大屋定晴「2017~2019年のG20サミット対抗運動とその主張――「新自由主義」批判から「資本主義」批判へ?」

 

 

1. はじめに

 

2019年6月28日から29日にかけて「金融・世界経済に関する首脳会合[1]」,いわゆる「G20サミット」が大阪で開催された。日本の主要メディアは,あたかも一大国際イベントであるかのように報道し,厳重警備体制による市民生活への支障なども報じたが,そもそもG20サミットへの批判はまったくと言って良いほど伝えられることはない[2]。だが世界に目を転ずれば,こうした声が,市民社会のなかには渦巻いている。

本稿は,G20サミットにたいする対抗運動の展開を概観するとともに,そこに表明されてきた国際的な社会運動の現状認識とその諸要求とを考察する。

 

2. 2019年大阪G20サミットにたいする日本市民社会の二つの反応

 

まず日本の市民社会――より限定すれば日本のNGOや社会運動――は大阪G20サミットにたいして二つの反応を示していた。

第一に,大阪G20サミットに先駆けて,2019年4月21~23日に東京で開催された「市民20」(C20)サミットである。G20には「市民社会やビジネスセクターなど,社会のさまざまなセクターの声を集めて,G20に届け」るべく,7つの「エンゲージメント・グループ」があるとされるが,その1つがNGO・NPOを中心とする国際的ネットワーク「C20」である。このネットワークは,2013年以降,毎年,開催国の首脳もしくは首脳級の指導者との対話を求めて政策提言を行なってきた。大阪サミットでは,日本国内に「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」が設立され,C20サミットの運営を担った[3]。その議論にもとづいてまとめられた政策提言集が『C20政策提言書2019』(以下『提言書』)である[4]

出所:2019 G20 サミット市民社会プラットフォームより。

『提言書』の冒頭には,C20が採択した「平和,人権および民主的ガバナンスに関する東京宣言」が掲げられている。そこでは,①C20の諸提言,ならびに②SDGs(国連「持続可能な開発目標」)のうち,その基礎となるべき「SDG16」[5]の実現を訴え,具体的要求として,③市民社会スペースと人権の尊重,④ジェンダー平等,セクシュアリティ平等の実効的支援,⑤腐敗を防止する民主的ガバナンス,⑥市民社会組織への資金調達とセキュリティの保障,⑦科学技術発展による人々の排除の防止,⑧子供の権利の保障が言及されている。

この「宣言」部分を除くと『提言書』は11の分野別提言(①反腐敗,②教育,③環境・資源・エネルギー,④ジェンダー,⑤国際保健,⑥インフラ,⑦国際財政構造,⑧労働・ビジネス・人権,⑨「地域から世界へ」,⑩貿易・投資,⑪デジタル経済)から構成されている。

たとえば教育分野においては,7億5千万人の文盲人口にたいして各国がGDP4~5%の教育予算を振り向けるとともに,先進国ODAをGNP平均0.7%とすることが求められた。

環境・資源・エネルギー分野では,「化石燃料や原子力など」から転換し,年1000億ドルの気候変動対策資金を調達すべきだとされた。ジェンダー分野では,すべての女性とLGBTQIの経済的正義の保証が要求され,国際財政構造分野では,タックスヘイブンなどでの秘匿取引の規制,金融取引税などの国際連帯税の実現が訴えられている。労働・ビジネス・人権分野では,各種ILO条約を各国が履行し,若者,女性,移民,外国人労働者,そしてグローバルバリューチェーン内で働く労働者の権利が保障されるべきだとされた。「地域から世界へ」分野では,表現・結社・集会の自由を保証し,市民社会組織の法的・経済的支援を実施することが求められた。貿易・投資分野では,貿易協定にたいする地域社会ニーズの保護,投資家以外の権利者の権利保障,世界貿易機関(WTO)改革,またデジタル経済分野では,デジタル経済でのプライバシー保護,社会的影響の検証,平等性・透明性・参加の保証が要求項目として記されている。

しかしG20の議論は,これらの提言に耳を貸すものとはならなかった。

サミット閉幕直後,C20は,「グローバルな解決策が必要であるグローバルな課題への対応に関し,説明責任を果たさなければな」らない「し,解決策を提示しなければな」らない「し,毅然として行動しなければな」らないとする「緊急声明」を公表するとともに,大阪G20サミットの成果を5段階で評価した。メディア報道によれば,「環境・気候・エネルギー」「ジェンダー」「インフラ」「貿易・投資」「デジタル経済」「人権と言論の自由」の6分野が最低の「1」とされ,G20は総合的に「落第」であると論評された[6]

出所:「G20 総体的に「落第」 市民社会代表 C20が評価発表」『しんぶん赤旗』、2019年6月30日より。

このようにC20の評価は,G20が世界の諸課題に何らとりくんでいないことを言明し,それが単なる政治ショーであったことを示唆している。

ところで『提言書』でも「緊急声明」でも,「貿易・投資」分野の文末には「偽りの二項対立」にたいする「本当の問題」なるものが指摘されている。たとえば『提言書』では次のようにある。

 

合理的な結論は,一連の新たな二国間・地域間・分野別の貿易協定ではなく,上記の提案に沿ったWTO の包括的改革です。「自国優先」主義は,解決策になりません。「保護貿易 対 自由貿易」は偽りの二項対立であり,本当の問題は「新自由主義的な市場原理主義 対 人々と地球環境のための持続可能性」なのです。新自由主義モデルによるグローバル化が唯一の発展モデルとして世界の人々に押し付けられている限り,多国間アプローチは機能しません。持続可能性,正義,市民社会の民主的参加がその答えであり,権威主義,ナショナリズム,新自由主義から解決策は得られません。21 世紀の困難を乗り越えることは可能です。国連の2030 アジェンダ/持続可能な開発目標こそがG20 の指導原則でなければなりません。[7]

 

ここで「持続可能性」にたいして「新自由主義」という言葉が対置されていることは興味深い。というのも,これは大阪サミットにたいする日本の社会運動の二つ目の反応との共通点だからである。

この第二の動きは「G20大阪NO!アクション・ウィーク実行委員会」によって主導された。

この団体はアジア共同行動連絡会,ATTAC全国ネットワークや一部労働組合など,全国28団体の賛同を経て結成され,主に2019年6月23日と28日の二日間にわたる大阪G20サミット反対デモを開催した。両日ともに約200人が参加した[8]。デモの呼びかけにあたって訴えられた要求は,①「朝鮮半島と東アジアの平和のために!」,②「新自由主義はもうたくさんだ!」,③「分断とヘイトを越えて共存と連帯の世界を!」,④「核兵器廃絶と原発全廃で,持続可能な世界へ!」,⑤「カジノ・万博・『大阪都』構想 あかん!」,⑥「サミットを利用した治安弾圧を許さない!」というものであった[9]

 

出所:「「G20やめろ」と集会やデモ 市民団体などが気勢上げる」共同通信、2019年6月28日より。

ところで,ここで注意すべきは,大阪でのデモ呼びかけ文と『提言書』とに共通する点として,「新自由主義」への反対が言及されていることである。この文言は偶然ではない。なぜなら,「新自由主義」は日本以外の国のG20対抗運動にも通底する批判の焦点であったからである。そこで以下では,1990年代以降のG20対抗運動に連なる国際的な運動史を概観したうえで,2009年以降のG20対抗運動,とりわけ2017年のドイツ・ハンブルクと2018年のアルゼンチン・ブエノスアイレスでの二つの対抗行動を検討する。

 

