 政府が進めている「働き方改革、同一価値労働同一賃金」の流れに逆行するもので、民間労働者にも悪影響を及ぼす。

当時の高市総務大臣は、今回の法改定の性格を「この改正法案をもって、任用の適正化、処遇の改善に向けてまず第一歩を踏み出したという形にできれば大変有り難い」と率直に述べていた。

前述した参議院総務委員会でも「本法施行後、施行の状況について調査・検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。その際、民間における同一労働同一賃金の議論の推移を注視し、公務における同一労働同一賃金の在り方及び短時間勤務の会計年度任用職員に係る給付の在り方について特に重点を置くこと」(衆議院でも同趣旨)と附帯決議されたのも納得できる。法案作成の前段で行われていた「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」の提言(2016年12月27日)から後退したことも指摘しておきたい。

研究会では、処遇の課題として、「労働者性の高い非常勤職員に期末手当などの支給ができない」が国家公務員の非常勤職員は支給可能であり、民間では「同一労働同一賃金」に向けた検討が行われている」ことから、一般職非常勤職員について、期末手当などの手当の支給が可能な制度に見直しを求めた。具体的には「報酬・費用弁償のみ、手当の支給は不可」の現状から「給料・手当を支給できる給付体系に移行させるべき」と提言していた。

つまり、労働者性の高い一般職非常勤職員には「勤務時間の長短の区別なく『給料・手当を支給できる給付体系』」を求めていたのだ。

総務省自身が作った研究会提言からも今回の法改定は、大幅に後退しているのである。

今回の法改定で評価できる点をあげるとしたら、「非現業職のパートタイム会計年度任用職員に期末手当が支給できる」と地方自治法を改正したことと、マニュアルで給料や報酬決定の基本的考え方を過去の総務省通知や人事院「一般職の職員の給与に関する法律第22条第2項の非常勤職員に対する給与について」(ガイドライン※)にそって具体的に示したことである。

期末手当は前述したとおりだが、給料や報酬決定の基本的考え方について、少し、触れよう。

・職務給の原則では、常勤職員に類似する職務の級の初号給を基礎に、職務の内容や責任の度合い、職務遂行上必要な知識・技術・職務経験等の要素を考慮して決定するとしている。

・均衡の原則では、比較対象を直接的な地場賃金の相場でなく、自治体の常勤職員賃金が「人事委員会による官民比較を通じて民間給与との均衡が図られている」ことから、会計年度任用職員フルタイムは常勤職員との均衡で、会計年度任用職員パートタイムはフルタイムとの均衡で定めるとされる。また、再度の任用時の給与決定については、厚労省の「同一労働同一賃金ガイドライン案」の考えを踏まえ、常勤職員の初任給決定水準や昇給制度との均衡を考慮すべきとしている。

要するに、常勤職員≧会計年度任用職員のフルタイム(給料・手当)≧会計年度任用職員パートタイム(報酬・費用弁償・期末手当)となる。多くの自治体では経験年数等による給料や報酬の加算を行っているが、回りくどい言い方をしながら、暗に昇給制度を追認したのだ。〈別表7.参照〉

 

 

別表7 行政職:総務省マニュアル記載の基準だと(2017 年度賃金水準)

 

なお、地方公営企業職員と技能労務職員(現業職員)の給料と手当については、今までどおり、労使の交渉と労働協約(労働組合がない場合は就業規則)で決めることが基本となろう。

いずれにせよ、給与や報酬の考え方は、過去の総務省通知や人事院のガイドラインと同じ内容であり、今回の処遇改善策は「非現業職パートタイム職員に期末手当が支給できる」と改定したのがメインといえよう。

人事評価の導入、研修の実施、在職中だけでなく退職後の守秘義務等の服務を求めながら、これでは常勤職員に比べ処遇面の補償があまりにも低すぎないか。

※【人事院のガイドライン】

1.基本となる給与を、当該非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級の初号俸の俸給月額を基礎として、職務内容及び職務経験等並びに在勤する地域の要素を考慮して決定すること。

