道労連「コロナ禍だからこそ、最低賃金の引き上げが必要だ!」

17年ぶりの「ゼロ」改定 凍結の影響は深刻

北海道の地域別最低賃金は時間額861円です。フルタイムで働いても15万円にも満たない水準です。「最低賃金法」という法律によって、使用者はこの金額以下で働かせる17年ぶりの「ゼロ」改定凍結の影響は深刻と罰せられます。学生アルバイトなどにも適用されます。

日本における最低賃金制度は、長らく「家計補助」という位置づけにされ、OECD各国などの先進国と比較しても最低水準にとどまっています。いまや非正規雇用労働者は4割を占め、最低賃金近傍(1.15倍まで)の賃金水準で働く労働者が増えています。さらに、官製ワーキング・プアなど民間における賃金水準の低下が公務職場にも波及し、問題はより多方面で深刻化しています。

最低賃金の引き上げは、賃金水準を底上げし、地域経済を活性化するためにも不可欠です。昨年は、最低賃金が「凍結」され17年ぶりに引き上げナシの「ゼロ」改定となりました。コロナ禍で経済が萎縮している今だからこそ、中小零細企業への抜本的な支援策とセットで最賃を引き上げていくことが求められています。

今年度の最低賃金の引き上げについて話し合う中央最低賃金審議会(略称:中賃)が、6月22 日から始まり、北海道地方最低賃金審議会は6月30 日から行われます。道労連は大幅な引き上げを求めていますが、企業側からは業績の悪化などを口実に引き上げに対して難色を示しています。賃金凍結は経済凍結に直結します。

これ以上、地域経済を冷え込ませないためにも、最低賃金を必ず引き上げさせることが重要です。引き上げの原動力は現場の声です。


最低賃金の改定をめぐる課題と展望

圧倒的な声で審議会包囲を

「賃上げより雇用」詭弁で引き上げゼロ

 最低賃金は、政府の号令による賃上げ~「官製春闘」などと揶揄されながらも、毎年2~3%程度の引き上げが続いてきました。

 北海道でも、この5年間で22 円~ 26 円の時間給引き上げがされています。昨年(2020 年)は、日本商工会議所ら経済団体による「賃上げ凍結」の声が強く上がり、安倍前首相が「雇用を守ることが最優先」と表明し、「雇用か賃上げか」の本来対立し得ない選択の構図が意図的に作られる中、最低賃金改定議論がすすみました。

 結果として、全国の加重平均で1円の超低額改定となり、北海道は、東京・大阪・京都など6 都府県とともに、ゼロ円改定(据え置き)となりました。


コロナ禍の痛み…非正規・女性・若者にしわ寄せ

最低賃金を「据え置き」しても雇用が守れないことはすぐに明らかになりました。2021 年3 月、民間シンクタンクの野村総研は、非正規労働者でシフトを5割以上減らされ、かつ休業給付など公的支援を受けていない「実質的失業者」が約146 万人にのぼる、との調査結果を発表しました。女性が103 万人、男性43 万人というものです。大学生がフードバンクに押し寄せる異常事態は、「実質的失業」の深刻さの一端をあらわしています。

コロナで打撃の大きい卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業などは、そもそも非正規雇用が多く、最低賃金近傍(最低賃金× 1.15 未満)で働く労働者が多いことが特徴です。宿泊・飲食サービス業で働く女性の約47%(53 万人)が最低賃金近傍で働いています。労働者全体での男女格差も明らかです。女性労働者の22.5%(301 万人、男性の2.7 倍)が最低賃金近傍で働いています。

飲食店やコンビニで、改定前の最賃のままの「違法」な募集ポスターが張っているのを見かけた方も多いと思います。最低賃金ぎりぎりの時間給が「普通」であり、改定が無ければ全く上がらない実態が広く存在しています。


時間額1500円、全国一律制度へ

最低賃金をめぐる課題は2つあります。

一つは賃金の低さです。全国加重平均で902円、北海道は861円です。仮に1ヶ月の法定労働時間の上限まで(月173 時間)働いたとしても14万9千円という水準です。

全労連が全国各地で実施し、北海道でも2016年に行った「最低生計費調査」では、25 歳単身者で1 ヶ月22万円~24万円必要との結果が示されました。時間給にすると1500円必要という水準です。働けば誰もが人間らしい生活を営める水準にすることが必要です。

もう一つは、地域間格差の問題です。最低賃金は全国を都道府県ごとにA~Dの4つのランクに分けて、「いくらい引き上げるべきか」という目安金額が決められています。この目安金額が示される時点で、すでに格差がつけられるため、地方間の格差が拡大する仕組みになっています。

東京や神奈川、大阪などがAランクで、北海道はCランク。東北・四国・九州にDランクが集中しています。最高額と最低額では時間給で221円も差があります。フルタイムで1ヶ月3 万8千円もの差です。

この格差が人口の一極集中と地方の過疎化を推し進める要因ともなっています。年々拡大している地方間格差をなくし、全国一律にすることが必要です。


据え置き許さないたたかい~カギは当事者の声

引き上げには、最低賃金近傍の賃金水準で働く当事者の声が決定的に重要です。とりわけ、最低賃金で自立し、家族も養わなければならない労働者の実態と声を「見える化」することが必要です。

困難な労働者ほど声をあげることは容易ではありません。「非正規雇用を選んだのはあなたのせい」など、恒常的に自己責任を押し付けようとするバイアスがかかっているため、「自分のせいだ」と思い込まされている人も少なくありません。

労働組合がある職場からも、「月給だから関係ない」「扶養控除から外れるので賃上げは不要」などの声が散見されます。働いても人間らしい生活が営めない賃金を放置すれば、労働者全体の賃金も引き下げに歯止めがかからないことを全体で共有し、最低賃金の凍結・据え置きを許さないためにも運動と世論を広げましょう。


北海道労働組合総連合 議長 三上 友衛

ホームページ https://www.dororen.gr.jp/

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