3. 新自由主義の時代としての現代と対抗運動の国際的収斂

 

新自由主義とは何か。イギリスの経済地理学者デヴィット・ハーヴェイは,「新自由主義」という「特殊な教義」が「経済思想や経済運営の中核的指導原理」になったことで,1980年代以降,「グローバリゼーション」という「新しい経済編成」が世界的に確立したと指摘している[10]。その教義は次のように要約されうる。

 

新自由主義とは何よりも,強力な私的所有権,自由市場,自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福祉が最も増大する,と主張する政治経済的実践の理論である。国家の役割は,こうした実践にふさわしい制度的枠組みを創出し維持することである。[11]

 

ハーヴェイによれば,1980年代にイギリスのサッチャー政権やアメリカのレーガン政権がこの種の考え方を自国の経済政策の基本に据えたが,その後,国際通貨基金(IMF),世界銀行,WTOが新自由主義的政策を,累積債務問題処理に関連して国際的に適用したことで,各国の政策も多かれ少なかれ同じような様相を帯びていった。さまざまな国家が,「国内外の資本に有利な蓄積条件を促進することを基本任務とする国家機構」へと転化した。この国家機構をハーヴェイは「新自由主義国家」と呼ぶ[12]

こうした国家機構の再編をともなった「資本主義世界」の「新自由主義化」は,「国内の発展力学と国外の諸力との複雑な相互作用」によって引き起こされるのだが[13],その一般的「実績」は,「略奪による蓄積」による富の上層階級への再分配であった。

ハーヴェイによれば,各国内での新自由主義化は,具体的には(ⅰ)公共資産などのあらゆるものを私有化・民営化・商品化させて,営利企業に払い下げるとともに,(ⅱ)略奪的貸付をともなう金融化を促進させ,さらには(ⅲ)社会保障の削減,投資に有利な税制改正(累進課税上の最高税率や法人税率の引き下げ),企業単位での福祉プログラムの促進や企業向け補助金制度などにより,富裕層・企業に有利なかたちでの再分配政策の転換も引き起こした。これらの政策の実施にあたっては,国際的に経済的優位にある「先進」諸国では,形式的民主主義制度を前提とする新自由主義への有権者の「同意」が大衆操作によって動員された。だが(ⅳ)とりわけ累積債務問題などで経済的苦境に陥った「発展途上」諸国については,多国間経済機関による「危機管理」という名目で,新自由主義化が強制的に導入される。たとえばデフォルトに陥ったメキシコや韓国,アルゼンチンにたいするIMFの緊急支援条件がそれであった[14]

つまりグローバリゼーションは,諸国家の――資本主義国家だけでなく旧「社会主義」国家も含めての――グローバルな新自由主義化だと解されうる。そしてこれは,ハーヴェイだけでなく,1990年代以降の国際的な社会運動の歴史のなかで発展させられてきた現状認識でもあった。

出所:Sam Lowry, “The French pensions strikes, 1995”, libcom.org より。

メキシコ南東部チアパス州でサパティスタ民族解放軍(EZLN)が武装蜂起したのは,アメリカ・カナダ・メキシコ三国間の北米自由貿易協定(NAFTA)が発効した1994年1月1日当日であった[15]。1995年には,フランスで社会保障制度改革をめぐる全国ゼネストが起き,ひと月にわたってパリの交通網は麻痺させられた[16]。金融の自由化とともに国際的な短期投機資本が膨張し,1997年にアジア通貨危機が起きると,金融取引への課税(いわゆる「トービン」税)構想が注目され,その政治的実現を求める運動団体ATTAC(「市民の支援のために金融取引に課税を求めるアソシエーション」)がフランスで結成される[17]。1999年になると,これらの一連の動きが収斂する[18]。この年の6月,ドイツ・ケルンで開催されたG8サミット(主要8か国首脳会議[19])は,失業問題や累積債務問題に抗議する数万人によって包囲された。11月末からアメリカ・シアトルで開かれたWTO第3回公式閣僚会合には,世界各地から7万5千人が集結した。

 

出所:By Steve Kaiser from Seattle, US – WTO protests 10, CC BY-SA 2.0より。

 

このいわゆる「シアトルの闘い」は,市内における戒厳令の布告と千人以上の逮捕者を出す一方,閣僚会合は事実上決裂し,「新多角的貿易交渉」の開始は先送りとなった。世界経済フォーラム(ダボス会議)に対抗して2001年に始まった世界社会フォーラムも,この渦中から生まれた[20]。重要なのは,こうした一連の社会運動が「新自由主義」批判を掲げていったことである。それゆえATTAC結成に関与したスーザン・ジョージは,この運動を「新自由主義的グローバリゼーションにたいする抵抗運動」と規定した[21]

サミット対抗運動も,こうした系譜に位置づけられる。

たとえば筆者がかつて調査したドイツ・ハイリゲンダムG8サミット(2007年6月6~8日)にたいする対抗行動は,最大8万人規模でのデモ,G8に対案を提示する連続討論集会(「オルタナティブ・サミット」),そして直接的なサミット阻止行動(「Block!G8」キャンペーン)と,多様な行動からなりたっていた。G8首脳は,自国の民主的選挙で選ばれたとしても,「途上国」の人々の声を代弁する人々ではない。それゆえサミットは「先進国」とか「主要国」とか称せられる国々の政治権力者による社交クラブでしかない。この認識もあって,ハイリゲンダムG8サミット対抗行動は多様な社会運動が関与した。

ただし,その方向性は一致していたわけではない。G8開催そのものに反対する人々と,G8にたいするロビー活動を認める人々とのあいだには少なからぬ違いがあった。しかし,それにもかかわらずドイツの対抗運動は「オルタナティブ・サミット」への積極的参加や共同記者会見の実施という点で共に行動した。意見の違いを認めたうえでの運動間ネットワークも存在したのである。そしてその共通点の一つが「新自由主義」への抵抗であった[22]

 

4. G20サミットの本格化とサミット対抗運動の再燃

 

4-1. G20サミットの始まりと対抗運動の地理的不均等性

 

2008年,リーマン・ショックとともに,いわゆる世界的な金融危機を勃発すると,アメリカ政府は新興国を含めた第1回G20サミットを首都ワシントンで開催することを呼びかけた。1999年以来,20か国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されてきたが,それをサミット形式に格上げしたのである。これは経済危機に対処する多国間枠組みの再編であるとともに,G7サミット(主要7か国首脳会議)[23]を構成してきた米・欧・日の先進資本主義諸国の経済力の相対的低下も意味していた。

これにたいして,社会運動の動きは各国によってその様相を違えた。すでに第2回ロンドンG20サミット(2009年4月2日)にさいしては,債務帳消し運動,イギリス労働組合会議(TUC)など160団体以上の賛同を得て,民主的統治のための経済計画――安定雇用と公共サービス提供のための金融機関の民主化,貧困と不平等の解消,環境保護型経済システム――を要求するデモが企画され,3万5千人が参加した。サミット前日には開催阻止を掲げた5千人の抗議者が警察と衝突し,抗議者1名が死亡している[24]。2009年9月の第3回アメリカ・ピッツバーグG20サミットでも同様の抗議行動が起きた[25]

こうした動向は,2010年6月のカナダ・トロントG20サミット[26],同年11月の韓国・ソウルG20サミット[27]でも生じており,2011年のフランス・カンヌG20サミットにおいても「金融よりも民衆を優先せよ」と要求する対抗サミット集会や1万2千人規模のデモが行なわれた[28]。2014年のオーストラリア・ブリスベーンG20サミットでも2千人規模のデモがあった[29]