2.通勤手当に相当する給与を支給すること。

3.任期が相当長期にわたる非常勤職員に対しては、期末手当及び勤勉手当に相当する給与を、勤務期間、勤務実績等を考慮の上支給するよう努めること。

4.各庁の長は、非常勤職員の給与に関し、前3項の規定の趣旨に沿った規程を整備すること。

 

 

8.当事者からは法改定に期待と不安が交差

法改定では、任用根拠を明確にして、臨時非常勤職員の多くを新設される「会計年度任用職員」に位置づけること、短時間の臨時非常勤職員にも期末手当(ボーナス)が支給できること、任用と任用の間に不必要な空白期間を設けないこと等が盛り込まれ、マニュアルでは賃金水準決定についての考え方などが示されたことで処遇に関して改善がはかれると積極的に評価、期待する意見がある。

一方では、「会計年度任用職員」制度に対して、臨時非常勤職員の当事者からは様々な疑問や疑義が噴出している。例をあげると、

・再度の任用はできるというが、更新ではないという。法律で任用期間が1年と限定されたので、雇い止め時にはより不利にならないか。

・新たに1ヶ月の条件付採用期間(民間の試用期間)が設けられた。何年も継続更新して働いているのに毎年の更新ごとに条件附採用期間がつくは屈辱的。雇用が不安定な期間なので不安だ。

・「フルタイムの会計年度任用職員も非常勤職員」となれば、常勤正規職員との垣根が低くなり、常勤職員の定数削減と低い労働条件のフルタイム職員づくりにならないか。

・フルタイム勤務者には給料と手当が支給される。勤務時間が1分でも短いと報酬と費用弁償のみの支給という、国や民間にもないおかしな制度だ。

・給料や報酬等の考え方が示され、期末手当(ボーナス)が支給できるというが、財政難を理由に自治体が渋るのでは。 等々

行政法研究者からは、

・改定後の地公法第22条の2の『非常勤の職』とは、どのような基準によるものか。

・その職が会計年度以内だからという理由では、現行の任期付短時間勤務職員の任期が3から5年であるから、当該短時間勤務職員がつく職は、非常勤の職とはならないはず。

・勤務時間で区分するのであれば、常勤(フルタイム)の会計年度任用職員の占める職も、『非常勤の職』というのはおかしい。

・定数の外か内かで区分するのであれば、地方自治法第172条の定数条例の定数は、会計年度を超えて設置される職ということであるので、現行の任期付短時間勤務職員も定数内とすべきだが、そうなっていない。

・たとえば、保育士の職のように会計年度を超えて恒常的に設置される職に、定数外となる会計年度任用職員(フルタイム・パート両方)を配置することはできないということか。

・パートの会計年度任用職員への給付を、報酬・費用弁償のままとしたのは、いかなる理由によるものか。期末手当以外の手当を支給させないためのものか。

などの疑問があがっている。

 

 

9.これから、どのように進んでいくのか

総務省は、マニュアルで2020年4月の施行に向け、「会計年度任用職員制度」導入等に係るスケジュールと二つ課題を示している。

第一は、任用根拠の適正化である。

臨時非常勤職員の実態の把握のため、統一的に把握すべき事項を記載した調査様式を示しながら、臨時非常勤の職の再設定を促し、臨時非常勤職員全体の任用根拠の明確化・適正化をはかる。

第二は、会計年度任用職員制度の整備である。職員団体との協議等を経て「任用、勤務条件等の設計」と条例、規則等の制定・改正を求めている。

日程的には、

2017年度:自治体人事当局が実態調査を行い、会計年度任用職員の制度化に向けた検討を開始する

2018年度中:職員団体との協議、会計年度任用職員の任用・勤務条件を確定する

2019年3月まで:条例と規則を制定して周知を図り、2019年4月から2020年度の採用に向けた準備する(募集開始もあり得る)というもの。〈別表8.参照〉

 

別表8 総務省が示すスケジュール

 

自治体での取り組みは遅れているようだが、2018年上半期は労使による「職の評価と再評価、振り分け作業」の時期になろう。

総務省が示した統一的に把握すべき事項とは、基本情報(職名、職種、任用根拠)、主たる職務内容、任期・勤務時間等(任期、任用期間、1週間あたりの勤務時間、1週間あたりの勤務日数、1日あたりの標準的な勤務時間)フルタイムかパートタイムか、再度任用時の空白期間設定の有無。給付関係では報酬・給料の区分、月額・日額の区分、その額、通勤手当相当額支給の有無、期末手当支給の有無、給付総額(うち、期末手当分)である。

さらに、任用適正化後の調査3項目には、任用根拠、フルタイム型・パートタイム型、再度任用時の空白期間設定の有無となっている。

 

10.会計年度任用職員制度への対応「基本に返った議論を」

 

それぞれの実態把握をもとづき、労使で交渉や協議を実施していくわけだが、任用用根拠の明確化・適正化の前提は、現在の臨時非常勤職員が担っている「職の評価と再設定」である。ここで、注意しなければならないのは、総務省が示した統一的に把握すべき事項には、「職の評価と再設定」の議論に必要な調査項目がすっぽり抜け落ちていることだ。これは、総務省が現在の臨時非常勤職員の多くを「会計年度任用職員制度」に押し込めたいとの思惑によるものと考えられる。

総務省の統一的な調査項目にプラスして「職の継続性(実績と今後の見通し)」「常勤職員定数との関係(定数内が定数外か)」「業務遂行に必要な勤務時間(日)等」「休暇等の労働条件」「労働安全衛生の実態」「研修、福利厚生の実態」等の項目は必須であろう。

総務省は地方公務員法第17条の一般職非常勤職員制度は避けるべきと助言しているので、それを除くと法改定後の職とその職に就く職員の種類は、次の5類型に分かれる。

・常勤職員が占め常時勤務を要し、定数条例の対象となる職→就く職員は任期の定めのない常勤職員

・会計年度内で終了する職→就く職員はフルタイムかパートタイムの会計年度任用職員

・臨時の職→就く職員はフルタイムの臨時任用職員

・任期付法にもとづく職→就く職員は任期付法3条・4条・5条に定める任期付職員

・限定された特別職の職→就く職員は特別職非常勤職員

自治体で働いている臨時非常勤職員が担っている「職」(業務)の多くは1年~3年で終了しない継続的なものと思われる。就労の実態も本格的で基幹的なものが多数である。継続的な職には継続的な職員を就けるのが、地方公務員法の原則。その実態を踏まえ、短時間勤務の臨時非常勤職員は「任期の定めのない短時間公務員制度創設」の法改正を求めているのだ。フルタイム勤務を要するのであれば、当然のことながら「任期の定めのない常勤職員」(=職員定数化)とすべきである。さて、現行の臨時非常勤職員が従事している「職」は上記の5類型のうち、どれに当てはまるであろうか。

会計年度内で終了する職には会計年度任用職員制度で対応できるが、一会計年度で終了しない継続的な職には、フルタイムを要する場合は常勤職員が就き、短時間を要する場合は5分類のワクに収まらない職員が就くしかない。

例えば、年度内の期間限定の給付金支給制度に従事する職員は、一会計年度内で終了する職として、会計年度任用職員が適切と思われる。しかし、前述した総務省「同一任命権者において10年以上同一人を繰り返し任用する事例のある団体」調査で明らかにように、長期の任用(雇用)されている保育士や消費生活相談員、事務補助職員、給食調理員、看護師、図書館等職員などが担っている「職」は、「一会計年度で終了しない職」であり、継続性もあることから、会計年度任用職員で対応することは適切でない。