だがリゾート地で開かれた2012年メキシコ・ロスカボスG20サミット[30]や2015年トルコ・アンタルヤG20サミット[31]では対抗運動は遠隔地に封じ込められ,政府統制が強力なロシア(2013年サンクトペルブルクG20サミット[32])や中国(2016年中国・杭州G20サミット[33])では抗議活動は相対的に低調であった。社会運動の動向は,サミット開催国の経済的・政治的・社会的状況によって異なるのであり,とりわけ各国での政治的権利意識,警備監視体制のあり方,あるいは会議開催地の選択の影響があると言える。

しかし,G20諸国の政策が本当に民衆のためにあるのか,といった批判は――声の大小はあれ――あらゆるG20サミットで示されてきた。このことが――2016年のドナルド・トランプのアメリカ大統領当選を機に――再び大規模な民衆行動によって指摘されたのが,2017年のドイツ・ハンブルクG20サミットであった。

 

4-2. 2017年ドイツ・ハンブルクG20サミット対抗運動

 

2017年ドイツ・ハンブルクG20サミットは2017年7月7日と8日の両日にわたって開催された。これにたいしてドイツの社会運動は,10年前のハイリゲンダムG8サミットと同様,大別して三つの対抗行動を組織した。①「グローバル連帯のためのサミット」,②G20サミット開催そのものの阻止行動,③さまざまなデモ企画である。これらの企画は,異なる意図から組織されており,とりわけ①・③と②のあいだではサミット開催そのものの是非をめぐって対立しあう関係にもあった。

だが今回の対抗行動も,情報発信ネットワークを共有するなどの緩やかな連帯関係を構築した。その一例が,対抗行動企画の情報を集約したインターネット・サイト「#NoG20 2017」の開設である[34]。この組織的枠組みのなかで,極右排外主義的風潮への危機感にも押されて,G20対抗行動は大規模化した。

第一に,G20サミットに対抗する市民討論フォーラム「グローバル連帯のためのサミット」は,サミット開催直前の7月5~6日に開催された。ATTACドイツ,「環境と自然保護のためのドイツ同盟」(BUND),ハインリヒ・ベル財団によって共催されたこの討論集会は,17のパネル・ディスカッション,75のワークショップ企画を組織し,インドの環境活動家ヴァンダナ・シヴァをはじめ,1500人以上が参加した。討論では,「G20はグローバル金融業界の水先案内人にすぎない」と評され,労働組合への逆風,各国市民社会にたいする抑圧的政策,貧富の差の拡大,気候変動にたいする主要諸国の政治的無策が批判された[35]

フォーラム開催呼びかけ文[36]によれば,G20諸国は,①「世界において社会的格差を促進するシステムを擁護」しており,②「労働者の権利,失業者,小規模自営業者の権利を縮小し,下からの再分配を行な」うとともに,③「地球温暖化や自然資源の破壊を止めるのではなく経済成長を優先させ」た。④それとともに金融危機後も「金融業界は成長しつづけ,公共サービス基盤や自然を新たな投資先にしようとしている」。さらには⑤「武器輸出」を禁ずることなく,国内外での「戦争」状態を惹起し,⑥「何百万人もの難民と移民を誘発する政策をとる一方で,自国の国境は閉鎖し,何千人もの人々の死を看過」している。⑦G20諸国の「多くで基本的人権と民主主義が切り詰められ,社会権,環境権,人権を擁護する人々が犯罪者として取り扱われている」。そして⑧「G20の開催は事実上,国際連合とその専門機関の弱体化を指向している」。それゆえ,同フォーラムの討議課題は,(a)「貧困・搾取・抑圧・戦争・自然破壊」の「克服」,(b)「グローバルな社会権」の実現と(c)「参加型民主主義の権利」の強化,(d)種々の「差別」との「闘い」,(e)「協働,自己決定,連帯にもとづく政治体制」の「実現」,(f)「利潤ではなく人々のための経済」と(g)「グローバルな政策原理」の模索だとされた。これらの認識が,内容的に,前述の新自由主義批判の系譜に連なることは言うまでもない。と同時に「資本主義と異なる活動を起こさないのはなぜか」という発言が同フォーラムにおいて聞かれたことにも留意しておこう[37]

 

出所:’Blockaden und Brandsätze – neue Demonstrationen in Hamburg’, shz.de, 7 Juli 2017 より。

 

第二の対抗行動は,サミット開催そのものを阻止しようとする直接行動であった。サミット前日の7月6日,「アウトノミア派的・反資本主義同盟による国際反資本主義デモ――G20,地獄へようこそ」が行なわれた。1万2千人の参加者の大半は平和的抗議を行なった。だが夜になって,ブラック・ブロック・スタイル[38]の一部抗議者を警察が隔離して挑発したことによって,ついには衝突事件へと至っている[39]。そして続く7月7日には,立ち入り禁止区域への侵入と市内封鎖とを試みる「Block G20――立入禁止区域(レッド・ゾーン)を他の色で染めよう」が決行された。1千人が市内各所で抗議を行ない,その一部は警察と衝突し,交通網も一時的に麻痺状態に陥った。首脳の幾人かは予定定刻どおりに会議場に到着することができず,メラニア・トランプ夫人は一時的にホテル内に閉じ込められた[40]

こうした直接行動は,「サミットにも,……対サミット協調の一部でしかないような政治的批判や抵抗にも反対」する立場をとった。G20サミットに政策提言を行なうこと自体,否定したのである。だが直接行動派の行動呼びかけ文には,「資本主義の新旧の権威に抗議」し,「人々の心」のなかでの「戦争」の蔓延に批判するとある[41]。つまり「グローバル連帯のためのサミット」と同様の主張が示されていた。

第三の対抗行動は,サミット期間中に企画された数々のデモである。その数は30以上あったとされるが,その最初は7月2日のデモ「G20抗議の波」である。ドイツ労働総同盟,グリーンピース,オックスファムなどが共催し,すでにこの日だけで1万人近くが参加した[42]。7月5日には,「G20よりもダンスがしたい」と称されたサウンド・デモに2万人が参加した。デモ・コールの一つは「立ち入り制限区域にも資本主義的搾取機構にも私たちは止められない」と訴えていた[43]

 

 

最大規模となったのは,サミット二日目の7月8日に行なわれた統一デモ「G20ではなく国境なき連帯を!」である。これは,ATTACドイツ,各種労働組合,フェア・トレード運動,環境保護運動,平和運動,そして政治団体などを含む174団体,143名の個人が呼びかけたものである。呼びかけ賛同団体には「G20,地獄へようこそ」主催グループも名を連ねていた[44]

デモ呼びかけ文に掲げられたG20諸国にたいする批判は以下の6項目にのぼった。

第一に,G20諸国による軍事的緊張状態や戦争状況の推進である。「シリア,イラク,ウクライナでの戦争や武力紛争」のさなかにG20諸国は「年間1.8兆ユーロ[45]」を「軍備と戦争に費や」し,「武器の輸出も増加している」。ドイツにおいても「資源配分と市場をめぐる世界的な戦い」での「役割」が求められ,「ドイツ連邦軍の海外展開が増えている」。

第二に,気候変動問題にたいする対策欠如である。「気候変動は紛れもない危機的現実」であるにもかかわらず,「G20諸国が代表しているのは石油産業,石炭産業,自動車産業の業界利益である」。しかもアメリカの「ホワイトハウスには,気候変動は嘘だとさえ考えている大統領〔ドナルド・トランプ〕がいる」。

第三に,社会の分断の広がりである。「この分断は,世界規模だけでなく,ドイツを含むほとんどすべての社会を貫いている」。「わずか8人の男性が,世界人口の半分がもつ資産以上のものを所有して」おり,「何百万人もの人々が低賃金で人生の目的を達成しなければならず,安定した年金制度の見通しもなく,そして闘いとるべき手頃な住宅の数も限られている」。「経済連携協定,EU・カナダ包括的経済貿易協定,新サービス貿易協定,大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定などの自由貿易協定」はこの事態を「むしろ悪化させ」る。さらに「メルケル〔ドイツ首相〕たち」は「新自由主義的政策を命じることでギリシアその他の国々を貧困化させ,世界中の違法な政権交代に関与している」。

第四に,差別主義・排外主義的風潮である。「世界中で6500万人以上の人々が移動しているのに,ヨーロッパとドイツの国境は再び封鎖され」,「世界で最も危険な国境」である「地中海では,安全を求める何千人もの人々が溺死している」。にもかかわらずG20諸国では「人種差別と公然たる憎悪が増加し」,「恐怖や偏見を強めるものであれば,嘘も含むすべてが主張され」,「主流の政策」は「これらの気分」を「煽っている」。

第五に,G20サミットの正当性にたいする疑義である。「G20諸国首脳は『移民の原因との闘い』について話すとのことだが,その移民の送りだし国の一国でもこのテーブルに座っているであろうか」。さらにドイツ政府は「トルコのエルドアンのような独裁者」と「取引」して,「クルド人にたいする戦争を支持」するかわりに「ヨーロッパへの難民移入を阻止」させようとしている。非民主的政権を容認するG20サミットに正当性はあるであろうか。

そして最後に,「G20首脳会議」は「ハンブルクを政治ショーの舞台背景として悪用」するため,この街を警備体制によって「何日も麻痺させ」ている。「そこに住む人々」は「取り残され」たままだとされた[46]

この呼びかけに呼応した参加者は,主催者発表で76000人,警察発表で5万人を数えた[47]。ここにハンブルクG20サミット対抗行動は,その頂点を迎えた。

ところでデモ呼びかけ文の末尾は次の文章で締めくくられている。

 

われわれは,この冷たく残酷なグローバル資本主義の世界を――G20によって代表され組織されているこの世界を――拒絶すると明確に表明するであろう。われわれは,世界的な抗議,ストライキまたは蜂起をつうじて,G20の政策に反対するすべての人々との連帯を表明しよう。われわれは高らかに,平和の世界,正義の世界,そして国境を越えた連帯の世界を要求する。[48]

 

ここでもまた「グローバル資本主義」体制そのものが「拒絶」されている。

 

4-3. 2018年アルゼンチン・ブエノスアイレスG20サミット対抗運動

 

以上のように2017年のハンブルクG20サミットは,広範な対抗行動をともなった。これはドイツの市民社会あるいは社会運動の地理的特殊性の表れであると同時に,一般的には,新自由主義批判から資本主義批判への転回を示すものでもある。その流れは,ラテンアメリカ諸国において――長年,累積債務問題のくびきの下にあることから,その独自の様相を呈しつつも――継続することになる。2018年のアルゼンチン・ブエノスアイレスG20サミット(2018年11月30日~12月1日)での対抗運動がそれである。

この運動の性格は,まずはアルゼンチンの「G20とIMFに反対する集合体」[49]による対抗行動呼びかけ文から読み取れる。

アルゼンチンは,2001年に対外債務危機にみまわれたが,その後,同国政府は債務削減交渉を行なった。しかし債権者の一部であるアメリカのヘッジファンドは削減に反対し――アメリカ・ドル建て債権であったことから――アメリカで訴訟を起こした。2014年,アメリカ連邦最高裁判所は債権者側の訴えを認め,全額返済命令を出した。こうしてアルゼンチンは再び債務返済停止に追い込まれたのである[50]。その直後の2015年に選出されたマウリシオ・マクリ大統領は,債権者側に有利な債務処理交渉を行なうことを前提にして,対外債務を増大させつつ,急速な対外開放政策を導入した。だが,2018年にアメリカの金利上昇政策によりドル調達が困難になると,社会保障削減などの緊縮財政政策をしくことになった[51]

この状況下において「G20とIMFに反対する集合体」は,他の30団体とともに,G20サミットへの反対を表明し,サミット開催前一週間にわたる「アクション・ウィーク」を提起した。「新自由主義的資本主義による攻撃が,民衆の多くを飢えさせ,貧困化させ,その排除と抑圧をもたらし,民主主義的な構築可能性を毀損し,多国籍企業への奉仕を無罪放免のままにしている」にもかかわらず,IMF専務理事も参加するG20サミットはこの事態を「強化」し,「マクリ政権の残酷な後退政策を追認」しているからである[52]。そして,この批判に応えるかたちで各種の抗議行動が準備された。ここでもまた対抗行動企画は,それぞれ異なる意図のもとに組織された[53]。だがドイツと同じく,アルゼンチンにおいても運動間ネットワークが構築され,それぞれの企画情報が共有されて発信された[54]。なかでも大きな対抗企画は,民衆サミットとG20サミット当日の全国デモであった。

 

‘Comienza en Argentina la Cumbre de los Pueblos contra la “explotación” del G20’, EFE, 29 noviembre 2018 より。

 

対抗討論集会である「民衆サミット」は,2018年11月28日と29日の2日間にわたって開催された。

初日の28日には,ブエノスアイレス大学で22のワークショップやパネル・ディスカッションが開かれ,29日には,国会議事堂前に設置されたテントのなかで複数の討論会が行なわれた。債務帳消し運動やATTACなどが参加し,「自然環境,医療,教育,債務,自由貿易,人権,軍事化といった問題」がとりあげられた[55]

29日の最終日に採択された「民衆サミット宣言」によれば,そこに集った「多様な社会的・政治的組織,労働組合,労働者,農民,先住民,女性,抵抗者,移民,地域団体,採取主義に反対する人々,人権擁護団体など」は,「民衆と自然に依拠」し,「今日,課されている資本主義的・人種差別的・家父長制的搾取の政策にたいする闘い」の「強化」を求めて,「さまざまな経験や希望や提案を交流」させた。そこでは「先住民,移民,女性,若者,労働者の状態と要求」,あるいは「自己管理型労働生産,民衆・社会的経済,非資本主義経済の挑戦」が「討議」され,「労働者と民衆の新たな民主主義的あり方の追求と物事のつながり」が論じられた。さらには「新自由主義的負荷のなかでの教育と医療」の「強化」,「原理主義的・人種差別的・排他主義的右翼の伸長」との対決,「犯罪化と軍事化の昂進」にたいする防衛態勢,「水などのあらゆる共有財」の保全,「イデオロギー的・文化的闘争とコミュニケーションにおける闘い」なども課題としてとりあげられた。「大規模な鉱山採掘,化石燃料採掘,アグリビジネス,大規模ダム開発,大規模な都市再開発」に見られる「採取主義的経済モデル」の抑止,「違法に契約された不法債務への支払い」や「新たな自由貿易協定と投資家保護」への「反対」も主張され,「企業権力の弱体化」が要求された。

そのうえで宣言はG20を,「大規模多国籍企業の利益をさらに増やす」ものと断じ,「帝国主義的・資本主義的システムを維持する20か国の指導者のサミット」に「反対」する翌11月30日の全国デモに賛意を示したのである[56]