このように、多くの臨時非常勤職員は5類型に当てはまらないと思われる。故に、その他の類型が必要となる。

仮に、現行の臨時非常勤職員が就いている継続的な職を「一会計年度で終了する職」と強弁する場合の説明責任は自治体当局にある。このことはきちんと押さえておこう。

この点を曖昧にしてはならない。

今後、制度の設計と「任用に関する規則」「処遇に関する条例・規則」づくりと進んでいくが、会計年度任用職員制度ありきの議論は危険なのだ。

 

先に高市総務大臣(当時)答弁を紹介したが、処遇に関して、抜本的改革に向けた一里塚と評価する方もいるだろう。しかし、任用(雇用)に関しては「任期を法律で明確にした」ことで、極めて危険な側面をもったことは間違いない。会計年度任用職員制度をめぐって「再度の任用ができるからいいではないか」という意見もあるようだが、再度の任用(雇用の更新、継続雇用)担保の確保や条件付採用期間の具体的な対応策を取り組まないで、そのようなことを流布するのは危険だ。総務省のマニュアルでは「会計年度任用の職は一会計年度ごとにその職の必要性が吟味される『新たに設置された職』と位置付けられるべきもの」で「『同じ職の任用が延長された』あるいは『同一の職に再度任用された』という意味でない」としており、たまたま、同じような職が新たに設置される場合のみ「任用される」だけであり、4月直前でないと再度の任用の可能性はわからないからだ。

2018年前半で最も重要な取り組みは「職の評価と再設定」を行うための「職」の振り分け作業である。それを労使で行いながら、現行の臨時非常勤職員が就いている職で、先に示した5類型の職に収まらない職と職員の存在と実態。そのことを労使で共有認識することから、実効性のある本格的な議論(協議)がはじまる。

すでに、15%の民間事業所で「短時間正社員」制度が導入されているという。任期の定めのない短時間公務員制度に踏み込む自治体があってもいいのではないか。

自治体当局者が悩み、労使が真剣に向かい合うところから、雇用の安定と処遇の改善策や実態と法のはざま・齟齬を打開する工夫やアイデアが出てくるのだ。

 

別表9 いま、求められていること

 

11.雇用安定に向けた取り組みについて

(私論 その1)

以下は、会計年度任用職員制度導入を前提に労働組合が取り組むべき課題を筆者なりに整理したものである。

(1)任用期間・更新(再任)などへの対応

① 会計年度任用職員は任用期間が1年以内と法定化されたことで、雇用が不安定化することはすでに述べてきた。

運用、労使確認、労働協約等で会計年度任用職員制度を上回る取り扱いをしている自治体の場合、労使間で更新規定の再確認(文書化)等の作業が必要となる。

「これまでの各自治体における取組(東京が任用期間を5年としていることなど)をそのまま会計年度任用職員にも当てはめていただくことになる」との公務員部長の国会答弁や「移行に当たっては、不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保が行われなければならない」との国会の附帯決議が参考となろう。

② 会計年度任用職員制度と同じく、任用期間が1年と運用されている場合は、「再度の任用」についての国会附帯決議やマニュアル、パート労働法などを参考に文書で再度の任用(雇用の更新)の取り扱いを確認する。(当然、文書化も)例えば、「・・・限り任用を反復する」等。

その際、労働基準法第15条の労働契約締結時における労働条件明示項目にある「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」を活用すべきだ。

厚労省は、更新の有無の判断材料に「期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況」を例示している。地方公務員にも労働基準法第15条が適用されることから、再度の任用(雇用の更新)規定を文書確認するときの参考材料に勧める。なお、厚労省の例示は、地公法第28条第1項各号・第2項各号に類似した内容でもある。

また、任用(雇用)については自治体の規則で定めることになるが、労使の確認どおりの規則制定を求めることも忘れずにしたい。

③ 長期に雇用する会計年度任用職員を条例・規則等で定数化、「定数管理」を行う。

定数化とは会計年度を超えた期間雇用されることを保障すること。非常勤職員に対しては、予算単年度主義のくびきを外し次年度以降の雇用を保障するとともに、安易に常勤職員から不安定な職員に置き換えさせない効果をもたらす。