さてアルゼンチン政府は,サミット開催初日にあたる当の11月30日を休日に定め,杭州サミットと同様,住民にたいして市外退避を勧告した。ブエノスアイレス市全域の公共交通機関も停止し,2万2千人の警察・治安要員が配置された[57]

 

 

この異様な状況のなかで,アルゼンチン国内外160団体はこの日のデモ開催決行に賛同した。

呼びかけ文によればその理由は次の四点にまとめられる。①G20サミットは,「多国間金融機関と貿易機関とをそのパートナーとする帝国主義的諸大国の私的クラブ」の首脳が「いわゆる新興国」の首脳を招いたものである。これらの国々は「資源と市場をめぐって争いあい,労働者と地域社会にたいして強度の搾取を強い,戦争と飢餓と構造的貧困を,天然資源と環境の略奪を企てている」。②「G20サミットに集う人々」は「最大限の抑圧行為の昂進についてその責任を負っている」。たとえば各国が実施している「反移民政策」やボルソラノ次期ブラジル大統領の「女性差別主義的かつ排他主義的」姿勢がそれである。③「G20によって促された諸政策」――「IMFとの協定」――によってアルゼンチンは「支払不可能な違法な債務状態に陥れられ,永遠の構造調整政策を課される」ことになった。これに「唯々諾々と従」ったマクリ政権は,「2019年度予算」において「社会支出の削減」と「債務と利子の支払いの増大」とを実行し,「金利上昇」政策によって「多くのアルゼンチン民衆の経済活動と購買力」を「切り下げ」ようとしている。それゆえ対外「債務の支払い」は「断固拒否」されなければならない。④しかもG20開催のために,「地下鉄・鉄道の閉鎖,立ち入り制限区域の拡大」によって市民は「拘禁状態」におかれ,「外国勢力の『情報機関』がこの国のパートナー機関と公然と協力」しあい,「マスメディアがつくりだす恐怖と弾圧のキャンペーン」がこの事態を正当化している。

こう述べたのち,呼びかけ文は「G20反対」,「マクリ=IMF協定撤回」,「トランプその他の帝国主義的指導者[58]の退去」,「ボルソラノ失脚」,「対外債務不払い」,「調整政策・降伏的政策・抑圧政策への反対」を掲げた[59]

これに応えて,ブエノスアイレス市には5万人以上の市民が路上に集結し,全国デモに参加したのである[60]

 

5. おわりに

 

1990年以降,新自由主義的グローバリゼーションが進行する資本主義世界ではさまざまな社会運動が,「新自由主義」批判を一つの結集点として興隆した。その渦中で形成されたのがG7・G8サミット対抗運動であり,その延長線上に,今日のG20サミット対抗運動もある。グローバルな社会運動の批判的言説の根底には,新自由主義的グローバリゼーション批判が依然として存在している。

この歴史のなかで,さまざまな社会運動は多様な代替案や対抗構想も提起してきた。国際連帯税の創設,気候変動対策,人権の尊重,武器輸出の禁止,軍事紛争の停止など,さまざまな政策的オルタナティブは――日本の主要メディアによって報じられているかどうかは別問題として――幾度となく示されている。こうした対抗構想への部分的一致もあって,政策提言型NGOと社会運動とのあいだの連帯関係も構築されてきた。

G20サミットについて言えば,G7サミットやG8サミットと異なるものであったとしても,少なくとも欧米の社会運動においては,「グローバル資本主義の世界」を維持する政治的「私的クラブ」であると批判されつつある。これも「事実上,国際連合とその専門機関の弱体化を指向している」との声があったハンブルク対抗行動から,ブエノスアイレスでのG20=IMF批判運動にかけて明示された。

そればかりでなく2017年と2018年の対抗運動は――そのそれぞれの開催地の地理的特殊性を除けば――いくつかの共通点を提示している。第一に,アメリカでのトランプ政権の成立などを契機として,さまざまな排他主義,差別主義,ナショナリズム,そして権威主義への反対の声が強まっている。第二に,国内紛争,国際紛争の区別なく,あらゆる暴力的事態への反対であり,その背後にある各国の軍事力保持政策にたいする批判である。第三に,採取主義型経済開発モデルによる自然破壊や気候変動問題など,人間と環境のあり方にたいする危機感も昂進しつつある。第四に,そうしたなかで改めて「人権」や「社会権」の意義がグローバルに問い直されており,「参加型民主主義」など,真に民主的な制度設計のあり方も模索されている。だが第五に注目すべきは次の可能性である。大阪G20サミット対抗行動では「資本主義」批判は前景に出ていない。だが2008年の金融危機後もG20諸国は,多国籍大企業にたいする規制を手控え,各種債務問題にたいする債権者に有利な解決策を含めて,効果的な金融市場規制も導入せず,世界的な格差を放置している。このことから世界的な対抗運動の言説は,従来の「新自由主義」批判の内実を保持しつつ,「資本主義」批判,あるいは「新自由主義的資本主義」批判へと移行しつつあるのかもしれない。

このように見てくると,大阪G20サミットにたいする日本のNGOや社会運動も――その要求項目を管見するかぎり――,この世界的潮流の一環にある。しかしながら,ハンブルクやブエノスアイレスと比較するなら,日本の市民は,民主的憲法をもった国にいながら,相対的に「沈黙」しているとも言えよう。この理由には,日本での政治的権利意識の希薄さや,それを身につかせない教育環境,そして主要マスメディアの無批判な報道など,経済的・政治的・社会的・文化的諸条件もある。だが筆者が留意したいのは,ハンブルクやブエノスアイレスにおいてはその主張の違いを認めたうえで,ともに行動できるところでは行動するという運動間のネットワークがあった点である。G20サミットでの議論を自分たち市民の社会的諸問題として把握しなおすためには,異なる課題にとりくむ多様な運動体の連帯共闘関係が不可欠である。このような対抗運動の主体的諸条件も含めて,日本の人々が,今後G20サミットにどのように対するのか――このことを私たちは,世界の社会運動から逆に問われているのである。

 

(了)

 

 

[1] 「金融・世界経済に関する首脳会合」は,世界の主要20か国・地域の首脳が参加することから「G20」と称されている。参加国は,アメリカ合衆国,イギリス,フランス,ドイツ,日本,イタリア,カナダ,ヨーロッパ連合,ロシア,中華人民共和国,インド,ブラジル,メキシコ,南アフリカ共和国,オーストラリア,大韓民国,インドネシア,サウジアラビア,トルコ,アルゼンチンである。これに国際通貨基金(IMF),世界銀行,国際エネルギー機関,欧州中央銀行など,関係国際機関も参加している。

[2] たとえば2014年から2018年までの『朝日新聞』国際面でのG20関連記事101本を調べてみたところ,「G20の存在意義や活動内容への批判を行ったり,……世界での批判に触れたりする記事は5年間で1度も書かれていなかった」。このことから「日本の国際報道から情報を得て,G20に疑問を持ったり,批判を投げかけたりすることは難しそうである」と評されている。Asai, Suzu「G20――報道と実態」,Global News View,2019年6月13日,http://globalnewsview.org/archives/9787(2020年1月3日閲覧)。

[3] 「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」は,アジア太平洋人権情報センター,SDGs市民社会ネットワーク,気候ネットワーク,国際協力NGOセンター,日本NPOセンターなど9団体が幹事団体として選出された。2019 G20サミット市民社会プラットフォーム「概要」,http://www.civil-20.jp/#who-we-are(2020年1月3日閲覧)。