なお、地方自治法第172条第3項では「第一項の職員の定数は、条例でこれを定める。ただし、臨時又は非常勤の職については、この限りでない」と規定されているが、定数を定めてはいけないということではない。

④ 条件付採用期間への対応について、この期間は身分が不安定となり、悪用されると雇用不安につながる。

「条件付採用期間の取り扱いは常勤職員と同様とする」「雇用不安をもたらすような不利益な取り扱いをしない」などの確認とその文書化が必要となろう。

⑤ 長期雇用を前提にする制度づくりを積極的に取り組む。昇給制度、リフレッシュ休暇、財形貯蓄制度導入などの獲得は、長期雇用者に対する処遇改善ということに加え、長期雇用の実態づくり(1年限りの任用の形骸化)になる。

⑥ 技能労務職員が持つ団体交渉権=労働協約締結権の活用によって、雇用安定と処遇改善の取り組みを有利に展開させる。技能労務職(現業職)範囲を拡大することを早急に検討すべきだと思う。

報酬と費用弁償、期末手当のみが支給対象の非現業職パート会計年度任用職員と違い、技能労務職(現業職)はパートでも給料と手当が支給対象であることは前述したとおり。

さらに、上記①~④の文書での確認は、技能労務職(現業職)の場合は、労働協約となり規範的効力を持つ。非現業職の場合は、書面協定扱いで「誠意と責任をもつて履行する」いわば紳士協定になってしまう。全く効力が違う。しかも、地公労法第7条第2項により「昇職、降職、転職、免職、休職、先任権及び懲戒の基準に関する事項」は交渉事項となる。上記①~④に関して、自治体当局が団体交渉を拒否した場合は労働委員会に不当労働行為の申し立てもできる。賃金や休暇等の労働条件等については労働委員会へのあっせんから仲裁裁定を求めることもできる。

 

(私論 その2)

国会の議論で判明したのは、法改定後でも、地公法第17条にもとづく一般職非常勤職員が残ることである。前述した法改定後の5類型に収まらない類型に、地方公営企業勤務や技能労務職(現業職)の非常勤職員(短時間勤務)に対して、地公法第17条にもとづく一般職非常勤職員制度を検討する余地が出てきたのではないか。

総務省は通知やマニュアルで「会計年度任用職員以外の独自の一般職非常勤職員の任用を避けるべき」としている。

その理由を次のように述べている。

一般職の非常勤職員制度が不明確な中、制度の趣旨に沿わない任用が見受けられ、勤務条件に関する課題も指摘されていることから、法的に「一般職会計年度任用職員」を明確に定義、任用、服務規律等を定めて適正化を図り、期末手当の支給を可能とした。一般職として非常勤職員を任用する場合は、会計年度任用職員として任用することが適当、会計年度任用職員以外の独自の一般職非常勤職員(法第17条が根拠)としての任用は、適正な任用・勤務条件を確保するという改正法の趣旨に沿わないので、不適当。さらに、独自の一般職非常勤職員のパートタイムは期末手当の支給対象にならない、フルタイム者は給料及び手当の支給対象とならないとしている。

しかし、これらの説明はおかしい。

総務省は法改定前までは、積極的に法第17条による一般職非常勤職員」を推奨、それに従って東京都をはじめ多くの自治体が条例や規則を整備、特別職非常勤職員から法第17条による一般職非常勤職員に移行させてきた。「不明確」で「勤務条件に関する課題があった」制度を総務省が積極的に勧めていたのであろうか。

地公法第17条にもとづく一般職非常勤職員制度と会計年度任用職員制度の違いは

① 任期が「1年」と法律で定まっていない

② 条件付採用期間が6ヶ月間(今回の法改定で改悪された)