[4] 『提言書』は,2019年5月に英語版で公開され,大阪サミット直前の6月19日に日本語版も公開された。日本語版については次を参照。『C20政策提言書2019』,http://www.civil-20.jp/blog/c20-policy-pack-2019-in-japanese(2020年1月10日閲覧)。

[5] 2015年9月,国際連合全加盟国(193国)は,より良き将来を実現するために今後15年かけて極度の貧困,不平等・不正義をなくし,地球を守るための計画「アジェンダ2030」を採択した。そこに掲げられたのが「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals,略称 SDGs)である。SDGsは17の目標と169のターゲットを定めている。ここでの「SDG16」とは,SDGsの「目標 16」のことであり,具体的には「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し,すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに,あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」ことである。たとえば,グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン「持続可能な開発目標(SDGs)目標16」,http://www.ungcjn.org/sdgs/goals/goal16.html (2020年1月10日閲覧)を参照。

[6] C20「【市民社会 緊急声明】待ったなし――G20は約束を実行に移すべき」,2019年6月29日,https://www.janic.org/wp-content/uploads/2019/07/statement_g20_osaka.pdf(2020年1月10日閲覧)。5段階評価については,「G20 総体的に『落第』――市民社会代表 C20が評価発表」,『しんぶん赤旗』2019年6月30日,https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-06-30/2019063014_03_1.html(2020年1月10日閲覧)

[7] 前掲『C20政策提言書2019』,54頁。

[8] 「『G20やめろ』と集会やデモ 市民団体などが気勢上げる」,共同通信,2019年6月28日,https://this.kiji.is/517271390122099809?c=39546741839462401(2020年1月10日閲覧)。なお大阪以外でも,デジタル経済・貿易大臣会合が開かれたつくば市(「戦時下の現在を考える講座」主催,2019年6月8日),財務大臣会合が行われた福岡市(「RAGE AGAINST THE G20@FUKUOKA」主催,2019年6月9日),あるいは東京都新宿区(「トランプ来日-G20反対!実行委員会」主催,2019年6月25日)など,各地でG20反対集会やデモが行われている 。「6.8集会とデモ――ビッグデータがもたらす監視社会,G20デジタル経済・貿易会合への批判」,ne plu kapitalismo,2019年6月5日,https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/blog/2019/06/05/20190608tsukuba/(2020年1月10日閲覧)。「『一部が甘い汁を吸うための会議なら要らない』G20福岡で反対行動」,『毎日新聞』,2019年6月9日,https://mainichi.jp/articles/20190609/k00/00m/020/093000c(2020年1月10日閲覧)。「【日程変更しました!】G20サミット反対6・25新宿デモ」,戦争・治安・改憲NO!総行動,2019年5月30日,http://antiwar2017.blog.jp/archives/29213776.html(2020年1月5日閲覧)。

[9] 「G20大阪 NO! アクション・ウィーク実行委員会チラシ」,G20 OSAKA NO! ACTION WEEK ,2019年5月31日,https://drive.google.com/file/d/10NdYaSiGFZMJX2DCTXY4vlh2DPKZ3hN8/view(2020年1月10日閲覧)。

[10]  Harvey, David, A Brief History of Neo-Liberalism, Oxford: Oxford University Press, 2005, pp. 1-2. デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義――その歴史的展開と現在』渡辺治監訳,作品社,10頁。

[11] Ibid. p. 2, 同上10頁。

[12] Ibid. p. 7, 同上19頁。

[13] Ibid. p. 117, 同上161頁。

[14] Ibid. pp. 159-165, 同上222-229頁。

[15] Ramonet, Ignacio, Marcos, la dignité rebelle: entretiens avec le sous-commandant Marcos, Paris: Galilée, 2001. イニャシオ・ラモネ『マルコス  ここは世界の片隅なのか――グローバリゼーションをめぐる対話』湯川順夫訳,現代企画室,2002年。

[16] Aguiton, Christophe & Bensaïd, Daniel, Le Retour de la question sociale: le renouveau des mouvements sociaux en France, Lausanne: Éditions Page deux, 1997. クリストフ・アギトン,ダニエル・ベンサイド『フランス社会運動の再生――失業・不安定雇用・社会的排除に抗し』湯川順夫訳,柘植書房新社,2001年。

[17] ATTAC France, Tout sur Attac, Paris: Mille et une nuits, 2000. ATTAC編『反グローバリゼーション民衆運動――アタックの挑戦』杉村昌昭訳,柘植書房新社,2001年。

[18] 北沢洋子『利潤か人間か――グローバル化の実態と新しい社会運動』コモンズ,2003年。

[19] 先進資本主義世界は1970年代に経済危機にみまわれたが,これに対応するため1976年以降,主要資本主義国7か国(アメリカ,フランス,イギリス,旧西ドイツ,日本,イタリア,カナダ)は毎年,主要(先進)7か国首脳会議を開催した。これが「G7サミット」である。これに1998年から2013年まではロシアが参加したことから,この期間中の主要国首脳会議は「G8サミット」と言われた。2008年,G20サミットが開かれて以降も,別途,開催されて今日に至っている。なお2014年以降,クリミア占領問題でロシアの参加が停止されたことから,再び「G7」と称されている。

[20] Houtart, François & Polet, François (eds.), The Other Davos: The Globalization of Resistance to the World Economic System, London: Zed Books, 2001.フランソワ・ウタール,フランソワ・ポレ編『別のダボス――新自由主義グローバル化との闘い』三輪昌男訳,柘植書房新社,2002年。Sen, Jai et al., World Social Forum: Challenging Empires, 1st ed., Delhi: Viveka Foundation, 2004. ジャイ・センほか編,武藤一羊ほか監訳『世界社会フォーラム――帝国への挑戦』作品社,2005年。

[21] George, Susan, Un autre monde est possible si…, Paris: Fayard, 2004, p. 15. スーザン・ジョージ『オルター・グローバリゼーション宣言――もうひとつの世界は可能だ!もし…』杉村昌昭,真田満訳,作品社,2004年,18頁。

[22] この対抗行動のかんする筆者の参与観察については,大屋定晴「ロストック『社会フォーラム』の出現――2007年ドイツG8サミット対抗行動」,『季刊 ピープルズ・プラン』2007年夏号(通巻39号),2007年8月,81~87頁参照。

[23] 前掲注5を参照。

[24] McVeigh, Tracy, Lewis, Paul & Jha, Alok ‘G20 protest: Thousands march for ‘jobs, justice and climate’’, The Guardian, 28 March 2009, https://web.archive.org/web/20090331024124/http://www.guardian.co.uk/world/2009/mar/28/g20-protest-police-rainbow-alliance(2020年1月10日閲覧)。’Our 12-point plan for democratic economic governance’, Put People First, 13 March 2009, https://web.archive.org/web/20090629035213/http://www.putpeoplefirst.org.uk/2009/03/our-12-point-plan-for-democratic-economic-governance/(2020年1月10日閲覧)。Walker, Peter & Lewis, Paul, ’Ian Tomlinson death: Simon Harwood cleared of manslaughter’, The Guardian, 19 July 2012, https://www.theguardian.com/uk/2012/jul/19/simon-harwood-not-guilty-ian-tomlinson(2020年1月10日閲覧)。

[25] Nichols, Michelle, ‘Protesters, police clash after G20 in Pittsburgh’, Reuters, 26 September 2009, https://www.reuters.com/article/us-g20-protests/protesters-police-clash-after-g20-in-pittsburgh-idUSTRE58N65020090926(2020年1月13日閲覧)。Urbina, Ian, ‘Thousands Hold Peaceful March at G-20 Summit’, New York Times, 25 September 2009, https://web.archive.org/web/20110811051034/http://www.nytimes.com/2009/09/26/world/26pittsburgh.html(2020年1月13日閲覧)。

[26] サミット当日,カナダ労働会議,オックスファム,グリーンピース,カナダ学生連盟などの呼びかけにより,反緊縮財政や環境保護,格差の解消などを訴えて,1万人以上がデモを行なった。その一部は警察と衝突した。一連の抗議活動で千人以上が逮捕された。’Thousands march in protest against G20 summit in Toronto’, France 24, 27 June 2010, https://www.france24.com/en/20100626-canada-toronto-thousands-march-protest-against-g20-summit(2020年1月13日閲覧)。Morrow, Adrian, ‘Toronto police were overwhelmed at G20, review reveals’, The Globe and Mail, 24 June 2011, https://web.archive.org/web/20110624112511/http://www.theglobeandmail.com/news/national/toronto/toronto-police-were-overwhelmed-at-g20-review-reveals/article2073215/(2020年1月13日閲覧)。

[27] サミット開催数日前に,米韓自由貿易協定への反対を訴えて,1万人規模の抗議デモがソウル市内で行なわれた。’Thousands protest in Seoul before G20 summit’, Reuters, 7 November 2010, https://www.reuters.com/article/us-korea-protest/thousands-protest-in-seoul-before-g20-summit-idUSTRE6A61CP20101107(2020年1月13日閲覧)。

[28] ‘Documents G7-G8-G20’, ATTAC Pays d’Aix, 4 juillet – 4 novembre 2011, https://local.attac.org/13/aix/spip.php?rubrique88(2020年1月10日閲覧)。’Les altermondialistes défilent à Nice pour se faire entendre du G20′, France 24, 1 novembre  2011, https://www.france24.com/fr/20111101-cannes-france-economie-nice-centaines-altermondialistes-manifestants-attac-g20(2020年1月10日閲覧)。

[29] そこには格差批判だけでなく,ロシアによるクリミア占領問題やチベットでの人権侵害問題など,さまざまな抗議の声があがっていた。’G20 Brisbane: Police praise protesters despite arrests, exclusions from security zone’, ABC News, 15 November 2014, https://www.abc.net.au/news/2014-11-15/hundreds-gather-in-brisbane-for-g20-protests/5893718(2020年1月13日閲覧)。

[30] それでも首都メキシコシティでは緊縮政策反対などを要求して数千人がサミットに抗議した。’Thousands Protest G20 in Mexico City’, Democracy Now!, 18 June 2012, https://www.democracynow.org/2012/6/18/headlines/thousands_protest_g20_in_mexico_city(2020年1月13日閲覧)。

[31] 会場数キロ圏内への立ち入りを禁止された労働組合活動家などが「植民地主義的・帝国主義的諸国」からなる「G20は出て行け」と主張し,アンタルヤ市内をデモ行進し,数十人が逮捕された。’Turkey G20 Protest’, Associated Press Archive, 15 November 2015, http://www.aparchive.com/metadata/Turkey-G20-Protest/771feb7587db7c5ecb9f16be45ab0f88(2020年1月13日閲覧)。

[32] ロシアで法的に排除されているLGBTの権利や人権擁護を要求する抗議者が散発的示威活動を行なったが,大規模なものとはならなかった。’Russia G20 Protest’, Associated Press Archive, 5 September 2013, http://www.aparchive.com/metadata/Russia-G20-Protest/2696fd3c5ceb03e0d361bf5f24147064(2020年1月13日閲覧)。

[33] 杭州では会場周辺の交通・物流を数週間前から規制し,開催期間中は市民に休暇を与えることまでした。Horvat, Srecko, ‘Are protests enough to bring down the G20?’, Al Jazeera, 2 July 2017, https://www.aljazeera.com/indepth/opinion/2017/06/hamburg-g20-protest-170621105247332.html(2020年1月13日閲覧)。

[34] #NoG20 2017: Infoportal zu den Protesten gegen G20-Gipfel 2017 in Hamburg, 2016-2018, https://g20hamburg.org/(2020年1月13日閲覧)。

[35] ‘Alternativgipfel kritisiert G20 als «Kofferträger des Kapitals»’, Blick, 5 Juli 2017, https://www.blick.ch/news/ausland/g20-alternativgipfel-kritisiert-g20-als-koffertraeger-des-kapitals-id6947100.html(2020年1月13日閲覧)。

[36] ‘Die Alternative zum G20-Gipfel am 5./6. Juli 2017 in Hamburg: Aufruf zum Mitmachen’, #NoG20 2017: Infoportal zu den Protesten gegen G20-Gipfel 2017 in Hamburg, 25 März 2017, https://g20hamburg.org/de/content/gipfel-fuer-globale-solidaritaet(2020年1月13日閲覧)。

[37] Endres, Alexandra, ‘Was anderes machen als Kapitalismus’, Zeit Online, 6 Juli 2017, https://www.zeit.de/wirtschaft/2017-07/g20-solidaritaetsgipfel-hamburg-vandana-shiva/komplettansicht(2020年1月15日閲覧)。

[38] 「ブラック・ブロック」とは,街頭における抗議行動戦術の一つであり,黒色の衣服や覆面などを着用して身元の特定を困難にしたうえで行なう示威活動のことである。

[39] Peters , Dominik, Klovert, Heike, Kwasniewski, Nicolai & Siemens, Ansgar, ‘Zusammenstöße zwischen Polizei und G20-Gegnern: Das ist der Gipfel’, Spiegel Online, 7 Juli 2017, https://www.spiegel.de/politik/deutschland/g20-wer-hat-schuld-ausschreitungen-bei-g20-demo-in-hamburg-a-1156332.html(2020年1月15日閲覧)。

[40] たとえば次を参照。’Block G20 – Colour the red zone’, Interventionistische Linke, 4 Juli 2017, https://interventionistische-linke.org/beitrag/block-g20-colour-red-zone(2020年1月15日閲覧)。関連報道については下記も参照。’Blockaden und Brandsätze – neue Demonstrationen in Hamburg’, shz.de, 7 Juli 2017, https://www.shz.de/regionales/hamburg/g20-gipfel/blockaden-und-brandsaetze-neue-demonstrationen-in-hamburg-id17242861.html(2020年1月15日閲覧)。’Demonstranten hindern Melania Trump an Verlassen der Unterkunft’, Welt, 7 Juli 2017, https://www.welt.de/politik/deutschland/article166379009/Demonstranten-hindern-Melania-Trump-an-Verlassen-der-Unterkunft.html(2020年1月15日閲覧)。

[41] g20tohell, ‘Thur., 6th of July, 4p.m. – International anti-capitalist demonstration against G20 summit G20: Welcome to hell’, G20 Welcome to Hell: autonomous & anticapitalist alliance against the G20-summit in Hamburg, 25 February 2017, https://g20tohell.blackblogs.org/2017/02/25/demonstration-en/(2020年1月15日閲覧)。

[42] ‘10.000 Menschen demonstrieren gegen G20-Gipfel’, Zeit Online, 2 Juli 2017, https://www.zeit.de/politik/deutschland/2017-07/proteste-hamburg-g20-gipfel-rathausmarkt(2020年1月15日閲覧)。

[43] ‘Bunter Protest: “Lieber tanz ich als G20″‘, Der Tagesspiegel, 5 Juli 2017, https://www.tagesspiegel.de/politik/hamburg-bunter-protest-lieber-tanz-ich-als-g20/20024770.html(2020年1月15日閲覧)。