③ 勤務時間が常勤職員の4分の3未満の職員に期末手当が支給出来ない危険性あり(判例とすべてのパートタイムに支給できないという総務省見解との相違あり)

④ 期末手当の支給逃れ目的に現行4分の3以上である職員を4分の3未満の勤務時間にする

自治体が出ることが予想される

⑤ 空白期間についての法律上の規定がない

等である。

上記の中で注目したいのは①である。

②については、ベテラン職員に、毎年、再度の任用(雇用の更新)ごとに条件付期間を設けることが屈辱的な取り扱いといえる。①のように任期が法定化されていないのであれば、任用期間を1年以上(3年~5年)に設定できるはず。現行でも、任期付任用職員は条件付採用期間が6ヶ月間である。その期間の身分保障については、前述ように地方公営企業勤務や技能労務職(現業職)の非常勤職員は、地公労法第7条を活用した取り組みで克服できる可能性がある。

③から④は、非現業職の場合の解説。地方公営企業勤務や技能労務職(現業職)には地方自治法第203条の2、204条が適用されず、地公企法第38条が適用・準用されることから、地公法第17条にもとづく技能労務職(現業職)の短時間勤務一般職非常勤職員には勤務時間の長短に関係なく手当は支給されるので、全く問題はない。

⑤の空白期間はフルタイムの臨時的任用職員に設定されるケースがほとんどである。短時間勤務の一般職非常勤職員に空白期間を設けるメリットは自治体側にはない。

このように、雇用の安定という面から考えると、地方公営企業勤務や技能労務職(現業職)の非常勤職員(短時間勤務)には「地公法第17条にもとづく一般職非常勤職員制度」を活用していくことも、検討に値するだろう。

 

─ 補論 ─

紙面の都合により、次の3項目については、主に国会答弁と附帯決議などの紹介とする。

〈会計年度任用職員への移行について〉

東京都のある自治体では、会計年度任用職員への移行を悪用して、いったん全員解雇・選別採用の動きが出てきている。また、埼玉県内のある自治体でもこれまで獲得してきた労働条件を切り下げる検討をおこなっていた事実が判明している。

下記の答弁などを活用した取り組みが必要だろう。

〇 国会の附帯決議:現行の臨時的任用職員及び非常勤職員から会計年度任用職員への移行に当たっては、不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保が行われなければならない。

〇 公務員部長(参議院総務委員会):これまでの各自治体における取組(東京が任用期間を5年としていることなど)をそのまま会計年度任用職員にも当てはめていただくことになる。雇い止めを行うとか処遇を引き下げるといったようなことは、このような改正法案の趣旨に沿わない。

〇 公務員部長(衆議院総務委員会):法改正の趣旨が任用の適正化と勤務条件の確保ということでございますので、そういった不利益変更ができる限り起こらないような形で、私ども、助言をしてまいりたい。

 

〈財源問題について〉

〇 高市総務大臣(参議院総務委員会):今後、各地方公共団体の対応などについて調査を行わせていただいた上で、地方公共団体の実態も踏まえながら地方財政措置についてしっかりと検討してまいります。地方公共団体が必要な行政サービスを提供しながら安定的な財政運営を行っていけるように、地方が自由に使える一般財源総額を確保していく。

〇 原田総務副大臣(参議院総務委員会):財政処置を検討するに当たりましては、地方公共団体の実態等を踏まえる必要があります。また、施行に向け、各地方公共団体において会計年度任用職員制度を導入していただき、その後、任用の状況などについても把握する必要がある。

 

〈労働基本権を巡る動き〉

今回の法改定を巡る論議で不十分なことは、「現業職非常勤職員の取り扱い」「雇用(特に任期)や処遇が会計年度任用職員制度より優れている自治体での対応」「特別職非常勤職員が有するスト権や団体交渉権が剥奪され、労働委員会活用などができなくなる労働基本権の喪失(労働三権→労働一権)とその代償措置について」である。

労働基本権を巡っては、2017年5月24日、上部団体を持たない独立系の4つの労働組合が今回の法改定は団結権および団交権の侵害であるとして、ILO「結社の自由委員会」に「法改正とその施行を中止、一般職非正規公務員への労働基本権付与、現業公務員と同様に地公労法を適用し直ちに団結権・団交権を保障する」などの勧告を求めて申立を行った。

申立の理由では、労働基本権を有している特別職非常勤職員が労働組合法を活用してストライキや労働委員会などを取り組みながら、雇用の安定や処遇の改善を獲得してきた労働組合は少なくないと訴え、総務省のねらいは地公法の規制が及ばない労働組合を忌避し、職員団体制度に取り込み、労働基本権を奪うことにあると指摘している。また、既存の非正規公務員労働組合は解散して職員団体に組織替えすることが強制され、職員団体になると交渉拒否や差別的取り扱いや支配介入があっても、労働委員会に申立ができなくなり、身分保障もなく低位の労働条件に置かれている非正規公務員には、労働基本権を確保することが不可欠と強調している。

その後、「4労組からの申立を早急に受理し審査の開始すること」「日本政府に対し自治体非正規公務員に労働基本権を保障する勧告を求める」との団体署名が行われ、2月28日には、賛同した320団体連名の署名がILOに送られた。

今後、ILO「結社の自由委員会」の動きに注目したい。

 

 

資料:附帯決議

〈参議院総務委員会〉

地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、本法施行に当たり、地方公務員の任用、勤務条件並びに福祉及び利益の保護等の適正を確保するため、次の事項についてその実現に努めるべきである。

一、会計年度任用職員及び臨時的任用職員の任用について、地方公共団体に対して発出する通知等により再度の任用が可能である旨を明示すること。

二、人材確保及び雇用の安定を図る観点から、公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心としていることに鑑み、会計年度任用職員についてもこの考え方に沿うよう、引き続き任用の在り方の検討を行うこと。

三、現行の臨時的任用職員及び非常勤職員から会計年度任用職員への移行に当たっては、不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保が行われなければならない。そのために地方公共団体に対して適切な助言を行うとともに、制度改正により必要となる財源についてはその確保に努めること。また、各地方公共団体において休暇制度の整備及び育児休業等に係る条例の整備が確実に行われるよう、地方公共団体に対して適切な助言を行うこと。

四、本法施行後、施行の状況について調査・検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。その際、民間における同一労働同一賃金の議論の推移を注視し、公務における同一労働同一賃金の在り方及び短時間勤務の会計年度任用職員に係る給付の在り方について特に重点を置くこと。

右決議する。

 

〈衆議院総務委員会〉

地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、次の事項について十分配慮すべきである。

一、会計年度任用職員及び臨時的任用職員について、地方公共団体に対して発出する通知等により再度の任用が可能である旨を明示すること。

二、人材確保及び雇用の安定を図る観点から、公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心としていることに鑑み、会計年度任用職員についても、その趣旨に沿った任用の在り方の検討を引き続き行うこと。

三、現行の臨時的任用職員及び非常勤職員から会計年度任用職員への移行に当たっては、不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保が行われるよう、地方公共団体に対して適切な助言を行うとともに、厳しい地方財政事情を踏まえつつ、制度改正により必要となる財源の十分な確保に努めること。併せて、各地方公共団体において、育児休業等に係る条例の整備のほか、休暇制度の整備が確実に行われるよう、地方公共団体に対して適切な助言を行うこと。

四、本法施行後、施行の状況について調査・検討を行い、その結果を踏まえて必要な措置を講ずること。その際、民間部門における同一労働同一賃金の議論の動向を注視しつつ、短時間勤務の会計年度任用職員に係る給付の在り方や臨時的任用職員及び非常勤職員に係る公務における同一労働同一賃金の在り方に重点を置いた対応に努めること。

 

 

 

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