[44] ‘Groups and organisations’, Grenzenlose Solidarität statt G20, 2017, http://g20-demo.de/en/groups-and-organisations/(2020年1月15日閲覧。)。’Persons’, Grenzenlose Solidarität statt G20, 2017, http://g20-demo.de/en/persons/(2020年1月15日閲覧。)。

[45] 2020年1月31日のレートで216兆円である。

[46] ‘Coalition Call to Action for the Major demonstration against the G20 summit on Saturday, July 8 in Hamburg!’, Grenzenlose Solidarität statt G20, 28 February 2017, http://g20-demo.de/en/call/(2020年1月15日閲覧)。

[47] ‘76.000 demonstrieren in Hamburg für globale Gerechtigkeit und grenzenlose Solidarität’, Grenzenlose Solidarität statt G20, 9 Juli 2017, http://g20-demo.de/de/2017/07/09/76-000-demonstrieren-in-hamburg-fuer-globale-gerechtigkeit-und-grenzenlose-solidaritaet/(2020年1月15日閲覧)。Kempkens, Sebastian, ‘76.000 Mal Hoffnung’, Zeit Online, 8 Juli 2017, https://www.zeit.de/politik/deutschland/2017-07/g20-gipfel-hamburg-grenzenlose-solidaritaet-hans-christian-stroebele(2020年1月15日閲覧)。

[48] ‘Coalition Call to Action for the Major demonstration against the G20 summit on Saturday, July 8 in Hamburg!’.

[49] この「集合体」は,ATTAC,労働組合,フェミニズム運動などによって結成され,人権活動家アドルフォ・ペレス・エスキベル(1980年ノーベル平和賞受賞者)を代表の一人とし,G20サミット当日のデモ行進経路をめぐって当局と交渉した。’Agrupaciones sociales anunciaron plan de protestas contra el G20′, Ambito, 27 noviembre 2018, https://www.ambito.com/politica/casa-rosada/agrupaciones-sociales-anunciaron-plan-protestas-contra-el-g20-n5001955(2020年1月20日閲覧)。’Comenzaron en plaza Congreso las actividades de una contracumbre anti-G20′, Télam, 29 noviembre 2018, http://www.telam.com.ar/notas/201811/310485-comenzaron-en-plaza-congreso-las-actividades-de-una-contracumbre-anti-g20.html(2020年1月20日閲覧)。

[50] 菅原啓「米裁判所の債務全額返済命令 アルゼンチンが反発 途上国や国際機関 投機資本擁護を批判」,『しんぶん赤旗』,2014年6月30日,https://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-30/2014063007_02_1.html(2020年1月29日閲覧)。伊藤晃「アルゼンチン デフォルト後の経済見通し」,『ジェトロセンター』2014年11月号,64~65頁。

[51] いずれも財界・金融業界寄りの報告だが次を参照。「アルゼンチン,14年にわたる債務問題ついに前進」,Reuters, 2016年3月1日,https://jp.reuters.com/article/argentina-debt-idJPKCN0W33WG(2020年1月29日閲覧)。西川珠子「左派政権が復活するアルゼンチン 迫る『9度目のデフォルト』危機」,みずほ総合研究所,2019年10月30日,https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/us191030.pdf(2020年1月29日閲覧)。紀井寿雄「マクリ大統領が4年間の任期を終了(アルゼンチン)」,JETRO,2019年12月19日,https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/12/0e40bd5ad63a1794.html(2020年1月29日閲覧)。

[52] ‘International call to mobilize against the G20 and the IMF’, Fuera G20 y FMI, 2018, https://noalg20.org/call-to-mobilize/(2020年1月15日閲覧)。

[53] たとえば,ラテンアメリカ地域にある624の調査学術団体が加盟するUNESCO協力団体「ラテンアメリカ社会科学協議会」は,G20開催直前の11月19日から23日にかけて「批判的思考に関する社会フォーラム」を開催した。’#CLACSO2018 8º Conferencia Latinoamericana y Caribeña de Ciencias Sociales Primer Foro Mundial del Pensamiento Crítico’, CLACSO, https://www.clacso.org.ar/conferencia2018/(2020年1月20日閲覧)。ラテンアメリカ各国の左派政治家が招かれ,世界50ヵ国から参加登録があったとされる。このフォーラムでは「ゾンビ新自由主義への抵抗」,「情報,メディア,民主主義の権利」,「公教育の擁護」などが議論されたが,これもまた対抗行動の一環であった。De Zárate, Francisco, ‘Líderes de la izquierda reunidos en la ‘contracumbre’ al G20 llaman a resistir contra el “neoliberalismo zombi”‘, eldiario.es, 21 noviembre 2018, https://www.eldiario.es/internacional/Lideres-izquierda-contracumbre-G20-neoliberalismo_0_838166907.html(2020年1月20日閲覧)。

[54] 「G20とIMFに反対する集合体」は,2017年11月17日から12月1日までのさまざまな対抗企画プログラムを集約して,インターネット上で発信した。次を参照。’Download the Programme of the Week of Action in English here’, Fuera G20 y FMI, https://fuerag20.files.wordpress.com/2018/11/week-of-action-agenda-in-english4.pdf(2020年1月15日閲覧)。

[55] Ibid. また次も参照。’Comienza en Argentina la Cumbre de los Pueblos contra la “explotación” del G20′, EFE, 29 noviembre 2018, https://www.efe.com/efe/espana/sociedad/comienza-en-argentina-la-cumbre-de-los-pueblos-contra-explotacion-del-g20/10004-3827582(2020年1月20日閲覧)。’La Cumbre de los Pueblos traslada al Congreso de Buenos Aires su protesta contra el G20′, EFE, 30 noviembre 2018, https://www.efe.com/efe/america/sociedad/la-cumbre-de-los-pueblos-traslada-al-congreso-buenos-aires-su-protesta-contra-el-g20/20000013-3828822(2020年1月20日閲覧)。

[56] ‘Declaración Cumbre y Marcha 30N’, Fuera G20 y FMI, noviembre 2018, https://noalg20.org/declaracion-cumbre-y-marcha-30n/(2020年1月15日閲覧)。

[57] ‘Argentinian government urges Buenos Aires residents to leave city for G20’, The Guardian, 28 November 2018, https://www.theguardian.com/world/2018/nov/28/argentina-g20-summit-buenos-aires-public-holiday-leave-town(2020年1月20日閲覧)。

[58] G20を「帝国主義者」として批判する声は,ブエノスアイレス対抗行動の特色である。一部デモ参加者はロシア大統領や中国国家主席さえも「帝国主義者」として非難するプラカートを掲げていた。Giambartolomei, Mauricio, ‘Terminó la marcha en contra de la Cumbre del G20’, La Nación, 30 noviembre 2018, https://www.lanacion.com.ar/politica/marchas-cumbre-del-g20-nid2197984(2020年1月20日閲覧)。

[59] ‘Declaración Cumbre y Marcha 30N’.

[60] ‘Más de 50 mil personas coparon Argentina contra el G20’, teleSUR, 1 diciembre 2018, https://www.telesurtv.net/news/argentina-marcha-fuera-g20-20181201-0011.html(2020年1月20日閲覧)。ちなみに2019年10月27日,マクリ大統領は再選に失敗した。代わりに当選したのは,年金給付などの社会保障政策を公約した中道左派のアルベルト・フェルナンデスである。西川,前掲論文。

 

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